キヤノン EOS Kiss Digital


−Kiss Digitalは10Dを超えるか?−



 キヤノンEOS Kiss Digitalがセンセーショナルな価格設定で9月20日に発売された。価格はオープンプライスだが、ボディー単体で約12万円、標準ズームの18〜55mm付きでも約14万円程度で、レンズ一体型カメラと競合する値段だ。

 しかし、Kiss Digitalはれっきとしたレンズ交換式一眼レフ。広角系ではレンズ一体型を凌ぐし、ファインダの見え方もとくに動体撮影に向く。とかく低価格だけに目が向きがちだが、実力はどうなのだろうか。価格差を無視して、EOS 10D(ボディのみで実売20万円弱)との比較を交えながらレポートする。

 なお、このKiss Digitalは編集部が交換レンズやアクセサリとともに購入したものである。また、10Dとレンズは筆者のものを使用した。

●操作系はEOSユーザーにはやや複雑だが

【写真A】 EOS Kiss Digitalは10Dよりもひと回り小さい

 カメラは質感、手触り感、そして操作性が大事だ。これはデジタルカメラになっても変わらないところである。

 外観は銀塩カメラのEOS Kiss 5に近いと言える。もちろん、デジタル化したぶんだけ大きくなっているが、10Dと比べると小さい(写真A)。装着してあるレンズが違うせいもあるが、ひと回りは小型化された。ホールドした感じも手になじみ、手の小さな筆者にはこれぐらいがいい。重さは560g(電池、記録メディア別)と、ペンタックス*ist Dよりも10g重い。

 外装はプラスチックで、マグネシウム合金の10Dの手触り感には遠く及ばない。しかし、実際に手にしてみると、意外と高級感がある。ただ、少し光沢を抑え気味にしたほうが、もっと質感が良くなるのではないかと思う。銀塩カメラのKissシリーズはこのところクローム仕上げで、その特徴をこのカメラも受け継いでいる。たしかに、目立つのだが、ブラック仕上げも欲しいところだ。

 アメリカ市場では「Rebel(反逆者)」と挑戦的なネーミング。じつは銀塩のKissのときから、このネーミングを使っている。たしかに、価格は挑戦的だが、外観はかなりオーソドックスだ。

【写真B】 EOSの象徴であるサブコマンドダイアルのかわりに十字キーが採用された

 いままでのEOSシリーズのデジタル機(EOS Digital)と比べて大きく変わったのは、背面の大型サブコマンドダイアルがなくなった点だ。かわりに十字キーが付けられた(写真B)。これによって、いままでのサブコマンドダイアルの役目、たとえばメニューを選んだり、画像を送ったりするのに使う。また、ISO感度設定とWB設定もこの十字キーの上下とメインコマンドダイアルで行なう。

 EOS Digitalのユーザー(もちろん銀塩EOSのユーザーも)は、大型サブコマンドダイアルの使いやすさになじんでいた。いや、これこそEOSの象徴とも言うべき操作部材だったのだ。これを十字キーに変えたのは、コストダウンのためなのだろうか。それとも、銀塩Kissに合わせたのだろうか。いままでのEOSユーザーはとまどうだろうが、これから購入するユーザーはどうだろう。

 メインのモードダイアルは大型で回しやすい。銀塩カメラと同じ右に来ていて、10Dなどとは逆だ(写真C)。その右にメインスイッチがある。これはわかりやすくていい。EOSのスイッチは伝統的にボディー背面だったが、上に持ってきたのは評価される。

 その右にセルフタイマー/リモコンと連写の切り替えがあるが、この位置はどうだろうか。連写はいいと思うが、セルフタイマー/リモコンはファミリーユースを意識してなのだろうか? むしろ背面にある絞り/露出補正ダイアルをここに持ってきて欲しかった。また、オートブラケットは相変わらずメニューで設定するが、これは外部のボタン操作のほうがよかったのではないか。

 10Dを使っていると、情報が右の液晶パネルに表示され、わかりやすい。ところが、このKiss Digitalでは背面(アイピースの下)へ置いている(写真D)。なんだか、最高級機のEOS-1Dsを使っているようだ。これはほめているのではなく、異議を唱えているのだ。たしかにスペースの面、それに銀塩のKiss 5の継承という面からは、この場所がいいのかも知れないが、サブ電子ダイアル同様、いままでのEOSユーザーには違和感がある。

【写真C】 モードダイアルは右側にあり、わかりやすい。その右に連写切り替えボタンとセルフタイマー/リモコンボタンがある 【写真D】 アイピース(接眼部)直下に液晶パネルがある。この位置はあまり見やすくない

 10Dと比べて、操作性が向上したのは、測距点の選択である。同じ7点測距だが、選択ボタンを押して、メインのコマンドダイアルだけで順ぐりに選べるようになった。10Dでは、ヨコ方向がメインコマンドダイアル、タテ方向がサブコマンドダイアルに分かれていて、これはとっさの場合に面倒だった。こんどはダイアルひとつで選ぶことができる。これは進歩であると思う。

 液晶モニタは1.8型であるが、見やすい。ただ、初期設定では明るくセットしすぎで、露出の参考にはならない。メニューでモニタの明るさを1段落として使ったほうがいい。また、モニタの左側には上から、MENU、INFO、JUMP、再生、削除のボタンが並ぶ(写真E)。10Dでは削除ボタンのかわりに移動ボタンがあった。Kiss Digitalでは再生のつもりがうっかり削除ボタンを押してしまう。まあ、これは慣れて解決できる問題だろう。INFOボタンを押すと、ヒストグラムと撮影データが表示される(写真F)。このあたりは10Dと同様で使いやすい。

【写真E】 液晶モニタの左側にはMENU、INFO、JUMP、再生、削除ボタンがある。写真は画像を再生した状態 【写真F】 INFOボタンを押すと、画像とともにヒストグラム、撮影情報が表示される。10Dと同じでわかりやすい

 液晶モニタの話が出たついでに、メニューについて見ておこう。10Dなどでは、メニューがいっぺんに表示された。ところが、このKiss Digitalでは4つのサブメニューに分かれている(写真G)。これはコンパクトデジカメがだいたいそうなので、それに倣ったものだろうか。それとも、十字キーの採用で、こうしたほうが使いやすくなったのか。まあ、いちばん使うメニューがトップに来ているから、それほど問題ではない。ただ、サブコマンドダイアルで一発で選べる10D愛用者としては、不満な点だ。

【写真G】 メニューはコンパクトデジカメのようにサブメニューに分かれた。これは10Dのようにいっしょのほうが使いやすい

●価格相応のスペックだが、専用レンズは魅力的

 レンズマウントはいままでどおりで、電気接点の数も変わらない(写真H)。ただし、ミラーはスイングバック式で、後退しながらはね上がる方式になった。これは標準ズームの18〜55mmがほかのレンズよりも後ろに出っ張っている(バックフォーカスが短い)からだ。このため、このレンズはほかのEOS Digitalには使えない。ミラーがぶつかってしまうからだ。このレンズを使いたければ、Kiss Digitalを買うしかないのだ。

 バックフォーカスが短いと、それだけコンパクトで、性能のいいレンズができる。あえて専用レンズとしたのだろうが、やや釈然としない。後で見るが、なかなかいい性能のレンズなので、10Dなどにも使いたいところだ。なにしろ実質約2万円で190gという軽量だから、旅行などに持って行くには最高だ。

 内蔵ストロボはかなり高い位置までアップする(写真I)。このため、後述するように、かなりの接写でもだいじょうぶだった。ただし、使用説明書には、18〜55mmで1m以内での内蔵ストロボ撮影はケラレが出るおそれがある、と書いてある。

 記録メディアはType1、2のCFカードでFAT32対応。4GBのカードでも、もっと大容量が出てきても対応できる(写真J)。ただし、PCとの接続はUSB 1.1で、2.0ではないのが残念だ。

【写真H】 マウントはいままでと同じEFマウントで、電気接点の数も同じ。ただ、ミラーが奥に引っ込んだスイングバック式だ 【写真I】 内蔵ストロボをアップした状態。かなり位置が高く、ケラレを防止している 【写真J】 記録メディアはType1、2のCFカード。FAT32対応だから、4GBカードも使用可能だ

 電源は専用のリチウムイオン電池(写真K)。また、別売アクセサリーでバッテリグリップが用意され、リチウムイオン電池が2個入る(写真L)。このグリップを付けると、かなりカメラの高さが増すが、旅行などでは安心だ(写真M)。バッテリグリップを使う場合には、別売の2個同時充電のできるコンパクトパワーアダプタも買うべきだ。

【写真K】 電池は10Dと同じ、リチウムイオン電池を使用 【写真L】 別売のバッテリーグリップ、。リチウムイオン電池が2個入る。本体のバッテリ部分に接続するため、合計3個にはならないので念のため 【写真M】 バッテリーグリップを付けると、かなり高さは増すが、ホールディングは良くなる

 撮像感度はISO1600までとなって、10DのようにISO3200までの拡張はできない。同じ有効630万画素のCMOSイメージセンサーを使っているのだから、拡張モードは欲しかった。たとえば、子どもの室内スポーツを撮るときなどには有効だろう。

 AFはS(シングル、キヤノンではワンショット)とC(コンティニュアス、キヤノンではAIサーボ)が自動的に切り替わる。手動で切り替えができないのは残念である。

 また、連写速度は10Dの毎秒3コマから毎秒2.5コマと少し遅くなっている。そして、何よりも残念なのはバッファメモリが少ないため、最大4コマまでしか連続撮影できない点だ。子どもの運動会などを撮る場合には銀塩カメラよりもシャッターチャンスのつかみ方がむずかしいだろう。10Dなみに9コマは欲しいところだ。

【写真N】 今回使用したレンズ。18〜55mm(右)はKiss Digital専用だ

 露出補正はプラスマイナスの手動補正(1/3ステップ)、AEロック、オートブラケットと揃っている。

 ファインダはペンタミラー方式の割には明るく見やすい。ただし、少し青みがかっているのはアルミ蒸着のため。10Dは相対的に黄色っぽいが、これはペンタプリズムで、銀蒸着のためだ。ここらあたりのコストのかけかたもちがう。

 レンズはKiss Digital専用の18〜55mmのほかに、EF55-200mm F4.5-5.6 IIも試用した。こちらも廉価(4万円)で軽量コンパクトだ(写真N)。Kiss Digitalにはよく似合う。

【お詫びと訂正】初出時に露出補正のステップが誤っておりました。お詫びして訂正いたします。


●意外とよく写る標準と望遠ズーム

 実写はいつもの定点観測からである。なお、Kiss Digitalの初期設定はパラメータ1で、彩度、コントラスト、シャープネスがプラス1になっている。PictBridgeでプリンタに直接出力する場合を考慮してだろう。原則として、撮影はこのパラメータ1にしてある。パラメータ2では10Dと同じになるので、比較撮影の意味がない。

 定点観測の第一は、新橋駅前ビルでレンズの描写チェック。EF-S18〜55mmF3.5〜5.6とEF17〜40mmF4Lという、ある意味、無茶な比較をした。約2万円と約10万円のレンズだから、同じ土俵に上げるのは無理があるのは承知だ。

 条件をなるべく揃えるため、絞り開放と、絞り開放から2段絞った状態で撮影した。つまり、18mm側ではF3.5またはF4とF8、40mm側ではF4またはF5とF8である。ピント合わせは両方ともAF中央1点測距。AEでオートブラケットをして、ベストの露出を選んでいる。

 18〜55mmの18mm側の絞り開放(F3.5)ではややコントラストが低く、歪曲も少しあるが、とても2万円相当のレンズとは思えない優秀な画像だ。17〜40mmの絞り開放(F4)と比べて、見るからに劣るという画像ではない。F8に絞ると良好な画像になり、コントラストも上がる(写真1)。

以降に掲載する作例のリンク先は、撮影した画像データそのものです。縦位置のものは、サムネールのみ回転していますが、拡大画像はあえて回転せずに掲載しています。
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【写真1a】 専用のEF-Sレンズの広角側で絞り開放。とても低価格レンズと思えないいい描写だ。わずかにコントラストは低いが、歪曲もそれほど目立つほどではない。
EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF3.5、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真1b】 F8に絞り込むと、コントラストも良くなり、画面全体がいい画質になる。なお、左上の白い看板は飛んでしまっている。
EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF8、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真1c】 EF17〜40mmレンズの広角側で絞り開放。さすがにいい描写だが、約10万円のレンズだから、当たり前という気もする。
EF17〜40mmF4L、絞りF4、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真1d】 同じシーンを絞りF8まで絞り込んだ状態。文句のつけようがない画質である。
EF17〜40mmF4L、絞りF8、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

 望遠側は写る範囲を揃えるために、40mmで撮影した。18〜55mmを40mmにすると、開放F値はF5だが、これもかなりいい画質だ。コントラストは17〜40mmのF4開放よりもやや低いが、たいした差ではない。歪曲は少しあるが、それほど目立たない。F8に絞るといい画質になる(写真2)。こうして比較撮影してみて、考え込んでしまった。約2万円と10万円、この価格差は明るさと、ほんの少しの画質差でしかない。

【写真2a】 18〜55mmレンズで約40mmにセットして、絞り開放(F5)で撮影したもの。絞り開放で、これぐらいの描写をしてくれれば、このレンズでも十分という気になる。
EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF5、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真2b】 同じシーンでF8に絞り込んだ状態。とても約2万円の低価格ズームレンズとは思えない。これだけの描写をするのは、バックフォーカスを短くしたおかげなのか。
EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF8、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真2c】 17〜40mmレンズの40mmで撮影したもの。絞りは開放(F4)だが、絞りを開けてもさすがにいい描写だ。この17mmの描写は以前の17〜35mmF2.8よりいいようだ。
EF17〜40mmF4L、絞りF4、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真2d】 絞りをF8まで絞り込むと、画質はさらに良くなる。さすがに定評のあるレンズだけあって、いい描写だ。
EF17〜40mmF4L、絞りF4、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

 つぎの定点観測は夜のレインボーブリッジ。ノイズリダクションは画像エンジンのDIGICで行なわれていて、とくにON/OFFのスイッチがあるわけではない。目立ったノイズはなく、すっきりした画像になっている。細かくみると、夜空の部分がわずかにノイズっぽいが、気にならない程度のわずかなもの(写真3a)。

 CMOSはノイズが多いと言われたEOS D30の時から比べると、隔日の感がある。しかし、まだ3年しか経っていないのだ。技術の進歩はほんとうにすごいものである。

 同じ条件で、10Dでも撮影してみたが、これもノイズがほとんどない(写真3b)。点光源の表現などに差はあるが、Kiss Digitalの画像は悪いとは言えない。画面周辺では「コマフレア」というレンズの欠点が少し出ているが、気になるほどではない。2万円相当のレンズでこれだけ写れば上出来だろう。

【写真3a】 Kiss Digitalで夜景撮影。30秒露出だが、ノイズはほとんどない。ただ、画面隅には「コマフレア」が出ている。
EOS Kiss Digital、EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF16、30秒、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真3b】 10Dで撮影。ノイズのなさは同じぐらい。ただ、細かい描写ではやはり優れている。
EOS 10D、EF17〜40mmF4L、絞りF16、30秒、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

●動体やポートレートの撮影には差が

 定点観測のもうひとつの定番は特急列車の通過を撮るもの。これでAFの動体追従能力がわかる。かなりのスピードで通過するため、きびしいテストだ。このときには35mm換算で約100mmで撮影するが、今回使用したレンズは70〜200mmF4で、いつもより1段暗い。それだけピントの合う確率は高くなり有利になる。ただし、70mmで撮影しているので、35mm判換算は約112mmとなり、そのぶんが少し相殺される。

 結果は4コマ目が後ピンになったが、それほど大幅ではない。これだけ見ると、まずまずの追従能力と言えるだろう(写真4a〜4c)。ただ、後ピンよりは前ピンのほうが絞り込めばいいので、ちょっと問題だ。

【写真4a】 最初から2コマ目。ピントはぴったり合っている。
EOS Kiss Digital、EF70〜200mmF4L、絞りF4、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真4b】 つぎのコマはわずかに後ピン気味だが、F8まで絞り込めばだいじょうぶだ。
EOS Kiss Digital、EF70〜200mmF4L、絞りF4、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真4c】 バッファの関係で、ここまでしか追うことができなかった。書き込んでいる間に列車は通り過ぎて行った。
EOS Kiss Digital、EF70〜200mmF4L、絞りF4、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

 10Dで撮影すると、もっとピント精度がいい。しかも、より近距離まで追うことができる(写真5a〜5c)。これはバッファメモリが多く、9コマまで連続して撮影できる点が大きい。もちろん、Kiss Digitalの毎秒2.5コマに対し、10Dが毎秒3コマという連写能力も影響している。そして、たぶんAFの動体追従能力も10Dのほうが優れていると推測される。

 少なくとも、連続撮影能力が4コマは少なすぎる。このようなシビアな条件でなくても、運動会のゴールインの瞬間を撮るには、慣れが必要だろう。できれば、バッファメモリ量を増やして、せめて5割増しの6コマ程度にして欲しい。

【写真5a】 最初から7コマ目。写真4と同じタイミングでシャッターを押し始めたが、どんどん撮れる。ピントもぴったり合っている。
EOS 10D、EF70〜200mmF4L、絞りF4、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真5b】 ほんのわずかに後ピンだが、絞ればまったく問題ないぐらいにピントが合っている。このカメラの動体追従能力はそうとうに高い。
EOS 10D、EF70〜200mmF4L、絞りF4、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真5c】 ここまで追いかけられるのは驚きだった。わずかに後ピンだが、すばらしい。このカメラは動体撮影に向いている。
EOS 10D、EF70〜200mmF4L、絞りF4、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

 今回から、もうひとつの定番撮影を付け加えた。それは人物撮影で、肌の再現性とか、彩度、あるいはホワイトバランスをチェックする。まず、逆光でレフ板で照明して、Kiss Digital+55〜200mmF4.5〜5.6IIと10D+70〜200mmF4Lで比較撮影してみた。

 Kiss Digitalのほうが彩度が高く設定しているにもかかわらず、肌の調子は10Dで写したLレンズのほうがいい(写真6a、6b)。やっぱりこういうところでは、低価格レンズと高価なレンズでは差が出てしまう。色の具合も55〜200mmはやや黄色がかっているようだ。背景のボケ具合、いわゆる「ボケ味」もやはりLレンズのほうがいい。

【写真6a】 55〜200mmレンズを約70mmにして撮影。肌を見ると、わずかに黄色みがかっている。彩度は高めだが、これは初期設定のため。ボケ味はそれほどよくない。
EOS Kiss Digital、EF55〜200mmF4.5〜5.6II、絞りF5.6、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、WBデーライト、ISO100
【写真6b】 70〜200mmレンズの70mm側で撮影。きれいな肌色となり、いい調子の描写である。彩度はKissに比べると少し低いが、これは設定が標準だからである。
EOS 10D、EF70〜200mmF4L、絞りF5.6、絞り優先AE、プラス1/3EV、ラージ・ファイン、WBデーライト、ISO100

 つぎはEF-S18〜55mmF3.5〜5.6とEF17〜40mmF4Lでの比較撮影だ。これは撮影条件がシビアでないせいもあるが、彩度を高く設定してあるKiss Digitalのほうが鮮やかに写った。もっとも、露出に1/3段の差があるので、そのせいもあるが、いずれにしてもあまり差はない(写真7a、7b)。この低価格ズームレンズはじつはあまり期待していなかったのだが、案外と言っては語弊があるが、よく写る。

【写真7a】 AEの露出および色具合などをチェックした。露出は1/3EVアンダーだったが、問題はない。彩度は高めだが、露出も影響している。この18〜55mmレンズはかなりいい描写である。
EOS Kiss Digital、EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF5.6、絞り優先AE、ラージ・ファイン、WBデーライト、ISO100
【写真7b】 同じ場所で、10Dと17〜40mmで撮影。露出はぴったりである。彩度はやや低めだが、これは初期設定のためだ。このレンズは開放F値が変わらないことも利点のひとつだ。
EOS 10D、EF17〜40mmF4L、絞りF5.6、絞り優先AE、ラージ・ファイン、WBデーライト、ISO100

 Kiss Digitalと10D比較撮影の最後はホワイトバランスだ。タングステン光で照明されている室内で人物撮影。オートホワイトバランス(AWB)では予想どおりに、両方とも赤みを残した色再現になった。これはタングステン光の雰囲気を残すためと、朝夕の赤い光を忠実に再現するためである。

 そこで、マニュアルホワイトバランスを電灯光に設定してみた。そうすると、Kiss Digitalのほうがやや黄色みが出て、10Dのほうが補正が効いていた。ただし、彩度はパラメータ1で1段上げているKiss Digitalのほうが鮮やかだ(写真8a、8b)。レンズの色再現性も関係しているのだろうが、マニュアルホワイトバランスは10Dのほうが精度が高い感じだ。

【写真8a】 AEの露出および色具合などをチェックした。露出は1/3EVアンダーだったが、問題はない。彩度は高めだが、露出も影響している。この18〜55mmレンズはかなりいい描写である。
EOS Kiss Digital、EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF5.6、絞り優先AE、ラージ・ファイン、WBデーライト、ISO100
【写真8b】 同じ場所で、10Dと17〜40mmで撮影。露出はぴったりである。彩度はやや低めだが、これは初期設定のためだ。このレンズは開放F値が変わらないことも利点のひとつだ。
EOS 10D、EF17〜40mmF4L、絞りF5.6、絞り優先AE、ラージ・ファイン、WBデーライト、ISO100

 Kiss Digitalは彩度などを1段上げたパラメータ1と、10Dと同じ標準設定のパラメータ2とがある。それを同じ被写体で撮り比べるとどうか。大きな差はないが、やはり彩度のちがいははっきりわかった(写真9a、9b)。

【写真9a】 Kiss Digitalのパラメータ設定の比較。これは初期設定のパラメータ1で、彩度、コントラスト、シャープネスが1段づつ高い。たしかに彩度は高いが、大きい差はない。
EOS Kiss Digital、EF70〜200mmF4L、絞りF8、1/400秒、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真9b】 パラメータを2の標準設定にしたもの。こうすると、10Dと同じ設定になる。マニュアル露出で同じ値なのに、こちらのほうが1/3EVぐらいアンダーに見える。彩度のせいだろうか、不思議だ。
EOS Kiss Digital、EF70〜200mmF4L、絞りF8、1/400秒、ラージ・ファイン、AWB、ISO100

 ダイナミックレンジに関しては、いつもより明暗の差の激しい被写体になってしまった。このため、白飛びしているが、この条件ならしかたがないだろう(写真10)。もう少し明暗の差が少ない被写体なら、白飛びは抑えられるはずだ。ダイナミックレンジはデジタル一眼レフとしては標準的な広さだ。

 Kiss DigitalはISO1600まで感度を上げることができるが、これで撮影した場合のノイズはどうだろうか。室内の暗い場所で撮影してみたが、ノイズは気にならなかった(写真11)。ノイズはあるが、これぐらいなら許容範囲である。

【写真10】 ダイナミックレンジをチェックするために、ハイライトとシャドーがある被写体を選んだ。しかし、明暗の差が激しすぎて、このために白は完全に飛んでしまった。このカメラのダイナミックレンジは標準的なレベルだ。
EOS Kiss Digital、EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF5.6、1/500秒、ラージ・ファイン、AWB、ISO100
【写真11】 このカメラの最高撮像感度はISO1600相当まで。ISO3200まで拡張できないのが残念だ。ISO1600ではこのようにノイズはあまり目立たない。
EOS Kiss Digital、EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF4.5、絞り優先AE、ラージ・ファイン、AWB、ISO1600

 また、内蔵ストロボは18mm側で撮影距離1m以内はケラレが生じると説明してある。しかし、約50cmの距離で撮影しても、ほとんどケラレはない(写真12)。ストロボを上げた位置が高いことが生きているのだ。とはいうものの、やはり広角側での近距離撮影はできるだけ避けるべきだろう。

付属のソフトウェア、Canon Digital Solution Ver.6に入っている、File Viewer UtilityでRAW現像をしている画面。設定パラメータが少ないのが残念だ

 さて、Kiss DigitalはRAW撮影もできる。このクラスに必要かどうかは疑問のあるところだが、File Viewer Utilityなどで現像が可能だ。10DのRAW画像も扱える。そこで、むずかしい条件を選んで撮影し、RAW現像してみた。モアレは出ているが、これがまた面白い(写真13)。このFile Viewer Utilityは設定項目がやや少ない。とくに、トーンカーブの補正などが欲しいところだ。


【写真12】 内蔵ストロボは標準ズームレンズで1m以内ではケラレの心配があると説明してあった。そこで、焦点距離18mmで約50センチの距離からストロボ撮影してみた。下部がわずかにケラレているが、実用上問題はない。ストロボの位置が高いおかげだ。
EOS Kiss Digital、EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、プログラムAE、ラージ・ファイン、ストロボ使用、AWB、ISO100
【写真13】 RAWで撮影したものを、露出、コントラスト、シャープネスなどを補正してJPEGに変換したもの。こういうビルではモアレが出るが、かえってこれが面白かった。(クリックすると2,048×1,360ピクセルの画像を開きます)
EOS Kiss Digital、EF-S18〜55mmF3.5〜5.6、絞りF5.6、絞り優先AE、RAW(JPEGに変換)、AWB、ISO100

 では最終的にはEOS Kiss Digitalか、10Dか? Kiss Digitalはよくこの価格でできたと思うぐらいまとまっている。しかし、細かいところを見ていくと、価格相応の部分もある。とくに、動体撮影では10Dとはっきり差が出る。また、ポートレートなども10DにLレンズを組み合わせるのがいい。そのほかの被写体なら、Kiss Digitalでも間に合う。来年はまたどうなるかわからないので、Kiss Digitalを買うなら、早いうちがいいだろう。

□キヤノンのホームページ
http://canon.jp/
□ニュースリリース
http://cweb.canon.jp/newsrelease/2003-08/pr_kissd.html
□関連記事
【8月20日】キヤノン、実売12万円のデジタル一眼レフ「EOS Kissデジタル」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0820/canon.htm
【2月28日】キヤノン、D60後継デジタル一眼レフ「EOS 10D」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0228/canon1.htm

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バックナンバー

(2003年10月6日)

[Reported by 那和秀峻 / モデル 岸 真弓]


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