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元麻布春男の週刊PCホットライン

「Sound Blaster Live! PLATINUM」
~ハイエンドサウンドカードの意味~



■Sound Blaster Live!シリーズの最上位機

「Sound Blaster Live! PLATINUM」
 Sound Blasterといえば、PC用サウンドカードの代名詞とでも呼ぶべき存在だ。その最新作にして、最上位モデルが、Sound Blaster Live! PLATINUMである。用いているサウンドプロセッサ自体は、前シリーズと同じEMU10K1で、サウンドカードとしての基本は変らないが、自社製スピーカー用の専用デジタルインターフェイスが加えられたこと、付属のソフトウェアがLive!Ware 2.0から3.0にバージョンアップしている点が、主な相違点となっている。

 Live!シリーズに共通する特徴は、サウンドプロセッサのEMU10K1を用いて、各種のエフェクトを駆使できる点にある。たとえば、CDの再生にリアルタイムで特殊なエフェクトを加える(これにどのくらいの実用性があるかは疑問だし、おそらく多くのアーティストは自分の作品に後から処理が加えられることは望まないだろう)、DirectSound3Dを拡張したEAXによる3Dポジショナルオーディオを用いたゲーム体験などが、その例だ。また、このPLATINUMならではの特徴として、MIDI I/O、S/PDIFデジタルI/O(光および同軸)、ヘッドフォン出力、マイク入力といったコネクタ類を、使いやすいようにPCの前面に引き出すLive!DriveIIが添付されている、ということも挙げておこう(*1)。いずれにしても、極めて多機能で優秀な製品には違いない。

■ハイエンドサウンドカードの意味

 だが、本当にこの製品を手放しでほめてよいのか、というと、どうも筆者には心にひっかかるものがある。その理由の一つは、本製品の価格だ。一般的なサウンドカードが数千円で買える時代に、実売価格は2万円台後半とはいえ、標準価格で3万円以上するサウンドカードの価値を正当化することは容易ではない。

 逆にいえば、サウンドカードに3万円も払うのは、一体どんなユーザーなのだろうか、ということに疑問を感じる。これは、必ずしもSound Blaster Live! PLATINUMが価格分の価値がない、ということを意味しているのではない。この価値を必要とするユーザー像が見えにくい、ということを言いたいのである。どうやらLive!DRIVE IIの存在から言って、サウンドクリエイター指向の強い製品であるということは言えるだろう。だが、本製品は明らかにプロフェッショナル向けの、ハードディスクレコーディングを目的とした製品ではない。MP3のエンコーダーや、プレーヤーのLAVA!、さらにはバンドルされているゲームなど、添付されているアプリケーションを見れば、本製品が一般コンシューマー向けであることは明らかだ。

 しかし、一般コンシューマーで、サウンドクリエイトを志すユーザーは極めて少ない。もちろん、一般のユーザーでも、MP3のエンコーディングをしたり、さまざまな音源をMDに出力したり、といったサウンド処理は行なうだろうが、こうした単純な作業なら、ずっと安価なサウンドカードで可能なのである。

 本製品は、こうした安価なサウンドカードで可能な範囲を越えた能力を持っているが、それを必要とする人はかなり限定される。サウンドに限らず、どんな表現分野であろうと、作り手と受け手は、圧倒的に受け手の方が多い(だからこそ、ミュージシャンや映画監督、小説家などといった職業が成立する)。プロではないハイアマチュアの存在を否定するものではないが、それが対象では、かなりニッチな製品になってしまう(唯一の例外はカメラだろうか)。ISA時代末期のSound Blaster AWEシリーズにも感じたことだが、ユーザー数の少ない、層の薄いところにフォーカスした製品のように思えてならない。

 最近、サポートしたサウンドカードが増えているマルチスピーカー機能にしても、本当にPCに2台を越えるスピーカーを接続しているユーザーはどのくらいいるのだろう。住宅事情の悪いこの国で、4~5個のスピーカーを置くのは、小型のサテライトスピーカーと言えど難しい。部屋数が少なく狭いため、必然的に家具が多くならざるを得ない部屋では、スピーカーを置く前に、スピーカーケーブルの引き回しに苦労させられる。隣近所に迷惑をかけない、という点からも、サブウーファーをズドンと鳴らすのは、ヒヤヒヤものである。マルチスピーカーよりは、ヘッドフォンによるバイノーラルサラウンドの方が、わが国向きではないだろうか。

 その点、Environmental Audioの設定には、ヘッドフォンというオプションも用意されているのだが、もう一歩進めてほしい。たとえばソフトウェアDVDプレーヤーを用いた際に、EMU10K1を用いてヘッドフォンによるバーチャルドルビーデジタルやバーチャルdtsが実現できないものかと思う(もちろん、両方ともちゃんと認証を得て)。PCでDVD-Videoを楽しむ人口がどれくらいかはわからないが、ハードディスクレコーディングを行なうユーザーよりは、何倍も多いハズだ。


■機能強化よりもドライバの確実なアップグレードを

 実は、今回用いたSound Blaster Live! PLATINUMは、PC Watch編集部から借用したものなのだが、筆者自ら購入したものとして、Sound Blaster Live!と、Sound Blaster Live! Gamer Edition も持っている。これらを所有するユーザーとして思うのは、Live!Wareなんて要らないから、ドライバだけ定期的に無償でアップデートしてほしい、ということだ(現時点では、英語版のみドライバだけの提供が行なわれているようだが、差分の提供であることを考えると、日本語パッケージに組込むことには抵抗感がある)。

 Live!Wareのバージョンが上がるたびに、機能が増えているのは事実だろうが、少なくとも筆者はこうした新機能を必要としない(たとえば筆者にとって望ましいMP3プレーヤーは、シンプルでデスクトップの邪魔にならないものだ)。旧バージョンのLive!Wareでさえ、カスタムインストールを選んで最小限のインストールしかしないくらいである(勝手にタスクトレイに入りこむアプレットは嫌いだ)。差分でも良いから、ドライバのみの最小限のアップデートを日本でも実施してほしいと感じるユーザーは、かなり居ると思うのだが。

編集部注
*1:従来のLive!シリーズユーザー向けのLive!DriveIIとLive! Wareのキットは19,800円

□クリエイティブ・メディアのホームページ
http://www.creaf.co.jp/
□製品情報
http://www.creaf.co.jp/sblive/product/sblive-platinum/

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('99年11月10日)

[Text by 元麻布春男]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp