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ゲームの世界、こと、パソコンをプラットフォームに持つゲームの世界は、この2年間で劇的ともいえる変化を遂げた。その最大の要因が、インターネットの普及にある。世界中のどんなところにいても、パソコンと電話の使用できる環境さえ整っていれば、リアルタイムで互いに、しかも安価にデータのやりとりを行うことのできるインターネット環境の普及は、それまで1人でプレイすることを前提としていたゲームの概念をも根底からくつがえしてしまったのだ。
もちろん、その立役者が「DIABLO」であり「Ultima online」であることは、いまさら説明の必要もないだろう。また、ソフトウェアの開発環境を見ても、DirectXモジュールの1つであり、通信関係の制御を行なうDirectPlayなど、通信環境を念頭に置いたシステムも整備されてきた。そして、国産のゲームにも、こうした波は訪れはじめている。今回紹介する「バルディッシュ」も、そうしたタイトルの中の1本だ。
●まずは“初心者ダンジョン”をクリア
パラメータは何度でもやり直してベストチョイスで |
ゲームはまず、イギス島の冒険者管理組合の試験をパスするために初心者用ダンジョンをクリアすることから始まる。この島では、全ての冒険者は組合によって管理され、例外は許されない。まずは腕試しのつもりで、ここにチャレンジしよう。初心者用ダンジョンは3層構造。地下3階に転送され、地上まで帰ってくることができれば試験にパスしたことになる。初心者用とはいえ、ダンジョンはダンジョン。モンスターもいるし、罠もある。気を抜いているとゲームオーバーになるので注意が必要だ。ちなみに、試験にパスして宿を確保しないと、ゲームのセーブをすることはできない。キャラクターメイキングで、どんなにいいキャラを作っても、この初心者用ダンジョンで死んでしまうと元の木阿弥になるので、何がなんでも生還するようにしたい。
ダンジョンの中には薬や装備品などのアイテムも落ちている。入った直後は丸腰なので、隅々まで回ってアイテムを回収していこう。剣や盾などは装備することを忘れないように。
無事に初心者ダンジョンをクリアすれば、晴れて組合にメンバーとして登録され、滞在用の宿を提供してもらえる。宿にはベッド(眠ると体力等が回復し、セーブすることができる)とタンスくん(アイテムを収納しておくことができる)がある。ここが今後の活動拠点というわけだ。こことダンジョンを往復するだけでもいいのだけれど、ときには街の中を探索してみるのもいいだろう。街の中には武器や防具、アイテムなどを扱う店や、酒場や広場など人々の集う場所、それに、闘技場がある。闘技場では常に武闘大会が開かれ、参加者を募集している。ここでは腕試しと通信対戦が可能で、腕試しはコンピュータの用意した相手と戦い、通信対戦ではインターネットを介して第三者との対戦を行なうことができるようになっている。ダンジョンでも通信プレイは可能だけれど、こちらは協力プレイでPK(Player Kill=他のプレーヤーに攻撃を仕掛けたり、殺したりすること)はできないようになっている。対戦は闘技場で行なうようにしよう。闘技場で通信対戦を行なう場合、事前に賭けるアイテムを指定しておく必要がある。勝てば相手のアイテムを得られ、負ければ賭けたアイテムは相手のものになるというわけだ。ここで負けてもゲームオーバーにはならないので、安心して戦ってほしい。
いきなりテストだとか言われてダンジョンにもぐることになるプレーヤー | これが文中でも登場する、アイテムを収納する“タンスくん” | これが舞台となるイギス島のマップ画面 |
●意外に厳しいダンジョン探索
街中でお仕事を依頼されることもある。選んでいこう |
この島には「ビシャモン」「スイテンモン」などと名づけられた、複数のダンジョンが存在する。これらを1つずつ順に攻略していくことになるわけだ。初心者用ダンジョンは常に形も固定で、地下から上を目指すだけだったけれど、これらのダンジョンは入るたびに形の変わる、いわゆる「“ローグ”タイプ(風来のシレン、トルネコの大冒険)」。ダンジョンに入っている間は、フロアを移動しても元のフロアの形を保持しているけれど、一度出てしまうとマップはクリアされ、形状も変わってしまうという「DIABLO」プレーヤーにはおなじみのシステムだ。ただし、マップの生成には法則性があるようで、歩いてみると意外と幾何学的な形をしたマップが多いことに気づく。プレイを重ねていくと、ある程度の法則性が見えてくるかもしれない。また、ダンジョンは3Dの俯瞰で描かれていて、場所によっては死角になる場所もある。この時は画面を回転させることで、見やすい視点に変更することが可能だ。
「DIABLO」と大きく違う点は、フロアを移動するとモンスターのデータが初期化されること。つまり、下のフロアに移動したあと上に戻ってくると、再びモンスターが復活しているという点だ。これは結構厳しい。たとえば、地下6層のダンジョンにもぐった場合、行き6層+帰り5層の、計11層を戦わなければならないのだ。「DIABLO」のように帰り道を確保しておくことができないので、自分のレベルや体力、アイテムの残り数などを考慮しながら、どこで引き返すかを判断する必要があるだろう。「家に帰り着くまでが冒険」小学校の頃、遠足の帰りに先生から似たような注意を受けたことがあるけれど、このゲームにもその教訓は生きている。ありがとう、先生。
●厄介なトラップ群
次に、戦闘に目を向けてみよう。リアルタイムで進行する「バルディッシュ」では、もちろん戦闘もリアルタイム。敵に向かって武器を振ったり魔法を唱えたりと、臨機応変に、かつ迅速に行動する必要がある。敵のタイプもさまざまで、攻撃力の高いもの、耐久力のあるもの、仲間を呼ぶものなど、バラエティに富んでいる。周囲を敵に囲まれると厳しいので、多くの敵がいる場合は広い場所を避け、できるだけ一匹ずつ倒していけるような場所を確保するようにしよう。移動速度は「DIABLO」などに比べるとかなり速い。アクションゲーム的な要素がかなり強くなっているので、スピーディなプレイを楽しむことができるだろう。欲をいえば、ジョイパッドなどのデバイスに対応してくれるとプレイしやすかったと思うのだけれど、残念ながら対応はキーボードのみ。移動はマウスでもできるけれど、攻撃やアイテムの使用はキーボードでないとできないので、ダンジョン内ではキーボードでのプレイが求められる。
このゲームの中でもっとも厄介な相手は、モンスターではなく「トラップ」だ。HPやSPを奪うものや、しばらくの間動けなくなるもの、一定時間スキルが使えなくなるものなどさまざまな種類のものがあり、そのどれもが巧妙に隠されていて、肉眼で確認することができない。踏んでしまったら「運が悪かった」と思うしかないのだが、ダンジョンの深いところやアイテムの乏しい状態で踏んでしまうとかなりショック。しかも、一度作動したトラップは見えるようにはなるものの、その場に存在し続けるので、うっかりしていると何度も踏むことになってしまう。注意していればいいかというと「混乱」のトラップが近くにあって、操作のままならない状態で何度も踏むことになったりして(これは本当に「運が悪かった」場合だけれど)、あっという間に体力がなくなってしまうこともしばしばだ。幸いなことにトラップ自体には殺傷能力はなく、HPが1以下にはならないようになっている。敵の攻撃さえ受けなければ、生き延びることはできるのだけれど……。
突然のトラップ。でも運が悪いではあきらめきれないときも…… | ダンジョン内では慎重に進んでいこう | けっこうワラワラと出現する敵達。他のゲーム同様囲まれるとヤバイ | 闘技場で1対1の戦い。通信対戦となり、緊張する。 |
●国産ネットワークゲームのあけぼの
数々のイベントが用意されている。会話シーンではSUEZEN氏のキャラが出てくる |
街中にはもちろんショップもある |
同種のゲームと比較した場合、もう一つの弱点は、この「バルディッシュ」が国産ゲームであることに起因している。完全に日本語対応で、プレイ中のチャットも日本語でできるのはありがたいのだけれど、その分プレーヤーも日本人でなければ(日本語Windowsでなければ)ならないという制限があり、そのため世界中にサーバーをもち、いつアクセスしても誰かしらがプレイしている同種のゲームに比べると、ユーザー数の面では圧倒的に不利になる。午後11時過ぎのテレホーダイ適用時間帯になるとプレーヤーも増えるが、これが午前3時、4時となると、アクセスしても誰もいないということも珍しくない。そんな時間帯にアクセスする方が珍しいと言われてしまえばその通りなのだけれど、どうしても比較されてしまうのはやむを得ないのではないかと思う。
ちなみに、このゲームはLAN(IPX接続)環境でのプレイもできるようになっている。LANでのネットワークプレイは国内でインターネットが普及するより以前、それこそ「DOOM」の頃から対応ソフトは数多くリリースされているけれど、家庭内LANがようやく定着し始めたのが昨年あたりからだし、現在でもどこまで普及しているかは多少疑問の残る部分もある。とはいえ、対応しているのに越したことはないだろう。環境が整っていて、プレイする仲間がいる方は、ぜひとも挑戦してほしいと思う。
総じて見ると「不満も残るが、悪くはないソフト」という印象を受けた。こと通信環境に関しては、アメリカやヨーロッパのみならず、香港やシンガポールにも遅れを取っているといわれる国内の状況では、まだまだこれらのゲームの普及や、ましてヒットを望むのは難しいかもしれない。しかし、こうしたソフトが数多くリリースされ、多くのプレーヤーに認知されていくことで、そうした環境も少しずつ変化していくことだろう。そして、これらの通信対応のゲームの楽しさを誰よりもご存知なのは、インターネットへの接続環境をもち、ゲームにも少なからず興味をお持ちの方。つまりは本稿をお読みの読者諸氏に他ならないと確信している。少しでも興味を持たれたらプレイしてみてほしい。その上で、不満は不満として述べる、誉めるべきは誉める、求めるべきは求めていく。そうしたスタンスが、よりよいゲームを生み出していくのではないだろうか。通信環境があり、情報交換の可能なユーザーがプレイできるゲームなのだから、これからは、こうしたスタイルが一般的になっていくのではないだろうか。漠然とではあるけれど、そんなことを考えさせてくれた作品だ。
最後になるが、開発元のインフィニティ株式会社のウェブにおいて、このゲームのアップデートパッチなどが配布されている。いくつかの不具合の解消と、ユーザーインターフェイスの向上が図られているので、ユーザーの方はアップデートされることをおすすめする。また、このサイトには通信対戦のためのサーバーの情報なども掲載されているので、定期的にチェックしておくといいだろう。
(C)1998 Imagineer Co.,Ltd. Illustration:SUEZEN
【筆者紹介】
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