[TEXT by 矢作 晃]
■機械式から光学式マウスに進化
さて、まずは外観だが、これまでのMicrosoft製マウスに顕著だった白系統のデザインから一転、銀を基調にしたデザインが採用されている。また、テールの部分は底面に使用されている赤い半透明パーツが上部へ張り出しており、動作中はLEDが点灯している。この辺りはマニアにも受けそうな凝りようで、さらにLEDの点灯によって本体との接続や動作状態が確認できるのは嬉しい配慮といえる。いっぽうで、このLEDの点灯でほんのわずかとはいえ電力消費が増えているのも事実。デスクトップでの利用については気にする必要もないが、ノートパソコンで利用する時には気になるユーザーもいるはずだ。
そしてデザイン以上に、これまでのIntelliMouseとIntelliMouse Explorerとを大きく隔てているのが、移動距離の読みとり方式の変更だ。伝統的なボールを使った機械式の読みとりから光学式へと改められている。もちろんこれまでも、光学式マウスは存在したが、それらはいずれもグリッドの刻まれた専用のマウスパッドを使用するものだった。しかしIntelliMouse Explorerは、カメラとDSPを用いることで接地面をスキャンし、位置を判定する。接地面にわずかな凹凸さえあればマウスパッドの有無や、素材を問わないのがウリである。一般的に光学式のメリットとしては、機械式のような稼働部分がないため故障の発生率が低いこと、移動距離を判断する精度が高いことなどが挙げられる。さらに実用的なところでは、誰しも一度はやったことがあるであろう、ボールとローラーに挟まれる本体内のゴミ掃除から解放されるという点も見逃せない。
もうひとつ、IntelliMouse Explorerの特徴を挙げておこう。それはマウス左側面に追加されたふたつのサイドボタンの存在である。このボタンにはそれぞれ好きな機能を割り振ることができるのだ。つまりIntelliMouse Explorerには、ひとつのホイール(ボタンとしても機能)と4つのボタンが存在することになる。
■ドライバも最新の「IntelliPoint 3.0」にバージョンアップ
付属するドライバソフトは「IntelliPoint 3.0」。IntelliMouse Explorerに対応した最新バージョンである。また、提供されるメディアもこれまでのフロッピーディスクからCD-ROMへと変更された。このCD-ROMを挿入すると、AutoStartによるインストール画面が表示され、あとはウィザードに従っていくだけで「IntelliPoint」がインストールされる。今回はPS/2接続によるインストールを行なったので、起動時は通常の2ボタンマウスとして認識された。「IntelliPoint」をインストールして再起動すると、ホイールや各種ボタンの機能が有効になる。もちろん、USB接続でのPlug&Playによるドライバインストールも可能である。
マウスのプロパティに新しく加わったのが「ボタン」の設定で、各種ボタンに機能を割り当てることができる。標準設定では、サイドボタンの大きい方がブラウザの「戻る」、小さい方がブラウザの「進む」に割り当てられている。割り当てられる機能には、シフトキーやコントロールキーといったキーボードの機能はもちろん、コピーや貼り付け、各ファンクションキー、最大化や最少化、スタートボタンなど実にさまざまな機能を割り当てることができる。
CD-ROMの挿入でAutoStartする「IntelliPoint 3.0」のインストールウィザード | 「IntelliPoint」ソフトウェアは、様々なMicrosoft製マウスに対応している | 機能の割り当てを変えようとしているボタンの色が変わっているのにも注目 |
■使用感もほぼ良好
実際にIntelliMouse Explorerを使ってWindowsの操作を行なってみると、確かにこれまで使っていたマウスと形状が若干変わったことで、握った感じに違和感こそある。しかしそれは次第に解消していくものと思われ、決して受け入れられないような変化ではない。そして向上したと感じられるのは、ポインタの動きに無駄がなくなった(ように思える)ことだ。言い換えれば、目的とする位置にピタッと定まる感じである。また、これまでは多少感じていた手のひら下のボールが転がるかすかな重さも感じない。慣れてしまえば、ポインタの移動に関しては満足することばかりだろう。
いっぽう、サイドボタンの使い勝手については、短時間の利用では結論が出しにくい。筆者のマウスの握り方の特徴かも知れないが、無意識にかなりテール寄りに掌をおいてしまうのだ。必然的に、左右のクリックボタンもテールよりの部分をクリックしてしまいがちである(これはMacintoshを多用しているため、小さめのマウスを握ることが多い点にも由来する)。ところがこうして握った場合、なんと前方に位置するサイドボタンには親指が届かないのだ。従って、前方のサイドボタンをクリックしようとすると、ちょっと持ち替えるハメになる。これは効率が悪い。そのことに気が付いてからは意識して前方のサイドボタンに親指が届く状態で握るようにしてみたが、やはり長年の習慣は一朝一夕には直らないもので、ついつい届かない位置で握りはじめてしまう。こればかりは、意識して直していかないとマズイようだ。
サイドボタンについては、気になることがもうひとつある。前述のように前方のボタンに親指が届くように握ると、後方のボタンをクリックする際は、結構深く親指を曲げる必要があることだ。デフォルトでは、ブラウザの「戻る」ボタンがここに割り当てられているが、「進む」よりは「戻る」を多用する機会の多い筆者には少々つらい。これに関しては、早々に割り当てを入れ替えてしまった。もちろん、こうした指や手の感覚には個人差があるので、実際に利用してみて試行錯誤していくほかはないだろう。
また、これはいたしかたないことだが、サイドボタンの割り当てが環境内で共通であることはもったいない気がする。例えば、InternetExplorerであったりWindowsのファイル操作であれば「進む」、「戻る」ボタンは有効に活用できるが、WordやExcelではそれほど役に立たない。Wordであればコピー&ペーストに、ExcelであればΣや書式の設定などに割り当てておきたい。できれば使用するアプリケーションごとにボタンの割り当てを設定したいところだ。
実際にマウスを接地できるところをいろいろ試してみたが、かなりの無理はきく。もちろん接地面の凹凸を認識しているわけだからガラスのようにツルツルした面は厳しいのだが、そこらにある紙を一枚はさんでしまえば問題はたちどころに解決する。残念ながら普段利用している机(KOKUYO製ベジェ)はかなりキレイにコーティングされているようで、そのままでは利用できなかった。しかし、付属するマウステーブルの部分ではなんとか動作する。見た目やさわった感じで表面の違いに気が付くことはないのだが、ほんとうに微妙な凹凸を認識しているようだ。もちろん、通常は薄手のマウスパッドを利用するのがベストだろう。
■発売は10月? Macintosh版は?
IntelliMouse Explorerの発売時期だが、米国内では10月1日が予定されている。これまでの同社製品の日米間の発売時期の違いから考えると、数週間以内にローカライズ版が発売されると思っていいだろう。また、E3のレポートでも紹介されているように、米国内では製品の永久保証も検討されている。日本における保証期間は未定だが、構造上は製品寿命が3~5年程度に伸びそうなことから、現行製品の1年保証よりも長い保証期間も期待できそうである。米国での価格は74.95ドルを予定している。日本でもそれに準じた価格となりそうだ。
また、7月にニューヨークで開催されたMacworld EXPOの会場でも、IntelliMouse Explorerはデモンストレーションされている。こうしたMacintoshやiMacへの対応についてだが、残念ながら専用パッケージという形での販売は予定されていない。インターネットからのダウンロードや雑誌の付録CD-ROMへ収録によるMacintosh用ドライバの配布という形で対応することになりそうだ。こちらの配布時期も、米国での配布開始からできるだけ早期に実現したいということである。
□Microsoftのホームページ(英文)
http://www.microsoft.com/ms.htm
□ニュースリリース(英文)
http://www.microsoft.com/presspass/press/1999/apr99/eyepr.htm
http://www.microsoft.com/presspass/features/1999/04-19mouse.htm
□関連記事
【5月17日】IntelliMouse Explorer開発者インタビュー
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990517/e3_06.htm
【5月25日】マイクロソフト、ハードウェアラインナップを強化
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990525/ms.htm
【7月27日】廉価版の光学式IntelliMouseをCONSUMER SHOWCASEで発見
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/article/990727/macw_07.htm
('99年9月1日)
[Reported by 矢作 晃]