COMPUTEX TAIPEI '99 レポート

マザーボード編 ~ 台湾でも大旋風を巻き起こすデュアルCeleron! ~

Text:笠原一輝


会場前

会期:6月1日~6月5日
会場:台北世界貿易センター展示場
   台北国際コンベンションセンター
主催:TCA(台北市電脳商業同業公会)
   CETRA(中華民国対外貿易発展協会)


 台湾と言えばマザーボードというほど、台湾のPC業界において、マザーボードが占める割合は非常に高い。従って、マザーボードはCOMPUTEXの目玉と言ってもよいジャンルなのだが、実は今回のCOMPUTEXではみんなが見たかったCaminoに関しては展示されていなかったが、その他に続々とユニークな製品が登場し、それなりに見所があった。


■メイン会場ではCaminoの展示はなし

 既にチップセットのレポートでもお伝えしたように、インテルのメインストリーム用のチップセットであるIntel820(コードネーム:Camino)はメインの会場である世界貿易センターには展示されなかった(既報の通り、隣接するハイアットホテルにあるスイートではCamino搭載ボードを見ることができた)。実は、あるマザーボードベンダーの関係者によれば、Camino搭載ボードを展示するように準備していたという。ところが、事前にインテルから展示は行なわないようにという通知があり、あわてて撤去したというハプニングがあったようだ。実は3月にドイツで行なわれたCeBITにおいて、筆者はいくつかのマザーボードベンダーとのミーティングで「COMPUTEXではCamino搭載マザーボードを公に展示することができる」という説明を受けてきた。しかし、実際にはIntel820を搭載した製品は展示されていなかった。同じ関係者にCaminoマザーボードはどうしたんだと聞いたところ、前述のような答えが返ってきたという次第だ。

 つまり、CeBITの時点ではマザーボードメーカー側はCOMPUTEXにはCamino搭載ボードを展示することができるという確信があった訳だが、COMPUTEXではそれができなくなる何かが発生し、結果的にインテルは展示にNGを出さざるを得なくなったということなのだろう。昨年のCOMDEX/Fallでは発表前の440ZXが各マザーボードベンダーで展示されるなど、発表前のチップセットを搭載した製品が展示された例は無いわけではない。そう考えると、今回のCaminoマザーボードが展示されなかったという事実は、噂されているように「やはりCaminoはさらに出荷が延期される」ということに拍車をかける可能性が高いのではないかと筆者は思うがいかがなものだろうか。


■VIAチップセットを搭載したSlot 1/Socket 370マザーボードは大量に展示

 Apollo Pro 133から改名がされたVIA TechnologiesのApollo PC133(VT82C693A)を搭載したSlot 1/Socket 370搭載マザーボードが多く登場したのが今回のCOMPUTEXのもう1つの特徴だ。PC133 SDRAMへの期待も高いようで、多くのメモリモジュールベンダーなどでPC133 SDRAMを搭載したDIMMが展示されていた(メモリの記事を参照)。このことからも、PC業界のPC133 SDRAMへの期待の高さを伺い知ることができるだろう。ただ、Apollo PC133(旧Apollo Pro 133)に関しては、既にCeBITで公開されていたマザーボードがほとんどで、特に目新しい製品は無かった。

 いくつかのブースではApollo PC133(VT82C693A)の後継チップセットと見られるVT82C694Aを搭載したマザーボードを展示しているベンダーがあった。具体的にはFIC(First International Computer)とAOpenの2社で、実際にマザーボードが展示されていた。これらのマザーボードの特徴はAGPスロットが4X対応の切り欠きのないスロットになっていることだ。

 AOpenの説明によるとVT82C694A自体は2Xモードまでしかサポートしておらず、4Xモードがサポートされるのはその後継であるVT82C694X以降になるという。AOpenによるとVIAからは「VT82C694Aはサンプルであり、実際にはVT82C694Xが製品版として投入する」と説明されているという。つまり、マザーボードメーカーはVT82C694Aでマザーボードを作りテストをし、実際に出荷する時にはVT82C694Xに置き換えて出荷することが可能になると言うシナリオだ。なお、VT82C694XはFSB 133MHzをサポートしており、9月にインテルが投入すると言われているFSB 133MHzをサポートすると言われている次期Pentium III(Coppermine)と同時に発表されるということだ。

現状ではAGP 2XをサポートするVT82C694A。次期バージョンのVT82C694XではAGP 4Xをサポートする AOpenのブースに展示されていたVT82C694Aを搭載したMX64。AGPのスロットは切り欠きのないAGP 4X対応のものだが、実際には2Xモードのみサポート FICのブースに展示されていたVT82C694A搭載のKA11。やはりAGPスロットが2Xモードのものと異なっていることに注目


■デュアルCeleronブームは続くよどこまでも?

 この他にも、いくつかのメーカーからユニークなマザーボード(や関連商品)が展示されていた。昨年、日本において一躍スタープレーヤーになったABIT Computer(ちなみにABITはエイビットと読むのが正しい)は、今回もユニークなマザーボードを展示していた。最も注目はSocket 370を2つ搭載しているBP6だろう。BP6はチップセットに440BXを採用したマザーボードで、もちろんCPUを2つ搭載した場合にはデュアルCPUとして動作するという。これまではCPUアダプタでデュアル動作をできるようにしたものはあったが、はじめからCeleronをデュアルで利用することを前提に作られたマザーボードは初めてで、これまでのABITの例から考えると価格も期待できそうで、注目が集まるところだろう。もちろん、BH6と同じようにSoft MenuIIによりCPUコア電圧の変更も可能になっている。デュアルCeleron構成にマシンを組み立てようと考えている場合には、かなり魅力的な製品となるだろう。なお、出荷は7月上旬とのことだ。

 もう1つは、BE6(Slot 1)とBY6(Socket 370)でこれまでABITの主力マザーボードだったBH6のIDEインターフェイスをUltra ATA/66に対応させた製品だ。もちろん、440BXはUltra ATA/33だけをサポートしており、Ultra ATA/66はサポートしていない。このため、ABITはUltra ATA/66に対応したIDEコントローラを追加することでUltraATA/66へ対応させているのだ(なお、このチップは前述のBP6にも搭載されており、BP6もUltra ATA/66に対応している)。ただし、こちらに関してはどれほど秋葉原で受け入れられるかは未知数だろう。なぜならば、現状のハードディスクでは実際のデータ転送レートがUltra ATA/33の限界である33MB/秒には達しておらず、インターフェイスを66MB/秒にしてもパフォーマンスはほとんど変わらないからだ。ただし、BE6はIDEのコネクタを4つ持っており、すべてのコネクタにIDE機器を接続することができる。そういう意味では、ハードディスクをたくさんつなぎたいユーザーにはよい選択肢となるだろう。

ABIT Computerが発売するBP6。標準状態でCeleronをデュアルオペレーションすることができ、Socket370変換アダプタを別途購入する必要がない。なお、Ultra ATA/66にも対応しており、IDEのポートは4つ用意されている ABIT Computerが発売するBY6。Ultra ATA/66のコントローラがオンボードで搭載されており、IDEポートが4つ搭載されている BY6上に搭載されたUltra ATA/66を実現するIDEコントローラ


 香港のマザーボードベンダーであるQDIからは、Celeronをデュアルにして利用するデュアルSocket 370アダプタ付きマザーボード(TwinMagic)がリリースされた。付属のSocket 370アダプタはアダプタ上にSocket 370を2つ持っているユニークな形状になっており、もちろんCeleronをデュアルCPUとして利用することができるようになっている。このため、このマザーボードでは

1.普通にSlot 1のCPUを使う
2.市販のアダプタを介してSocket 370のCPUを使う
3.専用アダプタを使ってDual Socket 370で使う

というどの構成で利用することも可能になっており、例えば最初はSEPPのCeleronを使い、次にSocket 370のCPUへアップグレード、最後はデュアルにといった柔軟に拡張することができるようになっているのが売りだ。ただし、CPUをデュアルオペレーションさせるのに必要なチップであるAPICが、本製品のマザーボード側に搭載されているので、このアダプタを他のシングルSlot 1マザーボードに挿しても利用することはできない。2つのCPUを重ねて装着するので高さに余裕があるケースが必要になるだろう(そんなケースあるのかという気がしなくもないが)。

QDIからリリースされたSlot 1が1つでもデュアルCeleronを実現するアダプタがバンドルされたTwinMagic デュアルCPUを実現するアダプタ。相当に高さがあり、ケースを選びそうだ デュアルCPUを実現するアダプタの裏側


 もう1つデュアルCeleronではないが、VIAのApollo Pro Plus 133(VT82C693A、前述のようにVIAはApollo PC133に名称を変更した)でデュアルCPUを実現したマザーボードが、Tyanに展示されていた。VIAではApollo PC133はデュアルでの動作をサポートしていないとしており、公式には動作するとは言っていない。が、Tyanの説明員によると「APICの搭載、BIOSの手直し、特殊な基板設計でデュアルCPUに対応した」とのことで、マザーボードを見るとインテルのAPICチップが搭載されていた。440BXよりもApollo PC133はかなり安いようで、本製品も440BX搭載マザーボードと比較して安価に設定できるようだ。

 それにしても、メーカーが正式にデュアル動作しないと言っているCPUやチップセットがデュアルで動作したりと、デュアル動作に関してはほとんど何でもあり状態になりつつある。TyanのApollo PC133搭載デュアルマザーボードに、Celeron×2という究極の無保証構成にしてみるのが、自作ユーザーの王道? となるだろうか。

TwinMagicではマザーボード側にAPICが搭載されている。シングルSlot 1マザーボードでAPICを搭載したマザーボードはあり得ないので、他のマザーボードではデュアルCPUボードは使えない TyanのS1834D。チップセットにApollo PC133を使っていながら、デュアルCPUでの利用を実現している。しかし、よくそんなことやろうと考えるものだ…… S1834Dに搭載されているインテル製のAPIC


■FlexATXマザーボードも静かにデビュー

MSIで展示されていたFlexATXマザーボードのMS-6175。チップセットにはIntel810を採用している
 また、あまり注目されていなかったが、MSI(Micro-Star International)などいくつかのベンダーではFlexATXフォームファクタのマザーボードが展示されていた。FlexATXは2月に米国で行なわれたIDF Springで公開された新しいフォームファクタで、スリムデスクトップやスタイリッシュなPC用だ。

 ただ、現状では魅力的なケースもあまりなく、需要は多くなさそうで、OEM先からの要求があれば作るそうで、特にプロモーションも行なわないようだ。確かに、FlexATXで重要なのはパフォーマンスなどの中身ではなく、外側のデザインであり、そうした意味ではファッショナブルなFlexATXが発売されるようになるまでは、あまりエンドユーザーには関係のない製品ということができるだろう。

□COMPUTEX TAIPEI '99のホームページ(英文)
http://www.computex.com.tw/cpx99.asp
□TCAホームページ(和文)
http://www.ippc.com.tw/tca/tca.htm
□台北世界貿易センター展示場ホームページ(英文)
http://taipeitradeshows.cetra.org.tw/
□TAIPEI International Trade ShowsのCOMPUTEX TAIPEI '99ページ(英文)
http://taipeitradeshows.cetra.org.tw/computex/

('99年6月3日)

[Reported by 笠原一輝]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp