後藤貴子の データで読む米国パソコン事情
 
第15回:「世界のPC出荷:年間1億台は目前」ほか


世界のPC出荷:年間1億台は目前

 1億台――'99年に出荷されるパソコンは、1億台を超えるかもしれない。
 米国の調査会社Dataquestによれば、'98年の世界のパソコン出荷数(予備統計)は9,292万5千台。成長率は15.3%だったという。この調子が今年も続くなら、1億台を突破するのは確実だ。メーカーではCompaq Computer、IBM、Dellなどがリードした。

 地域で世界の需要を引っ張ったのは米国とヨーロッパだ。Dataquestはインターネットのニーズと低価格PCの人気が需要を高めたと分析する。特に米国では、価格は下がり続け、出荷は伸び続けた。米労働省の消費者物価統計も、米国のPCの価格が1年で35%も下落したと報告している。また、ニーズについては、家庭でもビジネスでも、とにかくPCやインターネットアクセスがなければ取り残されるという焦りがあふれ出しているかのようだ。

 これまで、PCについては、もう成長は止まる、横這いになるという予言が何度か繰り返されてきた。しかし、成長は鈍ったかと思うとまた盛り返し、今年の第1四半期も堅調なのではと言われている。
 だが日本にいると、世界市場の勢いは実感しづらい。今、日本と欧米とでPCへの「距離感」にどんどん差ができつつあるようだ。

□U.S. and Europe Boost 1998 Worldwide PC Growth(Dataquest)
http://gartner12.gartnerweb.com/dq/static/about/press/pr-b9859.html


今年のキーワードは「ホームネットワーキング」

 PCの好調により、米国では次のフェイズとしてホームネットワークへの需要が高まっている。

 PC増加のホーム市場での牽引力は、新規のPC購入家庭ではなく、2台目、3台目を買う家庭にある。米調査会社IDCによれば、PC所有家庭の34%が2台以上のPCを持っており、こういう「マルチプルPC」家庭の増え方のほうが、新しく1台目を買う家庭の増え方より早いという。同じく米調査会社のCahners In-Stat GroupもマルチプルPC家庭は'99年中に2,100万世帯になると予測している。

 In-Stat Groupは、この2,100万世帯のうちの12%つまり約250万世帯が、'99年にホームネットワークを構築するだろうといい、IDCも、'99年末までに190万世帯がするだろうという。このままでは全体からみた普及率としてはまだそう多くはないが、このスピードで伸びることで、ホームネットワークは数年中には1,200万世帯に普及し(IDC)、2003年までに14億ドルの市場になる(In-Stat)という。

 家に複数台PCがあれば、それを接続するのは当然のニーズだ。しかし、ホームネットワークは、単なるPC同士の接続にとどまらない。米国では、それは将来的には広帯域データ通信ができるCATV網などと次世代デジタル家電やPCを、デジタルセットトップボックスやホームサーバーを介してつなごうという話に発展している。
 すでにチップメーカーはホームネットワーク向けの製品を発表している。このように有力な調査会社がともに上向きの予測を出していること自体が、ホームネットワーキングへの期待を物語っているだろう。

□U.S. Home Networking Market to Grow Over 600% by 2003 According to Leading Research Firm(Cahners In-Stat Group)
http://www.instat.com/pr/99/homentwk.htm


'98年に990万台売れたZipドライブ

 売れているとは聞いていたが、これほどとは――これが多くの日本人の感想ではないだろうか。IDCによれば、リムーバブル磁気ストーレジのZipドライブは、'98年1年間に、メーカーのIomegaとOEM販売するNEC、MCIの3社で、世界で990万台を販売した。
 IDCではリムーバブル磁気ストーレジを比較的容量が小さく安いローエンド(Zip、ImationのSuperDiskなど)とハイエンド(IomegaのJazなど)に分け、容量の増加、使いやすさ、機能の豊富さ、価格の低下などから、今年もローエンドが伸びていくと予測している。
 米国ではMOの存在感が薄かったぶん、Zip人気に早く火がついたようだ。

□Strong Unit Growth in the Worldwide Removable Magnetic Storage Market in 1998(IDC)
http://www.idcresearch.com/Press/012199Bpr.htm


「カネより愛」と言いながら…

 「米国人はカネより愛を大事に思う」というのが、バレンタインデイを前にインターネット上でラブ&マネーの意識を調査したIntuitの結論だ。個人資産管理ソフトや税処理ソフトメーカーの同社によれば、回答者500人強の8割近くが「カネは幸福のカギではない」と答え、「1日に1回以上セックスのことを考える」人(66%)が「1日に1回以上カネのことを考える」人(59%)を上回ったのだとか……。 まあ、でも理想と現実は違うようだ。Intuitだって自社のマネー関係のソフトが売れないことは望むまい。

 PC Dataの'98年のソフト売上ランキングでは、1位のWindows 98アップグレード版に次いで、2、4、5、9位をIntuitの製品(「TurboTax」、「TurboTax Deluxe」、「Quicken Deluxe」、「TurboTax Multi State」)が占めている。これに他社の1製品を入れてトップ10ソフトの半分はマネー関係。ソフトに関して言えば、カネはかくも強いのだ。

□This Valentine’s Day, People Say "All You Need Is Love," According To Online Survey By Quicken.com(Intuit)
http://www.intuit.com/corporate/press_releases/020399.html

[Text by 後藤貴子]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp