闇から闇へ、異色の泥棒アクション
もう一本は『2Dアクションの神髄ここにあり!「HEART OF DARKNESS」』です。
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●隠れて、逃げて、敵を欺くアクションアドベンチャー
見張りの死角になる暗がりに身を沈める |
「トゥーム~」や、多くの3Dアクションシューティングが敵を倒しながら進んで行くのに対して、この「Thief」では敵の目をあざむき、闇から闇へと移動し、アイテムを盗みながらプレイを進めていくようになっている。なにせゲームのタイトルからして「盗賊」なのだから。武器を持つこともできるけれど、重武装に身を包んだ兵士たちを相手にするには、プレーヤーの装備はあまりにも貧弱だ。どうしても戦わなければならない場合を除いて、暗がりから弓で相手を倒したり、背後から近づいて腰に下げた鍵を盗み取ったりと“逃げる”“隠れる”が基本的なプレイスタイルになる。世界設定やゲームの趣という面では多少御幣があるけれど、昨年ブレイクしたPlayStation用のアクションゲーム「メタルギア ソリッド(コナミ)」と似たタイプのゲームだと考えてもらえれば、ある程度イメージは伝わるのではないだろうか。見張りの兵士を倒したら、他の仲間に見つからないように死体を物陰に隠さなければならないし、足跡がつくところでは、それを消しておかないと発見されるなど、進行はかなりスリリング。正面を突破できれば近道だけれど、見張りが立っているし……というように、盗賊ならではの感覚を楽しむことができる。
●英語の壁はあるが良質のアドベンチャー
市民の寝静まった城下町。星の明かりや、街灯に群がる虫の表現など、細かい演出がなされている。 |
マニュアルには袋とじの部分があって、ゲームの攻略に必要なヒントが掲載されている。ゲーム自体が日本語化されていないので、シナリオの目的もなにも、すべて表記は英語。そんな中で、各ミッションの内容を説明してくれるこの袋とじ部分はありがたい。ただ、この袋とじだけでゲームを進めることは不可能ではないにしろ、かなり難しい。というのも、プレイ中に見張りなどのキャラクタが話しているのを聞いて、その内容から臨機応変に行動を決めて行かなければならない部分もあるからだ。さすがに袋とじといっても、それらの会話の全てを網羅するわけにもいかず、ステージ開始時に表示される目的の日本後訳と、ちょっとしたヒントが書かれているに過ぎない。試行錯誤しながら進めて行く分には問題ないのだけれど、プレイを十分楽しみたいと思ったら、英語の壁を乗り越えることが求められるのだ。今のところ、日本語版の発売は未定のままだけれど、多くのプレーヤーに楽しんでもらうためにも、ここはぜひ日本語版の発売に期待したいところだ。
ちなみに、このトレーニングステージに1ヵ所だけ引っかかりそうな場所がある。マニュアルにもヒントはないし、最初からつまづいて先に進めなくなるのももったいないので、ここで明かしてしまうけれど、武器の練習をする中庭で先に進めなくなった方は多いのではないだろうか。ここでは、庭の中ほどにある人形に、頭上から思いきり斬りつけてみよう。マウスの左ボタンを押しっぱなしにしておくと「むぅん!」と気合をためるので、この状態でボタンを離すといい。人形が地面に吸い込まれ、壁の一角の格子が開くはず。ここから出てくる兵士を撃退すれば、先に進めるようになる。こうした仕掛けはゲームの随所に散りばめられているので、先に進めなくなったら周囲をよく観察し、色々と試してみるといいだろう。こうした謎解き要素が強いのも、このゲームの特徴。「アクションアドベンチャー」の名はダテではない。
色の違う床は鉄板。踏むと音がして、見張りに気づかれてしまう。 | 基本武器の剣と弓。使い方はトレーニングモードの中で学んでおこう。 | 弓を引き絞ると画面がズームして狙いやすくなる。長時間引きすぎると、疲れて狙いがぶれはじめ、やがて矢を戻してしまうので注意。 | これが問題の人形。左右からの攻撃と、頭上からの攻撃をすべてクリアすると道が開ける。弓の練習もしておくこと。 |
●音が重要なファクターを握る
声といえば、このゲームには音声を利用したもうひとつの大きな特徴がある。この「Thief」は、Sound Blaster Live! などに搭載された3D Audio機能を採用し、立体的な音場を提供している。ただ足音が聞こえただけでは、敵がどちらの方向に入るかわからないけれど、3D Audioに対応したサウンドカードを使用していれば、前後左右、どちらにいるか手に取るようにわかるというわけだ。また、水の流れる音を頼りに進む、などという行動の判断基準にも使用できるはず。残念ながら今回のレビューでは、この機能の検証はできなかったけれど、周囲を全て敵に囲まれたときの緊張感を視覚と聴覚で知ることのできる画期的なシステムだと思う。ちなみに、この機能を使用するには、プログラムにパッチを当てる必要がある。パッチは3DFILES.COMなどで配布されているので、これを利用されるといいだろう。3D Audio対応の他にも、ジョイスティックへの対応やチートコードの搭載、数々のデバッグなどが行われているので、サウンドボードが対応していないという方も、とりあえずダウンロードしておくことをお勧めしたい。
英語の壁がある以上、万人にお勧めするわけにはいかないけれど、この「Thief」極めてクオリティの高いゲームであるのは間違いない。操作面やアクション性よりも、謎解き部分で行き詰まるかもしれないけれど、挑戦してみるだけの価値はあると思う。今回は時間の関係もあって途中で断念してしまったけれど、もしも日本語版が出たら、改めてじっくりとプレイしてみたい、そう思わせてくれたゲームだ。
Thief: The Dark Project and Looking Glass Logo are trademarks of Looking Glass Studios. (C)1997-1998 Looking Glass Studios. (C)1998 Eidos. All Rights Reserved.
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