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後藤貴子の データで読む米国パソコン事情
 
第24回:「米国で成長鈍るオンラインバンキング」ほか



米国で成長鈍るオンラインバンキング


●310万人がオンラインバンキングをやめる

 ある会員制サービスに320万人がわっと加入しました。でも、310万人は中身に不満でやめてしまいました。やめた人の6割以上が、2度とそのサービスに入る気はありません。

 --と聞くと誰でもそれはよほどひどいサービスに違いないと思うだろう。だが、それが米国のオンラインバンキングの状況らしい。

 米調査会社Cyber Dialogueによれば、オンラインバンキング利用者は過去12カ月で10万人増えて630万人に達したが、310万人が利用をやめたことがわかった。もう一度試す気があるという人はやめた人のうち35%だけ。やめた理由は、サービスが複雑でカスタマーサービスのレベルも不満足だからという。

 面白いのは、同時に調査したオンライン株取引の方では、やめた人は3%のみで、85%は満足していること。結果、オンライントレーダーは53%成長し610万人に達したという。

 これには、今はインターネット株などで儲けられた人が多いという理由もあるかもしれないが、オンライン株取引は手数料を通常の取引よりぐっと低く設定しているサイトが多く、メリットがはっきりしていることもあるだろう。このレポートでは、銀行は「(株取引のように)もっとインターネットタイムで反応」し、サービス改善に努めなければと提言している。


●それでもオンラインバンキングは伸びる?

 オンラインバンキングは、将来的にオンライン請求書決済など手数料が発生する様々なサービスにつなげられるうまみがあるために、銀行はどこも力を入れている。だが、この調査結果での不人気ぶりを見ると、そうしたサービスはテイクオフせずに終わってしまうのだろうか。

 そうは言い切れないかも知れない。別の調査会社Dataquestからは、パソコンバンキングを利用する米国世帯は、'98年の700万世帯から、5年後の2004年には3倍以上の2,420万世帯に増加するという予測が出ている。また、利用者の増減調査とは違うが、ヨーロッパではオンラインサービスを行なう銀行が増えているという調査もある。

 Dataquestの予想の根拠はリリースでは不明だが、わかりにくく不親切なサービスという不満の理由が取り除かれれば、米国でも再び利用者は伸びるかも知れない。なにしろ、実際に1年間に300万人以上がトライしているのだから。

□「Online banking growth stagnates due to user churn」
http://www.cyberdialogue.com/press/releases/ccf-banking_stagnation.html
□「GartnerGroup's Dataquest Forecasts Three-Fold Increase in Online Banking Over Next Five Years」
http://gartner11.gartnerweb.com/dq/static/about/press/pr-b9945.html



快進撃を続けるDell Computer


●価格競争の中で好業績上げる

 Dell Computerがワークステーションでシェア1位に-Dellによれば、x86-Windows NTベースのワークステーション市場で、Precisionが'99年第1四半期、シェア1位をとったという。米調査会社Dataquestが推定したもので、具体的なパーセンテージは不明だが、'97年に初めて参入して以来わずか2年でDellがトップの座を奪ったことになる。

 最近、Dellは好調だ。8月半ばに発表した第2四半期の業績でも、昨年より収入が58%アップ、売り上げが42%アップ。Dellによれば、ワークステーションのほか、米国でサーバーのシェアが2位、パソコンでも、コンシューマ市場でシェアが1年で7位から4位にジャンプし、スモールビジネス市場でナンバーワンを維持しているという。

 パソコン市場はビジネス向けコンシューマ向けとも価格が下落しているし、ワークステーションも、Dell自身が米国でのPrecisionの価格の最大16.6%カットを発表するなど、やはり価格競争は強まっている。それなのに、なぜ、同社はそこまで快調なのだろう。

