後藤弘茂のWeekly海外ニュース

Windows 2000は10月6日がターゲットデイト、でも……


●Windows 2000は10月6日がターゲットデイト、でも……

 Windows 2000は、ようやく進展が見えた。「Windows 2000 Beta 3 On Track To Ship April 21 : More on Shiloh, the next SQL Server」(Computer Retail Week,'99/4/1)など複数の記事が、Microsoft筋やMicrosoftに近い筋からの情報として、Windows 2000の“公式”のβ3が4月21日に出荷されることに決まったと報じている。また、Windows 2000製品版の出荷に関しても、「Microsoft to Ship Windows 2000 in October」(PC World,'99/4/1)など複数の記事が、10月6日が“ターゲットデイト”だと報じ始めている。PC Worldの記事によると、Microsoft側もこれを認めているという。しかし、Microsoftの説明では、この日付はあくまでもエンジニアのデッドラインであって、Microsoftがユーザーの手元にWindows 2000を渡すと約束するものではないという。しかし、開発現場に対して、10月とデッドラインを切ったとすると、それは、11月のCOMDEX Fallに間に合わせたいという意図なのだろう。だが、Microsoftはβテストをしている顧客がOKを出すまでは出荷しないとも約束している。さてどうなるか。



●WinHEC、今年のテーマは?

 ところで、Microsoftは今週水曜からハードウェア開発者向けカンファレンス「Windows Hardware Engineering Conference and Exhibition (WinHEC) 99」を米国ロサンゼルスで開催する。このWinHEC 99の関連記事も、いくつか登場し始めた。Microsoft情報なら、ZDがいちばん濃厚だが、今回もやはり「Microsoft to spotlight OS strategy at WinHEC」(PC Week,'99/4/2)でかなり突っ込んだ予報をしている。ただし、内容はというと、Universal Plug and Play戦略やEmbedded NTのデビュー、64ビットWindows NTのデモと、今ひとつぱっとしない。これは、他の記事でも同じことで「Notebooks, home networks to lead WinHEC」(NEWS.COM,'99/4/1)はUniversal Plug and Playがテーマと報じている。また、MP3対抗のMS AUDIOがアナウンスされるというウワサもある。まあ、Windows 2000の遅れで閉塞感のある今のMicrosoftの状況では、次世代コンシューマOSの「Neptune」あたりの話題でも登場しないと新味は出せないだろう。WinHEC 99でのMicrosoftの発表内容は、現地からのリアルタイムレポートで紹介する予定だ。



●Microsoft裁判は冷却期間を延長へ

 一方、Microsoft裁判の方だが、こちらは、連邦地裁のジャクソン判事が、公判の再開を今月中旬から来月に延ばしたようだ。「Microsoft antitrust trial resumes May 10 or later」(San Jose Mercury News,'99/3/31、リンクはすでに消失)などによると、5月10日以前に再開される見込みはなくなったらしい。どうやら、ジャクソン判事は、できるだけ和解で決着をつけたいようだ。今の和解交渉の状況では、どうみても今月中旬にまで和解成立の見込みがないから、冷却期間を延長したという観測が多いようだ。



●ジャクソン判事は三流の問題発言

 こうしたジャクソン判事に対していらだったのが、Microsoftシンパで知られる上院議員のSlade Gorton氏(共和党ワシントン州)。「Gorton slams Microsoft trial judge during visit to Redmond campus」(Seattle Times,'99/4/1)のスクープによると、Microsoft本社を訪れたGorton議員は、Microsoft社員のグループとのカジュアルな会話の中で、ジャクソン判事を「セコンドかサードグレートの判事」と揶揄し、これでは地裁レベルではMicrosoftに勝ち目があると思えないという意味のことを言ったらしい。この報道に、Microsoftはさっそく、これはMicrosoftのビューではないとコメントを出したそうだ。しかし、問題は、こうしたMicrosoft内部での発言が、すぐ翌日には地元新聞に漏れてしまうというMicrosoftの構造にあるのかも知れない。少なくとも、Intelではこんなことは起こらない。



●Microsoftの新組織にWindows 95の父の姿はなし

 ウワサになっていた、Microsoftの組織再編が、ようやく先週発表された。この話は、発表前に、「Microsoftが、裁判対策で分社化するかもしれない」と大きく騒がれたおかげで、発表した時にはもうすっかり話題が冷めてしまって、あまり大きな記事にならなかった。内容も、まあ、大半は、ほぼ予想通りだったと言っていい。ひとつのポイントをのぞいては。それは、Windows 95の父であるBrad Silverberg氏の完全復活だ。

 Microsoft再編の話が出始めた2月中盤、いちばん話題になったのはBrad Silverberg氏が戻ってくるというウワサだった。Brad Silverberg氏は、かつてはWindows 95、つまりコンシューマOSの部隊を率いる「Windowsの顔」だった。しかし、Windows 95が出たあとは、OS部門はWindows NTを統括するJim Allchin氏の下に統合され、Silverberg氏はInternet Explorerの部隊を統括することになった。そして、「How Microsoft Wound Up In a Civil War Over Windows」(Wall Street Journal,'99/2/1、有料サイト、http://www.wsj.com/から検索)などによると、Silverberg氏は、IEをクロスプラットフォームの基盤にしようという戦略を進めたが、Allchin氏との権力闘争に破れてしまったという。その結果、Silverberg氏は、'97年3月に自転車旅行に出るために休暇を取り、それ以来、Microsoftにはフルタイムでは戻っていなかったという。

 そのSilverberg氏に、Microsoftはコンシューマ部門のトップのポストを提示したというニュースが伝わり始めたのが2月だ。しかし、3月のニュースでは、Silverberg氏が提示されたポストを断ったという記事が出てくる。そして、先週の正式発表では、実際に5部門のトップにSilverberg氏の名前はなかった。「Microsoft in Broad Reorganization」(New York Times,'99/3/30、登録が必要)などによると、Silverberg氏は、Microsoft社長スティーブ・バルマー氏のアドバイザーとして復帰するが、Microsoftの1部門を直接統括はしないという結果になったらしい。よほど、Microsoftの中の権力闘争に懲りたのか、それとも、心身を削るMicrosoftのトップエグゼクティブのポストに復帰する気力をなくしたのか。



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('99年4月5日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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