~新たにx86互換CPU市場に参入したRise mP6の実力とは?~ |
mP6は、あくまで1,000ドル以下(もっと言うなら、499ドルから699ドル)のPCで使われることを前提に設計されたCPUであり、製造コストを抑えながらも、十分なパフォーマンスを得るために、こうしたアーキテクチャを採用したのであろう。
mP6の表面。中央にBGAパッケージが乗っている | mP6を横から見ると、BGAパッケージの半田ボールが見える |
今回は、FICのVA-503+ Rev.1.2A(MVP3搭載)と、MicrostarのMS-5169 Rev.2(Aladdin V搭載)を用いてテストをおこなった。テスト環境は以下の通りである。ビジネスアプリケーションの実行性能、整数演算性能、浮動小数点演算性能、およびマルチメディアアプリケーションの実行性能を比べてみることにした。
結果は表1の通りである。このテストにおいては、mP6 266のパフォーマンスは、K6-2/266MHzやM II-266GPに比べると、かなり劣るという結果になった。もちろん、通常のアプリケーションを使ってみた感じでは、それほど速度に不満があるわけではないが、266MHz相当というには厳しいといわざるを得ない。
【表1:Business Winstone 99】
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次に、Windows 98+Direct X6.1環境において、整数演算性能と浮動小数点演算性能を計測してみた。英語版Windows NT 4.0環境のときには、FICのVA-503+を用いてテストをおこなったが、Windows 98を導入すると不安定になったので(K6-2でも同じだったので、マザーボードが原因らしい)、Windows 98環境でのテストは、MicrostarのMS-5169を用いることにした。なお、Windows 98のシステムのプロパティを開いてみると、CPUの項目には「RiseRiseRise」と表示される(画面1)。
システムのプロパティには、“RiseRiseRise”と表示される |
結果を見てみると、なかなか面白いことがわかる。整数演算性能を測定するCPUmark 99の結果は、Business Winstone 99と同様に、M II-266GPやK6-2/266MHzに遠く及ばないが、浮動小数点演算性能が効いてくるFPU WinMarkとスーパーπの結果は、なかなか優秀だ。特に、スーパーπでは、実動作クロックが3割高いK6-2/266MHzよりも、3割近く高速に演算を行なえている。M IIやK6-2(特にM II)はインテルのチップに比べて、浮動小数点演算性能が劣ることが弱点と言われてきたが、mP6なら対抗できるであろう(ただし、実クロックが200MHz程度では、300MHzを越える速度で動作するPentium IIやCeleronにはやはりかなわないが)。
【表2:WinBench 99 /スーパーπ 】
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最後に、マルチメディアアプリケーションにおける性能を評価してみた。測定には、FutureMarkのベンチマークプログラムMultimediaMark 99を用いた。MultimediaMark99は、MPEG1ビデオのエンコードとデコード、画像レタッチ、音声加工という4つのテストを行ない、PCのマルチメディアアプリケーション実行性能を総合的に判断するプログラムだ。
MultimediaMark 99の結果は、K6-2/266MHz > mP6 266 > M II-266GPという順になった。マルチメディアアプリケーションでは、MMX命令や浮動小数点演算命令が比較的多く用いられるため、浮動小数点演算能力の高いmP6も健闘している。
【表3:MultimediaMark 99】
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mP6は、アーキテクチャと形状が変わっているだけでなく、性能的にもなかなか興味深い。他の互換CPUは、整数演算性能を高めることに重点がおかれているのに対し、mP6は、浮動小数点演算性能が高いことが特徴である。なお、試しにFSBクロックを112MHzにして224MHz動作やFSBクロック90MHzの2.5倍動作(225MHz動作)を行なってみたところ、Windows起動時に保護エラーを出してハングしてしまったので、クロックアップ耐性はそれほど高くないようだ。
Rise Technologyでは、mP6を低価格PC向けやノートPC向けCPUとして位置づけている。米国では700ドルを切るマシンが好調だが、そのあたりのマシンに使うには、K6-2でも高いといわれている。とことん高い性能を求める人には物足りないだろうが、実売価格が5,800円でスタートしたことを考えれば、コストパフォーマンス面では、十分競争力はある。
Rise Technologyの次の製品となるmP6 IIでは、mP6コアをベースに256KバイトのL2キャッシュが集積されるため、かなりパフォーマンスが向上することが見込まれる(K6-2とK6-IIIの関係に似ている)。mP6 IIのサンプルは、先日開かれたCeBITで展示されており、'99年第2四半期には量産が開始されるとのことだ。
【テスト環境】 マザーボード:FIC VA-503+(MVP3)、Microstar MS-5169(Aladdin V) メモリ :64MB(PC/100,CL=3) HDD :Quantum Fireball EX6.4 ビデオカード:Matrox Millennium G200(AGP:ビデオメモリ8MB) |
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http://www.watch.impress.co.jp/akiba/hotline/990403/mp6.html
[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]