Click


3dfxから突如登場した謎の低価格ビデオカード
Velocity 100の秘密を探る



 HotHot REVIEW!の連載が始まって半年が経過し、連載回数も今回で27回を数えるようになった。過去26回の連載で、取り上げた回数が多い順にパーツを挙げると、ビデオカード、マザーボード、CPUの順だった。その中でもビデオカードは、PCを自作しようとしている人にとって、最も関心の高いパーツであることは疑うべくもない。最近のビデオカードの高性能化のペースは、本当に驚かされる。ビデオカードは基本的に「値段が高い=性能・品質が高い」という公式が成り立つ世界であり、秋葉原でも高い製品から売れていくようだが、一般ユーザーに果たしてそこまでの性能が必要なのかというのは、疑問に感じるところでもある。そこで今回は、有名ビデオチップベンダーの3dfxから突如発売された低価格ビデオカード「Velocity 100」を取り上げてみることにしたい。


■Velocity 100の正体は?Voodoo Bansheeの高クロック版?それともVoodoo3?

 3dfxといえば、Voodooシリーズで名高いビデオチップベンダーである。Voodooシリーズは、もともと3D専用アクセラレータチップとして登場し、その高い3D描画性能でハイエンドゲーマー御用達カードとも呼ばれるほどの人気を得た。初代Voodoo Graphicsの次に登場したVoodoo2も3D専用アクセラレータチップであったが、その後に登場したVoodoo Bansheeおよび最新チップのVoodoo3は、3D描画機能だけでなく、2D描画機能も備えるようになった。やはり、いくら3D描画性能が高いといっても、ほかに2D描画用にビデオカードを必要とするのでは、一般ユーザーには受け入れがたい。

 以前の3dfxは、製造したビデオチップをほかのビデオカードベンダーに供給するチップ専業ベンダーであったが、ビデオカードベンダーのSTB Systemsを買収したことで、自社でビデオカードまで製造するベンダーへと転身を遂げた。したがって、Voodoo3を搭載したビデオカードは、基本的には3dfx以外のベンダーからは発売されないことになっている。Voodoo3については、本連載でもすでに取り上げているので、詳しくはそちらを見ていただきたいが、現在市場で販売されているVoodoo3搭載ビデオカードは、コアクロックやメモリクロック、インターフェイスの違いなどによって、3種類の製品に分類できる。最上位となるVoodoo3 3500 TVは、コアクロック/メモリクロック183MHzで動作し、TVチューナー機能やビデオキャプチャ機能をサポートしていることが特徴だ。ミッドレンジに位置するVoodoo3 3000は、コアクロック/メモリクロック166MHzで動作し、ビデオ出力端子を備えており、下位モデルとなるVoodoo3 2000は、コアクロック/メモリクロック143MHzで動作する。なお、ビデオメモリは、全て16MB実装している。

 Voodoo3シリーズが登場したのは、'99年4月(Voodoo3 3500 TVは遅れて登場した)で、当時の実売価格は、Voodoo3 3000が26,000円程度、Voodoo3 2000が19,000円程度であった。もちろん、性能は現状でもトップクラスであり、決して高すぎるとはいえないが、CPUやHDDの価格が急激に下がっているので、相対的に高く感じられるようになったことも否定できない。

 最近、秋葉原のいくつかのショップで、3dfxのVelocity 100というAGP対応ビデオカード(バルク品)を目にするようになった。本来は、ショップブランドマシンやホワイトボックスマシンに組み込んで販売するためのOEM向けローエンド製品のようだが、実売で5,000円台という価格は魅力的である。Velocity 100に関しては、3dfxのWebサイトにも掲載されているが、そこの記述を読んでも、Velocity 100に採用されているビデオチップの正体がいまいち掴めない。

 Velocity 100の特徴として挙げられているのは、以下の通り。

 常識的に考えると、Velocity 100で採用されているビデオチップは、Voodoo Bansheeの仲間かVoodoo3の仲間かのどちらかということになる。Voodoo Bansheeは、登場時期がやや古いため、AGP 1Xモードにしか対応していないことや内蔵RAMDACが250MHzであることが気になる。Voodoo3は、AGP 2Xモードに対応し、内蔵RAMDACが300MHzまたは350MHzという仕様であるため、どちらかといえば、Voodoo3と思った方がよさそうだ。

 そこで、これまでのHotHotレビューでビデオカードを取り扱った場合と同様に、ベンチマークテストを行なってみた。テスト環境も従来と同じである。比較のために、Voodoo Banshee搭載カード(Quantum3D社のRaven)での測定結果と、過去の主な結果もあわせて掲載した。


■2D描画/3D描画ともに予想以上の好成績

1.2D描画パフォーマンス

 2D描画パフォーマンスの測定には、Ziff-Davis,IncのWinBench 99 Version 1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark99とHigh-End Graphics WinMark99を利用した。このベンチマークテストでは、ワープロや表計算ソフトなどの実際のアプリケーションに含まれる描画ルーチンを再現することで、総合的な2D描画パフォーマンスを測定できる。従来と同様に、1,024×768ドット、リフレッシュレート85Hz、16bitカラーモードと32bitカラーモードで測定した。

【WinBench 99 Version 1.1 Graphics WinMark】
Business
Graphics
WinMark 99/16
High-End
Graphics
WinMark 99/16
Business
Graphics
WinMark 99/32
High-End
Graphics
WinMark 99/32
Velocity 100 178 518 116 514
Velocity 100
(166MHz)
179 517 116 508
Voodoo Banshee 158 384 138 431
Millennium
G400 MAX
194 550 190 541
VooDoo3
3500TV
180 520 177 511
Voodoo3
3000
182 528 179 517
Millennium
G400
192 556 189 548
Viper V770
Ultra
186 522 182 518

 Velocity 100は、Millennium G400 MAXやViper V770 Ultra(TNT2 Ultra搭載)といった、現在最速との呼び声も高いハイエンドカードと比べても、それほど遜色のない結果を出している。ただし、Business Graphics WinMark 99の32bitモードでの値は、かなり低くなっている。Voodoo Bansheeはほかのカードに比べて、世代的にかなり古いため、全体的に低い数値しかでていない。

2.Direct 3D描画パフォーマンス

 Direct 3D環境での総合的な3D描画パフォーマンスは、FutureMarkの3DMark99 Maxを利用して計測した。800×600ドット、1,024×768ドット、1,280×1,024ドットのそれぞれの解像度について計測を行なった。なお、現在までに登場しているVoodooシリーズは、16bitレンダリングしかサポートしていないので、3D関係のベンチマークはすべて16bitカラーモードのみで行なっている。

【3DMark99 Max】
800x600/16800x600/321,024x768/161,024x768/32
Velocity 1004,856 d/s 2,744 d/s
Velocity 100
(166MHz)
4,954 d/s 2,901*d/s
Voodoo
Banshee
2,707 d/s 1,816 d/s
Millennium
G400MAX
5,002 4,975 4,873 4,487
VooDoo3
3500TV
4,940 d/s 4,789 d/s
Millennium
G400
5,062 4,971 4,820 4,107
Voodoo3
3000
5,002 d/s 4,631 d/s
Viper V770
Ultra
4,930 4,856 4,567 3,881
SPECTRA
5400
4,893 4,454 4,125 3,302
※d/sはそのモードをサポートしていない事を意味しています
*)途中でハングアップしたので、ヒートシンクにファンをつけて動作させた

1,280x1,024/161,280x1,024/32
Velocity 1002,890 d/s
Velocity 100
(166MHz)
測定不能 d/s
Voodoo Banshee1,083 d/s
Millennium
G400MAX
4,063 3,063
VooDoo3
3500TV
4,762 d/s
Millennium
G400
3,504 2,582
Voodoo3
3000
3,314 d/s
Viper V770
Ultra
3,009 2,089
SPECTRA
5400
2,568 1,589
※d/sはそのモードをサポートしていない事を意味しています

 Direct 3D環境での描画パフォーマンスも、800×600ドット16bitカラーモードなら、ハイエンドビデオカードの結果に肉薄している。ただし、解像度が高くなると、性能差が目立つようになる。

3.3Dゲーム(Direct 3D、Glide対応)の描画パフォーマンス  次に、Direct 3DとGlideに対応したゲームソフト「Turok2:Seeds of Evil」を使って、3Dゲーム上での描画パフォーマンスを計測してみた。32bitカラーモードには対応していないため、16bitカラーモードで、Direct 3D環境とGlide環境のそれぞれで計測した。

【Turok2:Seeds of Evil】
800x600/16800x600/16/Glide800x600/32
Velocity 100
57.8 
68.3 
d/s
Velocity 100
(166MHz)
57.4 
70.8 
d/s
Voodoo Banshee
43.9 
測定不能
d/s
G400MAX
56.9 
d/s
59.2 
VooDoo3 3500TV
58.8 
75.3 
d/s
Millennium G400
57.8 
d/s
57.0 
Voodoo3 3000
60.2 
73.7 
d/s
Viper V770 Ultra
60.6 
d/s
57.7 
3D Blaster RIVA TNT2
59.7 
d/s
57.4 
※d/sはそのモードをサポートしていない事を意味しています

1,024x768/161,024x768/16/Glide1,024x768/32
Velocity 100
48.2*
52.1 
d/s
Velocity 100
(166MHz)
52.9*
58.6 
d/s
Voodoo Banshee
32.5 
測定不能d/s
G400MAX
58.6 
d/s
57   
VooDoo3 3500TV
53.4 
72.0 
d/s
Millennium G400
56.0 
d/s
53.8 
Voodoo3 3000
57.9 
65.5 
d/s
Viper V770 Ultra
57.8 
d/s
52   
3D Blaster RIVA TNT2
57.2 
d/s
53.3 
※d/sはそのモードをサポートしていない事を意味しています
*)銃から出る弾などが正しく描画されていない

1,280x1,024/161,280x1,024/16/Glide1,280x1,024/32
Velocity 100
測定不能
測定不能
d/s
Velocity 100
(166MHz)
測定不能
測定不能
d/s
Voodoo Banshee
19.6 
測定不能 d/s
G400MAX
54.2 
d/s
47.8 
VooDoo3 3500TV
39.4 
53.2 
d/s
Millennium G400
51.0 
d/s
42.2 
Voodoo3 3000
45.6 
45.9 
d/s
Viper V770 Ultra
53.1 
d/s
35.3 
3D Blaster RIVA TNT2
52.7 
d/s
34.4 
※d/sはそのモードをサポートしていない事を意味しています

 こちらも、先ほどの3DMark99 Maxとほぼ同じような傾向があらわれている。800×600ドット16bitカラーモードなら、ハイエンドビデオカードにも負けないパフォーマンスを実現しているが、解像度が上がるとその差が少し開いてくる。また、1,024×768ドットでDirect 3Dを利用すると、銃から出るビームや弾が正しく描画されない(正方形の枠が表示されてしまう)という現象が発生した。同じ1,024×768ドットでも、Glideを利用すると、正しく描画されたので、Direct 3Dのドライバ周りに不具合があるのであろう。

4.3Dゲーム(OpenGL対応)の描画パフォーマンス

 最後に、OpenGLに対応したゲームソフト「QuakeII」を利用して、ベンチマークテストを行なってみた。

【Quake II】
800x600/161,024x768/161,152x864/161,600X1,200/16
Velocity 100
 50.3 
36.2 
28.3 
測定不能
Velocity 100
(166MHz)
 55.5 
40.4 
28.9 
測定不能
Voodoo Banshee
 34.6 
22.4 
18.9 
測定不能
Millennium G400MAX
 64.3 
62.5 
56.4 
測定不能
Voodoo3 3500TV
117.8 
91.1 
73.8 
測定不能
Millennium G400
 66.0 
58.6 
50.5 
28.2
Voodoo3 3000
117.2 
82.1 
67.2 
35.2
Viper V770 Ultra
 79.1 
51.9 
41.2 
21.6

 Voodoo3に比べれば、半分以下のフレームレートしか出ていないが、30フレームを超えていれば、動きは滑らかに感じられるので、1,024×768ドット程度までなら、十分快適にプレイできる。やはり、Voodoo Bansheeの値はかなり見劣りしてしまう。

【テスト環境】
CPU:Pentium III 500MHz
マザーボード:ASUSTeK Computer P2B
メモリ:128MB(PC-100 SDRAM)
HDD:Quantum Fireball EX6.4A


■やはりVoodoo3の廉価版か?クロックアップにも成功

 ベンチマークテストの結果、Velocity 100は、その価格からは想像できないほど、高いパフォーマンスを持っていることがわかった。性能的な面からも、Voodoo Bansheeではなく、Voodoo3ベースのチップが採用されている可能性が高い。Velocity 100のドライバをインストールすると、3dfx Infoと3dfx Tweakというタブが画面のプロパティに追加される。3dfx Infoでは、Velocity 100のコアクロックとメモリクロックを知ることができる。出荷時の状態では、コアクロックとメモリクロックはともに143MHzになっている。コアクロック/メモリクロック143MHzというのは、Voodoo3 2000と同一だ。Voodoo Bansheeは、ともに100MHzで動作していることから考えても、やはりVoodoo3の仲間だと思った方がよいだろう。

 そこで、PowerStrip 2.51.08を用いて、クロックアップに挑戦してみることにした。PowerStripでも、ビデオチップの名称は、Voodoo3として認識される。試しに、Voodoo Banshee搭載ビデオカードを装着して、PowerSrtipを導入してみたところ、Voodoo Bansheeと認識されたので、やはりVoodoo3ベースのチップであるという予想が裏付けられる格好になった。

PowerStripではVoodoo3と表示される 動作クロックを167MHzにしてみた

ヒートシンクを外してみたがVoodoo3などの印刷は見られない

 メモリクロック/コアクロックを166MHzに設定して同様にベンチマークテストを行なったところ、WinBench 99のGraphics WinMarkは、問題なく動作したものの、3DMark99 MAXのテスト中にハングアップしてしまった。ヒートシンクを指で触ってみると、かなり熱くなっている。そこで、ヒートシンクにファンを取り付けて、冷却効果を上げることにした。ファンをつけると、3D系ベンチマークテストも問題なく動作した。Velocity 100を166MHz動作させたときのベンチマーク結果も先ほどの表にあわせて掲載している。2D描画パフォーマンスは特にかわらないが、3D描画パフォーマンスは、クロックを上げることで多少なりとも向上していることがわかる。

 Velocity 100のビデオチップには、ヒートシンクが装着されているため、直接チップ表面を見ることはできない。そこで、ヒートシンクを剥がしてみたが、特にVoodoo3という表記は見られなかった。


■コストパフォーマンスは非常に優秀であり、サブマシンなどにもお薦め

 Velocity 100は、5,000円台とは思えないほどの高いパフォーマンスを持ったビデオカードであり、コストパフォーマンス的には非常に優れている。ビデオメモリを8MBしか実装していないというところがやや気になるが、実際は8MBで十分足りることも多い。できるだけ安くマシンを組み立てたいという人には、特にお薦めしたい。

 なお、米国ではVelocity 200という製品もリリースされているようだ。Velocity 200は、Velocity 100の上位に位置する製品で、Velocity 100の2倍のビデオメモリ(16MB)を実装していることが特徴だ。こちらも、実売1万円以下で発売されるのなら、お薦めできる。

□AKIBA PC Hotline! 関連記事
【9月4日号】今週見つけた新製品 1999年9月4日号
http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/990904/newitem.html#23


バックナンバー

[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]


■■ 注意(編集部)■■

・オーバークロックはは、ビデオカードやマザーボードおよび関連機器を破損したり、寿命を縮める可能性があります。その損害について、筆者およびPC Watch 編集部、またビデオカードメーカー、購入したショップもその責を負いません。オーバークロックは自己の責任において行なってください。

・この記事中の内容は筆者の環境でテストした結果であり、記事中の結果を筆者およびPC Watch編集部が保証するものではありません。

・筆者およびPC Watch編集部では、この記事についての個別のご質問・お問い合わせにお答えすることはできません。

【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp