Intelブランドで登場したUSB接続顕微鏡の実用性は? |
QX3 Microscopeの顕微鏡本体。ブルーのトランスルーセント色を採用しているので、内部もよく見える |
Intelが顕微鏡?と怪訝に思われるかたもいるだろうが、今回紹介する「Intel Play QX3 Microscope」(以下、QX3 Microscope)は、Intelが米国の有名玩具メーカーMattelと共同で開発したIntel Playブランドの第一弾となる製品である。開発表明のリリースは'99年2月に出ているのだが、実際に製品が出荷されたのは'99年秋のようである。
Mattelといえば、バービー人形などで名高い玩具メーカーだが、気軽にPCと接続して遊べるオモチャを提供したいということで、Intelと共同で製品を開発することになったようだ。したがって、Intel Playブランドで販売される製品は、基本的にオモチャという位置付けであり、性能や実用性を重視して設計されているわけではない。その代わり、価格は安い。Intel Playブランド製品では、QX3 MicroscopeのほかにUSB経由で接続するデジタルカメラIntel Play Me2Camという製品が存在するが、どちらも99ドルという価格で販売されている。
現在、Intel Playブランドの製品は、インテルジャパンからは発売されておらず、秋葉原のショップで並行輸入品のみが販売されている。販売価格は米国での価格よりもやや高め(編集部が購入した時点で税込み19,740円)に設定されているが、為替リスクや送料などを考えるとある程度納得できるだろう。
しかし、基本的にはオモチャとはいえ、PCに接続して拡大画像を表示できる顕微鏡が2万円以下で手に入るというのはなかなか魅力的だ。個人的な利用もそうだが、学校などで利用したいと考えている人も少なくないだろう。元科学大好き少年である筆者にとっても、なかなか興味をひく製品である。そこで、どの程度使えるものなのか、さっそく検証してみることにしよう。
●導入は非常に簡単で、操作もわかりやすい
QX3 Microscopeは、USB経由でPCに接続して利用する顕微鏡であり、単体で利用することはできず、必ずUSBポートを備えたPCが必要となる。パッケージはカラフルで、中身が一目でわかるように透明のプラスチックで覆われており、いかにもオモチャらしい雰囲気だ。パッケージには、顕微鏡本体(スタンドと分離できる)およびCD-ROM、マニュアル、サンプルの試料、試料作成用の道具(小さなプラスチック製の瓶やスポイト、ピンセット、シャーレ)が含まれている。
顕微鏡本体は、ブルーのトランスルーセントで、中が透けてみえる。本体の上部にはCCDを制御する回路があり、なかなかサイバーな雰囲気を醸し出している。ほとんどの部分がプラスチックで構成されているので、顕微鏡本体、スタンドともに重量はかなり軽く、質感はいかにもオモチャっぽい。また、全体に丸みをおびたデザインが採用されており、小さい子供が扱っても怪我などをしないように配慮されているようだ。
いかにもオモチャらしい派手なパッケージ | パッケージには、顕微鏡本体以外にソフトとマニュアル、サンプルの試料などが含まれている |
QX3 Microscopeを利用するには、まずCD-ROMに収録されている専用アプリケーションソフトを導入する必要がある。もちろん、説明などはすべて英語だが、アプリケーションソフトの導入はインストーラの指示に従うだけなので非常に簡単だ。なお、ハードディスクには、最小インストールで約71MB、標準インストールで約99MB、フルインストールでは約160MBの空きが必要になる。
付属アプリケーションの基本画面。照明方法や静止画・動画の撮影のコントロールを行なえる |
光学顕微鏡は、試料に近い位置にある対物レンズと眼で覗く位置にある接眼レンズから構成されており、「顕微鏡の倍率=対物レンズの倍率×接眼レンズの倍率」という関係になっている。接眼レンズを変えずに、対物レンズを3種類か4種類切り替えられるようになっているのが一般的だが、QX3 Microscopeでは、鏡筒(接眼レンズがはめ込まれている筒のこと)自体が回転するようになっており、接眼レンズと対物レンズがセットで切り替わる。倍率は、10倍、60倍、200倍の三段階から手動で選択する。数万円程度する一般の光学顕微鏡と比較すると最高倍率がやや低いが(通常の光学顕微鏡では400倍から800倍程度まで拡大できる)、倍率を高くするとそれだけ暗くなることやフォーカス合わせが難しくなることを考えると、200倍程度のほうが扱いやすい。
また、よくできていると感心したのが、照明を切り替えられることである。観察したい試料の種類に応じて、試料の上から照らす方法と、下から照らす方法を選択できるので、最適な条件で観察することができる(なお、下から照らす方法は、スタンドに顕微鏡を装着している場合のみ選択可能)。
12種類のサンプル試料が付属している |
なお、プレパラート(試料を挟んだガラス板)を押さえるための金具が試料台に用意されていないため、試料が動きやすい点がやや気になったが、子供の安全を重視して、金属製のパーツは手の触れるところには、一切使わないというコンセプトに基づいて設計されているためなのであろう。
●付属アプリケーションの出来も秀逸
PCに接続する機器は、いくらハードウェアがよくできていても、それを利用するアプリケーションが使いにくければ、結局使いにくいものになってしまう。QX3 Microscopeは、そのあたりもよく考えられている。付属のアプリケーションは、単に顕微鏡で拡大された画像を見て、撮影するだけのソフトではない。撮影した画像に文字を追加したり、さまざまなエフェクト(万華鏡のようにするとか、波状に変形するなど)を加えることができるほか、動画や静止画から構成されたスライドショーを作成することも可能だ。画像は、JPEG形式またはBMP形式で保存することができる(動画はAVI形式)。なお、静止画の解像度は512×384ドット、動画の解像度は320×240ドットに固定されている。また、あらかじめ設定した間隔(10分毎や1時間毎など)で、自動的に撮影を繰り返すインターバル撮影機能もある。塩の結晶が成長していく様子や受精卵の変化など、時間のかかる現象を定期的に観察することもできる。
メインメニュー。左に並んでいる4つのボタンは、上から「paint」(レタッチ機能)、「f/x」(エフェクト機能)、「show」(スライドショー機能)、「print」(印刷機能)に対応している | レタッチ機能を利用すれば、画像に文字や手書きの線などを自由にいれることができる | エフェクト機能では、さまざまな効果を画像に加えることもできる |
●本体をスタンドからはずすことで、いろんな物を観察できる
顕微鏡本体をスタンド部分から取り外して利用できることも特徴である。試料台に乗らないような大きな物体でも、顕微鏡本体を手に持つことで、観察することが可能になる。200倍ともなると、手持ちではぶれてしまうが、10倍や60倍なら十分快適に観察できる。大きな虫を観察したり、マザーボードに実装されている細かなチップ部品を見るといった用途にはぴったりだ。
顕微鏡本体上部には、シャッターボタンの役割を果たす緑色のボタンが設けられている。PCの画面を見ながらボタンを押すだけで、画像を取り込むことができるので便利だ。
スタンドから顕微鏡本体をはずして、手に持って利用できる | 本体上部に設けられている緑色のボタンを押すことで、画像を撮影できる |
●子供のクリスマスプレゼントにもお薦め
QX3 Microscopeは、知育玩具としては非常によくできた製品である。もちろん、光学系の精度やレンズ性能などは本格的な光学顕微鏡と比べると見劣りしてしまうが、だからといって役に立たないということはない。むしろ予想していたよりも、しっかりした性能を持った製品だと感じた。撮影サンプルをいくつか載せておくので、画質などは各自判断してもらいたいが、用途によっては、十分実用的に利用できるだろう。
ハードウェア、ソフトウェアとも子供が利用することを前提に設計されているので、小学校低学年程度の子供にも、安心して使わせることができる。ソフトウェアは英語表記になっているが、アイコンを多用しているので、英語が読めなくてもそれほど気にする必要はないだろう。小中学生のお子さんをお持ちの方で、クリスマスプレゼントを何にするか決めかねているのなら、QX3 Microscopeをプレゼントしてみてはどうだろうか。身の回りのものを顕微鏡で拡大してみると、なかなか新鮮な風景が広がる。また、マザーボードやノートPCをハンダごてを使って改造するようなパワーユーザーなら、ピンがハンダでブリッジしていないかどうかを確認するためのツールとしても役にたつだろう。日本語版の発売も期待したい。
マツの茎の断面(60倍) | マツの茎の断面(200倍) | アリの触角(200倍) |
ノートPC用SO-DIMM(10倍)(注:SO-DIMMの厚みのため、フォーカスがきちんと合っていない) | ノートPC用SO-DIMM(60倍)(こちらは比較的フォーカスが合っている) |
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[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]