あわただしい次世代チップセットIntel 820を巡る動き。現在の焦点は、はたして820がCoppermine(0.18ミクロン版Pentium IIIプロセッサ)発表に間に合うかどうかに絞られてきた。PC業界は、まだ混乱の中にある。
ここで今回の820騒動をちょっと整理しておこう。Intelは、820を133MHz FSB版Pentium IIIと同時に米国時間9月27日(日本28日)に発表する予定でいた。少なくとも、その1週間前までは、その予定に変化はまったく見られなかった。状況が変わったのは米国9月23日(日本24日)からだ。この日、米Intelは、OEMメーカーに対してメモリエラーの発生のために820を延期すると通告した。複数のOEMメーカーがこの日に知らされたと語っており、対外的にはこの日に初めて通知されたようだ。
Intelは、この時点では、特定のコンフィギュレーションでストレスがかかるパターンの時にメモリエラーが起こるとだけ通知したと言われる。820のリリース日程は未定で、問題解決が済んでからとされたという。そのため、820が一体いつまで遅れるのか、また、根本的な問題は何なのかは、Intelとの関係が比較的薄いメーカーは、この時点ではまったくわからなかったらしい。そのため、このコラムでも、820の仕様見直しを含めた大きな変動の可能性を説明した。
次の動きは、先週の米国時間9月27日の月曜朝(日本28日夜)で、Intelはこの日にプレスリリースの中で正式に820の遅れを発表した。この時のIntelの公式コメントは、すでに紹介した「3つのRIMMスロットを備えたマザーボードで、3スロットそれぞれにRIMMを装填した場合に、エラーが起こる場合がある。また、3スロットのうちの2スロットにしかRIMMを装填しなかった場合(3スロット目はダミーを装填した場合)でも、最悪のケースではエラーとなる場合があることがわかった」(インテル日本法人)というものだった。また、820のリリース日程が未定というのも公式にアナウンスされた。
一方OEMメーカーに対しては、米国時間の9月28日から29日にかけて、次の通知が届いたらしい。Intelは、この通知で、当面の解決策として、820マザーボードのRIMMスロットを2つに制限するという新しい方針を伝えたという。OEMメーカーによると、Intelは3RIMMスロットのデザインはもうIntelの認めるデザインではなく、サポートもしないと宣言、PCメーカーやマザーボードメーカーに、マザーボードの再設計を要求したという。
この時、Intelは820のエラー原因として、RDRAMチャネル上の最初のRIMM上のRDRAMチップから特定のパターンで読み出すと、チップセット側からの反射波が発生することだと説明したといわれる。その反射が、チャネルレゾナンスを引き起こし、チャネル上の最後のRDRAMチップからの読み出しでエラーを引き起こすという。そして、この問題を回避するには、2RIMMスロット設計にして、チャネルマージンを広げることが必要だと説明したようだ。また、これは根本的な解決ではなく、Intelがエラーの根源をつきとめ、解決するまでの応急措置という位置づけらしい。
この通知やプレゼンテーションを受けて、OEMメーカーからは反発が噴き出す。Intelは、一部のメーカーからは、かなり抵抗にあったようだ。しかし、今のところ、Intelはあくまでも2RIMMスロットデザインに変えるという方針を変えていないようだ。つまり、メーカーが3RIMMスロットで、3つ目のスロットのC-RIMMを外せないようにして出荷するという案は認めないつもりのようだ。ただし、各OEMとの交渉はまだ行なっているらしい。
2RIMMスロットデザインへの変更を貫くかどうかを含めて、Intelのこの問題に対する姿勢は、最終的に今週中に決定されるだろうと業界関係者では見ている。それは、Coppermineの発表時期を考えると、今週あたりには明確にしないと製品プランが立たなくなるからだ。また、Intelは、820問題が落ち着くまで、毎週金曜日(米国時間)に顧客に情報をアップデイトすると語ったと、複数のOEMが証言している。つまり、日本時間の土曜日ごとに新しい状況が展開する可能性もある。
問題は、820マザーボードの2RIMMスロットへのデザイン変更が貫かれると、Intel自身が自社製マザーボードを間に合わせる以外には、Coppermineに820を間に合わせる道がなくなることだ。そうなった場合、Intelは、(1)440BXの133MHz FSB(フロントサイドバス)版を正式リリースする、(2)Coppermineを100MHz FSB中心に切り替え750MHz版を出す、といった対策を取る必要が出てくる可能性がある。つまり、ことは820だけでなく、MPUの製品プランも含めた大きな変更につながる可能性があるということだ。そのため、注意してウォッチを続ける必要がありそうだ。
('99年10月5日)
[Reported by 後藤 弘茂]