~Dual Celeronブーム到来か? Soltek製変換アダプタの登場~ |
しかし、'99年1月にPPGA版Celeron(Socket 370対応)が登場したことで、その状況も一変した。PPGA版CeleronをSlot 1対応マザーボードで使うためのSlot 1 → Socket 370変換アダプタに改造を施すことで、CPU自体に手を加えることなく、Dual動作を実現できるようになったのだ。ただし、全ての変換アダプタで、Dual化改造を行なえるわけではない。MSIのMS-6905は、Dual化がしやすい変換アダプタとして、秋葉原でも人気を集めている。変換アダプタを利用したCeleron Dual化も、川田氏のHPが詳しい。
Soltek製のSlot 1 → Socket 370変換アダプタ「SL-02A」。無改造でのDual動作を実現した点が売り |
PPGA版CeleronではピンにBR1#の信号線が出ているため、その信号線をそのままカードエッジの端子に接続してやるだけで、Dual対応になるわけだ。それなら、無改造でDual動作を実現する変換アダプタが登場してもおかしくはない。そこで登場したのが、SoltekのSL-02Aである。SL-02Aは、秋葉原で入手できる製品としては初めて、無改造でのDual動作を実現したことが最大の売りである(なお、MSIのMS-6905の新バージョンでも、Dual動作を実現するとアナウンスされている。詳しくは後述)。ただし、SL-02Aにも、Dual動作に対応したバージョンと非対応のバージョンがある。現在秋葉原で売られているSL-02Aは、基本的にDual対応となっているようだが、基板の左上に「A2」というシルク印刷があるものがDual対応バージョンなので、購入の際には確認しておきたい。もちろん、「A2」というシルク印刷があっても、SoltekがDual動作を保証しているというわけではない(CeleronのDual動作は、インテル保証外の動作である)。また、従来のSECC用のRetention Kitで固定できるように、外形サイズをSECCと同じにするプラスチックカバーが付属していることも特徴だ。
ところが、その問題を解決してくれる嬉しい商品が登場した。それが、Soltek製のDual CPU対応マザーボード「SL-68A」(Intel 440BXチップセット採用)と「SL-02A」、Windows NT Workstaion 4.0評価キットを組み合わせたセット商品(26,800円。以下、Dual Celeronセットと呼ぶ)である。Windows NT Workstation 4.0評価キットは、マイクロソフトが企業向けに2,000円で提供している製品だ。その名前からもわかるように、Windows NT 4.0の性能評価用として用意されたもので、機能は製品版と全く変わらないが、インストール後120日間しか利用できないという制限が付いている。つまり、Dual CeleronセットとSL-02Aをもう1個、PPGA版Celeron2個を用意するだけで、120日間という期間制限はあるものの、OSを含めたDual CPU環境が実現できるわけだ。価格的にもリーズナブルなので、コスト的な魅力も高い。もちろん、Dual Celeronセットでも、CeleronのDual動作を保証しているわけではないのだが、筆者が試した限りにおいては問題なく動くようだ。
Soltek製のDual CPU対応マザーボード「SL-68A」 | 120日間試用できるWindows NT Workstation 4.0評価キットは2,000円 |
Soltek製「SL-68A」は、マザーボード上のDIPスイッチによってFSBクロックを66MHzと100MHzに切り替え可能 |
Dual Celeronセットに含まれているマザーボード「SL-68A」は、マザーボード上のDIPスイッチによってFSBクロックを66MHzと100MHzに切り替えられるほか、BIOS設定によって、FSBクロックを75/83MHzに設定することもできる。100MHzオーバーには対応していないようだが、Dual動作時の安定性を考えると妥当だろう。PCIスロットを5本(うち1つはISAスロットと共用)、DIMMスロットを4つ備えているなど、拡張性も優秀である。
BIOS起動時に、2 Processor(s)と表示された |
Windows NT 4.0をマルチプロセッサ環境で導入してから、Celeronを1個外しても起動する。そこでそれぞれの状態で、Dual CPU対応のベンチマークテストを行なってみることにした。評価には、HDBENCH(EP82改/かず氏作のフリーソフト)の最新α版であるVer.3.00α2( http://www.lares.dti.ne.jp/~ep82kazu/ から入手可能 )と、Ziff-Davis,IncのWinstone 99 Version 1.0に含まれているDual Processor Inspection Tests、およびOpenGL用ベンチマークテストの標準化団体OPC(OpenGL Perfomance Characterization Project)が開発したViewperf 6.1を用いた。ただしWinstone 99は、日本語環境では動作しないので、Winstone 99のみ英語版Windows NT 4.0 Workstationを導入した環境でテストを行なった。また、比較のために、Pentium III 500MHzでも同じテストを行なってみた(なおSL-68Aは、Pentium III対応とのことだが、筆者の環境ではPentium IIIを装着すると起動しなかったので、Pentium IIIのテストは、ASUSTekのP2Bを用いて行なった)。
ベンチマーク結果は、以下に示したとおりで、やはりDual CPUの効果は確実に現れていることがわかる。Dual CPUに対応していないベンチマークテストでは、ほとんど性能向上は見られないが、複数のアプリケーションを同時に動かす場合、Dual CPU環境のほうが、より高速に処理を行なうことができるので、Dual CPU環境の意義は決して小さくはない。
【Dual Celeronベンチマーク結果】
CPU | Celeron 300A×1 | Celeron 300A×2 | Celeron 450×1 | Celeron 450×2 | Pentium III 500×1 | |
---|---|---|---|---|---|---|
HDBENCH Ver.3.00α2 | Int(整数) | 12263 | 24355 | 18394 | 36552 | 20174 |
Float(浮動小数点) | 2603 | 5203 | 3905 | 7806 | 4407 | |
Memory Read | 15361 | 28650 | 23022 | 43081 | 25211 | |
Memory Write | 18008 | 33379 | 26959 | 50046 | 29429 | |
Winstone 99 Dual Process | 1.69 | 2.08 | 2.30 | 2.64 | 2.43 | |
Viewperf 6.1 Drv-05 | 1.069 | 1.166 | 1.602 | 1.743 | 1.834 |
定格の300MHzで安定して動作することを確認したので、FSBクロックを100MHzに上げてみることにした。SL-68AでFSBクロックを100MHzにするには、DIPスイッチの5番と6番をOFFにすればよい。今回使ったPPGA版Celeron 300Aは、両方とも当たりの製品(=クロックアップ耐性が高い)であったようで、冷却強化などをせずに450MHz(100MHz×4.5)で安定動作した。Dual Celeron 450MHz動作についても、ベンチマークテストを行なってみたが、そのパフォーマンスはまさに圧巻だ。特にHDBENCHのCPUの結果は、Pentium III 500MHzの1CPU動作時に比べて、遙かに高くなっている。
【テスト環境】
マザーボード | Soltek SL-68A(Celeron)、ASUSTek P2B(PentiumⅢ) |
メモリ | 128MB(PC/100、CL=3) |
HDD | Quantum Fireball EX6.4 |
ビデオカード | Matrox Millennium(PCI:ビデオメモリ4Mバイト) |
OS | Windows NT Workstation 4.0 120日間限定試用版、 Windows NT Workstation 4.0 英語版 |
現在、Pentium III 500MHzが8万円前後で販売されていることを考えれば、PPGA版Celeron 300AをDualで450MHz動作させたときのコストパフォーマンスは非常に高い(PPGA版Celeron 300AとSL-02Aを2個ずつ買っても25,000円で十分お釣りがくる)。もちろん、今回用いたベンチマークテストは、Pentium IIIで追加された命令群「SSE」(Streaming Single Instruction Multiple Data Extensions)に対応していないので、Pentium IIIは単なる高速なPentium IIとしてしか利用されていないが、SSEをサポートしたアプリケーションが現時点ではほとんど存在しないことを考えれば妥当な評価であろう。また、話題のBeOSも上記の環境で、Dual CPUとして問題なく動作したことも付け加えておく。
Windows NT 4.0(およびWindows 98)の後継OSであるWindows 2000の登場が控えている現在、一足早くDual CPU環境を実現しておくのも悪くはないだろう。SL-021AやDual Celeronキットは、Dual CPU環境を体験したい自作派ユーザーの強い味方になる。
また、MSIからは、MS-6905というSlot 1→Socket 370変換アダプタが発売されているが、近日中に新しいバージョン(Version 1.1)に切り替わるとアナウンスされている。MS-6905 Version 1.1は、SL-02Aと同様に無改造でCeleronのDual動作を実現するだけでなく、コア電圧を変更できることが特徴だ(1.8~2.6Vまで設定可能)。コア電圧を上げることでさらなるクロックアップも狙えるので、こちらも面白そうだ。
BeOSも上記の環境で、Dual CPUとして問題なく動作 | 近日中にお目見えするという、MSI製のMS-6905 Version 1.1。無改造でCeleronのDual動作を実現するとともに、コア電圧の変更(1.8~2.6V)もサポート |
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[Text by 石井英男@ユービック・コンピューティング]