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後藤弘茂のWeekly海外ニュース

10月にデスクトップだけで9種類のPentium IIIが登場

 Intelは、10月末にデスクトップPC向けだけでも9種類の0.18ミクロン版Pentium IIIプロセッサ(Coppermine:カッパーマイン)を発表する。最高クロックは733MHzと、ついにオーバー700MHzが現実のものになる。これは、当初の予定を、5ヶ月も前倒しにしたアグレッシブな展開だ。また、従来のSECC2カートリッジだけでなく、「フリップチップ-PGA(FC-PGA)」と呼ばれる新パッケージに入ったソケット版も登場する。さらに、価格も、当初の予定より1ランクづつ引き下げたディスカウント価格にする。

 つまり、Intelは来月末から大攻勢に出るということだ。そこで、IntelデスクトップMPUの最新状況を、OEMなどからの情報をもとに整理してみた。


●来年第2四半期でFC-PGA版が6割以上へ

 まず、関心が集まるPentium IIIのFC-PGA版だが、まず10月に500MHzと550MHzのFSB(フロントサイドバス)が100MHzのバージョンだけが登場すると言われている。これらはスモールフォームファクタ向けという位置づけだが、来年第1四半期には133MHz FSBも含めて、全クロックのFC-PGA版が出るという。また、当初はFC-PGA版はSECC2版より少々高い価格設定だが、来年第1四半期には価格も同じになるという。この価格設定は、最初のFC-PGA版の供給量が限られることを意味していると思われる。

 Intelは、来年の第1四半期以降、SECC2からFC-PGAへのシフトを急激に進める。第2四半期には全Pentium IIIのうちの6割以上を、来年第4四半期には9割以上をFC-PGA版にするとOEMに伝えたと言われている。製造コスト自体は、FC-PGA版の方がSECC2版より安くなるはずなので、この急激なFC-PGAシフトは、Intel内部でのPentium IIIの製造コスト引き下げのためだと思われる。

 当初、Intelは、FC-PGA版Coppermineについて、100MHz FSB版だけがSocket370対応で、133MHz FSB版からは新しい418ピンソケットになるかもしれないと、OEMメーカーにアナウンスしていたという。しかし、その計画は取りやめになり、両FSB版ともSocket370で対応することになったそうだ。

 問題は、FC-PGA版Pentium IIIとPGA版Celeronの、ピン互換性だが、これについて、Intelのパトリック・P・ゲルシンガー副社長兼ジェネラルマネージャ(Desktop Products Group)は「適切にデザインされたマザーボードなら、両方(CeleronとFC-PGA版Pentium III)を載せることができるだろう」と、互換性を認めながらも慎重な発言をしている。実際、複数の情報筋から、互換性はあるものの100%ではないという情報が入っている。現実的には、両対応の新マザーボードでないと対応は難しいだろう。時期的なことも考えると、Solanoチップセット以降に、一気に両対応化が進むのかもしれない。


●733MHzを5ヶ月前倒しに

 ところで、IntelはCoppermine発表前に何度もスケジュールを変更、最後に大幅に前倒しした。実際に、どうスケジュールが変更されたのかを整理してみよう。
 まず、6月頭の時点でウワサされていたIntelの計画は次のようなものだった。

600MHz 9月頭
667MHz 10月末
733MHz 来年第1四半期末

 ところが、6月中旬になって、Coppermineのスケジュールはまるまる2ヶ月、後ろへスライド、600MHzと667MHzが11月頃のリリースへと変わってしまう。だが、8月末のカンファレンス「Fall '99 Intel Developer Forum(IDF)」直前に、このスケジュールは突然修正され、600MHzと667MHzの両方が10月末に出ることになった。そして、IDFの最中に733MHzまでが10月末に繰り上げられてしまう。つまり、各MPUの出荷計画は、夏前と現在で次のように変わったことになる。

600MHz 9月頭→10月末
667MHz 10月末
733MHz 来年第1四半期末→10月末

 また、8月中旬までは、IntelはPentium IIIで800MHzを出す予定を持っていなかったが、それもIDF直前に来年中盤の出荷ということで加わった。

 めまぐるしいCoppermineのスケジュール変更だが、この10月末への繰り上げは大きな意味がある。それは、年末商戦用モデルにぎりぎり間に合うからだ。つまり、8月中旬までは、Intelは年末商戦向けに供給できるタマが600MHzだけだったのが、今では733MHzまでを提供できると言っているのだ。また、この繰り上げが、秋に700MHz版が発表されると言われているAthlonプロセッサ対抗でもあることはいうまでもないだろう。


●規則正しい10月の予定価格

 今回のCoppermineでは、スケジュールだけでなく予定価格も何度も変わった。業界関係者からの情報では、夏前まで、Intelは667MHz版を800ドル台で出すつもりでいた。しかし、IDF後に667MHz版は600ドル程度へと落ち、代わりに、733MHz版Coppermineが、800ドルを少し切る予定価格になったと言われる。つまり、733MHzが当初の667MHzの予定価格へと入り、667MHzの予定価格が1ランク落ちたことになる。そして、この下のクロックの予定価格も全部スライドしたようだ。

 以前、このコラムで、IntelはMPUのリストプライスを、800ドルを上限として階層的に整理していると書いた。クロックが1段上がると、価格が33%上がるという非常に規則的な価格体系をとっていたのだ。ところが、今年に入ってからはAMDとの競争のため値下げに次ぐ値下げを行ない、すっかり価格体系をくずしてしまった。しかし、今回の10月の予定価格では、価格体系をある程度もとへ戻すようだ。下が、予定価格を昨年までのIntelの価格体系にあてはめた表だが、ぴったりはまっている。

◎Pentium III
800ドル前後 733MHz
600ドル前後 667MHz
450ドル前後 600MHz
350ドル前後 550MHz
250ドル前後 500MHz
180ドル前後 450MHz

 Intelとしては、これでPentium IIIの価格体系をようやく正常に戻したということなのだろう。


●733MHzはどれだけ出てくるのか

 5ヶ月も前倒しにされた733MHzは、はたして潤沢に出荷できるのだろうか。MPUの高クロック品は、一般に1枚のウエーハから採れるチップのうち、高クロックの動作テストをパスしたものが選別される。つまり、733MHzという特別なチップがあるのではなく、733MHzのテストをパスしたものが733MHz品として選り分けられるのが一般的だ。高クロック品の割合は、学習曲線が上がったり、製造プロセスを改良したり、マスクをチューンしたりすることで、だんだん多くなってゆく。製造の初期の段階では、高クロック品の採れる量は限られることが多い。それを考えれば、当初予定していなかった733MHzは、量が限られる可能性が高い。

 しかし、Intelの場合、従来は高クロック品がある程度採れるようになっても、マーケティング上の判断から出さないケースがよくあった。これは、出し惜しみをしたわけではなく、発表時点から潤沢に供給できるように、大量に採れるようになる時期を待つという意味もあったようだ。だが、今回の場合は出せるクロックは、全部出してしまえという判断が下されて、733MHz発表が決まった可能性が高い。そうすると、733MHz品はある程度は採れるが、従来のIntelの高クロック品の発表時ほど潤沢に採れる状況になっていない可能性もある。だとすると、733MHzは全然出ないということはないだろうが、出荷量はある程度は限られるかもしれない。

 高クロックへ伸ばすIntelだが、0.25ミクロン版Pentium III(Katmai)と競合するクロック帯の533/550/600MHzに対しても、SECC2版Coppermineを出す。これは、オールCoppermineのラインナップのニーズに対応するだけでなく、Coppermineの低クロック品をさばくという意味があるのかもしれない。

 また、Intelは、まだ需要の高い440BX+SDRAMプラットフォーム向けに100MHz FSB版も投入し続ける。10月に登場する、Coppermineの650/700MHzは100MHz FSBシステム向けだ。これにFC-PGA版も加わるため、Intelの製品ラインナップはじつに複雑怪奇なものになる。どうやらIntelは、KatmaiとCoppermine、それに100MHz FSBと133MHz FSBで同じクロックの製品が存在する場合には、またクロックのあとに記号をつけて識別するつもりらしい。


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('99年9月24日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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