●Navigator離れは“雪崩現象”
Netscape凋落。
長年、Netscape Navigatorを使ってきた企業が、雪崩を打ってInternet Explorerに移行し始めた。米国の市場調査会社Zona Researchが、こんな調査結果を発表した。
Zona Researchが、米企業308社にメインに使うブラウザを尋ねたところ、59%がInternet Explorer、41%がNetscape Navigatorと答えたという。前回'98年10月の調査では、NavigatorがIEを20%も引き離していたのに、わずか半年で大逆転してしまった。しかも、前回の調査では、Navigatorが7月までの下落傾向から転じて、企業での使用率をアップさせていた(詳しくは本連載の「NetscapeとIE、どっちがリード?」―'98年10月掲載―を参照)。つまり上昇傾向に戻ったと見えたのに、昨秋を境に、突然、企業はわれ先にとNavigatorから離れだしたのだ。
この原因は明白だ。米AOLが米Netscape Communicationsを買収したからだ。急激な凋落は、買収発表のあとに起きている。この買収劇では、AOLの傘下になってしまうことで、Netscapeの先行きへの不安を感じるという声が出ていたが、調査結果は、そんな企業ユーザーの不安を浮き彫りにしている。
これまで、Netscapeは、Microsoftにコンシューマ用ブラウザ市場では追いつめられても、企業ユースだけはがっちり握っていた。そもそも、先発ブラウザとしてIEより食い込んでいたし、システム部門の現場技術者のあいだでは、「アンチMicrosoft=Netscape支持」という構図もあった。だが、そうした企業市場でのNetscapeのリードも、AOL買収で一気に崩れ始めてしまったようだ。
●システム部門トップに見限られたNetscape
※縦軸の単位=% Zona Research Inc.調査による |
これを見てもわかるとおり、Internet Explorerのリードの割合は推奨ブラウザを決めている企業でのほうが大きい。つまり、企業が社員の使うブラウザを規定し始めたから、急激なIEへのスライドが進行したわけだ。ユーザ個人個人の好みが変わったというより、企業のシステム部門の意志決定者が、Navigatorを見限ったということなのだろう。
Netscape=AOLは、ここから逆転するためには、企業ユーザーに明確な将来ビジョンを示し、もう一度信頼を取り戻さなければならないだろう。
□Zona Research Browser Study Reveals Significant Shift in Primary Browser Usage in the Enterprise
http://www.zonaresearch.com/
●ゲームボーイが米国で大躍進
米国でも、ポケモン旋風が吹き荒れ始めた。
米PC Dataの調査によると、ポケモン発売後の今年第1四半期の米国でのゲームボーイの売上は、ソフトとハードともに2倍の伸び。ソフトの売上の中では、「ポケットモンスター」の2つのバージョン(赤と緑)が売上の33%でトップを占めるという。どうやら、ポケモンは米国で確実にブレイクしたようだ。
PC Data調査をもう少し詳しく見ると、ゲームボーイの売上は、今年第1四半期にソフトが前年同期に比べ、個数で200%、収入で265%増加。ハードが白黒バージョンとカラーあわせて、台数で228%、収入で336%と増加した。
また、PC Dataのリリースでは具体的な出荷数や売上額には触れていないが、New York Timesの報道によれば、ポケモンソフトは'98年9月に売り出して7カ月間に250万本売れ、売上額は7000万ドルにのぼるという(「Mania for 'Pocket Monsters' Yields Billions for Nintendo」,4/26)。それに比べ、一時はかなりのブームを呼んだ「たまごっち」の売上は発売以来20カ月で8,000万ドルだったという。これを見ても、いかにポケモンが成功しているかがわかる。
●米国の子ども文化の薄さに原因が
ポケモンが米国でこれだけやすやすとブームになった理由は、ポケモン自体の魅力もあるが、それ以上に、米国の子どもたちがポケモンのような『子ども文化』に飢えていたという背景があるだろう。日本ではアニメやゲーム、マンガでも『子ども文化』が大きなパワーを持っていて、作品数も膨大で、親世代もそれを共有している。ところが、米国では意外と子供向けの娯楽が少ないように見える。ディズニーやセサミストリートのような“親が安心して与えるもの”はあるのだが、ポケモンのような、深い、子どもだけの世界は少ない。だから日本の『ジュウレンジャー』を輸出した『パワーレンジャー』などもわっと受けるのだろう。
子ども文化は、これからますます日本の主要輸出商品になっていくのかもしれない。
□Game Boy Color Impacts First Quarter Sales
http://www.pcdata.com/
●ベンチャーキャピタルが件数・額とも記録を更新
空前の活況を続ける米ハイテク産業。それを支えているのはベンチャー企業の“育ての親”ベンチャーキャピタリストだ。その彼らが、ますます投資する資金を増やしている。おもな投資先は、もちろんシリコンバレーのハイテク企業。つまり、これから、ますます新奇なアイデア一発で当てるハイテクベンチャー企業が登場してくるということだ。
米Pricewaterhouse Coopersによれば、ベンチャーキャピタリストが、米国の企業に投入する資金量は、これまでの記録を更新した。'99年第1四半期に投入されたベンチャーキャピタルは42.9億ドルで、最高記録である'98年第3四半期の37.7億ドルを塗り替えた。資金を受けた企業は722社で昨年同期より7%増、1社平均の受取額も590万ドルで31%増だった。
なかでも、ハイテク企業への投資は昨年同期より63%増えた。その一方で、非ハイテク企業への投資は逆に18%減った。Pricewaterhouse Coopersはこの状況を「『ベンチャーキャピタリストの投資』は『テクノロジーへの投資』の同意語だ」と表現する。
このため、地域別ではシリコンバレーが1番となった。
●将来へのタネをまく米国
ベンチャーキャピタリストは自分のリスクで成功しそうな新興企業を見極め、カネを出す。技術はあっても金がないベンチャーは、ベンチャーキャピタリストから資金を得て、自分のアイデアを商品として世に出すことができる。つまり、ベンチャーキャピタリストの存在が、米国に技術ベンチャーが次々に登場する原動力となっているのだ。
いい例が、グラフィックスチップメーカーだ。ほとんどのグラフィックスチップメーカーは、少規模なチップ設計会社で、最初は金も人もない。新しいグラフィックスチップのアイデアと技術だけで、会社を興す。その彼らが、製品を出していけるのは、ベンチャーキャピタリストがバックアップするからだ。
もっとも、ベンチャーキャピタリストは天使ではない。カネだけでなく経営に口も出す、ベンチャー企業にとってはうるさい存在だ。自分の利益還元を第一に考える弊害もある。だが、それでも、彼らがいなければ、アメリカのハイテク産業のこの新技術/新アイデアの奔流は成り立たない。
そして、今、また数年後に新しい製品やサービスで世界の市場を驚かすような企業のタネが、植え付けられつつあるわけだ。
□Venture Capital Investments Shatter $4 Billion Barrier As Technology Investments Surge to New High
http://www.pwcglobal.com/extweb/ncpressrelease.nsf/DocID/....
映画『ユー・ガット・メール』は、インターネットから生まれるラブストーリーを描き米国で大ヒットとなったが、最近出た米国のインターネットユーザーについての調査は、ユー・ガット・メールの世界が確実に定着したことを示した。
米Mediamark Researchがまとめた米国のインターネットユーザーについての調査によると、'99年春現在インターネットを使っている米国成人(18歳以上)は約6,420万人。これは、米国成人全体の32.5%を占める。'98年11月のレポート時は5,350万人だったから、半年間で1,000万人も増えたことになる。この数字は30日間に1回でもインターネットを使ったことのある人の数で、家庭または職場にアクセスのある人という統計を取ると8,370万人で、全体の42.4%だという。
さて、Mediamarkの調査では男女の割合は51.4%対48.6%。つまり、インターネットにほとんど男女差はなくなった。また、面白かったのは、家庭からアクセスする人と職場からする人の数の対比で、家庭からの4,490万人が、職場からの3,130万人を上回ったこと。米国では、インターネットはオフィスに先に浸透したが、今では、家庭からのアクセスが主流になった。
企業が従業員のメールをチェックするのが当たり前の最近では、ラブメールを出すなら家庭からアクセスしないと、という事情もあるのかも……。
□64.2 Million American Adults Regularly Use The Internet
http://www.mediamark.com/mri/docs/prcs_s99.htm
[Text by 後藤貴子]