Click


元麻布春男の週刊PCホットライン

フロッピーディスクに代わるリムーバブルデバイス



■すでに力不足のフロッピーディスク

 先週取り上げたバックアップソフトに共通した問題は、有効なバックアップデバイス(バックアップ用のストレージ)がない、ということであった。もちろん、市場には様々な種類の大容量リムーバブルストレージデバイスが存在するし、筆者自身はテープドライブ(これもリムーバブルストレージデバイスの1種と言えるが)を愛用している。だが、これらのデバイスが気軽に利用できるかというと、どうも怪しい。何より最大の問題は、こうしたデバイスが多くのシステムで標準搭載されておらず、ユーザーが別途購入しなければならない、ということにある。現時点ですべてのユーザーに与えられているリムーバブルデバイスは、結局昔ながらの1.44MBフロッピーディスクだけなのである。

 フロッピーディスクには、データ転送速度が低いという問題もあるが、やはり最大の問題といえば、容量が小さいということに尽きる(容量が小さいからこそ、低いデータ転送速度で間に合ってきたと考えれば、両者を1つの問題とみなすこともできる)。これは、大容量化が進む現在のハードディスクのバックアップデータを保持するだけの容量がないといういことであると同時に、DOS以外のモダンなOSをブートするだけの容量さえない、ということでもある。緊急時のレストア用ブートメディアが1枚あたり1.44MBのフロッピーディスクであるからこそ、レストア用のOSにDOSを選ばなければならないのであり、レストア用OSがDOSだからこそ、リアルモードドライバの組込みが不可欠な大容量リムーバブルデバイスやネットワークドライブをバックアップ用ストレージとして使いにくいのである。では、この問題をどう解決するかということだが、これだけ古い問題であるにもかかわらず、これという名案がない。

■書き込み可能なリムーバブルデバイスを持たない次世代モデル

 先日開かれたIDFで、IntelはConnected Concept Houseと呼ばれるテーマ展示を行なった。そこには同社が、未来の家庭にあるべきPCの姿を先取りしたコンセプトモデルや、間もなくサードパーティがコンシューマー向けに売り出す(しかし普通のPCとは一味違った)PCが陳列されていた。つまり、近い将来のPC像をうかがい、Intelが次世代のリムーバブルデバイスについてどう考えているのかを知る良い機会だったのだが、展示されていた大半のPCが書き込み可能なリムーバブルデバイスを(通常のフロッピードライブさえも)、全く装備していなかった。

 通常のフロッピードライブが見られなかった理由が、通常のフロッピーインターフェイスがいわゆるレガシーインターフェイスであり、もはや利用することが許されないからであることは間違いない。珍しくフロッピードライブを備えたPCも、そのインターフェイスはUSBであった(ただし、この「フロッピー」が通常の1.44MBタイプなのか、SuperDisk等の大容量タイプなのかは不明である)。

 つまり、IntelはUSBをストレージデバイスの接続インターフェイスにも使うつもりのようだ。USB 2.0のデータ転送速度が最大480Mbpsまで引き上げられるのも、この動きと無縁ではないだろう(以前は、Intelのテクノロジーロードマップ的にはIEEE-1394を使うことになっていた)。しかし、ここからシステムの起動を可能にするつもりがあるのか、というと良く分からない。どうもIntelは、システムに標準添付されるかどうかも定かではないUSBフロッピーより、CDやDVDを標準的なシステム起動デバイスにしたい、と考えているようなのだ(だからこそ、展示システムの多くがハードディスクとCD/DVD-ROMドライブの2本立て構成になっている)。

 システム起動をサポートするには、現在のPCアーキテクチャを前提にする限り、BIOSによるサポートが不可欠だ。しかし、全体の流れはBIOSの廃止に向かっており、IEEE-1394やUSB 2.0のBIOSサポートはほとんど話題にもならない(それが最も顕著に表れているのが、BIOSをオプションにし、代わりにDIG64準拠のファームウェアのみを搭載するIA-64システムだ)。筆者にはIntelが考える将来システム(IA-32)のストレージ構成は、2チャンネルのIDE(ブート可)に、それぞれCD/DVD-ROMドライブとハードディスクを1台づつ接続し、内蔵/外付けを問わずUSB(ブート不可)でカジュアルな書き込み可能なリムーバブルメデイアを接続する、というものに思える。

 こうしたフロッピーレスの(あるいは相当のストレージデバイスを持たない)構成というのは、iMacに倣ったものとも考えられるが、本当に書き込みとシステム起動が可能なリムーバブルデバイスなしで良いのだろうか。ネットワークに接続されることが前提のビジネスPCならともかく、コンシューマー向けPCでバックアップ手段を内蔵しないというのは、かなりの冒険だという気がする(現状のフロッピードライブが、バックアップ手段として有効かと言われると困るが)。

 この疑問に対して現時点で最も現実的な解は、おそらくCD-RWドライブだ(大容量化を続けるハードディスクには、これでも容量的に心もとない気がしなくもないが)。メディア価格の違いが反映してか、わが国ではCD-Rに比べCD-RWの人気はあまりパッとしないが、米国ではCD-RWに対する期待感はものすごく強い。CD-RWの問題は、まだドライブ価格が高いということに加え、忘れてならないのがOSのサポートだ。現状、CD-RWを使う場合、読み出しは特別なソフトウェアを必要としない(OSにビルトインのドライバで対応できる)が、書き込みにはサードパーティ製のライティングソフトが不可欠だ。筆者は、CD-RWが「標準」の書き込み可能なリムーバブルデバイスとして、フロッピードライブの後継者になるには、OSにビルトインのドライバ/ユーティリティだけで完全に利用可能になる必要があると思うのだが、どうだろうか。

バックナンバー

[Text by 元麻布春男]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当pc-watch-info@impress.co.jp