第25回:「DellがついにPC売り上げ1位に」ほか
●米国でCompaqを抜く
ついに、Dell ComputerがCompaq Computerを抜いた。前回を含め何度も、Dellが好調だ、PCで1位になりそうだ、と書いてきた。しかしその割になかなかCompaqを抜けなかった。それが'99年第2四半期の米国のPC売り上げ台数でついにそれを果たした。
統計を出したのは米調査会社のIDC (International Data Corp.)。表を見てもらえばわかるとおり、米国ではDellが僅差でCompaq Computerを抜き、3位以下はちょっと離れてIBM、Gateway、Hewlett-Packardの順となった。ただし世界ではまだCompaqが1位で、次いでDell、IBM、Hewlett-Packard、NEC及びPackard Bell NECの順だ。IDCによればベンダー成長のカギはコンシューマ/SOHO向けPCの品揃え、インターネット戦略、ポータブルPCの量産で、これができるのはDell、Gateway、IBM、Apple Computerなどだという。その予測でいけば、今後、さらにCompaqの順位は落ちるということもありうる。
●PC成長に日本の小売市場が貢献
IDCは第3四半期のPC売り上げ台数の見込み統計も出した。それによれば世界のPC市場は相変わらず好調。とくに日本の小売市場が売り上げに貢献したという。
統計をもう少し細かく見ると、'99年第3四半期の世界のPC売り上げ台数は昨年同期比24.8%増、前期比7.2%増。要因はさらに安くなりつつある消費者向けPCへの需要、アジア市場の成長、米経済の強さ。日本は第2四半期に、前年比39%の成長を記録したが、消費者のインターネットショッピングや省スペース型デスクトップへの関心などが強いおかげで、第3四半期も前年比32%の成長という。米国は前年比28%の成長が見込まれている。
順位 | 社名 | 出荷数 | シェア | '98年Q2の出荷数 | '98年のQ2のシェア | 成長率 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | Dell | 1,809 | 16.6 | 1,143 | 14.3 | 58 |
2 | Compaq | 1,798 | 16.5 | 1,157 | 14.7 | 55 |
3 | IBM | 876 | 8.1 | 551 | 6.4 | 71 |
4 | Gateway | 845 | 7.8 | 623 | 7.8 | 36 |
5 | Hewlett-Packard | 841 | 7.8 | 628 | 7.8 | 34 |
他社 | 4,710 | 43.3 | 3,952 | 49.3 | 19 | |
全社 | 10,879 | 100.0 | 8,013 | 100.0 | 36 |
□「IDC Forecasts Healthy Worldwide Q3 1999 PC Demand with 24.8% Unit Growth over Q3 1998」
http://www.idc.com/Data/Personal/content/PS090799PR.htm
●VHSがレコードと同じ運命に?
初めてCDを手にしたとき、アナログレコードがあんなに早く消え去るとは夢にも思わなかった。だが、米国の調査会社の予測に従えば、3~5年後にはVHSに対して同じ思いを持つ人が多くなりそうだ。DVDビデオディスクの売り上げは4年後の2003年にVHSを抜くだろうというのだ。
現在の日本の状況から見ると、ちょっと疑わしく感じられる予測だ。日本ではDVDタイトルの種類が少なく、ビデオからDVDに乗り換えるメリットがあまり感じられないからだ。しかし米国ではDVDの映画ビデオが豊富に出回っている。当然DVDプレーヤーやDVD-ROMドライブ付きPCも普通に電器店に並ぶ人気商品だ。
予測を出したStrategy Analyticsによると、欧米ではDVDディスクの'99年の出荷は7,700万枚になり、2005年には年間20億枚になるだろうという。すごい枚数だが、もちろんこれにはビデオだけでなく、ゲームやパソコンのDVDソフトなども含まれる。
●日本ではプレイステーション2が起爆剤に?
じつを言えば、日本でもDVDディスクが何千万枚、何億枚というのは当たり前になるかも知れない。たしかに日本ではDVDプレーヤーは売れていないが、2000年3月に発売予定のプレイステーション2は、DVDゲーム機だからだ。今のプレイステーションの普及度を考えれば、プレイステーション2も成功する可能性は高い。そしてプレイステーション2をTVにつなげばDVDゲームのほかにDVDビデオも見られるから、これで一気にDVDディスクがブレークするかも知れない。いったんブレークして、ソフトの種類が増え、価格も安くなれば、ゲーム機を持たない家庭でもDVDプレーヤーやDVD-ROMドライブ付きPCを買うようになるかも知れず、相乗効果であっという間にDVDが普及することも考えられる。
一方、米国でのプレイステーション2の発売は2000年のクリスマス商戦と言われるが、Strategy Analyticsは、2002年にはDVDゲーム機は米国家庭の21%に普及していると見る。そして、すでによく売れているDVDプレーヤーやDVD-ROMドライブと併せ、2002年には何らかの形のDVD機器を持つ米家庭は全体の58%に達するという。つまりわずか3年後には、米国ではDVDのある家のほうがない家より多くなるわけだ。
昨年末、この欄でDVDはスプリングボードに乗った、と書いた。それから9カ月、DVDはより大きなスプリングボードに乗り換えようとしているようだ。
□「STRATEGY ANALYTICS FORECASTS WORLDWIDE DVD PLAYER SHIPMENTS TO REACH 17 MILLION UNITS IN 1999」
http://www.strategyanalytics.com/press/index.html
●「オンライントレーディング」は米国で大ブーム
敬老の日明けの新聞朝刊に証券会社2社が全面広告を打っていた。そのうちひとつはオンライン取引サービスの開始を大きく宣伝していた。10月からの株取引の手数料自由化に向け、証券会社が動き始めたのだ。
株取引がオンラインでできるようになったからって、だから何なのだと思うかもしれない。だが、米国ではオンライン株取引は、これまで株に手を出してこなかったインターネットユーザーを巻き込み、大ブームになっている。オンラインの利点は共通するから、日本でもオンライン株取引離陸の可能性は十分にある。そしてそれは、株取引そのものを大きく変えるかも知れない。
株というと難しく、証券マンのセールストークに乗せられてしまいそうなイメージがあるが、インターネットでは株の情報も簡単に集められ、取引も自分で主体的にできる。おまけに取引にかかる手数料も安い。
投資のトラブルから米国で7月末に殺人事件まで起きたのは記憶に新しいが、犯人はオンライントレーディングの中でも最も過激な取引をするデイトレーダーだった。一般の人はもっとヘルシーに、オンラインゲームかパチンコのノリでヘソクリを運用している。
●株投資の構造を変えるかも
こうしたブームを背景に、米Jupiter Communicationsは、米国ではわずか4年後の2003年までに、オンラインブローカーの資産が、'98年の7倍の3億ドルに達するとの予測を出した。また、オンライントレーディングをする家庭は98年にもすでに430万世帯もあったが、それが2003年は5倍近い、2,030万世帯に膨らむという。
この予測が意味するのは、オンライン株取引は一時のブームに終わらないということだ。今よりさらに多くの金が株式市場に流れ込み、さらに多くの「普通の」人たちが株取引をし始める。こうなると、金融市場そのものが大きく変わるだろう。力を持つのは機関投資家でなく一般投資家。資金を調達しようとする企業も、証券会社も、一般投資家のほうを向くようになる。
オンライン株取引が人々のお金をより吸い上げるようになれば、それは他の金融サービスも変えるかも知れない。例えばJupiterは、2003年までに銀行口座を持つ米家庭の30%、2,600万世帯がオンラインバンキングの口座を持つようになると見る。
オンラインバンキングについては、前回のこの欄で取り上げたように、試してみて不満を持つ人が多いという調査もあるのだが、オンライン株取引人気の前に銀行もおっとりしていられない。それがオンラインバンキングの内容に影響し、普及を後押しすることもあるかも知れない。
□「Jupiter Communications: $3 Trillion in Assets by 2003 in Online Brokerage Accounts, But Customer Service Still Lacking」
http://www.jup.com/jupiter/press/releases/1999/0901.html
[Text by 後藤貴子]