以前、CompaqのノートPC、ARMADA M700を取り上げた縁で、今度はあちらからARMADA M300を評価して欲しいとの依頼を受けた。毎日通勤しない筆者にとって、ノートPCの活躍の場は主に海外出張ということになり、好みはオールインワンタイプ(特にM700のようなDVD-ROM内蔵型)なのだが、M300には本体と一体化できるモバイル拡張ユニットが用意されるという(オプション)。モバイル拡張ユニット込みで、M700より魅力があるのなら一考の余地がある。そう思って引き受けることにした。
届けられたM300だが、いわゆるB5サブノートで、本体だけなら極めてコンパクトだ。このサイズでDVD-ROMドライブを内蔵していれば言うことなしだが、残念ながら今のところそこまで小型のノートPCは、世の中に存在しない。そうでなくても薄型のDVD-ROMドライブは、世界的に品薄で、国内ではM700もCD-ROMドライブモデルのみの発売であったように、M300のモバイル拡張ユニットもCD-ROMドライブのみの提供となる(米国ではM300/M700兼用のDVD-ROMドライブユニットが販売されている)。
モバイル拡張ユニットと合体したM300。持ち運べる大きさではあるものの、もはやコンパクトとは呼び難い | 後部のバッテリを曲げて「足」にしたところ。用意されている各種I/Fのコネクタは、すべてフルサイズで、I/Oポートアダプタ等は必要としない | M300のキーボード。ストローク感はあるほうだ。M700と異なり、ポインティングデバイスはパッド |
そのモバイル拡張ユニットは、おおむね本体と同じ大きさで、CD-ROMドライブ、LS-120ドライブ、セカンドバッテリのいずれか1つと、M300本体に添付されている外付けフロッピーの2デバイスを内蔵可能だ(標準でCD-ROMドライブを内蔵)。ホットプラグ可能なこのモバイル拡張ユニットは、本体との一体感があり、装着した状態での持ち運びにも違和感はないものの、さすがに合体した状態ではコンパクトさは大幅に後退してしまう。本体(1.39kg)より軽量とはいえ、モバイル拡張ユニットの重量は0.86kg(CD-ROMドライブ込み)あり、両者を合わせた重量は2.25kgに及ぶ。これでもM700(DVD-ROM内蔵時で約2.5kg)よりは軽量だが、大差ない印象が強くなる。容量はもっと厳しくて、モバイル拡張ユニットを取りつけた状態でのM300は約2,781cc。M700は薄型が貢献して約2,196ccですむ。旅行カバンの中に収めやすいのがどちらかは言うまでもない(ちなみにACアダプタはM700とM300で同じ、あまり小さくないものが付属する)。
では、機能や性能はというと、M700が14.1インチで1,024×768ドット解像度の液晶パネルを用いているのに対し、小型のM300は11.3インチで800×600ドットと明らかに見劣りする。特に、国内メーカーの多くが、11.3インチクラスでも1,024×768ドット解像度の液晶パネルを使っていることを思えばなおさらだ(ただし、その分本機の方が価格が5万円程度は安い)。液晶パネルをドライブするビデオチップも、M700がATIのRage Mobility-Pに8MBのディスプレイメモリと、ノートPCとしては極めてゴージャスなのに対し、M300では4MBメモリのRAGE LT Proとワンランク下になる。CPUも、M700がPentium II 366MHzに対し、M300はCeleron 333MHzだ(体感できるほどの性能差はないと思うが)。どうやら、同じARMADA Mシリーズといっても、M700がハイスペックのハイエンド向けであるのに対し、M300はビジネス向けとは言えバリューラインを意識しているようだ。
というわけで、改めて価格を調べてみると、M300は本体が238,000円でモバイル拡張ユニットが35,800円(CD-ROMドライブ込み)で計273,800円なのに対し、M700は国内販売されるCD-ROMドライブモデルでも468,000円もする(価格はいずれも標準価格。多少の値引きは期待できるだろう)。M300の圧倒的なアドバンテージは、この価格にあった。筆者には、ポインティングデバイスの好みとして、M700のスティック(イージーポイントIV)の方が、M300のタッチパッドより好ましい、という差まであるものの、価格が20万円違うと言われれば、さすがにウーンと唸ってしまう。
おそらく、毎日ノートPCを持ち歩くユーザーなら、価格うんぬんではなく、重量や容積からいって、M700よりモバイル拡張ユニット抜きのM300を好む人もいるに違いない。だが、ノートPCを日常的に携帯しない筆者にとって、価格を無視すればM700がすべての点で上回る(価格を無視した比較など、ナンセンスではあるのだが)。唯一、M300の方が勝る局面として思いついたのが、出張先のホテルに拡張ユニットを置き、コンベンション会場に本体のみを持ち運び、ホテルに戻って合体する、という利用法を思いついた。しかし、これを行うには、M300のバッテリ駆動時間(カタログ値で2~2.5時間)は、あまりにも物足りない(セカンドバッテリはあるものの拡張ユニットにしか内蔵できない)。
■やはりDVD-ROMドライブ拡張ユニットが欲しい
やはりM300にふさわしいのは、本機を毎日持って歩くつもりのユーザーだろう(この場合、自宅と勤務先のどちらかに拡張ユニットを置き、残った方にACアダプタを置く。つまりACアダプタは2個要る)。そう考えると、やはりライバルはM700ではなく、他社のB5サイズノートPCということになる。このジャンルは筆者の興味対象から少し外れるが、他と比べたM300を簡単にまとめると、ディスプレイ解像度が低い代わりに価格が安く、比較的ゆったりしたキーボードを持ち、バッテリ兼用の足(本体後部のバッテリは、昔のHi-Note Ultraのように、折り曲げることで「足」になる)のおかげもあってタイピングしやすいPC、ということになるだろう。CD-ROMドライブ内蔵の拡張ユニットも、この種のオプションにしては値ごろ感がある。DVD-ROMドライブ内蔵の拡張ユニットが安価で提供されていれば、なおさら魅力があったのに、と思われてならない(出張先で、夜一人ノートPCでDVDの映画を見る、というのもオツなものだと思う)。
('99年10月6日)
[Text by 元麻布春男]