世界初のマルチモニタPCカード「CBMLX」を検証する |
●マルチモニタ環境のススメ
アイ・オー・データ機器のCBMLXは、ノートPCのPCカードスロットに接続して使うマルチモニタPCカードである(パッケージでは、マルチモニタ対応プレゼンテーションPCカードと表記されている)。マルチモニタPCカードという名称は聞き慣れないが、要するに、Windows 98のマルチモニタ機能を利用して、液晶ディスプレイ(プライマリディスプレイ)と外部のCRTや液晶プロジェクター(セカンダリディスプレイ)に同時に別々のデスクトップ画面を表示させるための製品である。Windows 98では、複数のディスプレイに別々のデスクトップを表示するマルチモニタ機能を標準でサポートするようになった。マルチモニタ機能を利用すれば、複数のアプリケーションを同時に立ち上げて使う場合など、それぞれのアプリケーションをディスプレイごとに表示することができるので、作業を効率よく行なとができる。Macintoshなどでは以前からサポートされていた機能だが、Windows環境でもWindows 98から標準でサポートされた。
もちろん、OS側でマルチモニタ機能をサポートしたといっても、ハードウェアが対応していなければ、マルチモニタ機能を利用することができない。通常のビデオカードは、シングルモニタにしか対応していないので、マルチモニタ機能を利用するには、ビデオカードを2枚以上装着する必要がある。しかし、Matrox Millennium G400 DualHead版のように、1枚で2系統のディスプレイ出力をサポートしたビデオカードも登場し、人気を集めている。
デスクトップPCの場合、マルチモニタ機能を利用したいのなら、ビデオカードをもう1枚装着すればいいが(ただし、ビデオカードならなんでもいいというのではなく、マルチモニタ対応ドライバが用意されているビデオカードを利用する必要がある。または、Millennium G400 DualHead版のように、デュアルディスプレイ対応ビデオカードに交換する方法もある)、ノートPCではそういうわけにはいかない。
最近は、ノートPC用のビデオチップでも、NeoMagicのMagicMedia 256AVやTridentのCyber9525DVDのように、マルチモニタ機能を標準でサポートした製品も増えてきているが、まだまだ少数派である。また、ビデオチップがマルチモニタ機能をサポートしていても、スリムサブノートなどでは、筐体のサイズに限りがあるため、外部CRTポートを備えていない機種も多い。そうした機種でも、ポートリプリケータを利用すれば、CRTやプロジェクターに出力できるようになるのが普通だが、出張のときなど、ポートリプリケータをわざわざ持っていくのは面倒だ。
●セカンダリディスプレイで1,280×1,024ドット65,536色まで表示可能
アイ・オー・データ機器のCBMLX。CardBus専用カードなので、カードエッジに8個のグランド端子がある |
CBMLXでは、Silicon Motion製のノートPC向けビデオチップ「Lynx3D」が採用されている。あまり聞き慣れないビデオチップだが、アキアのノートPC「Tornado 7030/7040」などにも採用されている。Lynx3Dは、MagicMedia 256AVなどと同様に、2.5MBのビデオメモリをコアに集積したチップであり、MPEG-2/DVD再生支援機能や3D描画機能も持っている。
CBMLXは、CardBus専用PCカードなので、CardBusに対応していないノートPCでは利用することはできないが、よほど古いノートPCでなければほとんどの機種がCardBusに対応しているので、それほど気にする必要はないだろう。また、セカンダリディスプレイ専用カードという製品の性格上、対応OSはWindows 98のみとなっている。
CBMLXには、2つのコネクタが用意されている。小さい方がアナログRGB出力/ビデオ出力/Sビデオ出力用のコネクタで、大きい方がデジタル出力(DFP準拠)用コネクタである。ただし、アナログRGB出力用、ビデオ出力用、Sビデオ出力用の各変換ケーブルは標準で付属しているが、デジタル出力用ケーブルはオプション(MLX-DFP/10:4,800円)になっている。ケーブルは途中で抜けてしまうことがないように、ロックがかかる仕組みになっているところも評価できる。
導入も簡単だ。CBMLXをPCカードスロットに挿入すると、自動的にカードが認識されるので、付属のドライバディスクからドライバを導入するだけで、セットアップは終了する。コントロールパネルのシステムのデバイスマネージャを開いて、ディスプレイアダプタのところに、もとのディスプレイアダプタとCBMLXが共に表示されていれば、正しく認識されていることになる。あとは、画面のプロパティから、プライマリディスプレイとセカンダリディスプレイの位置関係や解像度、色数などを指定してやればよい。
