会場:San Francisco The Moscone Center 展示ホールの主役、Apple Computerブースは、例年どおり南側ホールのほぼ中央に位置する。ブースのデザインは従来どおりで、シアター形式のプレゼンテーションステージを中央に配し、周囲三辺に下からライトアップした展示台を用意。製品やソフトウェアごとに、来場者が自由に操作できるように設置してある。今回もっとも多くスペースを割いていたのは、2機種の新PowerBook G4。さらにiLifeが続き、Safari、Keynoteの順になる。しかしソフトウェアはすべてのマシンにひととおりインストールしてあるため、ゾーンを問わず試してみることは可能だ。 展示ホールレポートの第2弾は、このApple Computerブースの様子のほか、9日(現地時間)に各製品担当者によって行なわれた、日本から訪れたメディアとのグループ・ブリーフィングで得られた情報をまじえて製品の最新情報をお届けする。 ●“光るキーボード”はパテント取得済み 17型PowerBook G4で気になる部分といえば、やはり周囲の明るさを感知して発光するキーボードの仕組み。国内インタビューでも触れられていたようにケーブルは板状に並んでいて、青色LEDを光源とする明かりをレーザーエッジからキートップに照射するようになっている。 一週間ほどまえ、Apple Computerが取得したパテントのひとつにPC内部から光ファイバーを使ってPC本体の色を変える技術があるという報道がなされた。それがこれに該当するのか確認してみたところ、「PowerBook G4には数多くの自社パテントが使われている」と、はっきりと言明こそしなかったものの、どうやら間違いはない模様だ。だとすると、他社が同じ発光する機能を実現しようとした場合、この仕組みとは異なる方法でキーボード(あるいは本体)の発光を実現しなければならないことになる。 また、12型PowerBook G4でこのギミックが採用されなかった理由についてたずねたところ、純粋にマーケティング上の理由によるものという答えが返ってきた。価格差のある2機種間で、製品の価格帯に見合う付加価値を用意したというわけである。キーボードの発光に要するコスト自体はさほどでもなく、1インチ厚の17型に搭載されていることからも、技術的な面だけなら12型に搭載することに問題はないという。 国内ユーザーにとって気になるJISキーボードとASCIIキーボードの換装だが、現行のPowerBook製品と同様、AppleStoreによるBTOでは選択肢が提供される。残念ながら、ユーザーレベルでキーボードを交換できるようにはなっていないということだ。
●2機種間で異なるメモリの増設方法 それぞれの機種のメモリ増設についても確認してみた。12型の場合128MBのビルトインに加え、メモリスロットがひとつ用意されている。標準構成ではここに128MB DDRが刺さっていて、計256MBとして出荷される。メモリ増設を行なう場合、この128MBを取り外したうえで256MB、512MBなどのDDRメモリを追加することになる。現在入手できるのは512MBが上限だが、1GBモジュールの利用も問題なく計1.12GBまで搭載できるという。 17型の場合ビルトインメモリはなく、メモリスロットが2つ。その1つに512MB DDRが刺さっているのが標準構成だ。12型に比べてメモリ増設にあたっては無駄がない。こちらも1GBモジュールを利用可能なため、最大2GBのメモリ搭載を実現できることになる。 メモリスロットは、12型の場合本体底面ほぼ中央のカバーを外して行なう。カバーのねじ止めはプラスねじ。17型のメモリスロットはバッテリの下に位置し、こちらもプラスねじを使えばカバーが外せる。いずれもユーザーレベルで増設が可能だ。
●旧モデルはAirPort Extremeカードに非対応 AirPort Extremeカードが17型には標準搭載、12型ではオプションとなっているのは既報のとおり。12型では専用スロットがバッテリ下部に位置し、ユーザーレベルでも取り付けが可能となっている。 既存のTitaniumやiBookでIEEE 802.11gの54Mbpsを利用する方法をたずねたところ、CardBus対応のPCカードスロットを持つTitaniumではサードパーティ製のPCカードを使えば利用可能という答えが返ってきた。 AirPort専用のスロットしか持たないiBook(iMacやPowerMac G4など既存のデスクトップ製品を含む)では、従来どおりIEEE 802.11bの11Mbpsを利用することになる。そのため現行のAirPortカードは継続販売されるということだ(AppleStoreでは価格改定済み)。現行のAirPortカードと同一形状のExtreme対応カードが同社から提供される予定は残念ながらない。 AirPortの初期モデルが発表されたときはルーセントの技術であることが強調されたことがあったため、802.11gでのパートナーを確認したところ、コンポーネントサプライヤーの名前は公開しないというコメントになった。 ベースステーションが2モデルになった点については「特に日本などブロードバンドが普及している地域では、内蔵モデムを取り去ることによりコストダウンができる。それに加えて拡張アンテナに対応する付加価値モデルもラインナップした」とのこと。その拡張アンテナ「ExtendAIR」シリーズをいち早くリリースしたDr.Bottとは、開発段階から密接な関わりがあるようだ。 現状一社が独占している理由をたずねたところ、技術的な背景に加えFCCを通過させるための法的な手続きにも長けているという点で信頼できる企業のためパートナーとして選んだという答えが返ってきた。
既存のTitaniumも継続販売されるため「15型モデルのアップデートを忘れてはいないか?」と質問をしてみたところ、いつもどおり将来の製品計画に関する話については明確な回答はしないということ。ただし、該当するレンジにおいてTitaniumがいまだに十分な競争力を持つ製品と位置づけていると強調したことからも、このクラスがラインナップから消えることはなさそうで、アップデートには期待がもてそうだ。 ●24時間で約30万コピーがダウンロードされた「Safari」 7日(現地時間)、ベータリリースが開始された「Safari」は、開始後24時間で約30万コピーがダウンロードされた。この数字は、これまで最高だったiTunesの初動を上回るペースだという。もちろん日本語ページも表示可能だがメニュー画面などのローカライズはまだ行なわれていない。 Apple製のWebブラウザといえば懐かしの「Cyberdog」が存在するわけだが、その技術や考え方がSafariにも生かされているのかたずねたところ、答えは明確に「No!」だった。同じオープンソースであるChimera(Geckoエンジン)を採用しなかった理由については、パフォーマンスをはじめとして、KHTMLに明らかな優位性を見いだしたからだという。 Safariはインストールさえしてしまえば、自動的にInternet Explorer(以下、IE)のブックマークなども利用できるようになる。ただし現時点では日本語のブックマークなどは、文字化けしてしまう。これについてはIEがUnicode対応アプリケーションでないことを原因のひとつにあげているが、ベータ期間中にローカリゼーションとあわせてSafari側で対応していくことになるという。また、Safariに統合されているGoogleを他の検索エンジンに変更することはできないということも確認できた。 気になるのは、ベータ期間を終えると「Safari」がMac OS Xの標準ブラウザになるのかという部分である。この点については未定という回答で、ベータ期間が終了した時点で、利用者が選択する問題でもあると付け加えられた。Safari完成後にIEのバンドルがすぐになくなるということはない模様である。 発表と同時に製品発売となった「Keynote」。基調講演ではジョブズCEOが「私のために作られた」とコメントして会場の爆笑を誘った。しかし、実際のところはジョブズCEO用に作ったものを製品化したわけではなく、当初から製品化を目指して開発が始まっているという。また、ジョブズCEOによるMacworldでのベータテストは、ちょうど1年前のSan Franciscoから始まっていた。ちなみに、情報の秘匿という点でも優秀? なベータテスターであったジョブズCEOからのフィードバックが生かされた代表的な機能は、テキストやグラフィックのアライメントガイドの採用だそうである。
●QuickTime6.1による3GPPのデモをFOMA端末で実施
Appleブース内の一角では、QuickTime 6.1のプレビューが行なわれていた。ただしプレビューだったのは会期三日目の午前までで、同日午後にはMac OS Xのソフトウェアアップデート機能を使った正式版の配信が始まってしまった。このエリアでデモされていたのは、MPEG-4による動画再生と、QuickTime 6.1での3GPPへの対応である。 実際のデモは、NTTドコモのFOMA端末「N2051」を使って3G携帯上でのクリアなMPEG-4動画再生を来場者に見せ、QuickTime 6.1でこのCodecが出力できるという解説を加えるといった内容。ちなみに、QuickTime 6.1の配布は始まったが、3GPP対応のCodecは今回のアップデートには含まれておらず、本体とは別に追って提供される模様である。 そのほか、ブースや会場の様子は写真を中心にお伝えしよう。
□Macworld Conference&Expoのページ(英文) (2003年1月11日) [Reported by 矢作晃]
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