予定通り発表されたことをわざわざ断るのは、840が820の発売延期の原因となったRDRAMをサポートしたチップセットであるから。820がいまだに発表できない状態であるのに対し、840は発売にこぎつけたことになる。
しかし、840のRambusインターフェイスが820のものと大きく異なるわけではない。基本的に、チップセットのRambusインターフェイス部(Rambus ASIC Cell)は、Intel等のチップセットベンダではなく、Rambusがデザインする。同じDirect RDRAMをサポートしたRambusインターフェイスである以上、840と820で大きく違うハズがない。
にもかかわらず840が発表できたのは、マザーボードデザインや、動作認証が820と違っているからだ。デスクトップPC向けの820が、最初からRIMMスロットを3本持つマザーボードデザインを検討し、結局これが発表延期の原因になったのに対し、840は最初から異なるリファレンスデザインを採り、動作認証を行なっていたらしい。それがどのようなものであるかは、現時点で唯一840採用のワークステーション向けマザーボードとして発表されているOR840から推測するしかないのだが、実はこのOR840は3本どころか4本のRIMMスロットを備えているのだ(最大搭載メモリ量は2GBだが、それには現時点では入手できない256Mbit RDRAMを用いた512MB RIMMが必要になる)。
3本でも動かないのに4本? と思ってしまいそうだが、840のMCHは、2本のRambusチャネルを備えている(デュアルチャネル)。つまり、4本のRIMMスロットは、Rambusチャネルあたりでは2本に過ぎない。要するに840は、現在820が動作認証を行なっている2RIMM構成で最初からスタートしていたことになる。しかも、840では3RIMM構成は、最初から動作認証の対象になっておらず、それ以上のメモリが必要な場合はオプションのMemory Repeater Hub(RDRAM対応の82803とSDRAM対応の82804の2種類がある)を使うことになっている。加えて、ワークステーション向けのマザーボードであるOR840は、高価な6層基板を採用しており、これも動作の安定に寄与していると思われる。
■Coppermine用マザーボード「OR840」
さて、このOR840というマザーボードだが、くわしい情報はhttp://channel.intel.com/business/ibp/workstn/or840.htmにあることでもわかる通り、いわゆるBoxed製品として販売されるマザーボードだ(製品情報ページよりも、くわしい情報が掲載されている)。デュアルプロセッサ構成に対応するものの、サポートするプロセッサがPentium III Xeonではなく、通常のPentium IIIプロセッサ(Slot 2ではなくSlot 1)であること、マザーボードのフォームファクタがATXであることなどからして、比較的ローエンドに近いワークステーションをターゲットにしたものだろう。
それでも本マザーボードがワークステーション用らしいのは、AGPスロット(AGP 4X対応)がAGP Pro 50になっていることだ。末尾の50という数字は、メモリ搭載量が多いワークステーション向けグラフィックスカードを意識して、消費電力50WまでのAGP Proカードに対応可能なことを意味している。また、4本あるRIMMスロットだが、RIMMモジュールは必ず2本単位(各Rambusチャネル1本づつ)で利用せねばならず、1本や3本といった構成は許されない(つまり増設のチャンスは1回のみ)。これも一般的なデスクトップPC向けマザーボードとは異なる部分だ。現時点では、このOR840の価格は不明だが、上記のような特徴、さらには6層基板であることを考えれば、それなりに高価(400~600ドル程度か?)なマザーボードだと思われる。
□OR840 製品情報(英文、写真あり)
http://developer.intel.com/design/wrkstn/or840/
□関連記事
【10月26日】米Intel、新型Pentium III 15機種を一斉に発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/991026/intel1.htm
('99年10月27日)
[Text by 元麻布春男]