後藤貴子の データで読む米国パソコン事情
 
第21回:「2000~2001年のパソコンはメモリ不足に?」ほか



2000~2001年のパソコンはメモリ不足に?

 32MBから64MBへ、64MBから128MBへ。このメモリの倍々ゲームに黄信号が点った。いま、日本ではPCの搭載メモリは、ローエンドで32MBから64MBへの移行が済み、ちょっと気のきいたPCなら128MBが普通といったところだ。だが、じゃあ来年にはローエンドでも64MBから128MBへ移行……とは、ならないかもしれない。

 米調査会社Dataquestの予測によれば、2000年後半から2001年いっぱい、DRAMの価格が下げ止まるというのだ。それによりPCメモリ容量の増加も順調にいかなくなるかもしれない。
 Dataquestによれば、2000年後半からDRAMが需要に対し供給不足のサイクルに入り、DRAMの価格が下げ止まって、世界の半導体産業の収入は、2001年まで2桁の成長を続けるという。DRAMによる収入は2001年がピーク。それ以降は、DRAMは再び供給過剰のサイクルに移行するだろうという。

 Dataquestのリリースによれば、半導体業界の成長は「PC、家電、通信機器の利用で需要が伸びる」ためだ。特にDRAMに関してなぜ需要が伸びるかは書いていないが、おそらく、PCについては台数が伸びるというより積むメモリの量が増えるから、また、家電については、たとえばMPEG-2のデコードでメモリが必要になる次世代デジタルセットトップボックス(STB)のように、DRAMを使用する情報家電の増加が見込まれるため、需要が伸びるというのだろう。
 しかしPCでは、Windows 95発表時に搭載メモリの多いPCへの大きな代替わりがあったが、Windows 2000の出るころはどうなるだろう。

【世界の半導体収入予測推定(単位10億ドル)】
西暦年19992000200120022003
収入153179218231244
伸び(%)12.617.021.65.95.6
出典:Dataquest (May 1999)

□GartnerGroup's Dataquest Says Worldwide Semiconductor Industry on Pace to Reach $244 Billion by 2003
http://gartner11.gartnerweb.com/dq/static/about/press/pr-b9925.html



ハンドヘルドはPalmとWindows CEの独壇場に?

 4年後のハンドヘルドコンピュータ市場は、PalmOSとWindows CEが市場を二分し、他のOSはほとんど駆逐されている――米市場調査会社Dataquestは、こう予測を下した。つまりZaurusのような独自OSのハンドヘルドは消えていくというのだ。

 Dataquestによると、'99年、ハンドヘルドコンピュータは世界で'98年より47%多い570万台を出荷。市場は、2003年まで年30%超の成長を続けるという。
 面白いのはこの成長分がみな、PalmとWindows CE機に吸収されると予測されていることだ。Dataquestは、'98年にはこの2大OSがハンドヘルド出荷数全体に占める割合は67%だったが、2003年には92%になっているだろうという。ちなみに先月紹介したComputer Economicsの予測では、2003年の2社のOSの割合は78%。つまりDataquestのほうが、他のOSが占める割合をさらに小さく見積もっているわけだ。ただ両社とも、将来は現在より他のOSのハンドヘルドが減るという予測の方向に変わりはない。

 だが、はたしてそうかというと疑問もわく。
 まず、ハンドヘルドにPCのビジネスモデルが通用するのかどうか。Microsoftなどは、PCのようにOSのデファクトスタンダードの座を取った企業がハンドヘルドでも勝利を握ると思っている。自分たちが開発したOSを複数のサードパーティにライセンスし、サードパーティが競い合うハードやソフトの豊かな選択肢でユーザを増やす。それによりそのOSを共通のプラットフォームに押し上げて、他を駆逐するというモデルだ。

 だが、使い方がわりと決まっているハンドヘルドでは、たとえ選択肢が少なくても、本当に使いやすい仕様になっていることのほうが魅力として強いかもしれない。つまり独自OSも駆逐されないで残る可能性も高いのではないか。

 次に、今は確かにPalmとWindows CEが2大OSだが、だからといって今後もその流れのまま成長するのかどうか。ハンドヘルドはまだまだ発展途上の市場だ。今、先を走っているPalmやWindows CEが他のOSより断然有利というわけではない。

 3つめに、米国の流れが世界を覆うのかどうか。国によってモバイルの状況は違う。例えば、日本では携帯電話やPHSによる無線データ通信が盛んだが、米国ではそういう高機能な携帯電話は普及していない。だから、たとえ米国ではPCのビジネスモデルでPalmとWindows CEが争っていくとしても、日本では通信機一体型の、例えばNTTドコモのiModeの進化形のようなデバイスが主流になる可能性もあるわけだ。ハンドヘルドというカテゴリー自体が、趨勢に合わなくなることも、あるかもしれない。

□GartnerGroup's Dataquest Says Worldwide Handheld Shipments to Surpass 5.7 Million Units in 1999
http://gartner11.gartnerweb.com/dq/static/about/press/pr-b9924.html



オンラインユーザはゲーム規制に反対?

 コロラド州の高校で在校生が銃や爆弾で他の生徒を襲った事件は米国人に大きな衝撃を与えた。そしてまた、いつもと同じ世論が大きくなってきた。子どもを悪影響を与えるメディアから守れ、という世論だ。今回の矛先は暴力的なゲーム。犯人の生徒がビデオゲームに影響を受けたのではという憶測から、ゲームを暴力性や猥褻性でレーティングすべきとの声が議会などで高まっている。米国では映画やTVではすでにレーティングと、それによる未成年に対するブロックが行なわれているという前例があるし、銃が身近にある社会だけに、血しぶきもリアルな最近のゲームへの憂慮も強いのだ。

 だが、その動きを受けてオンラインユーザーたちが出した意見は、レーティングによる規制にはやや距離を置くものだった。

 米調査会社のPC Dataが行なったオンライン世論調査では、暴力的なゲームが人を暴力的にするとは思わないという人が10人に6人(57%)を占めた。両親は子どもが暴力的なゲームをするのを禁止するべきだという人はわずか3割、政府によるレーティングを支持する人も半数におよばなかった。
 ところがその一方、TV、映画、歌詞については行動に悪影響を及ぼすかも、という人が多く、特にTVではゲームと逆で、10人に6人(59%)の人が悪影響を及ぼすと考えていた。

 インターネットによる調査では、もし回答者に子どもがいれば、その子がパソコンでゲームしていることもあるはずなのだが、その割にはかなりゲーム擁護的な内容といえる。それだけ、オンラインユーザーには政府による規制嫌う気持ちが強いのかもしれない。

□Consumers Say Violent Video and Computer Games Do Not Cause Violent Behavior - Retail Sales Remain Steady
http://www.pcdata.com/

[Text by 後藤貴子]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp