第9回:モバイル向けのポータルを



 先週、シマンテックのMobile Essentialsを紹介したら、思わぬ反響があった。ちなみに、現バージョンを新宿や秋葉原で見かけたという例もあるから、製品版がほしい方は大型店舗に足を向けてみてはいかがだろう。ただ、試したいだけならば米国シマンテックのWebサイトにアクセスすれば、Mobile Essentialsの次期バージョン2.0プレビュー版が公開中だ。正式版登場までの間、無償で配布されている。

 新しいバージョンでは、IPアドレスやDNSの設定など、ネットワーク設定を含めたさらに多くの設定をロケーションごとに切り替えることができるようになった……そうだ。というのも、筆者はオフラインフォルダという機能の魅力に負けてしまい、モバイル用のPCにWindows 2000β3をインストールしてしまったからだ。Mobile Essentials2.0は、新たにWindows NT 4.0をサポートしているが、Windows 2000にインストールすると正常に動作しないため、まだテストを行なえずにいる。しかし、ホームページを読んだ限りでは、かなり大幅な機能アップが図られているようだから、オフィス間の移動などが多い人は、ダウンロードページを覗いてみるといい。



■ 本当のポータルサービスとは?

 世の中ネットワークサービス、サービス、サービス。ネットワークサービスがIT系のベンダーの間で話題に上らない日はない。と思えるほど、インターネットで接続されたコンピュータ、情報端末に情報やアプリケーションを届けるネットワークサービスがビジネスとして注目されている。中でも「ポータル」はここ1年でもっとも多く使われた言葉かもしれない。

 ポータルというと、Yahoo!やinfoseekなどのコンシューマWebポータルを思い起こすかもしれないが、ポータルが指し示しているのは単なるWebページではない。また、必ずしもコンシューマ向けとも限らない。たとえば、ポータルの中には、自分の必要な情報を集めるためのカスタマイズ機能が提供されている場合がある。これは、自分が必要な情報を集中させ、しかも動的に変化する情報への入り口として有用だ。Webページが重要なのではなく、必要な情報に簡単にアクセスするための入り口であることが重要というわけだ。

 これはなにもコンシューマ向けに限った話ではない。たとえば企業内でも、業種や役職ごとに社内の必要な情報にアクセスする入り口。これもポータルサービスだ。現在、日本で実際にサービスをしているところはないだろうが、将来的には企業向けポータルをサービスする専門のベンダーが現われてもおかしくはない。

 同様に顧客向けポータルもあるだろう。デルコンピュータは、企業顧客向けに各企業ごと専用の入り口ページを設け、発注やトラブルの受け付けやパーツ発注、導入相談などを受け付けているという。これは顧客向けポータルの典型的な例だ。
 また、ポータルは他の情報に飛ぶためのリンクではない。知ってほしい、知らなければならない情報やサービスに引き込む、もしくは気付いてもらうためのサービスなのだ。



■ モバイル向けのポータルを

 いささか時期外れのポータル談義になってしまったが、ポータルの争いというのは、将来訪れるだろうネットワークサービスの時代に向けて、その覇権を争う戦いと見ることができるだろう。なぜこのような話題をモバイルの連載に持ち込むかというと、モバイル用途を目的としたポータルサービスは、とても便利でオイシイサービスだと思うからだ。

 必要な情報、知るべき情報にアクセスするためのサービスが提供される、というのは当然だが、モバイル用途に絞って考えると、これにいくつかのアプリケーションサービスがほしくなる。基本的なもので言えば、電子メール、カレンダリング、タスクリスト、インターネットブックマーク、文書ストレージ、フォトストレージなどだ。
 なぜ、このようなアプリケーションサービスをインターネット上のポータルサービスとして欲しいのか。

 近年、これほどまでにモバイルという言葉が流行したのは、情報のポータビリティ(可搬性)が大幅に増したからだろう。5年ほど前、複数のPCを使いこなすための記事で同期機能を説明するのは一苦労だった。実際、まともな情報の同期機能を有するアプリケーションは、ロータスのNotesぐらいしかなかったから無理もない。

 しかし、スリーコムのPalmシリーズの例を出すまでもなく、xxSyncといった名前が付けられた機能やアプリケーションは、いまや当然のものとなってきている。これらが出揃い環境が整ったことで、情報の持ち歩きが容易になった。これがモバイルの普及に、少なからず貢献したに違いない。

 だが、さまざまなデバイスすべてに、すべての情報を同期して持ち歩く必要があるだろうか。もちろん、ある程度は必要かもしれないが、それだけでは不十分だ。必要な情報がWebベースで提供されれば、何も同期を行なう必要はない。Webベースと言ったが、HTMLでという意味ではなく、XMLベースで情報がサーバに保管されていてもいい。

 たとえば、モバイル向けの情報ホスティングサービスというものが実用化されたとして、そこに保管された情報が、各種機器に最適化された形でWebを中心に情報交換できる仕組みが提供できるだろう。それをポータルに組み込めば、いつでも、どこでも、どんなデバイスからでも、最新の情報を手に入れることができる。携帯電話に自分だけのカスタマイズ情報が降ってくる、と表現すればいいか。

 利用するデバイスは、PCのように高機能で大容量のストレージを備えたばかりではないし、TPOに応じて持ち歩いている機器も異なるかもしれない。ましてやすべてのユーザーを満足させる端末など不可能だ。注目すべきは端末のハードウェアではない。これは好みのものを使えばいい。重要なのはそこに集まる情報だろう。

 Web技術、XML、無線通信技術、端末の小型化など、条件は徐々にではあるが整いつつある。モバイルのビジネスは、ハードウェア志向からサービス志向へと移行していく時期が近づいているように思う。

[Text by 本田雅一]


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