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後藤貴子の データで読む米国パソコン事情
 
第22回:「ハイテクでリッチ度を増す米国」ほか



ハイテクでリッチ度を増す米国


●世界の長者番付は米国のハイテク関係者が跋扈

 米Forbes誌の長者番付でMicrosoftの会長兼CEOビル・ゲイツ氏が1位をとった。もちろんこれはもう例年のことで、驚くべきことでも何でもない。だが今年はゲイツ氏の資産はMicrosoft株高騰で昨年よりさらに増えており、おまけに上位10人中ゲイツ氏を含め4人が米国のコンピュータ業界関係者だ。これは米国のハイテク産業がいかに活況にあるかをよく示している。だがハイテク産業が扱うコンピュータやインターネットなどのデジタルテクノロジーが潤しているのは、トップエグゼクティブだけではない。ハイテクは、米国民全員を潤しているのだ。


●雇用と高賃金を創出するハイテク産業

 業界団体American Electronics Association (AEA)によると、ハイテク産業は'93年以来、100万人分以上の雇用を創出した。'98年のハイテク産業従事者は480万人。シリコンバレーやシアトル以外でも、ほとんど全米で雇用を増やしており、しかも高賃金の雇用だ。'98年のハイテク産業の賃金は民間セクターの平均賃金より77%高い年収5万3,000ドル以上。米国では世帯年収が5万ドルあればまずまずの暮らしだから、ハイテク産業は全米で失業を減らしただけでなく、実入りのいい家庭を増やしたというわけだ。

 だが、業界によれば、この実入りのいい人々が使うカネによる経済波及効果を入れると、間接的にはもっと多くの米国人に恩恵を与えているのだという。たとえばソフトウェア業界団体Business Software Alliance's (BSA)によると、'98年のソフトウェア産業従事者は80万6,900人だが、彼らの消費による波及効果を計算すると、その約3倍の270万人の雇用とその人々の1,280億ドルの収入を生み出したと言えるそうだ。


●他の産業もインターネット活用で雇用や売り上げを増進

 しかし見逃せないのは、ハイテクが、ハイテク産業そのものだけでなくほかの産業にも活用されているということだ。

 たとえばインターネット関連ビジネス。インターネットのインフラ産業や接続業のほか、オンライン予約やオンラインショップなど、インターネットのおかげで生まれたビジネスをひっくるめると、'98年、3,000億ドル以上の売り上げを米国で計上し、1,200万人の雇用を創出したという(Cisco SystemsがUniversity of Texasに依頼して行なった調査)。つまり旅行業や小売業のような産業も、インターネットを使うことで売り上げや雇用を伸ばしているのだ。

 この上にもし、一般の企業でコンピュータやネットワークを導入したことによる生産性向上や、それによる売り上げへの貢献などを加味したら、経済への影響はどれだけになるか計り知れない。  こうしてみると、米国政府が昨年、自国経済の強さを「デジタル経済」の強さだと宣言したのは、まさに適切な表現だった。しかも米国は、世界を市場にできるようなユニークなハイテク技術やアイデアを持った起業家を世界中から引きつけている。当面は世界の長者番付から、ハイテクを最も使いこなしている国、米国のビジネスマンたちが消えることはないだろう。

□「The World's Working Rich」
http://www.forbes.com/tool/toolbox/billnew/
□「More Than a Million New High-Tech Jobs Added to U.S. Economy in Mid-1990s」
http://www.aeanet.org/aeanet/public/press/index.html
□「Software CEOs Release New Study on Unprecedented Contributions of the Software Industry to the U.S. Economy」
http://www.bsa.org/pressbox/index.html
□「Cisco Releases Study Measuring Jobs and Revenues Tied to the Internet Economy」
http://www.cisco.com/warp/public/146/june99/23.html



買っても使われない家庭内のPC


●PCを使っている家庭は米国の4分の1

 PCを持っている米国家庭はついに全体の半数を超えた。だが、PCを持っているにもかかわらず使っていない家庭が増えており、じつは米国の4分の3の家庭はPCを使っていない--こんな調査結果が米市場調査会社Arbitron NewMediaから出た。

 Arbitronによれば、米国のPC所有家庭の比率は'95年の29%から'99年は54%に増えたが、使用比率は'95年の90%から53%に下がった。つまり、PCを所有する家庭は2倍近くに増えたにもかかわらず、PCを使用している家庭の数はほとんど増えていないわけだ。単純に考えると、最近の米国のPC購入者は、PCを買っても使っていないということになる。

 インターネットも、アクセスを持っている比率と実際に使っている比率には隔たりがあり、現在は'95年の4倍、PC所有者の70%がプロバイダのサービスに加入しているが、その3人に1人はインターネットを使っていないという。


●「なくちゃまずい」で「とりあえず購入」か?

 Arbitronでは、職場でPCを使う人が多いため、家庭ではPCにさわりたくないのではと分析する。でもそれならなぜ、初めからあまり使う気もないPCを買ったりインターネットサービスに加入したりするのだろう。

 それはそれだけ米国人に「家庭にPCがなければ/インターネットアクセスがなければ、いざというとき困る」という強迫観念が強いという証拠だろう。 Arbitronによれば、PCを2台以上所有している人の数は'97年以来あまり増えておらず、今のPCの増加は初めての購入者の増加によるものだ。特に、子どものいる家庭、低中所得者層で、初めてPCを買った人が多いという。子どものいる家庭の場合の動機は、教育上必要なのではという比較的対象の絞り込まれたプレッシャーだ。だが、低中所得者層にもPCやインターネットが広まっているということは、「差し迫った用はないが、持っていないとまずいのでは」というもっと漠然としたプレッシャーがあるということだろう。それだけ、PCやインターネットは米国で確固とした社会インフラになっているということだ。

□「PC Home Ownership Doubles While Home Usage Stagnates Reveals Pathfinder Study」
http://www.arbitron.com/article4.htm



インターネットで英語以外のサイトが増える?

 「インターネットの公用語」といえば、常識的な答えは「英語」。だが、その常識は変わるかも知れない。非英語圏でインターネットユーザーが急激に伸びているからだ。

 Computer Economicsによれば、過去6年間にアジア太平洋地域とラテンアメリカ地域を始めとする非英語圏のユーザーが150%増加し、このままでいくと2002年までに非英語圏のインターネットユーザー数が英語圏のユーザー数を上回り、2005年には世界のインターネットユーザー10人に6人が非英語圏の人になるという。そのため、企業などはWebサイトを多言語対応にしなければならなくなるだろうというのが同社の予測だ。

 もっとも、多言語対応といっても、特に日本のユーザーに向けたものでないサイトが突然、日本語ページを用意してくれるというわけではないだろう。ただ、英語以外の言語と日本語間の翻訳ソフトなどの需要も高まるかもしれない。

言語によるインターネット使用比率

1999 2001 2003 2005
英語圏ユーザー数 91,969,151 108,282,662 124,265,453 147,545,824
比率 54% 51% 46% 43%
非英語圏ユーザー数 79,094,449 104,480,528 143,733,527 198,008,511
比率 46% 49% 54% 57%
合計ユーザー数 171,168,600 212,889,190 268,150,180 345,735,835
(出典:Computer Economics)

□「English Will Dominate Web for Only Three More Years」
http://www.computereconomics.com/new4/pr/pr990610.html

[Text by 後藤貴子]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp