★ ゲームソフトインプレッション ★

ちょっと待て! このまま埋もれるには惜しすぎる

2Dアクションの神髄ここにあり!
「HEART OF DARKNESS」


 今回は、普段とは少し趣向を変えてお送りする「ゲームソフトインプレッション」。普段なら発売前のゲームタイトルをご紹介するところなのだけれど、今回は昨年末から今年頭に発売された2本のゲームをレビューしてみたいと思う。どちらも国内ではあまり大きなムーブメントにはならなかったけれど、このまま忘れ去られてしまうには、あまりにももったいない良質なタイトルだ。もしもこの記事を読まれて、少しでも興味を持って頂ければ幸いに思う。

 もう一本は『闇から闇へ、異色の泥棒アクション「THIEF:THE DARK PROJECT」』です。



タイトル画面

  • ジャンル:
    縦横スクロールアクションゲーム
  • 発売メーカー:株式会社スパイク
    (開発会社:Amazing Studio
  • 価格:8,500円
  • 対応OS:Windows 95/98
  • 発売日:発売中
  • ユーザー問い合わせ先:
    03-5722-7799
 
【ゲームの内容】
     “闇の支配者”にとらわれた愛犬を助けるために、発明が趣味のアンディ少年は異世界へと旅立っていく。多彩なアクションパターンが用意された2Dアクションで、時折挿入される高品質ムービーもストレスなく、テンポよくゲームは進行していく。
【動作環境】
  • OS:Windows 95/98
  • CPU:486DX2の100MHz以上(Pentium 90MHz以上推奨)
  • RAM:16MB以上(32MB以上推奨)

スパイクのホームページ(この製品に関する情報は掲載されていない)
http://www.spike.co.jp/
サミーのホームページ
http://www.sammy.co.jp/
「HEART OF DARKNESS」のページ(和文)
http://www.sammy.co.jp/detail/heart/index.html
Amazing Studioのホームページ(英文)
http://www.amazingstudio.com/
「HEART OF DARKNESS」のページ(英文)
http://www.heartofdarkness.com/en/index.html
「HEART OF DARKNESS」Demo版(英語版)のダウンロードページ [53MB]
http://www.heartofdarkness.com/en/HOD_dwn.html



●'98年のベストゲームは?

HEART OF DARKNESS
武器を持って敵を蹴散らすときもある
 毎年恒例のことではあるのだけれど、年が明けてから、何人かの友人にこんな質問を受けた。「去年のベストゲームは?」。パソコン・コンシューマを問わず、公私あわせると去年1年に触れたゲームは約300本。そんな中から個人的にベストとして推すのが、この「HEART OF DARKNESS」。自分の中では、間違いなく去年もっとも楽しんだゲームだ。ただ残念なことに、このタイトルを口にしても、大抵の友人は「なにそれ? どんなゲーム」という同じような反応を示してくれる。こんなにいいゲームなのに、このまま日の目を見ないで埋もれさせてしまうのは、あまりにしのびない。そこで、本誌名物(?)編集の船津氏を抱き込んで……もとい、説得して(彼の体躯を抱き込むのは、かなりタイヘン)、ここで紹介させてもらおうというわけだ。

●最高の完成度を持った2Dアクション

 「HEART OF DARKNESS」は2Dのアクションゲーム。「今さら2D?」と思われる方もおられるかもしれないけれど、その認識は改めたほうがいい。2Dか3Dかというのは表現の手段でしかなく、ゲームの面白さとは全く次元の違うものなのだから。逆に、見た目ばかりを追求する3Dゲームが氾濫する中で、この一見古臭い2D表示のゲームは異彩を放ち、新鮮に映ることだろう。

HEART OF DARKNESS HEART OF DARKNESS
楽しいムービーシーン。2Dアクションからムービーシーンへの切り替えもタイムラグ0で展開する
 3Dタイトルに食傷気味の方以外に、ハードウェア的な敷居の高さで最近のゲームについていけなくなりそうな方にも、ぜひとも触れてほしいタイトルだ。なにせ、このゲームの動作環境は486DX2の100MHz以上、推奨環境でもPentium 90MHz以上という軽さなのだ。メモリの方も必須環境は16MB以上で、推奨は32MB以上。これなら、現役で稼動しているほとんどのWindowsマシンで快適にプレイすることができるだろう。
 実は、筆者自身この動作環境には疑問を抱き、実際に試してみたことがある。久しぶりに取り出したのはLibletto 50。Pentium 75MHz、メモリは32MBに拡張してあるが、今となっては遅いマシンなのは疑う余地もないところ。ところがこのマシンでも、ムービー部分にこそコマ落ちが見られたものの、ゲーム自体は問題なくプレイすることができている。マシンスペックの進化とともにゲームもどんどん巨大化し、求められるスペックばかりが上がっていく中で、これだけのゲームがこんなに低スペックのマシンでも作れることを示してくれた、この「HEART OF DARKNESS」は賞賛に値するソフトであるといえるのではないだろうか。

 もちろん、システムが軽いからといって、内容まで軽いというわけではない。画面写真を見て頂ければわかる通り、多彩なアクション要素やゲームの随所に盛り込まれたムービーなど、プレーヤーを飽きさせないさまざまなアイディアがふんだんに用意されている。特筆すべきはそのアニメーションパターンで、2Dのゲームでよくぞここまで、というくらいよく動く。歩く/走る/跳ぶ/泳ぐ/つかまるといったアクションが、違和感なく画面の中で再現されるのは感動ものだ。かつて「プリンス・オブ・ペルシャ」という2Dのアクションゲームが、そのアニメーションパターンの多さで話題になったけれど、このゲームに関してはそれ以上のパターンを持っているのではないかと思う。ゲームシーンからムービー、ムービーからゲームシーンへの移行も自然で、うっかりしているといつ操作できるようになったのか気づかないこともある。また、すべてCGで描かれたムービーの演出手法は映画的かつアニメーション的な要素をふんだんに取り入れてある。この辺は文化の違いとでもいうべきところだけれど、国産のどんなゲームでも絶対に真似のできない部分だろうと思う。物語のほうも「日食の日に主人公と間違ってさらわれた愛犬Whyskyを助けるため、自ら魔物の跋扈する異世界に向かう少年の物語」という、いささかありがちではあるけれど、ツボを押さえた内容になっている。現代版「ネバーエンディングストーリー」というのはちと大げさだけれど、この手のモダンファンタジーの好きな方にもお勧めしたいタイトルだ。

HEART OF DARKNESS HEART OF DARKNESS HEART OF DARKNESS
多彩で動きもなめらかなアクションシーン。こればかりは動いている場面を観てもらわないとわからないだろう 場面によっては、泳ぐシーンも登場する 武器の他、道具を使ったアクションも。特に難しい操作は必要ない


●完成まで5年……不遇の作品に今こそ光を!

HEART OF DARKNESS
トラップというかいろいろな仕掛けが用意されている
HEART OF DARKNESS
ドデカイ敵が登場しても何らかの突破口があるはず!
 実はこのソフト、発売こそ昨年なのだけれど、最初に発表されたのは今から4年ほど前(95年)のことになる。しかも、その段階で既に開発に2年かけているので、実にリリースまで5年から6年かけて作られているゲームなのだ。5年前といえばWindows 95すら登場していない、DOS/Vの時代。その後、プラットフォームをWindows 95に移し、ディストリビュータがつぶれたり、開発に時間がかかりすぎて手を引いたりと不遇な数年を経て、ようやくリリースにこぎつけたこの作品は、時間をかけただけの内容に仕上がっている。普通、こういったアクションゲームは時間をかけるほど開発者のプレイスキルが上がってしまい、難易度もそれだけ高くなるものだ。最近のQUAKE系3Dアクションシューティングの、すさまじいまでの難しさがそれを物語っているのだけれど、この「HEART OF DARKNESS」に関しては、この一般論は当てはまらない。少しプレイしてコツをつかめば、誰でもかなり先のほうまで進むことができるようになるだろう。さすがに終盤は難易度も高くなるけれど、あきらめなければ必ずクリアすることができるはずだ。

 このゲームのもうひとつの特徴は、ゲームオーバーがないこと。操作をミスして崖から落ちたり、敵に捕まったりするとミスにはなるのだけれど、特定のポイントに戻されて再プレイさせられるだけで、ゲームオーバーにはならない。セーブも自動的に行われるので、どこでプレイをやめても、次に始めるときには自動的に最後に終了したところから再開できるようになっている。また、セーブポイントは複数あり、削除などもできるので、複数人でプレイする場合や、最初からやり直したい場合でも問題なし。おまけに、同じ場面で何度もミスを繰り返すと、そのシーンをクリアするためのヒントまで表示されるという親切設計なのだ。「海外のゲームは難しい」というのがこれまでの通説だったけれど、そんな常識すらも覆してしまったのが、この「HEART OF DARKNESS」なのだ。

 この「HEART OF DARKNESS」コンシューマ機への移植も進められていた。かつてセガサターン用にリリースされることが「ナイツ」の発表と同じ席で報じられ、その後開発途中のバージョンがショーなどでプレイすることのできる段階にまでなっていたのだけれど、いつのまにか名前を聞かなくなり、本年3月にはプレイステーション用タイトルとして発売される予定だったものが日本語版にトラブルが発生したらしく、発売が危ぶまれている(公式サイトを見る限りでは”PSX Japanese missing”となっている)。ちなみに、この公式サイトでは体験版のダウンロードも可能だ。サイズが53MBと巨大なので、落とすには勇気が要るかもしれないけれど、興味の有る方は試してみてはいかがだろう。
 なんだか、どっちを見ても不遇な「HEART OF DARKNESS」だけれど、そのクオリティについては太鼓判を押すことができる。「トゥームレイダー(シリーズ1本目)」からこちら、納得できるだけの良質なアクションゲームに出会っていなかっただけに、このゲームの存在意義は大きい。だからこそ「去年のベストゲームは?」と聞かれれば、必ずこう答えるのだ。「そりゃもちろん“HEART OF DARKNESS”さ」と。

(C)1998 AMAZING STUDIO-INFOGRAMES. All rights reserved

【筆者紹介】
  • 名前:山城 宏
  • プロフィール:  企画・著述業兼システムエンジニア。ゲーム制作のお手伝いもちょっとだけ。仕事を離れるとただのゲーム好き。ちなみに本文中の「昨年プレイしたゲーム約300本」は掛け値なし。プレイしたゲームはデータベースに登録しているのだけれど、昨年触れたゲームは全部で294本だった。再確認して一番驚いているのは自分だったりするのだけれど。そのせいか、このところWindowsが起動しなくなることが頻繁で、この2ヵ月でシステムの入れ替えをした回数が3回。しかも、決まって〆切直前なのはなぜ(泣)?
【総プレイ時間・ハード環境】
  • 総プレイ時間:30時間程度
  • 使用ハード:自作PC/AT互換機(PentiumⅡ/400MHz、RAM 224MB、HDD 20GB、2倍速DVD-ROM、3D BLASTER Banshee(AGP 16MB)、SOUND BLASTER AWE64、IF-SEGA/ISA+セガサターンパッド)

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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp