3dfxから突如登場した謎の低価格ビデオカード
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■Velocity 100の正体は?Voodoo Bansheeの高クロック版?それともVoodoo3?
3dfxといえば、Voodooシリーズで名高いビデオチップベンダーである。Voodooシリーズは、もともと3D専用アクセラレータチップとして登場し、その高い3D描画性能でハイエンドゲーマー御用達カードとも呼ばれるほどの人気を得た。初代Voodoo Graphicsの次に登場したVoodoo2も3D専用アクセラレータチップであったが、その後に登場したVoodoo Bansheeおよび最新チップのVoodoo3は、3D描画機能だけでなく、2D描画機能も備えるようになった。やはり、いくら3D描画性能が高いといっても、ほかに2D描画用にビデオカードを必要とするのでは、一般ユーザーには受け入れがたい。
以前の3dfxは、製造したビデオチップをほかのビデオカードベンダーに供給するチップ専業ベンダーであったが、ビデオカードベンダーのSTB Systemsを買収したことで、自社でビデオカードまで製造するベンダーへと転身を遂げた。したがって、Voodoo3を搭載したビデオカードは、基本的には3dfx以外のベンダーからは発売されないことになっている。Voodoo3については、本連載でもすでに取り上げているので、詳しくはそちらを見ていただきたいが、現在市場で販売されているVoodoo3搭載ビデオカードは、コアクロックやメモリクロック、インターフェイスの違いなどによって、3種類の製品に分類できる。最上位となるVoodoo3 3500 TVは、コアクロック/メモリクロック183MHzで動作し、TVチューナー機能やビデオキャプチャ機能をサポートしていることが特徴だ。ミッドレンジに位置するVoodoo3 3000は、コアクロック/メモリクロック166MHzで動作し、ビデオ出力端子を備えており、下位モデルとなるVoodoo3 2000は、コアクロック/メモリクロック143MHzで動作する。なお、ビデオメモリは、全て16MB実装している。
Voodoo3シリーズが登場したのは、'99年4月(Voodoo3 3500 TVは遅れて登場した)で、当時の実売価格は、Voodoo3 3000が26,000円程度、Voodoo3 2000が19,000円程度であった。もちろん、性能は現状でもトップクラスであり、決して高すぎるとはいえないが、CPUやHDDの価格が急激に下がっているので、相対的に高く感じられるようになったことも否定できない。
最近、秋葉原のいくつかのショップで、3dfxのVelocity 100というAGP対応ビデオカード(バルク品)を目にするようになった。本来は、ショップブランドマシンやホワイトボックスマシンに組み込んで販売するためのOEM向けローエンド製品のようだが、実売で5,000円台という価格は魅力的である。Velocity 100に関しては、3dfxのWebサイトにも掲載されているが、そこの記述を読んでも、Velocity 100に採用されているビデオチップの正体がいまいち掴めない。
Velocity 100の特徴として挙げられているのは、以下の通り。
そこで、これまでのHotHotレビューでビデオカードを取り扱った場合と同様に、ベンチマークテストを行なってみた。テスト環境も従来と同じである。比較のために、Voodoo Banshee搭載カード(Quantum3D社のRaven)での測定結果と、過去の主な結果もあわせて掲載した。
■2D描画/3D描画ともに予想以上の好成績
1.2D描画パフォーマンス
2D描画パフォーマンスの測定には、Ziff-Davis,IncのWinBench 99 Version 1.1に含まれるBusiness Graphics WinMark99とHigh-End Graphics WinMark99を利用した。このベンチマークテストでは、ワープロや表計算ソフトなどの実際のアプリケーションに含まれる描画ルーチンを再現することで、総合的な2D描画パフォーマンスを測定できる。従来と同様に、1,024×768ドット、リフレッシュレート85Hz、16bitカラーモードと32bitカラーモードで測定した。
【WinBench 99 Version 1.1 Graphics WinMark】
Business Graphics WinMark 99/16 |
High-End Graphics WinMark 99/16 |
Business Graphics WinMark 99/32 |
High-End Graphics WinMark 99/32 |
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Velocity 100 | 178 | 518 | 116 | 514 |
Velocity 100 (166MHz) |
179 | 517 | 116 | 508 |
Voodoo Banshee | 158 | 384 | 138 | 431 |
Millennium G400 MAX |
194 | 550 | 190 | 541 |
VooDoo3 3500TV |
180 | 520 | 177 | 511 |
Voodoo3 3000 |
182 | 528 | 179 | 517 |
Millennium G400 |
192 | 556 | 189 | 548 |
Viper V770 Ultra |
186 | 522 | 182 | 518 |
Velocity 100は、Millennium G400 MAXやViper V770 Ultra(TNT2 Ultra搭載)といった、現在最速との呼び声も高いハイエンドカードと比べても、それほど遜色のない結果を出している。ただし、Business Graphics WinMark 99の32bitモードでの値は、かなり低くなっている。Voodoo Bansheeはほかのカードに比べて、世代的にかなり古いため、全体的に低い数値しかでていない。
