AMDが10月にAthlon XP 2800+を、Intelが11月にHyper-Threadingテクノロジに対応したCPUをリリースするなど、AMD、Intel両CPUメーカーの競争は激しくなる一方だ。こうした両者の激しい競争によりPC向けCPUの市場は活性化しており、ユーザーとしても選択に悩むところだろう。 そこで今回は、2000年3月以降にリリースされた1GHzを超えるデスクトップPC向けのCPUを集め、ベンチマークテストを行なった結果をお伝えする。CPUごと、可能な限り同一の環境を利用して行なっているので、CPUを購入する時、あるいはCPUを基準にPCを選択する時などの参考として欲しい。
現在1GHz以上のデスクトップPC向けのCPUをリリースしているCPUベンダは、IntelとAMD、さらにはVIA Technolgoiesの3社となる(正確にはモトローラがMacintosh向けにリリースしているが、ここではWindowsベースのPCに限るため、これはのぞいておきたい)。 一番最初にリリースされたギガヘルツのCPUは、2000年の3月にAMDがリリースしたAthlon 1GHzだ。このAthlon 1GHzは、Magnolia(マグノリア)というコードネームが付けられた製品で、IntelがリリースしようとしていたPentium III 1GHz]に2日ほど先だって発表された(ちなみに、MagnoliaはAMDのFab25があるオースティンの喫茶店の名前だそうで、AMDの社員がよく通っているらしい)。 その後、両者とも徐々にクロックをあげてきており、Intelはより高クロックのPentium III、さらには2000年11月のPentium 4をリリース。現在ではPentium 4の最高クロックは3.06Hzに達し、Hyper-Threadingテクノロジへの対応もすんでいる。 AMDもMagnoliaの後、ThunderbirdコアのAthlon、さらには2001年10月にはPalominoコアを採用したAthlon XP、そして今年には製造プロセスルールを0.13μm化したThoroughbredコアのAthlon XPをリリースし、現在では2.25GHzのAthlon XP 2800+を発表し、今に至っている。 現時点でパフォーマンスPCのCPUを選択する場合、IntelのPentium 4か、AMDのAthlon XPかという状況になっており、それ以外の選択肢は実質市場に存在していないといえるだろう。 ★Intel Pentium 4プロセッサ IntelのPentium 4にはパッケージで2種類、コアで2種類がある。パッケージで言えば、サブ基板にOLGAが搭載されたPGA423のものと、μFCPGAのmPGA478の2つがある。コアでいえば、0.18μmプロセスルールで256KBのL2キャッシュがオンダイのWillametteコアと、0.13μmプロセスルールに微細化し512KBのL2キャッシュがオンダイとなっているNorthwoodコアがある。現在は、mPGA478のNorthwoodが主流になっており、PGA423やmPGA478のWillametteコアの姿はほとんど見られなくなっている。 なお、Northwoodコアにはシステムバスの違いで533MHz版と、400MHz版があり、533MHz版を利用する場合には533MHzをサポートしたチップセットが必要になる。Intelのチップセットで言えば、Intel 850E、Intel 845G/GE/E/PE/GV、E7205が必要になる。 【Pentium 4の製品リスト】
★Intel Pentium IIIプロセッサ IntelのPentium IIIは、1GHz以下の製品も入れると、非常に膨大なバリエーションがあるが、1GHz以上というくくりにすると、パッケージで3種類、コアで3種類の製品がある。 パッケージとしてはFCPGA、FCPGA2、SECC2の3種類があり、コアとしては0.18μmプロセスのCoppermine、0.13μmのTualatin-256Kがある。いずれもL2キャッシュは256KBで、2つのコアにパフォーマンスでの違いはほとんどない。 なお、サーバー向けのPentium IIIとしてPentium III-SというL2キャッシュが512KBのモデルが用意されている。1.40GHz、1.26GHz、1.13GHz、3製品が用意されており、L2キャッシュが256KBのPentium IIIに比べて高いパフォーマンスを発揮する。 なお、すでにPentium IIIは市場から消えつつあり、値段もPentium 4より高く設定されていることもあり、あまり積極的に選択する理由はないが、サーバー用途やアップグレード用として未だに販売はされている。 【Pentium IIIの製品リスト】
★AMD Athlon XP/Athlonプロセッサ 1GHz以上のAMD Athlon XP/Athlonプロセッサは、コア4種類、パッケージは大きく分けると3種類だが、実質2種類となっている。コアとしては0.18μmのK75、Thunderbird、Palomino、0.13μmのThoroughbredの4つがあり、パッケージとしてはSlot Aのモジュール、CPGA、OPGAの3種類があるが、CPGAとOPGAはピン互換でほぼ同じパッケージであると考えてよい。 Athlon XPでは、製品のグレード表記にクロックではなく、AMDが自社製品内で相対化した“モデルナンバー”が利用されている。本記事においてもグレード表記はモデルナンバーで統一したい。 【Athlon XP/Athlonの製品リスト】
バリューPC向けのCPUも、昨年の半ば頃から1GHzを超えるようになり、すでにローエンドのCPUであるCeleronやDuronでさえ、市場に出回っているのはほとんど1GHzを超える製品となっている。 特に、IntelのCeleronは、すでに2GHzを超えており、最高クロックで2.2GHzを達成している。これに対して、AMDのDuronは1.3GHzが最高クロックで、その後新しいクロックのCPUは登場していない。これは、AMDがAthlon XPの低いモデルナンバーのグレード(例えば2000+以下のモデルナンバー)をバリューPC向けにすると戦略を転換したためで、今後もより高いクロックのDuronがでる可能性は低い。そういう意味では、CeleronのライバルはAthlon XPの低いモデルナンバーの製品であると言えるだろう。 ★Celeron IntelのCeleronプロセッサは、1.70GHz以上のクロックがNetBurstマイクロアーキテクチャ、つまりPentium 4の技術を利用して、システムバスを400MHz、L2キャッシュを128KBに制限したバージョンとなっている。1.90GHzまでは0.18μmの製造プロセスルールを利用してWillamette-128Kコアを利用していたが、現在は0.13μmのNorthwood-128Kコアに変更されている。 また、1.40GHzまでは、P6コアの0.13μm世代であるTualatin-256Kが利用されていた。システムバスは100MHzで、L2キャッシュは256KBになっていた。なお、Celeron1GHz、1.1GHzに関してはこのTualatin-256Kと、0.18μmプロセスのCoppermine-128Kコアの両方のバージョンが存在しており、前者の方にはクロックの後に「A」という文字が付加され、区別されている。 【Celeronの製品リスト】
★Duron AMDのDuronプロセッサは、Athlon/Athlon XPのL2キャッシュを64KBに削り、システムバスのクロックを200MHzに抑えたバリュー向け製品だ。1GHz以上のDuronは、SSE命令に対応したMorganコアになっており、1.3GHzまでリリースされたのだが、すでに述べたようにAMDが戦略を変更したため、その後新しいDuronはリリースされていない。 【Duronの製品リスト】
それでは、ベンチマークの結果を公開しよう。利用したベンチマークは普段筆者が利用しているベンチマークで、BAPCoのSYSmark2002のOffice ProductivityとInternet Contents Creation、FutureMarkの3DMark2001 Second Edition、id SoftwareのQuake III Arena、NovalogicのComanche4、MPEGエンコーダソフトのTMPGEnc Version 2.57を利用してMPEG-2変換のフレームレート測定、WebMark2001のB2Cテスト(Webブラウザで商用サイトに接続した時のパフォーマンス)という7つのテストを実行した。テスト環境は以下の通りで、結果は以下のグラフと、別ページのリンクに掲載してある。 グラフは、スコアのよかった順に並べ替えてあり、基本的には上にあればあるほどよい結果という意味になっている。今回はレビューではないので、特に論評などはしないが、CPUを購入する際にコストパフォーマンスを比較する場合や、パフォーマンス重視でCPUを購入する場合などに役立ててほしい。 ■ベンチマークテスト環境
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【グラフ1】SYSmark2002/Office Productivity | 【グラフ2】SYSmark2002/Internet Content Creation |
【グラフ3】TMPGEncフレームレート | 【グラフ4】3DMark2001 SE/1,024×768ドット/32bitカラー(DXTC有効) |
【グラフ5】Quake III Arena/1,024×768ドット/32bitカラー | 【グラフ6】Comanche 4/1,024×768ドット/32bitカラー |
【グラフ7】WebMark2001/B2C |
【グラフ8】SYSmark2002/Office Productivity | 【グラフ9】SYSmark2002/Internet Content Creation |
【グラフ10】TMPGEncフレームレート | 【グラフ11】3DMark2001 SE/1,024×768ドット/32bitカラー(DXTC有効) |
【グラフ12】Quake III Arena/1,024x768ドット/32bitカラー | 【グラフ13】Comanche 4/1,024×768ドット/32bitカラー |
【グラフ14】WebMark/B2C |
●難しいCPUの買い時だが、基本は「欲しいときに買う」
さて、今年は年明けからIntelがNorthwoodコアのPentium 4をリリースし、年末は11月にリリースされたHTテクノロジに対応したPentium 4 3.06GHzの話題でいっぱいと、Intelに始まり、Intelに終わった年となってしまった。
筆者の個人的な感想(いや願望)としては、やはり元の予定通りAMDがAthlon 64を出してくれていたらなぁということにつきるような気がする。すでに何度もイベントレポートなどでも書いてきたように、Athlon 64はDRAMコントローラを統合することで、メモリレイテンシを劇的に削減することができるので、高いパフォーマンスを発揮する可能性が高い。
何度もこの連載で書いてきたが、CPUがこれだけ安価になり、かつ高いクロックのCPUがかつてないペースで次々と登場するようになったのも、AMDがIntelに対抗する製品を出し続けてくれたからだ。
“競争があるところに革新あり”がこの業界の常識だが、現在のCPUはまさにそれを地でいっている。そういう意味で、Athlon 64が来年に延びてしまったのは残念で仕方がない。
別にAMDがAthlon 64を出せなかったからというわけではないだろうが、IntelのPentium 4 3.06GHzは初値で8~9万円前後と、以前の価格に戻りつつある。そういう意味でも、是非とも来年はAthlon 64のリリースと普及に全力を挙げていただきたい。そうなれば、来年は今年とはまた違った展開が見えてくると思う。
さて、Intelは来年の第2四半期にシステムバスを800MHzに引き上げ、HTテクノロジを3GHz以下のクロックでも実現したPentium 4を投入する。そうした次世代製品が目の前に見えているだけに買い時が難しいのも事実だ。
ただ、筆者としては、時間がたてばより高性能でより安価な製品がでるのは当たり前で、今ほしいのなら待つ必要ないと考えている(以前、Baniasを待つかどうかの話の時も同じ話をしたと思う)。
というのも、きっと来年の第2四半期になれば、「今度は2003年の末にはPrescottがでるので……」という話を始めているに違いないからだ。これを繰り返していては、いつまで待ってもCPUを買えないことになる。
そういう意味では、ボーナスがでて、懐具合も暖かくなっているであろう年末のこの時期というのが、1つの買い時と言えるのではないだろうか。ぜひそうした時に本記事が役に立つことを願って、今年最後のレポートのまとめとしたい。
□バックナンバー(2002年12月27日)
[Reported by 笠原一輝@ユービック・コンピューティング]