●高価格でも支持が高い

 それは、ワークステーションで低価格攻勢をかけながらも、Dellのパソコンが高価格でも売れているからだろう。

 この2年ほどのパソコンの低価格化は著しい。特に米国では、今では400ドルとかタダとかいうパソコンが登場している。2年ほど前は他社と比べて遜色なかったDellのパソコンは、今では高い部類になってしまった。つまり価格競争では脱落組なのだ。

 なのに売れている、その秘密は別の調査からうかがえる。

 調査会社Technology Business Researchが四半期ごとに企業IT部門にアンケートしてまとめている、満足度調査がある。これによると、Dellはサーバーでも、デスクトップでもノートでも、1年以上ほぼトップを独占し続けているのだ。

 企業と個人では満足のポイントに若干違いはあるだろう。しかし、最近は一般消費者でも2台目以降を買う人の割合が増えている。そうした中級以上のユーザーやSOHOユーザーでは、パソコンに求めるポイントは企業と似てくる。彼らが、価格が高めでもDellを買い、Dellの好業績を支えているのだ。

●何の変哲もないから人気?

 では、Dellのパソコンのどんな点が好まれているのか。それはたぶん、何も奇をてらったことをしていないからだろう。

 同社のパソコンは、ソフトをてんこ盛りにしたり、独自のラウンチソフトなどは用意しないので、入門者にはとっつきが悪い。モニタ込みのモデルのお得感もないし、デザインも素っ気ない。しかし、中級以上のユーザにとってはバンドルソフトやモニタは不要なことが多い。それより、安定第一の設計で自分でOSやパーツをアップグレードしたりしやすいなど、玄人向けのサポートがあるほうがありがたい。Dellの方針はまさにそれで、面白みはないが合理的といえる。

 CEOのMichael Dell氏はインターネットを徹底的に利用することで、この合理精神を製品開発やサービスに、より発揮させようとしているらしい。リリースによれば、Dellはテクニカルサポートをインターネットで半ばオートメ化し、技術者を派遣しなくても80%のサポート問題を解決しているという。この数字は、業界平均では27%に留まっている。

 Dellがワークステーションに進出したのも、高額機の市場を取るという意味のほかに、IBM、Hewlett-Packard、Compaq Computerなど他のワークステーションや上位コンピューターのメーカーに揺さぶりをかける目的があるとされる。これらのメーカーがパソコンで低価格競争を続けられるのは高額機の収益で体力があるからで、その収益源を絶つことになるからだ。

 今回のワークステーションのシェア1位と業績の良さは、この合理的ビジネス精神の固まりのような戦略が、うまく回り始めていることを示しているといえそうだ。

□「DELL PRECISION WORKSTATIONS RISE TO NO. 1」
http://www.dell.com/corporate/media/newsreleases/99/9908/3.htm
□「DELL'S Q2 EARNINGS RISE 58 PERCENT, AS REVENUE CLIMBS 42 PERCENT」
http://www.dell.com/corporate/media/newsreleases/99/9908/17.htm
□「MICHAEL DELL SAYS ONLINE SALES REPRESENT A FRACTION OF INTERNET'S MASSIVE BUSINESS POTENTIAL」
http://www.dell.com/corporate/media/newsreleases/99/9908/25a.htm
□「2Q99 Customer Satisfaction Study Shows Telling Shifts in Ratings」
http://www.tbri.com/hotstuff/080999.asp



Microsoftの好感度下がる


●Microsoftの好感度下がる

 米New York Times/CBS Newsの調査によれば、コンピューターユーザの60%がMicrosoftに好感を持つと答えたという。ただし1年前の調査ではこの割合は67%だった。

 1年で7%の下落は、反トラスト裁判が行なわれた割にはいいというべきか、それともNew York Times紙が市場調査会社社長の言として述べたように問題としてとらえるべきなのだろうか。60%や67%という数字には、製品のユーザとしての気持ちよりも、「強い米国の会社」を誇る気持ちが多く含まれているような気がする。

□「Fewer Computer Users Give Microsoft a Positive Rating」
http://www.nytimes.com(登録が必要)

[Text by 後藤貴子]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp