COMPUTEX TAIPEI '99 レポート

Camelチップセットも初お目見え!
~激化するチップセット戦争をComputexで追う!~

Text:笠原一輝


会場前

会期:6月1日~6月5日
会場:台北世界貿易センター展示場
   台北国際コンベンションセンター
主催:TCA(台北市電脳商業同業公会)
   CETRA(中華民国対外貿易発展協会)


 PCのチップセット業界における巨人は言うまでもなくインテルだ。インテルはPCのスタンダードを決定する立場にあるという強みを活かして強力なチップセットを次々にリリースし、ライバルを打ち倒してきた。これにより、OptiやVLSIといった米国のLSIベンダーはPC用チップセットから撤退していったが、その代わりに台湾のチップセットベンダーである、VIA Technologies(VIA)、Acer Labratory Inc.(ALi)、Slicon Integrated Systems(SiS)の3社が台頭してきてインテルに対抗するという構図になっている。


■ 初めて公開されたCamelチップセット搭載WTXマザーボード

Intel820を搭載したマザーボードである、IwillのDC133
 今回メインの会場である世界貿易中心では、Intel810を搭載していたマザーボードが多く展示されていた。Intel810を搭載したマザーボードはほとんどがSocket370のCPUソケットを採用していたが、中にはSlot 1(SC242)のCPUスロットの製品も見受けられ、今後も続々と様々なスペックの製品が秋葉原に登場することは間違いないだろう。

 期待されていたインテルの次世代チップセットCaminoを搭載したマザーボードは残念ながらメインの会場では公開されていなかった。しかし、Iwillが世界貿易中心に隣接するハイアットホテルで行なっていたプライベートスイートでは、実際にCaminoチップセットを搭載した、UC133(シングルCPU)とDC133(デュアルCPU)という2枚のマザーボードを見ることができた。

 既に伝えられているように、CaminoはMCH(Memory Control Hub)と呼ばれるFW82820とICH(I/O Control Hub)と呼ばれるFW82801AA、従来のBIOS ROM相当FWH(Firm Ware Hub)という3つのチップから構成されている(ICHとFWHに関してはIntel810と同等のチップ)。Intel820ではAGP 4xがサポートされるが、AGP 4xのスロットは従来のAGP 2xとは異なる形状が採用されている(位置は同じ)。従来のAGP 2xのスロットではブラケットから見て手前に切り欠きが入っていたが、AGP 4xでは切り欠きが無いストレートなスロットが採用されているのが目に付く大きな違いだ。

 また、Iwillのスイートでは、現在ローエンドサーバーやワークステーション用に発売されているIntel 440GX AGPsetの後継と言われているIntel840(コードネーム:Camel)を搭載したマザーボードのDCA200が展示されていた。CamelはCaminoのハイエンド版と呼ぶべき製品で、

バリューパフォーマンスワークステーション
440ZX440BX440GX
Intel810Intel820Intel840

というようにIntel820のワークステーション版に位置づけられる製品だ(440BXと440GXの関係に似ていると思えばよい)。

 Intel840はメモリはDirect RDRAMをサポートし、AGPを拡張したAGP Pro、64ビットPCIなどワークステーションやローエンドサーバーとして使うのに必要な機能が追加されている。DCA200はワークステーション用にATXを拡張したWTXフォームファクタに準拠しており、WTXに対応したワークステーション用のケースで利用することができる。現時点ではIntel840の出荷は第4四半期と言われており、今後とも注目していきたい製品だ。

コードネームCamelで呼ばれるIntel840を搭載したWTXフォームファクタのIwillのDCA200 コードネームCamelで呼ばれるIntel840。FW82840という製品名になっていた DCA200に搭載されているAGP Proのスロット


■VIAはApollo Pro 133をApollo PC133へと変更

 VIA TechnologiesはCeBITに引き続きPC133をアピールし、PC133 SDRAMをサポートしたチップセットApollo PC133をリリースした。実はこのApollo PC133、つい先日までApollo Pro 133と呼ばれていたチップセットで、チップ自体に手を入れた訳ではなく型番はVT82C693Aと変わっていない。名称変更に伴い若干の仕様変更が行なわれており、サポートするFSBのクロックが133MHzから100MHzへのスペックダウンが行なわれている。

 もともと、Apollo Pro 133はFSBとメモリバスが非同期になるように設計されており、FSBを100MHz、メモリバスを133MHzという設定は可能だった。なのになぜという疑問が生じる訳だが、VIAのマーケティングディレクターSean Davidson氏は「現状ではFSB 133MHzに対応したP6バスのCPUが発売されていないため」と説明した。なお、同社によると今年の第3四半期に発表するPro+と呼ばれていた次世代のチップセットでFSB 133MHzをサポートするという。つまり、FSB 133MHzを正式に使えるようになるのは、9月にCaminoと同時に発表すると言われているCoppermineのコードネームで呼ばれる次世代Pentium IIIまでお預けということになりそうだ。

 FSBメモリ出荷時期
Apollo Pro 133133MHz133MHz――
   ↓
Apollo PC133100MHz133MHz2Q
Pro+133MHz133MHz3Q

 また、ALiはAladdin Pro IIの後継チップセットとしてAladdin Pro IVのデモを行なった。Aladdin Pro IVはAGP 4xをサポートし、メインメモリとしてPC133 SDRAM、EDO DRAM、VC SDRAMをサポートした次世代チップセットだ。

 なお、VIAやSiSが昨年中にP6バスのライセンス問題を昨年中にインテルと合意したのに対して、ALiはこれまでインテルとの間でライセンスに関して合意をしていなかった。このため、多くのマザーボードメーカーはALiのP6バス用チップセットの採用をためらっており、MSIのように完全なサンプルマザーボードまで用意していながら出荷しなかったメーカーもあったほどだ。しかし、ALiのプロダクトマーケティングディレクター Alex Chou氏によると「先週インテルと合意に達した。合意の詳細については述べることはできない」としており、どういった条件で合意に至ったかについてはノーコメントであったものの、少なくともライセンス問題が解決されたことで、今後ALiのチップセットはVIAのApollo PC133の強力なライバルとなるだろう。


Apollo PC133に変更されたApollo Pro 133 ALiからリリースされたAladdin Pro IV。メルコのブースに展示されており、VC SDRAMが動作することがアピールされていた


■新世代の製品が続々登場するP6バス用統合型チップセット

 今回のComputexでは、統合型チップセットを搭載したマザーボードが目に付いた。まずは、インテルが4月26日に発表したIntel810搭載マザーボードで、どのマザーボードベンダーにいっても必ずと言ってよいほど展示されていた。既に秋葉原でも販売が始まっており、今後こうした製品が徐々に秋葉原に登場するようになるだろう。

 今回新たに展示されていたのはVIAのProMediaとComputexの直前に発表されたSiSのSiS 630だ。これらはどちらもP6バスに対応したチップセットで、どちらもグラフィックスアクセラレータをノースブリッジに統合している。

 ProMedia(VT8601)はSuper7用のApollo MVP4と同じくTrident MicrosystemsのrCADEコアをノースブリッジに統合したチップセットで、MVP4がそのままP6バス用になったと考えていいだろう。このため、MVP4と同様に他の統合チップセットと比べて3D描画能力があまり高くないという問題を抱えている可能性が高く、Intel810に対抗できるかどうかには疑問が残る。
 なお、VIAに関してはむしろS3と共同で開発しているSavage4をグラフィックスコアに採用したSavageNBが要注目だろう。VIAのDavidson氏によれば、SavageNBのリリースは今年の第4四半期ということだ。

 これに対して、SiS 630に関しては実際に製品こそ登場していないものの、それなりに期待している関係者が多いようだ。その背景にはSiS 630はグラフィックスコアとしてSiS 300が採用されている。明日のグラフィックスカードのレポートで詳細をお知らせできると思うが、複数のビデオカードベンダーによるとSiS 300のパフォーマンスは思ったよりも高く、少なくてもRIVA TNT並、条件がそろえばRIVA TNT2並のパフォーマンスを発揮するという。そのSiS 300がコアに採用されているのだから、SiS 630もそれなりのパフォーマンスが期待できるだろうという訳だ。

 この他にも、ハードウェアオーディオ機能を内蔵しており(VIAやインテルはソフトウェア)、3Dポジショナルサウンドにも対応していたり、イーサネット機能を持っていたりなど、さらに統合が進んでいるのが特徴と言える。今回はSiSのブースで展示されていただけだったが、今後はマザーボードベンダ各社で採用されることが予想され、注目していきたい製品と言える。

 なお、ALiからも正式にP6バス用統合型チップセットがアナウンスされ、エンジニアリングサンプルは7月から出荷されるという(なお、実際のチップの展示は無かった)。その名もAladdin Pro IIIで、グラフィックスコアは噂通りnVIDIAのRIVA TNT2が採用されるという。注目のビデオメモリだが、UMA(Unified Memory Architecture)方式も通常のグラフィックスアクセラレータと同じようにローカルバスにビデオメモリを接続する方式のどちらにも対応することができるようになっている。

 なお、ビデオメモリを搭載した場合には、メモリバス幅は64ビット幅になり、どちらと言えばVanta(RIVA TNT2コアで、メモリバスは64ビット)やRIVA TNT2 M64といったRIVA TNT2の廉価版が搭載されていると考えるの妥当だろう。こちらもこれまでの統合型チップセットでは考えられない高い3D描画能力を持っていることが予想され、やはり注目したい製品と言える。

VIAのP6バス用統合型ProMedia。グラフィックスコアはTrident MicrosystemsのrCADEで、MVP4と同じ SiSからリリースされたP6バス用統合型チップセットSiS 630 SiSの3DアクセラレータSiS 300。ビデオカードベンダなどから高い評価を受けていた

□COMPUTEX TAIPEI '99のホームページ(英文)
http://www.computex.com.tw/cpx99.asp
□TCAホームページ(和文)
http://www.ippc.com.tw/tca/tca.htm
□台北世界貿易センター展示場ホームページ(英文)
http://taipeitradeshows.cetra.org.tw/
□TAIPEI International Trade ShowsのCOMPUTEX TAIPEI '99ページ(英文)
http://taipeitradeshows.cetra.org.tw/computex/

('99年6月1日)

[Reported by 笠原一輝]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp