元麻布春男の週刊PCホットライン

同時進行連載:リビングルームPCが欲しい・その9
CSデータ放送/通信サービス・3 ~MegaWave~



■MegaWaveとは

 今回は、前々回のSkyPerfecPC!のところで触れたのと同じデジタルCSデータボードである、DSB-1000で利用可能なもう1つのサービスの話をしよう。そのサービスの名前はMegaWaveという。

 NTTサテライトコミュニケーションズが提供するMegaWaveは、デジタルCS衛星を利用したインターネット接続サービスである。インターネットというからには、サービスは双方向でなければならないが、残念ながら一般のユーザーが衛星めがけてデータを送信することはできない。そこで、MegaWaveはアップストリームには通常の(電話回線やISDNを利用する)プロバイダーのサービスを利用し、ダウンストリームにのみ衛星波を利用する。

 利用可能なプロバイダーは、最初はBIGLOBE、DREAMNET、IIJ4U、InfoWeb、SANNET、So-net、InfoSphere(東京および大阪の一部アクセスポイントのみ)の7社だったが、3月26日にabaインターネットサービス、CNET三重、JSDインターネットサービス、KIP-Internet、Link☆STARネット、Wave-Netインターネットサービス、ガヂェット・インターネット・サービス、北関西ジャパンネット、キャンパスネット、銚子インターネットの10社が、4月2日にBay Well、AKINA-NET、avis、INTERCITY、標茶インターネットプロジェクト、SKネット、U-netSURF、インターネットWINの8社がそれぞれ追加され、現在は計25社となっている。

 つまり、MegaWaveを利用するには、上記25社のいずれかと契約を結んだ上で、さらにMegaWaveと契約しなければならない(MegaWaveは、セキュリティの関係上、メールやニュースのサービスを提供しないので、その点でもプロバイダー契約が必須)。現在、MegaWaveは無料キャンペーン期間中(5月31日まで)だが、6月1日以降は月額3,980円の定額制となる。この料金に加え、プロバイダー料金も必要なことを忘れてはならない(もちろん通常の電話代も)。



■メリットは通信速度だが

 MegaWaveはSkyPerfecPC!のような放送サービスではないから、MegaWaveならではのコンテンツのようなものはない(専用のポータルサイトはあるが)。そのメリットは、通信速度のみといって構わないだろう。MegaWaveが提供する通信速度は最大1Mbps。ケーブルモデムを除くと、個人が利用可能な価格のサービスとしては、おそらく国内最速の通信サービスだろう。画面は、筆者がテストとしてWindows NT 4.0のService Pack4をダウンロードした際のものだが、96.2KB/秒という転送速度が記録されている。51.9MBのSP4が、9分程度でダウンロード可能なスピードだ。

 しかし、残念ながら世の中はそううまくはいかない。画面に示した96.2KB/秒というのは、ほとんどピーク値であって、転送速度はMegaWaveを利用するユーザーの数、WebサーバーやFTPサーバなどの混み具合など、様々な要因で変動する。このSP4のダウンロードにしても、実際には20分程度かかった(比較的ユーザーが少ないと思われる平日の深夜だったのだが)。この辺に、速度が保証されているSkyPerfecPC!のような放送サービスとの違いを感じる。

画面:Windows NT 4.0のService Pack4をダウンロードした際には、96.2KB/秒を記録した。しかしこれはほとんどピーク値で、51.0MBのSP4をダウンロードするのに、実際には20分ほどかかった

 少なくとも筆者は、Internetを通じて提供されるストリーミングサービス(オーディオやビデオの中継等)に、わざわざMegaWaveに入るだけの価値があるとは、現時点では思わない。逆に、仮に良いコンテンツがあり、MegaWaveに入っていたとしても、どれだけの効果があるかも断言できない。利用に必要なハードウェアを買い揃え、一般のプロバイダに加入した上で、さらに月に3,980円払う価値があるかどうは、ユーザーによるだろう。



■ MegaWaveクライアントソフトの出来はいまひとつ

 また、筆者が利用しているソニー製チューナー(DST-D900)+ソニー製データボード(DSB-1000)の組み合せで利用するMegaWaveクライアントソフトについては、そのデキがあまり良くない点も気にかかる(他社のボードが同じソフトを利用するかどうかは知らない)。SKYPerfecPC!のソフトにも、パワーマネージメントと共存できないとか、受信が完了してもチューナーの電源を落としてくれない、といった不満があったが、MegaWaveクライアントはそれ以上に悪い。

 筆者の環境では、MegaWaveクライアントをストレートに起動すると、必ず「UDL.DLLのエラーです」という、何の参考にもならないエラーメッセージが返ってきて、接続できない。これを回避するには、システムを起動したらMegaWaveクライアントを利用する前に、必ず付属のチューナー設定プログラムを走らせなければならない(本来は最初のインストール時に1回起動すれば良いハズなのだが)。しかもチューナー設定プログラムは、途中でエラーになることもあるため、これが正常終了するまでトライする必要がある(ただし、1回目失敗しても2回目には成功するようで、まだ3回目のトライが必要だったことはない)。

 チューナー設定プログラムを正常終了させるコツ? として、CSチューナーの電源を最初から入れておくこと、CSチューナーが受信する衛星をJCSAT4号(JSkyB)側に予め切り替えておくこと、といったことまで求められる。この手順で100%接続できているとはいえ、有償サービスに移行するには、ちょっとお粗末なソフトウェアである(おそらくTVチューナー一体型のデータボードなら、こうした問題はないのだろうが)。

 実は、筆者はMegaWaveと契約する際に、ICカードの交換まで要求された。CSチューナーを今年になって買い換えたにもかかわらず、同梱されているICカードが通信サービス非対応のものだったため、MegaWaveのカスタマセンターに連絡して、ICカードを交換せねばならなかったのである。ICカードを交換すると、それまで契約していたSkyPerfecTV!等の契約まで、新しいICカードに移さなければならない。別に難しいことではないが、わずらわしいことは間違いない。



■ 利用環境の完成度はまだまだ

 というわけで、通信速度の速さには魅力があるものの、ソフトウェアやICカードといった利用環境の完成度はまだまだ低い。もう少し様子を見て、ソフトウェアのバージョンアップや、CSチューナーの新製品(すでに発表済み)が出てからにすれば、と言いたいところだ。確かに、こうした環境の整備を待っていては、無料キャンペーン期間は終ってしまうが、しょせん2カ月分の料金など8,000円にも満たない。8,000円をケチって古いチューナー(確かにモデルチェンジ直前だから、これも安いが)を買う必要もないだろう。あるいは、今すぐ入りたいというのであれば、筆者とは違う道(NEC製やIBM製のカード)を検討してみるのも良いかもしれない。

□MegaWaveホームページ
http://www.megawave.ne.jp/

[Text by 元麻布春男]


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