笠原一輝のユビキタス情報局

ソニー バイオノート505 EXTREME開発者インタビュー(前編)




初代バイオノート505(右)と並べたバイオノート505 EXTREME。初代バイオノート505に入っているサインは、米Microsoft会長兼CSAのビル・ゲイツ氏のもの

 ソニーのバイオノート開発陣が全力を投入して開発した新しいバイオノート505が発表された。

 鮮烈なデビューを飾った初代「バイオノート505」から6年、eXtreme(最高の、究極の)の意味を持つ“X”という頭文字が与えられた「バイオノート505 EXTREME」(PCG-X505)は、まさに究極の505として785g(ソニースタイルモデル、市販モデルは825g)、最薄部で9.7mmという、10.4型液晶を搭載したノートPCとしては、センセーショナルなほどの軽量さと薄さを実現した製品に仕上がっている。

 そこで、今回はX505を開発したエンジニアへのインタビューを2回に分けてお届けする。前編では、主にX505の基本コンセプト、その特徴の1つであるデザイン面などを中心にお届けしていきたい。


●コストよりも“薄く、軽く”を第一の優先順位において設計した

Q:今回リリースされたバイオノート505 EXTREMEですが、技術的な意味でも、マーケティング的な意味でも、日本のPCの歴史において類を見ないユニークな製品です。まず最初に、どうしてこうした製品に取り組もうとしたかを教えてください。

【加藤】弊社にとって、今年はモノづくり伝統の復活という大きなテーマがあって、それに即した製品作りを目指しています。今年の3月にバイオノートZとバイオUという製品をリリースして、次にどういった製品を作っていこうと考えた時に、弊社の伝統芸能と言ってもよい“薄く軽く”ということを目指そうということになったんですが、ただ“薄い・軽い“だけでなく、クオリティの意味でも究極を目指そう、ということになったんです。

 つまり、製造・設計などのすべての技術で、今の限界を超えた一流のものを作っていこうというところから出発しました。それは本体だけじゃなくて、アクセサリ類も含めてトータルでコーディネイトし、買って頂くお客様に対して、PCを持つ喜びを再発見して頂きたい、という想いがありました。

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー インフォメーションテクノロジーカンパニー 企画部企画3課係長 加藤雅巳氏 ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー インフォメーションテクノロジーカンパニー 6部3課統括課長 佐藤英和氏

【佐藤】以前から、エンジニアの間にはこういう思い切った製品をやりたいよね、という共通認識はありました。弊社も1メーカーである以上、お客様に対してリーズナブルな価格で提供でき、かつ会社にとっても利益を生み出す製品でなければ、上の人間を説得することはできないのは事実で、これまではなかなか難しかった。

 そんな中で、最初に機構設計の人間からこういう製品ができるはずだという提案があって、電気を担当するエンジニアもこれならできるよね、と手を上げてくれ、デザイナーからもこんなのどうだろうと提案があって、さらには実際に見積もりをしてみると営業サイドでもこれはチャレンジできるよね……と徐々に自然発生的に話が盛り上がっていったのです。

Q:コストが第一優先順位となるPCのビジネスにおいて、こうしたPCの価格モデルからはずれる製品にチャレンジするのは勇気がいることですね。

【佐藤】エンジニア個々人としては、全員がこういう“尖った”製品をやりたいんですよ。しかし、おっしゃるとおり、弊社もメーカーである以上製品を出してビジネスになるのかということは冷静に見極める必要があるので、これまでは難しかった。

 ただ、今回は弊社として“モノづくり伝統の復権”というテーマがあり、上の方の人間もかなり乗り気になってくれました。むしろ、上の人たちの方がイケイケだったんです(笑)。

 ただ、実際にやるとなっても、エンジニア個人としてはかなり難しい作業だったのも事実です。通常、弊社のエンジニアも量産設計に適した製品の設計を行なっています。量産設計の場合、いかにコスト的に優れた部品を利用して、最終的に魅力のある製品に仕上げるかというのが重要なポイントになってきます。

 例えば、製品の価格ということを考えると安価な部品を選択したいのですが、それを選択すると大きくなったり重くなったりする。そういうジレンマの中で最大限バランスの取れた選択をするのが量産設計なのです。

 ところが、今回の製品の場合、最初から考え方を変えました。まず優先したのは、もっと小さい部品があるだろう、もっと軽い部品があるだろう、そのようにまずは弊社が目指すターゲットを実現できる部品はなんなんだろうということで選定していきました。

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー インフォメーションテクノロジーカンパニー 2部4課 係長 辛島氏

【辛島】今回上司から指示として出されたのは、とにかく薄く、軽くを追求して欲しいというものです。じゃあ、もう究極の薄く、軽くを実現してやろうじゃないか、ということでスタートしました。そうした意味では、これまでの製品のようにコストとのバランスを取りながら製品作りをするのではなく、“薄く、軽く”という非常に単純な目標だけを与えられて設計を行なうことができたので、ある意味やりやすかったですね。

Q:PCビジネスとしては異例の指示ですね。

【佐藤】でも、途中からはコストコストと言われはじめて、ああだまされたな、と(笑)。

【加藤】ただ、出発点が通常の製品とは全く違ったところにあったのは事実で、それ故にこうした製品ができあがっていったということは言えると思います。


●初代505を今の技術で作った結果がX505

Q:ソニーで言えば「QUALIA (クオリア)」がそうですが、PCコンポーネントの世界でもIntelのPentium 4 Extreme EditionやAMDのAthlon 64 FXなど、価格よりも尖った性能や品質をある特定のユーザー層に向けて投入していくという「マイクロマーケティング」手法が流行しています。

 マイクロマーケティングにおいては、そうした尖った製品をエンドユーザーにもたらすことができるというユーザー側に対するメリット、さらにはブランドイメージを高められるというメーカー側のメリットがあると思います。今回のX505もそうした戦略に近いものだと考えていいのでしょうか?

【加藤】そうですね、マイクロマーケティングという表現がよいかは別として、そういった面はあると思います。弊社の場合、スタンダード系の製品として、バイオノートV505やバイオノートTRなどの製品があります。これらのノートPCは、製造コストや量産性などをある程度考慮して設計していく必要があります。マスマーケットのユーザー層に対して投入されていく製品だからです。

 それでは、1スピンドルの、いわゆるサブノートと呼ばれる市場はどうなのだろうか、と自問していくと、正直なところV505やTRなどがターゲットとしているユーザーほどは多くないというのが現状です。

 しかし、重要なことはこのユーザー層は非常に尖ったユーザー層であり、エンジニアが気合いを込めて作った製品の良さを評価して頂ける方々なのです。そうしたユーザーの皆様にフィットした製品、納得して頂けるクオリティを持ったものを作りたかったのです。

Q:今回ブランド名は、バイオブランドの中の1つの製品として位置づけられています。例えば、“バイオエクストリーム”というように、バイオブランドを拡張したような位置づけにしなかったのはなぜでしょう?

【加藤】今回のX505は、初代バイオノート505の再来だという弊社における位置づけがありました。バイオシリーズにとって、初代505は飛翔する1つの弾みだったわけで、その成功をもう一度繰り返したい、という意味でも505という名前を使うことに悩みはありませんでしたね。

【佐藤】初代505の生まれ変わりだと言ってもいいですね、言ってみれば、初代505を今の技術で作るとどこまでできるんだろう、といったところですね。

Q:PCメーカーにとって、こうしたマイクロマーケティングの製品は未知の分野といってもよいと思います。それに取り組むソニーにとってのモチベーションというのはなんでしょう?

【加藤】もちろんバイオブランド全体をより高いところに押し上げていきたいということもありますが、こうした製品に取り組むことで、技術の蓄積ができていくという点も見逃せないと考えています。今回、こうした尖った製品に取り組むことで、各部分で培ったノウハウは今後ほかのバイオ製品に対しても波及していくことになると考えています。

【佐藤】そうですね、技術的な意味でも新しい挑戦があちこちにありますので、よい投資になっています。

●30万円は背伸びすれば手が届くプライスレンジ

Q:今回究極の505ということで、尖った市場を狙っていくわけですが、それでもPCである以上ある程度の価格の範囲内に納める必要性があると思います。実際クオリアのように別ブランドを立ち上げたのではなく、バイオという既存のブランドであるわけですから。しかし、Pentium M 1GHzというクラスに分類される製品としては異例の価格です。

【加藤】確かにそういう議論はないわけじゃないです。今回は、通常の製品としての考え方は捨てよう、極端な話、50万円でも、60万円でもいいから、いいもの作っていこうというのがスタート地点でした。

 ただ、作っていく課程で、ある程度の時期までくると実際に製品として投入することを検討しないといけないのですが、50万、60万円でいったい何台売れるんだと考えていくと、そういう価格はちょっと考えにくいですよね。やはり“もう少し手を伸ばせば届く”レベルにしないといけない。

 そこで、営業と価格、ボリュームについて話をしていく段階で、30万円という価格であればバランスがよいのではないかということで落ち着きました。30万円を超えると、ものすごく高いという印象がありますが、30万円以下であればちょっと背伸びすれば出せるプライスレンジではないかなと判断したからです。このため、途中からは30万円をターゲットに開発を進めてきました。

Q:すでにスペックで同じクラスに分類するのが間違っているのかもしれませんが、同じようなスペックのPCが20万円弱という価格で販売されています。つまり、じゃあ10万円のバリューはなんだろう? という話になってくると思いますが?

【加藤】単純な話なんですが、とにかく世界一というのにこだわってますね。例えば、最薄部9.7mmという薄さ、825gという軽さなどです。デザインから感じて頂けるオーラみたいなものもあると思うんですね。

 また、今回は本体とトータルコーディネイトされたアクセサリ類も最初から付属していて、通常のPCとは異なる価格モデルであるということもあります。そうしたバリューをご理解頂けるお客様にとっては決して高い価格ではない思います。

 このあたりは販売サイドともかなりやりとりをして決定したんですが、最終的には販売のプロである彼らも、これなら売れるだろうと判断してくれました。この製品の魅力をどうやったら市場に対して伝えることができるのかということをさんざん議論しましたね。

【佐藤】おもしろいのは、そうした販売サイドの担当者に実際の製品を見せた前と後ではかなり反応が違っていたことですね。

【加藤】そうなんですよ。実際に製品を見せる前では「えー30万円、売れないよー」という反応が大多数だったんですが、実際にこの製品のモックアップを持って行って見せると、異様な盛り上がりを見せましたね。

【佐藤】その後実働品を見せても「まだモックでしょ」と信じてくれなかったり、とか(笑)。やっはり、こういう尖った製品が出てくると、社内の人間も元気が出るというのがあると思うんですよ。やっぱりソニーに勤めている人間であれば、こういう製品は大好きですからね。

Q:確かに第一印象でエモーションを呼び起こすという製品ではありますね。ただ1つ課題を挙げるとすれば、その後で冷静になった人にどう買わせるのかということではないかと思います。

【加藤】この手の製品は最初どーんといくものだと思っています。今後、通常のPCのようにちょっとずつスペックアップしていくものでもないでしょう。重要なのは、「じゃあ次にほかのバイオをどうしていくの?」というところだと考えています。X505でできた要素技術を利用して、ほかのバイオノートへどのように波及させるか、それが今後のテーマだと考えています。

●初代505でも採用されていた円柱状のバッテリを強調したデザイン

Q:今回のX505のデザインですが、従来のバイオシリーズのイメージと異なる大胆なものになっています。これまでのノートPCとも一線を画すものとなっていますね。

【森澤】最初にこのPCをやるとなった時に、内部をとにかく薄くしようという話があって、内部コンポーネントの設計はかなりとぎすまされたものになっていました。

 そこで、デザイナーとしてもそれに負けないように、意識を高めていきました。そうしないと、機構や基板のエンジニアの思いに答えられない、と。今回は薄く、軽く、そして持った時の喜びという明確なデザインターゲットがあって、ある程度最初の段階でこの形ができあがりました。

 色に関してですが、素材が最も大きな影響を与えていますね。今回は素材にカーボンの積層板を利用していますので、これをうまく生かす色にしようと考えまて、この色になりました。もちろん、色を塗って別の色にすることも不可能ではないのですが、素材自体が持つ深みや剛性感を出すという理由で、そのまま使うことにしました。さらに、今回は全体的にブラックを基調とした色になっていますが、全体を真っ黒にすると力強さがでてしまうので、メタリックを入れることでバランスをとっています。

Q:デザインとしては、かなり初代505のイメージを再現していますね

【森澤】そうですね、初代505はバッテリが円柱状になっているというところがデザイン上の特徴であったので、ここをもう少し強調しようと考えました。

 そこで、厚みがある部品はバッテリの左右に集めました。具体的にはどうしても小さくすることが難しい電源ボタンとACアダプタのコネクタをバッテリの左右に集めて電源系を構成し、その手前にロジック系、さらに一番手前に入力デバイスというように整理をして配置することにしました。

ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー デザインセンター HCV Gp アートディレクター 森澤有人氏 ソニー株式会社 IT&モバイルソリューションズネットワークカンパニー VAIO商品開発本部 2部4課 福馬洋平氏

Q:ユニークなのは、本体の裏側にも“VAIO”のロゴが入っています。これまでのPCだと、裏側というのはシリアル番号や注意書きなどが書いてある場所というイメージがあったんですが。

【森澤】私の中ではモバイルというのは、持ち歩いてこそというのがあるんです。持ち歩いて人に見せる機会が少なくないモバイルPCでは、裏側だって意匠面であっていいと思うんです。そこで、今回は裏側もなめらかなサーフェスにして、裏と言われてもそう見えないように、表と同じバイオロゴをつけたんです。コンセプトとしては、1枚の布で包むようなサーフェスを目指しました。

 シリアル番号などの表示は、バッテリをはずすと見える位置につけました。Windowsのシリアル番号のシールだけは諸般の事情でついたままですが(苦笑)。

Q:もしWindowsシリアル番号のシールがなければ、表と裏がわからないぐらいですよね。このバイオロゴですが、裏側は印刷で、表は掘ってあるんですね?

【森澤】そうですね。さりげなさを強調したかったので、ロゴの色にもあえて黒を利用し、見えたり見えなかったりという効果を狙っています。

 また、ソニースタイル専用モデルでは、光沢塗装にしてあります。光沢塗装にしたほうが、素材の深みがでるからです。塗装面の強弱をつけることで、素材の良さを引き出すことが可能になります。

市販モデル(左)とソニースタイル専用モデル(右)。ソニースタイル専用モデルは光沢塗装がしてある

Q:でも、この光沢塗装の製造は大変そうですね。

【森澤】そうですね、非常に大変です(苦笑)。もちろん製造担当者には嫌がられましたけど、最後まで初志貫徹ということで(笑)。

【佐藤】実際には、半つや消しから光沢まで実にいろいろな試作品を作ってみました。そこで、ユーザーとして欲しいのは光沢、製造が容易なのは光沢ではないものとなるのですが、じゃ自分が欲しいのはなんなのよ、というのが最終的な決め手でしたね。

【福馬】百戦錬磨のエンジニアがどうしたら量産効率が上がるかなどを議論するわけですけど、試作品を並べてみて話をしていくと、全員の目が光沢の方にいくんです。じゃあ、自分が欲しいものにしようよ、と(笑)。

表面のバイオロゴは掘ってあり、ロゴには黒が採用されている VAIOロゴはPCカードの蓋にも入っている

●あえてシンプルなデザインを目指すことで存在感を出すことを狙う

Q:液晶、バッテリ、基板、キーボードという配置もユニークです。

【森澤】内部構造の効率をまず出さないといけないので、こうしたデザインを採用するというのはある程度は最初の段階で決まっていました。じゃあ、デザイン側で何ができるだろうと考えていくところから出発しています。今回は、キーボードも含めて全体の一体感を出すために、キーボードにもフレームを貼っています。

Q:キーボードと液晶の間、実際にはロジックが入っている部分の外側にはバイオロゴしか置かれていませんね。ここにボタンなどの部品を置かないというのは思い切ったデザインです。

【森澤】最初の段階で、あそこには部品を置かないようにしようと考えていました。デザイン上、ある部分に何も置かないというのは勇気がいることなんですが、あえてバイオロゴ以外は何も置かないことでシンプルさを強調することを狙っています。

 とにかく、今回は最初に自分で決めたコンセプトを守ることに注意を払いました。先ほどのシンプルというのもそうですが、例えば付属のアクセサリ類も、本体より厚みがあるものは、存在してはいけない、という方針を最初から決めていました。これだけのモデルをやらせて頂くわけですから、とことんこだわらなくちゃいけないな、と。重箱の隅をつつくような話なんですが、PCカードのダミーの蓋にもバイオロゴを入れさせてもらっています。

Q:電源スイッチなども印象的なデザインです。

【森澤】そうですね。最初から円柱のバッテリという特徴があったので、逆に強調したということで、電源をここに置き、スイッチを置くというデザインにしました。構造的にはかなり大変でしたね。

【辛島】機構設計としては大反対したところなんです(苦笑)。つらいからやめてくれ、と(笑)。ところが、では電源スイッチやACアダプタのコネクタどこに置くのと考えていくと、確かにないんですね。本体側に置くと、それだけで本体が厚くなってしまうんです。

【森澤】薄さにも貢献できると考えたんですよ(笑)。とにかく、デザインでは製品としての全体の印象を大事にして強く出せるようにしたいと考えていました。モノがフェロモンを出すとでもいうのでしょうか、見た目のシンプルさというのは非常に大事なんです。

 液晶があって、電源周りを格納している円柱があって、何もない面にはバイオロゴがあって、フレームを入れることで本体と一体化したキーボードがあって、とシンプルだけど全体のイメージを一目で見た人に伝えることができる、そういうデザインを目指しました。

 また、今回はトータルのコーディネートという点にもこだわっていて、アクセサリに関しても統一したデザインを採用しています。通常であれば、アクセサリのデザインなどは他のデザイナーとの分業になるのですが、今回は私一人で担当することで、統一感をだすことを狙いました。

円柱状のバッテリーに液晶と本体が付くというデザインは初代505のエッセンスを受け継いだものとなっている

●本体より厚いアクセサリは存在してはならないがポリシー

Q:アクセサリに関しても、周辺機器とは思えないデザインですね

【森澤】通常であれば、前の機種の流用などが多くなってしまいます。ですが、今回はすでに述べたように本体より厚いアクセサリはあってはならないという大前提があったので、ほとんど0から起こしています。

 例えば、このVGAとEthernet用モジュールのコネクタですが、コネクタの電気信号自体はバイオノートSRXで採用していたものと同じなのですが、今回のためにわざわざプラグ部分にマグネシムを利用して薄くしています。

【佐藤】そのおかげで、コストはかなり高くなっちゃったんですけどね(苦笑)。

【森澤】本体に挿さった時に、本体よりもコネクタが高かったりしたら違和感があるんですよ。今回はマウスにしても、わざわざ本体より薄いマウスを用意しています。

 また、無線LANカードも従来製品があってそれを流用することが可能なんですが、挿したままで運ぶということが多いと思うので、液晶を閉じた時に同じ高さになるように新しいアンテナを起こしました。そうすることで、本体と一緒に利用したときに一体感が出ることを狙いました。

Q:今回は、ケースも標準で付属されています。

【森澤】付属のケースでは横から開けて取り出すという形にこだわりました。ケースに入れたらそのケースの厚みで厚くなってしまったというのでは、意味がないと思うんです。

 ケースに入れていても薄さが感じられるケースにしたかったということがあるので、蓋が重なって厚さが出ないように、蓋を横に付けて取り出すという形にこだわりました。

 ただ問題だったのは、こういう形状だと作るのが非常に難しいのです。というのも、今回のケースでは縫い目が表に見えないように、まず裏返した状態で縫うのですが、角の部分が堅いので、縫い合わせたあと元に戻すのが大変なんです。

 縫い目を表に出してしまえばそんなに難しくないんですが、縫い目が見えたらちょっと格好良くないですから。本当に最終的に製品になるまでも結構大変で、サンプルは20個ぐらい作りましたね。

【加藤】あれ、私たちは4つぐらいしか見てないですよ

【森澤】ええ、実はみんなに見せるまでもなく消えていったサンプルもあったんですよ。なかなかシャープなエッジがでなかったりというのもあって、途中でギブアップしようかと何度も思いましたね(苦笑)。

付属の周辺機器を取り付けたところ。すべての周辺機器は本体の一番厚い部分よりも薄くなっている コネクタなども本製品用に特注されている

(文中敬称略、後編につづく)

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(2003年11月13日)

[Reported by 笠原一輝]


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