後藤弘茂のWeekly海外ニュース

IntelがVIAの133MHz FSBチップセットを阻止へ


●IntelがVIAの133MHz FSBチップセットを訴える

 Intelが台湾VIA Technologiesを訴えた。この衝撃的なニュースが、先週末、業界を駆けめぐった。「Intel sues Via for breach of contract...again」(Electronic Buyer's News,'99/6/25)によるとIntelは、VIAと昨年結ばれたP6バスのライセンスに違反したと訴えたという。記事によると、Intelは、そのライセンスではApollo BXやApollo Pro、Apollo Pro+はカバーされているが、133MHz FSBのチップセットは含まれていないとVIAに書き送ったという。つまり、Apollo Pro+133は、認めないということになる。

 業界筋の情報によると、Intelは少し前からVIAに対してこの警告を送っており、そのため、先月のComputexでは、各メーカーが133MHz FSB/PC133を大々的にアピールすることができなかったのだという。VIAのライセンスが、製品単位ごとのものであるという情報は、以前から伝わっていたので、133MHz FSBが含まれていなかったのはそれほど意外ではない。もちろん、それは当事者のVIAは理解していたはずだが、交渉でなんとかなると踏んだのだろう。この件に関しては、Intelが133MHz FSBチップセットを認めるつもりが完全にないのか、それとも交渉の余地があるのかまだわからない。しかし、Intelが、互換チップセットをCeleron市場だけに限定し、PC133ブームに歯止めをかけようとしているのなら、これは非常にロジカルな行動だ。


●Rambus先行グループは高クロック品の歩留まり向上へ

 Rambus DRAM(RDRAM)関連ニュース。今度は、「DRAM suppliers differ on Rambus production plans」(Electronic Buyer's News,'99/6/25)が、DRAMメーカーのDirect RDRAMに対する計画には、かなり温度差が感じられると伝えている。NECと東芝、Samsung、InfineonなどはそれぞれIntel 820に間に合うように年内にかなりの量を出荷するが、日立製作所と三菱電機は早くて来年だと言ったという。富士通にいたっては、完全に様子見状態らしい。先行メーカーとそれ以外では、かなり差があるようだ。この記事でも、やはりPCメーカーは700MHz(実際は712MHz)か800MHzしか欲しがっていないと伝えている。DRAMメーカーは、望まれていない600MHz品が採れてもしょうがないわけで、そのために700MHz以上へとプロダクトミックスを引き上げようとがんばっているらしい。記事によると、Samsungは'99年中にほとんどのRDRAM素子を700MHz品より上に引き上げることができると言ったらしい。しかし、それでも800MHz以上に移行させるには、それから6ヶ月はかかるという。


●IntelがPC133? またもニュース

 Intelが、ローエンド向けではDirect RDRAMのつなぎにPC133 SDRAMを検討しているというウワサも根強い。今度は、メモリモジュールメーカーが、PC133のモジュールをテスト用としてIntelに入れたという話を「Intel testing PC133, module makers say」(Electronic Buyer's News,'99/6/25)が伝えている。Intelがテストをしたからと言って使うと決まったわけではないのだが、それでもニュースになってしまうところが、Direct RDRAM関連報道の過熱ぶりを示しているようだ。


●AMDの本当の強敵はビジネスユーザーのIntel信仰

 いよいよK7改め「AMD Athlon」プロセッサ搭載PCがこの夏に登場する。MPU単体の性能では、同クロックのPentium IIIプロセッサを凌駕するはずのウルトラチップだ。しかし、「Business Computers: AMD's Next Hurdle」(Microprocessor Report,'99/6/18)は、AMDの真のチャレンジは、性能でIntelに勝つことよりも、ビジネスユーザーのIntelに対する忠誠心をうち破ることだと指摘する。著者のマイケル・スレイタ氏によると、昨秋のCOMDEXでの講演で、IT(情報技術)マネージャたちに非Intelシステムを自宅に買うかと聞いたら大半が手を挙げたという。ところが、非Intelシステムを自社に導入することを奨めるかと聞いたところ、ほとんどが手を下ろしてしまったという。この結果を見て、スレイタ氏は、「IBMを導入して辞めさせられたヤツはいない」という言い回しをもじって、今は「Intelを導入して辞めさせられたヤツはいない」と見なされている状態だと評した。この壁を突き崩すのは大変だ。


●Microsoftと司法省が秘密和解交渉を再開

 もうほとんど忘れ去られかけているMicrosoft裁判は、ついに双方の証言が終わった。あとは9月に予定されている結審を待つばかりという態勢だ。気の長い話だが、この期間は、和解交渉のための猶予期間という含みもあるという。そこでなのか、先週、Microsoftと司法省が和解の話し合いを行なっているというスクープが登場した。「Microsoft, Justice Department Met Three Weeks Ago to Seek Settlement」(The Wall Street Journal,'99/6/25、有料サイト、http://www.wsj.com/より検索)によると、Microsoftで法務を担当するビル・ニューコム氏と司法省の反トラスト局を統括するジョエル・クライン氏が、3週間前に密かにミーティングしていたという。

 この再開和解交渉では大きな進展はなかったというが、面白いのはここからで、この記事の直後に、同じThe Wall Street Journalに、Microsoftが和解交渉について意図的にリークしたことを司法省が非難しているという記事が登場した。「Government Blasts Microsoft For Alleged Leak About Talks」(The Wall Street Journal,'99/6/25、有料サイト、http://www.wsj.com/より検索)によると、司法省はMicrosoftがリークで自分の立場を有利にしようとしたと言っているらしい。


●AOLが非Windowsデスクトップを計画

 先週のスクープと言えば、米国最大のプロバイダAOLが、格安PCメーカーのMicroWorkzと提携交渉を行なっているというのもあった。「Source: AOL in talks over PCs sans Microsoft's operating software」(San Jose Mercury News,'99/6/24リンクはすでに消失)によれば、AOLは、自社ブランドで非Windowsのインターネットデスクトップを提供したいと考えているという。AOLは専用STB(セットトップボックス)も出そうとしているくらいだから、これは十分ありうる話だ。しかし、このスクープが関心を集めたのは、別な理由がある。それは、反トラスト法裁判で、Microsoft側がPC市場に競争が存在する証拠として、AOLが非WindowsのPCを計画していたという証拠を出した後だったからだ。Microsoftの論を強化するのにぴったりのスクープだったというわけ。


●Microsoft税を払いたくない格安PCメーカー

 もっとも格安PCメーカー側にしてみれば、非Windowsへと走るのは当然の話らしい。格安PCは、300ドル前後にまで価格を落として来たが、もう削れるところはすべて削ってしまい、あと残っているのはOSのコストだけになってしまったのだ。その結果、米MicroWorkzが199ドルのBeOS搭載PC「iToaster」をPC EXPOに出展したというニュースは、いたるところで伝えられている。「CNET News.com - Makers of cheap machines flock to free Be」(CNET NEWS.COM,'99/6/25)は、MicroWorkzなどウルトラチープPCメーカーがBeを採用した意図を“Microsoft税”を払いたくないから、とうまく表現している。インターネットが使えればいいという、インターネット端末的な使い方のPCなら、Windowsである必要はないというアイデアだ。考え方自体は、NC (Network Computer)と変わらない。


●IBMがIA-64用チップセット開発

 先週はこのほかIA-64基金なども話題になったが、IBMがIA-64プロセッサ用チップセットを開発しているというニュースも出てきた。「IBM to develop on chip set for IA64」(InfoWorld,'99/6/24)によると、これは「Summit」というコード名のチップセットで、IBMのメインフレーム技術が投入されるという。ただし、来年登場する第1世代のIA-64プロセッサ「Merced」用ではなく、再来年に登場する第2世代の「McKinley」向けらしい。相変わらず、Mercedはままこ扱いか……。


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('99年6月29日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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