第8回:Mobile Essentialsのススメ



 PC Watch編集部を通じて、前々回にネタにした途中で終わっているのではないか? とのご指摘をいただいた。確かにレストランを探すぐらいのことは簡単だよ、という強力な読者の方々にとっては、ちょっと中途半端な記事だったかもしれませんね。ここで深くお詫びさせていただきます。

 しかし、PC Watch編集部にご意見をいただくのもありがたいことだが、できれば苦情受け付け窓口を設置しているので、そちらにメールをいただけるとありがたい。masakazu_honda@yahoo.co.jp は、記事の叱咤激励ならぬ叱咤蹂躪用に設けたメールアカウントなので、そちらにメールをいただければ以後の記事に反映したいと考えている。ちなみにyahoo.co.jpとなっているが、筆者は株価変動で何かと話題のYahoo! 社員ではない。単なる無料Webメールアカウントである。



■ 居場所が変わると環境も変わる

 つい先日のことだ。マイクロソフトのある社員と仕事ではなくプライベートの話をしていたのだが、なんとTAPIのロケーション設定機能を知らないという。言うまでもなくマイクロソフトといえばWindowsの開発元。当然、その機能にはすべての社員が熟知しているものと思っていた私は、ちょっと驚いてしまった。

 ちなみに用語解説よろしく説明を加えると、TAPIはTelephoney APIの略でダイヤルアップ全般の機能をサポートするAPIのこと。TAPIには現在いる場所と、その場所(ロケーション)にあわせたダイヤルの設定を記入しておく機能があり、ロケーションを変更したり新規登録することで、ゼロ発信や市外局番の有無、クレジットカードコール、長距離電話会社の利用などをサポートする機能のこと。何も設定していない場合は「新しい場所」と出てくるのがロケーション名(もちろん変更できる)だ。

 そのマイクロソフトの方曰く「市外局番や発信番号も含めてアイコンに登録しちゃってるから」とのこと。これは古来インターネット以前から続く伝統的解決手法なので否定するつもりはないが、ロケーションと接続先が多いとアイコンも掛け算で増えてしまうから、出先からのダイヤルアップが多い人や、会社のダイヤルアップサーバがいろいろな所にある人はTAPIを使いこなすことをオススメする。

 さて、こんなに便利なような気がするTAPIだが、便利なようでいて実は便利ではないと感じることもある。ちょっと考えればわかることだが、ロケーションが変わる事で変化するのは、ダイヤルアップの方法だけではない。

 たとえば本社から地方支社に出社したときのことを考えてみよう。この場合、支社に自分のログインアカウントがあれば、ログインするドメインコントローラを変えなければならないかもしれない。もちろん、WANで繋がっていれば本社の環境にログインしてもいいのだが、支社にあるプリンタなどの資源を使いたい場合、環境によっては支社のドメインにログインするのが手っ取り早い。そして本社と支社のプリンタが異なる場合、ドライバも切り替えなければならないだろう。デフォルトプリンタをちょっと変えるだけなのだが、他にも本社との接続にVPN接続をしなければならないかもしれないし、まぁいろいろと変更しなければならないことが多いので、慣れるまでは大変。

 また、筆者のように出張先にプリンタまで持ち込むとなると、自宅用と出張先用でプリンタとインターネット接続方法を同時に切り替えたいし、出張先によってダイヤルアップのアクセスポイントも切り替えたい。



■ Mobile Essentialsのススメ

Windowsのログインパネルをロケーションと連動したものに置き換えることができる
 単に面倒くさがりと言われればそれまでだが、場所によって変更されるさまざまな設定をロケーションに関連付けて保存できればすべて解決してしまうものだ。それぐらいのソフトだったら簡単に作れるから……と思い立って数年。全くそんな暇がなく過ごしていたら、いつのまにかシマンテックから問題を解決するユーティリティが発売されていた。Norton Mobile Essentialsがそれだ。

 残念ながら日本語マニュアル付きの英語版しかリリースされていないが、これはなかなか便利。Mobile Essentialsは3つのモジュールからできており、出張に出かける前のサポートを行なうBefore You Go、現地での設定をサポートするLocation Controller、ダイヤルアップ時のトラブル発見をサポートするConnection Doctorの3ユーティリティが含まれている。

 Before You Goでは出張先の国や地域で、どんなモジュラージャックが使われているのか、どんな電源コンセント形状なのか、ホテル、レンタカー、クレジットカード会社の問い合わせ先、レストラン情報などなど、実にさまざまな情報を入手することができる。また、PCの紛失などに備えてファイルなどをバックアップする機能も備える。

 Connection Doctorも、最初はその効力に疑問を抱いていたのだがインターネット回線がメチャクチャに遅かったときに使ってみたら、ホテルの電話回線品質に問題があることを指摘してくれた。ホテルの回線品質の場合、指摘されても対応できないところが辛いが、原因不明のままというよりははるかにマシ。僕の場合はチェックに引っかかったことがないので詳細は不明だが、Windowsそのものの問題でトラブルが発生している場合も、原因となっている部分を特定してくれるようだ。

 しかし僕の一番の目的は、なんと言ってもLocation Controller。Windows起動時にロケーションセッティングを変更する画面が現われ、そこでロケーションを選択すれば、環境を素早く切り替えてログイン処理を実行してくれる。ログイン先のドメインはもちろん、ネットワークドライブのマウント情報、デフォルトプリンタも切り替えてくれるので、たとえば会社と支社、自宅のそれぞれでネットワーク環境が異なる場合も、ロケーションを選ぶだけで環境を切り替えるだけでいい。

 TAPIとも連動しているので、Location Controllerで選択した場所に合わせてダイヤルの設定も変更してくれる。さらにデスクトップ上には、現在のロケーションに合ったダイヤルアップ先へのアイコンを自動的に作成してくれる。たとえば東京では東京のAP、海外ではローミング用AP、外出先ではPIAFSのAP、などと意識しながら接続先を変更しなくても、ただひとつデスクトップ上のアイコンを使ってダイヤルアップすれば、選択しているロケーションに合わせたAPを選択してくれるのだ。

 この機能を使えば、出張先のプリンタ環境が何であろうと、ダイヤルアップ環境がどうであろうと、柔軟に設定して切り替えればいいだけ。特に同じ場所を何度も行き来する人に向いている。

 Mobile Essentialsは一時、ノートン感謝パックというお買い得パックに含まれていて、僕もそのパッケージで入手したのだが、限定品で現在はほとんど売切れの状態。単体製品でも出荷されているようだが、あまり店頭には並んでいないようだ。入手性が今ひとつ悪いのが難点だが、移動しながらのノートPCライフを過ごしている人には絶対オススメなユーティリティ。次期バージョンが開発されることがあるならば、ぜひ日本語版も検討して欲しい製品だ。

ロケーションセッティングでは実にさまざまなことを設定しておける。この画面ではマウントするネットワークドライブとログインするWindows NTドメイン、NetWareサーバを設定可能 旅行前のちょっとした情報入手に便利なBefore You Goは、旅行先の都市ごとにさまざまな情報を提供する

[Text by 本田雅一]


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