なお、ビデオ出力とSビデオ出力を利用する場合、表示できる解像度は640×480ドットのみとなる(それ以上高い解像度にすると、仮想画面となり一部分のみが表示される)。
CBMLXのコネクタ部分。左側の小さい方がアナログRGB出力/ビデオ出力/Sビデオ出力用コネクタ、大きい方がデジタル出力用コネクタ | 標準で付属する変換ケーブル。左からアナログRGB用、ビデオ出力用、Sビデオ出力用 | ノートパソコンでデュアルディスプレイ環境で利用しているところ |
デバイスマネージャのシステムで、ディスプレイアダプタとしてCBMLXが認識されている | プライマリとセカンダリの位置関係は自由に指定できる(上下に並べることも可能) |
●デュアルディスプレイ対応マシンに装着すれば、トリプルディスプレイも実現
今回は、テストマシンとして、松下電器産業のLet's note ace(CF-A44)を利用した。CF-A44はビデオチップとして、NeoMagicのMagicMedia 256AVが採用されている。MagicMedia 256AVは、もともとマルチモニタ機能(デュアルディスプレイ)をサポートしたビデオチップである。ただし、CF-A44の場合、本体には外部CRT端子が用意されていないので、外部CRTを接続する場合は、付属のポートリプリケータ経由で接続することになる。そこで、CF-A44側のデュアルディスプレイ機能を有効にしたままで(先ほどテストしたときは、ポートリプリケータは接続せず、デュアルディスプレイ機能を無効にして行なった)、CBMLXを装着してみることにした。
すると、CBMLXが3つめのディスプレイとして認識されている。実際に、ディスプレイを2台(下の写真の中央にある液晶ディスプレイがポートリプリケータに、右のCRTがCBMLXに接続されている)繋いで、非常に横長のデスクトップ環境を構築してみた。左のCRTが、1,280×1,024ドット16bitカラー(65,336色)、中央の液晶ディスプレイが1,024×768ドット256色、本体の液晶ディスプレイも1,024×768ドット256色になっている。
デュアルディスプレイ機能を有効にすれば、3つのディスプレイを同時に利用できる | 2台のディスプレイを接続して、トリプルディスプレイ環境を実現したところ |
トリプルディスプレイをうまく活用すれば、非常に快適に作業が行なえる。筆者も仕事柄、Webで資料を検索しながら、原稿を書くことが多いが、そうした場合でも、3つのディスプレイがあれば、1つは常に資料をフルスクリーン表示させておき、中央のディスプレイで原稿を書き、さらにもう1つのディスプレイでExcelを使ってスペック表を作成するといったことが可能になる。
ただし、トリプルディスプレイ環境は、アイ・オー・データ機器が正式に保証しているかどうか不明なので(カタログやマニュアルにはそういった記述はない)、あくまでユーザーの自己責任において試していただきたい。
●ビジネスユーザーには特にお薦め
今回は、特にベンチマークテストなどは行なわなかったが(WinBench 99などでは、セカンダリディスプレイのみの速度を計測できないという理由もある)、通常のビジネスアプリケーションを利用する上で、特に速度的な不満は感じられなかった。また、3D描画機能を持ち、Direct3Dに対応しているということで、ホビーユーザーにとっても興味があるところだろうが、付属のDirectX 6.1をインストールしても、Direct3D対応ゲームのTurok2やベンチマークテストプログラムの3DMark99 Maxでは、Direct3Dのハードウェアアクセラレーション機能が検出されず(おそらく、プライマリのMagicMedia 256AVのみをチェックしているのだろう)、正しく動作しなかった。したがって、ゲーム目当てで、CBMLXを購入するのは薦められない(2D系の比較的軽いゲームを大画面テレビでやりたいなどといった用途なら利用価値もある)。
やはり、基本的には、パッケージに書いてあるように、アプリケーションを複数同時に開いて仕事をしたいというユーザーや、プレゼンテーションを身軽に行ないたいなどといったビジネスマン向けの製品であろう。マルチモニタ環境によって、仕事の能率が上がることを考えれば、実売27,000円程度という価格も、高いとはいえないだろう。
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[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]