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IntelのCoppermineの延期の影響は?


●Coppermineの遅れの影響は

 月曜日に掲載された、IntelのデスクトップMPUに関するコラムを書いていたのが、実は金曜日。しかし、その前後での転換で、内容の半分に修正が必要になってしまった。というのは、先週の時点ではウワサ程度だった0.18ミクロン版Pentium III(Coppermine)プロセッサの出荷遅れが、ほぼ確定的になったからだ。確認できたかぎりでは、当初予定されていた9月第1週のタイミングでは、Coppermineは出ない。情報筋によると、クリスマス商戦前になんとかという話になったらしい。

 0.18ミクロンのプロセス自体はモバイルPentium IIで一応立ち上がっているように見えるので、Coppermineコアで600MHzクラスの高クロック品が十分に採れないという問題が生じた可能性が高い。Intelであっても、0.18ミクロンプロセスであれだけ複雑なプロセッサを作るのは一苦労ということなのだろうか。

 さて、Coppermineは、まず9月に600MHzで登場、年内か来年頭に667MHzが出るという予定だった。これがずれ込むとなると、限定された数で出す予定だった0.25ミクロン版Pentium III(Katmai)の600MHzを、リリーフとしてある程度のボリュームを出さなければならなくなるかもしれない。

 また、IntelはCoppermine投入の時点で、Intel 820チップセットも発表、133MHzFSBとDirect RDRAMを導入すると発表していた。しかし、この遅れで133MHz FSBとDirect RDRAMへのシフトのペースも落ちるかもしれない。Intelは、133MHz FSBチップとしてKatmaiの533MHz版も予定しているが、それではけん引力として弱いのは明らかだ。PCメーカーが考えていた今秋のハイエンドシステムは、Coppermine 600MHzと133MHz FSBに、PC800(Direct RDRAM 800MHz)かPC700(Direct RDRAM 711MHz)だったからだ。


●Intelのモバイル戦略

 この余波は、モバイルにも及びそうだ。モバイルでは、IntelはCoppermineで、450MHzと500MHz、それにGeyserville技術で500MHzから600MHzにクロックが上がる製品の3バージョンを出す予定だった。報道では、600MHzは延期だが、500MHz以下は出るとされているが、高クロック品の歩留まりに問題があるとするなら、これはうなずける話だ。結果として、Geyserville技術の登場はずれ込むことになる。

 もっとも、Coppermineの遅れが顕在化する前から、すでにモバイルの高速化タイミングは遅れて始めていた。例えば、Coppermine 700MHzは、以前は2000年第1四半期に予定されていたが、それが第2四半期になるとIntelは通知しているという。おそらく、そのあたりでさらに0.18ミクロンプロセスをチューンして、より消費電力の低いチップを作れるようにするのだろう。

 いずれにせよ、Intelはここでもロードマップに穴ができるわけで、400MHzを出荷し始めたモバイルPentium IIを、もう少し延命することになるのかもしれない。面白いのは、IntelがOEMに明かしている予定価格リストでは、0.18ミクロン版モバイルPentium II 400MHzの価格がモバイルPentium III 450MHzの価格より高くなっていることだ。クロックも上がり、SSE(ストリーミングSIMD拡張命令)も搭載していながら安いなら、PCメーカーはもちろんPentium IIIにシフトする。これは、それを狙ったとしか思えない。また、IntelはモバイルPentium III(Coppermine)との競合を避けるために、当初予定されていたモバイルPentium II(0.18ミクロン版のDixon )433MHzを取りやめている。これも、Pentium IIIへの移行を急がせるためだろう。つまり、Intelは、それだけCoppermineの製造に自信があったということだ。このあたりの戦略も見直されるかもしれない。


●モバイルCeleronは66MHz FSBのまま高速化

 というわけで、やや混沌としてきたロードマップだが、とりあえず、Intelの予定では、モバイルCeleronプロセッサの方は0.25ミクロンのまま高クロック化を押し進めることになっている。0.25ミクロン版Celeron(Dixon-128K)の433MHzと466MHzが第3四半期に登場すると言われており、デスクトップのCeleronにわずかに遅れるペースでクロックを上げる予定になっているという。Intelは、モバイルPentium IIIではFSBを66MHzから100MHzに引き上げるので、順調にいけば、Celeronが高クロック化しても差別化はできることになる。

 また、Intelは、来年前半にSSE(ストリーミングSIMD拡張命令)搭載0.18ミクロン版Celeron(Coppermine-128K)を450/500MHzで投入するとも言われている。このあたりはCoppermineの歩留まりに影響される可能性はあるが、クロックが低いので影響は小さいかもしれない。モバイルは、Coppermine-128Kの投入で、Pentium IIIとCeleronの両方ともデスクトップと基本的に同じCoppermineコアになる。Intelにとっては、製造と開発の負担が大きく減ることになる。

 Intelは、現在大きく分けて3種類の異なるコアを製造している。デスクトップのPentium IIIがKatmaiコア、CeleronがMendocinoコア、そしてモバイルがPentium IIIとCeleronともDixonコアだ。Intelは、これまで基本的に1種類のコアで、この3分野をカバーしてきたのだから、現状はかなり複雑化していることになる。Coppermineでは、それが基本的に1種類に統合されるわけだ。これは、Intelにとって、開発と製造の両面で、ムダが省けることになる。


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('99年6月23日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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