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Intelが次世代CPU「Prescott」の正体を明らかに




●Pentium 4アーキテクチャをアップデート

 Intelはついに次世代デスクトップCPU「Prescott(プレスコット)」の概要を明らかにした。Prescottは、次世代プロセス技術90nmで製造されるCPUで、今年第4四半期に登場すると見られる。「NetBurst」とIntelが名付けたPentium 4のアーキテクチャを“アップデート”したマイクロアーキテクチャを備える。1MBの大容量L2キャッシュと倍増されたL1キャッシュを備え、クロックは4〜5GHzレンジをターゲットとする。また、IntelはPrescottの次に、来年には次々世代CPU「Tejas(テハス)」が控えていることも、公式に明らかにした。

Prescottのウエーハを示すIntelのルイス・バーンズ(Louis Burns)副社長兼事業本部長(Desktop Platforms Group)は Willamette/NorthwoodとPrescottのキャッシュ容量などの比較 Willamette/NorthwoodからPrescottまでのマイクロアーキテクチャの進化

 Prescottは、Pentium 4をベースとしながらも、単純なプロセス縮小版ではなく、アーキテクチャに改良が加えられている。しかし、アーキテクチャの改良は“アップデート(updated)”であって“拡張(Enhanced)”ではない。この微妙な言い回しは、1年後にさらに大きくPentium 4アーキテクチャを拡張したTejasが控えているからだと思われる。Tejasと比べたら、あくまでも小幅な改良というわけだ。しかし、実際にはPrescottでのアーキテクチャの改良は多岐に渡っていて、小幅な改良とも言い難い。まさに、“アップデート版Pentium 4”だ。


●数多いPrescottの改良ポイント

 Prescottでの改良点は、以下の通り。

■CPUアーキテクチャの改良
○L2キャッシュを1MBに倍増
○L1データキャッシュを16KBに倍増
○トレースキャッシュ(L1命令キャッシュ)を改良
○800MHz FSB(フロントサイドバス)
○Hyper-Threadingの改良(Improved Hyper-Threading Technology)
○13のPrescott新命令の追加(Prescott New Instructions)
○LaGrandeテクノロジサポート
○プリフェッチと分岐予測を改良(Improved Pre-Fetcher & Branch Predictor)
○より進歩した省電力制御の搭載(Advanced Power Management)
○符号付き乗算命令のレイテンシの改善(Improved imul latency)
○ライトコンバイニング(Write Combining)バッファの追加(Additional WC Buffers)

■回路設計の改良
○クロックディストリビューションネットワークの改良(Improved Clock Distribution)
○CADツールの改良による物理設計の最適化での性能向上

■プロセス技術
○90nmノード、50nmゲート長のプロセス
○歪みシリコンの採用
○7層配線、低誘電(Low-k)率(配線間膜)材料

●キャッシュはL1/L2ともに倍増へ

 まず、キャッシュの増量は、CPUの周波数の向上にともない、DRAMメインメモリとのギャップが開くために必須となる。DRAMアクセスレイテンシの増大を、キャッシュで隠蔽するためだ。

Prescottで加わる13の新命令。付加的な命令追加が主体

 ここで目立つのは、今回Intelは、L2だけでなくL1も増量したこと。Intelは伝統的に小L1キャッシュ+比較的大容量のL2キャッシュの構成を取る。なかなかL1は増やさないが、これは高周波数時にもL1のレイテンシをミニマムに抑えるためだ。今回L1も増量したことは、内蔵SRAMもそれだけ高速化したことを示している。また、それに合わせてトレースキャッシュも改良されたようだ。

 Hyper-Threadingの改良については、詳細は明らかにされていない。しかし、Hyper-Threadingの性能のボトムラインをアップする改良になるという。13のPrescott新命令は図の通り。Hyper-Threadingのために、スレッド間の同期を取るための命令が追加されている。

 Intelのセキュアコンピューティングアーキテクチャ「LaGrande」のサポートは、思ったより早かった。詳細は明らかにされていないが、説明を行なったIntelのJustin Rattner氏(Senior Fellow and Director, Microprocessor Research Labs)によると「特定のプロセスが他のプロセスから保護された状態で走る、セキュアトランザクションが可能になる」という。となると、Prescottは保護された実行モードを持ち、バーチャルセキュアメモリ空間を備えると見られる。PrescottでLaGrandeを実装するということは、Intelがすでに2年以上前から、セキュアコンピューティングのプランを具体化させていたことになる。

 パワーマネージメントの改良は、新たな機能拡張というよりPrescottでは必須だったと思われる。というのは、今回の90nmではトランジスタの漏れ電流(リーク)が増大してしまうからだ。トランジスタ自体の、漏れ電流の低減策が遅れているため、特に高速動作するCPUでは、パワーマネージメントを強化しなければならない。

●プロセス技術も高周波数化に向けてチューン

 クロックディストリビューションネットワークの改良は、IntelがCPUアーキテクチャをアップデートする際に用いる標準的な手法のひとつ。これにより、クロックスキューを抑え、より高周波数化が容易になる。

 面白い改良では、CADツールの向上による物理設計の改良がある。データフローの方向に合わせてツールがブロックの配置を最適化して、パスの短縮を図っているようだ。CADツールのインテリジェンスを向上させることでも、性能の向上を図ることができるというわけだ。

 Prescottは、Intelの90nmプロセス「P1262」で製造される。このプロセスでは、トランジスタのゲート長はノードの90nmよりもずっと小さく50nmだ。ゲート長を短くするのは、トランジスタをより高速にするためだ。これによって、Intelのプロセスは移行の度により高速化されてきた。

クロックディストリビューションの比較。Prescottの方がスキューがずっと抑えられている 90nmプロセスのトランジスタの構造

7層の90nmプロセスの断面図 Intelの内製CADツールの改良により性能が向上する

 しかし、0.13μm→90nmでは、過去3プロセス世代と比べると、ゲート長の短縮率はずっと落ちている。これは、物理的な限界に近づいているためだ。そのため、Intelは今回の90nmでは、「歪みシリコン」技術を採用するようだ。これはトランジスタのチャネル領域のシリコン膜に歪みを加えて、チャネルの移動量を向上させる技術だ。ようは、トランジスタの性能をさらにブーストする技術で、これにより性能向上カーブを維持しようというわけだ。

 こうしてみると、Prescottはマイクロアーキテクチャ、回路設計、プロセスの全領域でかなりの改良が加わる。その結果、高速化と高効率化が進むと見られる。まず、周波数は今までの向上カーブを維持できる可能性が高い。0.13μm版Pentium 4(Northwood:ノースウッド)の上限が3.2GHzだとすると、Prescottでは、その1.6倍の5.2GHzは達成できることになる。

 さらに、キャッシュの増量やアーキテクチャ改良で、クロック当たりの性能の向上もある程度は図られることになる。これは、まだどの程度になるかはわからない。特に、Hyper-Threading性能の改良などは、まだ不鮮明だ。だが、いずれにせよPrescottの1年後には、Hyper-Threading性能の向上にフォーカスすると推測されるTejasが控えている。

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(2003年2月20日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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