2.Direct 3D描画パフォーマンス
Direct 3D環境での総合的な3D描画パフォーマンスは、FutureMarkの3DMark99 Maxを利用して計測した。800×600ドット、1,024×768ドット、1,280×1,024ドットのそれぞれの解像度について計測を行なった。なお、現在までに登場しているVoodooシリーズは、16bitレンダリングしかサポートしていないので、3D関係のベンチマークはすべて16bitカラーモードのみで行なっている。
【3DMark99 Max】
800x600/16 | 800x600/32 | 1,024x768/16 | 1,024x768/32 | |
---|---|---|---|---|
Velocity 100 | 4,856 | d/s | 2,744 | d/s |
Velocity 100 (166MHz) | 4,954 | d/s | 2,901* | d/s |
Voodoo Banshee | 2,707 | d/s | 1,816 | d/s |
Millennium G400MAX | 5,002 | 4,975 | 4,873 | 4,487 |
VooDoo3 3500TV | 4,940 | d/s | 4,789 | d/s |
Millennium G400 | 5,062 | 4,971 | 4,820 | 4,107 |
Voodoo3 3000 | 5,002 | d/s | 4,631 | d/s |
Viper V770 Ultra | 4,930 | 4,856 | 4,567 | 3,881 |
SPECTRA 5400 | 4,893 | 4,454 | 4,125 | 3,302 |
1,280x1,024/16 | 1,280x1,024/32 | |
---|---|---|
Velocity 100 | 2,890 | d/s |
Velocity 100 (166MHz) | 測定不能 | d/s |
Voodoo Banshee | 1,083 | d/s |
Millennium G400MAX | 4,063 | 3,063 |
VooDoo3 3500TV | 4,762 | d/s |
Millennium G400 | 3,504 | 2,582 |
Voodoo3 3000 | 3,314 | d/s |
Viper V770 Ultra | 3,009 | 2,089 |
SPECTRA 5400 | 2,568 | 1,589 |
Direct 3D環境での描画パフォーマンスも、800×600ドット16bitカラーモードなら、ハイエンドビデオカードの結果に肉薄している。ただし、解像度が高くなると、性能差が目立つようになる。
3.3Dゲーム(Direct 3D、Glide対応)の描画パフォーマンス 次に、Direct 3DとGlideに対応したゲームソフト「Turok2:Seeds of Evil」を使って、3Dゲーム上での描画パフォーマンスを計測してみた。32bitカラーモードには対応していないため、16bitカラーモードで、Direct 3D環境とGlide環境のそれぞれで計測した。
【Turok2:Seeds of Evil】
800x600/16 | 800x600/16/Glide | 800x600/32 | |
---|---|---|---|
Velocity 100 | 57.8 | 68.3 | d/s |
Velocity 100 (166MHz) | 57.4 | 70.8 | d/s |
Voodoo Banshee | 43.9 | 測定不能 | d/s |
G400MAX | 56.9 | d/s | 59.2 |
VooDoo3 3500TV | 58.8 | 75.3 | d/s |
Millennium G400 | 57.8 | d/s | 57.0 |
Voodoo3 3000 | 60.2 | 73.7 | d/s |
Viper V770 Ultra | 60.6 | d/s | 57.7 |
3D Blaster RIVA TNT2 | 59.7 | d/s | 57.4 |
1,024x768/16 | 1,024x768/16/Glide | 1,024x768/32 | |
---|---|---|---|
Velocity 100 | 48.2* | 52.1 | d/s |
Velocity 100 (166MHz) | 52.9* | 58.6 | d/s |
Voodoo Banshee | 32.5 | 測定不能 | d/s |
G400MAX | 58.6 | d/s | 57 |
VooDoo3 3500TV | 53.4 | 72.0 | d/s |
Millennium G400 | 56.0 | d/s | 53.8 |
Voodoo3 3000 | 57.9 | 65.5 | d/s |
Viper V770 Ultra | 57.8 | d/s | 52 |
3D Blaster RIVA TNT2 | 57.2 | d/s | 53.3 |
1,280x1,024/16 | 1,280x1,024/16/Glide | 1,280x1,024/32 | |
---|---|---|---|
Velocity 100 | 測定不能 | 測定不能 | d/s |
Velocity 100 (166MHz) | 測定不能 | 測定不能 | d/s |
Voodoo Banshee | 19.6 | 測定不能 | d/s |
G400MAX | 54.2 | d/s | 47.8 |
VooDoo3 3500TV | 39.4 | 53.2 | d/s |
Millennium G400 | 51.0 | d/s | 42.2 |
Voodoo3 3000 | 45.6 | 45.9 | d/s |
Viper V770 Ultra | 53.1 | d/s | 35.3 |
3D Blaster RIVA TNT2 | 52.7 | d/s | 34.4 |
こちらも、先ほどの3DMark99 Maxとほぼ同じような傾向があらわれている。800×600ドット16bitカラーモードなら、ハイエンドビデオカードにも負けないパフォーマンスを実現しているが、解像度が上がるとその差が少し開いてくる。また、1,024×768ドットでDirect 3Dを利用すると、銃から出るビームや弾が正しく描画されない(正方形の枠が表示されてしまう)という現象が発生した。同じ1,024×768ドットでも、Glideを利用すると、正しく描画されたので、Direct 3Dのドライバ周りに不具合があるのであろう。
4.3Dゲーム(OpenGL対応)の描画パフォーマンス
最後に、OpenGLに対応したゲームソフト「QuakeII」を利用して、ベンチマークテストを行なってみた。
【Quake II】
800x600/16 | 1,024x768/16 | 1,152x864/16 | 1,600X1,200/16 | |
---|---|---|---|---|
Velocity 100 | 50.3 | 36.2 | 28.3 | 測定不能 |
Velocity 100 (166MHz) | 55.5 | 40.4 | 28.9 | 測定不能 |
Voodoo Banshee | 34.6 | 22.4 | 18.9 | 測定不能 |
Millennium G400MAX | 64.3 | 62.5 | 56.4 | 測定不能 |
Voodoo3 3500TV | 117.8 | 91.1 | 73.8 | 測定不能 |
Millennium G400 | 66.0 | 58.6 | 50.5 | 28.2 |
Voodoo3 3000 | 117.2 | 82.1 | 67.2 | 35.2 |
Viper V770 Ultra | 79.1 | 51.9 | 41.2 | 21.6 |
Voodoo3に比べれば、半分以下のフレームレートしか出ていないが、30フレームを超えていれば、動きは滑らかに感じられるので、1,024×768ドット程度までなら、十分快適にプレイできる。やはり、Voodoo Bansheeの値はかなり見劣りしてしまう。
【テスト環境】
CPU:Pentium III 500MHz
マザーボード:ASUSTeK Computer P2B
メモリ:128MB(PC-100 SDRAM)
HDD:Quantum Fireball EX6.4A
■やはりVoodoo3の廉価版か?クロックアップにも成功
ベンチマークテストの結果、Velocity 100は、その価格からは想像できないほど、高いパフォーマンスを持っていることがわかった。性能的な面からも、Voodoo Bansheeではなく、Voodoo3ベースのチップが採用されている可能性が高い。Velocity 100のドライバをインストールすると、3dfx Infoと3dfx Tweakというタブが画面のプロパティに追加される。3dfx Infoでは、Velocity 100のコアクロックとメモリクロックを知ることができる。出荷時の状態では、コアクロックとメモリクロックはともに143MHzになっている。コアクロック/メモリクロック143MHzというのは、Voodoo3 2000と同一だ。Voodoo Bansheeは、ともに100MHzで動作していることから考えても、やはりVoodoo3の仲間だと思った方がよいだろう。
そこで、PowerStrip 2.51.08を用いて、クロックアップに挑戦してみることにした。PowerStripでも、ビデオチップの名称は、Voodoo3として認識される。試しに、Voodoo Banshee搭載ビデオカードを装着して、PowerSrtipを導入してみたところ、Voodoo Bansheeと認識されたので、やはりVoodoo3ベースのチップであるという予想が裏付けられる格好になった。
PowerStripではVoodoo3と表示される | 動作クロックを167MHzにしてみた |
ヒートシンクを外してみたがVoodoo3などの印刷は見られない |
メモリクロック/コアクロックを166MHzに設定して同様にベンチマークテストを行なったところ、WinBench 99のGraphics WinMarkは、問題なく動作したものの、3DMark99 MAXのテスト中にハングアップしてしまった。ヒートシンクを指で触ってみると、かなり熱くなっている。そこで、ヒートシンクにファンを取り付けて、冷却効果を上げることにした。ファンをつけると、3D系ベンチマークテストも問題なく動作した。Velocity 100を166MHz動作させたときのベンチマーク結果も先ほどの表にあわせて掲載している。2D描画パフォーマンスは特にかわらないが、3D描画パフォーマンスは、クロックを上げることで多少なりとも向上していることがわかる。
Velocity 100のビデオチップには、ヒートシンクが装着されているため、直接チップ表面を見ることはできない。そこで、ヒートシンクを剥がしてみたが、特にVoodoo3という表記は見られなかった。
■コストパフォーマンスは非常に優秀であり、サブマシンなどにもお薦め
Velocity 100は、5,000円台とは思えないほどの高いパフォーマンスを持ったビデオカードであり、コストパフォーマンス的には非常に優れている。ビデオメモリを8MBしか実装していないというところがやや気になるが、実際は8MBで十分足りることも多い。できるだけ安くマシンを組み立てたいという人には、特にお薦めしたい。
なお、米国ではVelocity 200という製品もリリースされているようだ。Velocity 200は、Velocity 100の上位に位置する製品で、Velocity 100の2倍のビデオメモリ(16MB)を実装していることが特徴だ。こちらも、実売1万円以下で発売されるのなら、お薦めできる。
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[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]
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