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NVIDIA、ベンチマークテスト「TreeMark」をリリース



■NVIDIA、ベンチマークテスト「TreeMark」をリリース

 先週NVIDIAは、TreeMarkというベンチマークテストをリリースした。このTreeMarkは、IDF開催中のPalm Springsでプレス向けに披露されたOpenGLによる技術デモの1つをベースにしたもの。今時の3Dグラフィックスベンチマークにしては珍しく?ファイルサイズは950KB程度で小さい。興味のあるむきは、 http://www.nvidia.com/products.nsf/htmlmedia/treemark.htmlから入手できる。

 TreeMarkがこれまでのPC向け3Dグラフィックスベンチマークと大きく異なるのは、レンダリングよりもジオメトリに負荷がかかる、ということだ(ファイルサイズが小さい理由もここにある)。Simple.batによるテストはシーンあたり3万5,820ポリゴン、Complex.batによるテストでは12万8,080ポリゴンが描画される。

 NVIDIAによると、前者はこのクリスマス商戦にリリースされるアプリケーションに相当するポリゴン数で、後者は2000年にリリースされるアプリケーションに相当するのだという。TreeMarkを実行することで、現在使用中のPCがこれらのアプリケーションに対し、準備が出来ているかどうかが分かる、というのが同社の主張だ。

 もちろん、この主張を鵜呑みにするべきではない。このTreeMarkは、NVIDIAが間もなくリリースするビデオチップGeForce 256の優秀性をアピールするためのツール、と考えた方が自然だ。GeForce 256は、PC向けの1チップアクセラレータとしては、初めて3Dグラフィックスのジオメトリ処理(DirectX 7がサポートするTransform & Lighting、もちろんOpenGL ICDではすでにサポート可能)をハードウェアでサポートする。これまでPCでは実現できなかった、複雑な(ポリゴン数の多い)シーンの描画も、GeForce 256なら可能になるということを示すためのものに違いない。

 たとえば、筆者の手元にある実験システムの1台でこのTreeMarkを実行したところ、Simpleは7.989fps、Complexは1.716fpsという結果になった。Palm Springsでは、同じデモがGeForce 256によりギュンギュン動いていたことを考えると、ちょっと惨めな数字だが、ここで筆者が用いた実験システムは、プロセッサが600MHzのPentium III、128MBのメモリを搭載し、ビデオカードにMatroxのMillennium G400を用いたものである。確かに、MatroxはOpenGL ICDの出来の良さで知られるベンダではないかもしれないが、このシステムだって、今でも市場の中では高速な部類に入るハズだ。それでも、この成績しか上げられないのである。

 この実験結果から分かることは、ポリゴン数の多い複雑なシーンにおいて、ハードウェアTransform & LightingをサポートしたGeForce 256の性能は、これまでのビデオカードの性能から突出している、ということだ。当たり前だと思われるかもしれないが、ことはそう単純ではない。性能のケタが違ってしまうと、同じアプリケーションが利用できなくなってしまうのである。

 具体的に言えば、GeForce 256用に最適化したアプリケーションは、ハードウェアTransform & Lightingを持たない既存のビデオチップでは実用にならない(逆に既存のビデオチップ用に作られたシーンが単純なアプリケーションでは、GeForce 256の特徴を引き出せない)。だが、どんなにGeForce 256が優秀だろうと、市場でのインストールベースは極めて小さい。果たしてISVはGeForce 256でしか動かないアプリケーションを極めて少数しか売れないと分かっていてリリースするだろうか。この点において、上述したNVIDIAの主張(クリスマス商戦に3万5000ポリゴンクラスのアプリケーションが登場する)は、ちょっと疑わしい。と同時に、同じくTransform & LightingをサポートしたS3のSavage 2000は、GeForce 256にとってライバルでありながら、旧世代のビデオチップを蹴散らす(ハードウェアTransform & Lightingのインストールベースを拡大する)ための同士にもなりうる。

 NVIDIAの突出ぶりは、GeForce 256だけではなく、半年ごとに性能が2倍のチップを当面リリースし続ける、と言っていることにもある。18ヶ月ごとに性能が2倍になるムーアの法則の3乗で性能が向上すると、NVIDIAのCEOは豪語した。また、PlayStation2が「米国で正式にリリースされる時」までには、同社のビデオチップを用いたPCのグラフィックス性能はPlayStation2を上回るだろう、と予想している。

■ビデオチップ業界再編へ

 このような突出が市場にもたらすのは、業界再編である。今年のクリスマス商戦に新世代のビデオチップをリリースできそうなのは、NVIDIAのほかには前述のS3、後は3Dfx(ただしハードウェアTransform & Lightingをサポートするのかどうかは不明)くらい。その他のベンダは現行のチップ、あるいはそのクロックアップ版といった小改良の製品での戦いを余儀なくされそうだ。

 すでに述べたように、アプリケーションの環境(対応したゲーム)がクリスマス商戦に間に合うとは思えないが、それを言えばAGPテクスチャ、32bitレンダリング、ハードウェアテクスチャ圧縮、バンプマッピングなど、現時点で主流のビデオチップがサポートするフィーチャーも同じこと。おそらくクリスマス商戦では、ハードウェアTransform & Lightingをサポートしていないビデオチップは、実アプリケーションの有無にかかわらず、時代遅れのものとして苦戦することになる可能性が高い。その次に待っているのが合併や吸収だったとしても不思議ではない。

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[Text by 元麻布春男]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp