断言したのはForrester Research。同社によれば、TV業界はHDTVの開発に10億ドルをかけたが、投資とコンポーネントのコストのためにHDTVは今後10年間、価格が2,000ドルより下がることがない。その高価格が嫌われて、2003年になっても米国では100万世帯程度の普及にとどまるだろうという。
ただし、ForresterはDTVすべてが失敗するといっているわけではない。同じDTVでも、HDTVほどコストのかからないSDTV(標準品位TV)は2008年までに市場の8割以上を得て成功すると予測しているのだ。
SDTVはHDTVほどではないもののアナログよりは画質や音質が良く、マルチチャンネルやデータ放送といったDTVの魅力も提供できる。しかも高解像度ディスプレイが不要なため、Forresterによれば価格は2002年までに1,000ドル以下に下がり、2003年には400万世帯、つまりHDTVの4倍の世帯に普及するという。
「HDTVはアイスクリームのようなもの、記事などで読んでも味わわなければどれだけいいかわからない。我々のリサーチではHDTVを見た消費者はみなこの技術に興奮して買いたいといっている」とCEMAのGary Shapiro会長は言う。そして、DTVは'99年末までに15万台、2000年に60万台売れ、2003年には1,000万台を突破すると予測した。CEMAの発表ではこれらの数字に関してはHDTVでなくDTVと言っているが、文脈からすると明らかにSDTVではなくHDTVの普及率の予測だ。
つまり、4年後の2003年にHDTVがどれだけ普及しているかについて、Forresterの予想とCEMAのとで、じつに10倍の開きがあるのだ。
さて、実際のところどうなのだろう。CEMAが言うように人々はCESのデモなどでおいしいHDTVの味を知ってHDTVのトリコになるのか、それともForresterが言うように「HDTVは夢、SDTVは現実」となるのか。
家電業界には申し訳ないが、今のところ、よりうなづけるのは辛口の予測のほうだ。画質についてはCEMA自ら認めるように、実際に見てみなければHDTVの優位性はわかりにくいし、11月のこのコラムで伝えたように、そのままでは人々はアナログに満足との調査結果もある。また、CEMAは、HDTVの値段が下がらないとの予測については「2000万世帯がすでに2,000ドル以上をTVに投資している」と、だから高くても売れるとほのめかしているだけだ。1台2,000ドルのTVではCEMAの強気はちょっと無理があるだろう。
□Forrester Research Predicts HDTV Will Fail(Forrester Research)
http://www.forrester.com/Press/Releases/Standard/0,1184,120,00.html
□THE RESEARCH IS CLEAR: CONSUMERS WANT HDTV(Consumer Electronics Manufacturers Association)
http://www.cemacity.org/gazette/files2/forrester.htm
たとえば1,000人を超すインターネットユーザを調査したZona Researchによれば、過半数(53%)が'98年のクリスマスシーズンにオンラインショッピングをし、うち約6割(58%)は今回が初めての体験だった。
こうした予測や調査結果は、流通業界へのコンサルティングで稼ぎたい調査会社の思惑から楽観的な結果が出るように誘導されていると見ることもできなくはない。だが、そんなひねくれた見方をするには、多少の差はあれ、あまりに多くの会社で意見が一致している。今回のクリスマスシーズンのオンラインショッピングは本当に伸びたと素直に信じたほうがよさそうだ。
このリリースでは年齢別サンプル数が不明なので、この数字をそのまま全体の傾向と見ることはできないが、それにしても若者があまりオンラインショッピングに関心がなく、年輩の人が逆に積極的なのが面白い。米国ではクリスマス前にショッピングモールが極端に混む。それを避けたい気持ちは年輩ほど強いのかもしれないし、人間関係の多い年輩のほうが交際費に金をかけるのは洋の東西を問わないのかも。
また、買い物の金額がかなり大きかったのも興味深い。全体で、1人あたりの消費額は'97年の平均216ドルから629ドル(約7万円)に伸び、彼らのクリスマスの買い物全体の約4分の1を占めたという。
逆算するとクリスマス前は1人が総額28万円程度もの買い物をしているわけだが、これは米国の生活習慣によるものだ。米国ではクリスマスには子どもにプレゼントをするだけでなく夫婦間でプレゼントを交換したり、ベビーシッターのようにその年世話になった人にもちょっとしたプレゼントをするし、この時期、いわば自分や家族へのプレゼントとして高額商品も買うことが増える。つまりクリスマスシーズンは1年で最大のショッピングシーズンで、その突出ぶりは日本よりもはるかに強い。モールが混むのもそのためだ。
Media Metrixは、クリスマス前の4週間はその前の4週間より、ギフト関係のショッピングサイトのビジターが増えたと発表。おもちゃは86%、アパレルは73%ビジターが増加したという。
またBoston Consulting Groupによれば、11月23日~12月20日の期間に、アパレル、本、音楽CD、ホームアンドガーデンなどのサイトは売上が昨年同期の230%増となり、1人のオーダーは平均55ドルだった。
本、音楽CD、ビデオ、その他のギフト用品を販売するAmazon.comも、'98年のクリスマスシーズンは新しいカスタマーを100万人(!)以上獲得し、売上が'97年同期の4倍に達したと発表している。
もっとも、ショッピングサイトは売上を増やしたものの、まだ利益を出しているところは少ないという報道もある。それにクリスマスに初めてオンラインショッピングを体験した人がこれからもじゃんじゃん買い物をし、Eコマースを花開かせるかというと、それもまだ未知数だ。ただ、オンラインでクレジットカードを使うのに抵抗を持つ人が減ってきたのは確かなようだ。
□Zona Research Reveals Hard Data about E-Christmas(Zona Research)
http://www.zonaresearch.com/top_news/press_release/99-jan04.htm
□RESULTS OF `98 HOLIDAY E-COMMERCE SHOPPING SEASON(Media Metrix)
http://www.relevantknowledge.com/PressRoom/Press_Releases/01_04_99.html
□Boston Consulting Group
http://www.prnewswire.com/ (PR Newswireより。要登録)
□INTERNET SHOPPERS CHOOSE AMAZON.COM IN RECORD NUMBERS FOR HOLIDAY SHOPPIN(Amazon.com)
http://www.amazon.com/exec/obidos/subst/misc/holiday-shopping-press-release.html/002-4465002-1638015
[Text by 後藤貴子]