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●司政官として皇帝の勅命を果たせ
古代ローマ帝国なんていうと、やっぱり「ベン・ハー」や「スパルタカス」など、往年の大作映画を思い浮かべる人もいるんじゃないだろうか。円形闘技場で戦う剣闘士や、大理石の神殿。ムキムキの胸板を身に纏った重装歩兵に、情け容赦無い横暴な皇帝……。「シーザーIII」は、こうした歴史大作映画のイメージそのままに、古代ローマ帝国の繁栄をモチーフにした都市開発シミュレーションゲームだ。
プレーヤーはローマ帝国の司政官として、与えられた任地に赴く。皇帝(シーザー)の勅命「人口をxxx人以上に増やせ」「文化をxxxレベル以上に向上させよ」といった条件を満たせば、無事シナリオクリア。するとさらに次の任地が示されるという、キャンペーン方式になっている。ひとつのシナリオにかかる時間は、20分~6時間程度。勝利条件が複数重なる場合もあり、進めば進むほど難易度が高くなる仕組みだ。
画面写真を見てもらえればわかるように、ゲームシステムや基本的な操作は「シムシティ2000」によく似ている。クォータービューで見下ろした未開拓のマップに、道路を引き、様々な施設を配置していく。施設の建築には資金が必要だが、代わりに市民から一定の割合で徴税することができるし、他国との交易によって利益を得られるというシステムだ。
ゲーム内での時間はリアルタイムに進行するので(もちろん速度の調節はできる)、何もしないでいるとどんどん時間が過ぎてしまう。しかも自然災害や外敵の侵入、神々の怒りといったアクシデントも発生するため、操作は結構忙しい。プレーヤーに求められる判断が多く、難易度はかなり高く設定されていると思う。
ゲーム開始画面。キャンペーンモードのほかに、自由に都市を作ることができるコンストラクションモードも用意されている。 | 任地の選択。赴任する場所によって、土地の肥沃さや外敵の驚異などが微妙に違う。 | マップのクリア条件は、人口や文化レーティングなどによって示される。 |
●過去のゲームを参考に、独自のアイデアを追加
プレイ画面。クォータービューを採用している。画面右側のアイコンをクリックして、配置する建物を選ぶ。 |
たとえば「シムシティ(2000)」は、プレーヤーの思うとおりに都市をデザインすることができたが、いきなり攻撃を仕掛けてくるような外敵は存在しなかった(ゴジラや宇宙人が都市を破壊することはあったが、これは災害に近い)。したがって軍備という概念はなく、それによる緊張や負担もない。ただひたすら効率のいい都市を作るのが目的で、そういう意味ではソリティア的というか、「都市経済シミュレーション」と位置づけたほうが正しいだろう。「富国強兵」の「強兵」部分が、敢えて切り取られていたわけだ。
これに対して「シヴィライゼーション(1&2)」では、常に外敵の驚異が重くのしかかる。外からの攻撃に備えて城壁を築き、大量の軍隊を駐留させなければならない。経済的な発展と同時に外交や貿易についても考えなければならず、両者のバランスが絶妙におもしろかった。そのかわり都市内部の設計は大幅にデフォルメされて、「シムシティ」ほど綿密にデザインすることはできない。
「エイジ・オブ・エンパイア」は、攻撃を仕掛けてくる外敵も存在し、細かい都市設計も可能だ。ただ住民一人一人に「木を伐れ」「畑を耕せ」と細かく命令を与えなければならず、リアルタイム性が強く打ち出されている。そこがまたおもしろいのだが、都市が成長するに連れてコマンドの入力も多くなり、ひっきりなしの操作に疲れを感じた人もいただろう。
「シーザーIII」は、こうした人気作品の中の長所と短所をよく研究し、スッキリとまとめなおしている。基本的な操作やシステムは「シムシティ」から。交易や軍備は「シヴィライゼーション」から。外観や市民の移動は「エイジ・オブ・エンパイア」から。おそらく「シーザーIII」のゲームデザイナーは、これらの作品の超ヘビーなプレーヤーで、何度も繰り返し遊んでいるうちに、より洗練されたシステムを思いついたのだと思う。
ただし誤解のないように補足しておかなければならないが、「シーザーIII」は決して過去の作品の焼き直しではなく、独自の発想やオリジナリティもたっぷりと含まれている。たとえば、キャンペーンという面クリア型の遊び方。赴任地によって変わる勝利条件。神々への信仰や、シンプルな交易システム……。過去の作品から多くを学び、それをベースに発展させた「シーザーIII」は素晴らしく完成度が高く、この手の都市開発シミュレーションゲームが好きな人なら確実に楽しめる秀作だ。
●ローマは一日にして成らず
建設できる建物は様々。いずれも都市の発展や治安に必要なものなので、どの順番で建てていくかも思案のしどころだ |
まず最初につまづいたのが、労働人口の配分だ。マップ外から移住してきた労働者は、必ずしもプレーヤーの願いどおりの職場で働いてくれるとは限らない。特に微妙なのが農業で、人口増加のカギとなる麦畑や貯蔵庫に十分な労働者を割り当てられないと、人口の増加が止まってしまう。すると当然農業に従事する者も新たに増えないため、悪循環に陥ってしまうのだ。滞りなく人口を増やすためには、麦畑や貯蔵庫など最重要施設から順に配置していくこと、そしてこれらのそばに最初の住居を建てる必要がある。
次に難しいのが、災害の発生を食い止めること。「シーザーIII」では疫病、火災、暴風、倒壊など、これでもかというほどの災害が発生する。そのたびに人口が激減したり施設が失われたりと、シャレにならない損害だ。被害を最小限に食い止めるためには、病院や自警団を早めに用意すること、そして神々の怒りを買わないよう神殿やお祭りでご機嫌を取らなければならない。ゲーム序盤で悩まされる火事については、細かく道路を張り巡らせて防火帯を設けるなど、都市設計段階での予防も大切だ。
交易に関する悩みも多い。オリーブ油、大理石、家具、陶器といった産物の中から、どれを輸出の主力にすればいいのか。逆に、どれを輸入すればいいのか。価格はしばしば変動するし、交易相手やローマ帝国本国からの要求もある。交易は資金を稼ぐためにもっとも有益な手段であるため、これをどうするかによってゲームの流れは大きく変わってしまうだろう。
そして軍備。外敵からの驚異に対抗するにはそれなりの軍備も欠かせないが、兵士を鍛え、士気を保つには莫大な費用が必要だ。戦う相手によって軽装歩兵、重装歩兵、騎兵のバランスや陣形、障壁や塔についても思案しなければならない。キャンペーンが進むに連れて危険な任地へ赴任させられるため、難易度はどんどん上がる。
少しプレイするたびにゲームプレイのコツがわかり、“よりよい”解決策が次々と浮かぶため、同じマップを何度もリスタートしてはトライするという、完全なハマリパターンになること請け合いだ。
主任顧問からのアドバイス。赤い文字で表示されている部分が、現在の問題点。これを参考に、今後の治世を考える。 | 交易ルートの一覧。双方の売りたいものと買いたいものが一致しなければ、交易は成立しない。 | 建築物を右クリックすると、現状のレポートが表示される。施設を100%機能させるためには、必要な労働力を十分満たしていなければならない。 |
●操作性は良好、疲れない画面デザイン
アクシデント発生!! せっかく築き上げた都市が、火災や外敵の侵入であっけなく崩壊することも珍しくない。災害は未然に防ぐのが一番だ。 | 与えられた条件を全て満たせば、マップをクリア。次の任地へと進む。よい成績で終われば、昇進して身分が高くなることもある。 |
【筆者紹介】
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