後藤貴子の データで読む米国パソコン事情
 
第12回:「iMacが米コンピュータショップで3カ月連続売り上げトップ」ほか


iMacが米コンピュータショップで3カ月連続売り上げトップ

●Macintoshユーザーのすそ野を広げたiMac

 iMacは熱烈なMacファンの手に一巡すれば終わりの、いわばキワモノ――発売後1~2カ月はそういう観測が多かった。だがそれは間違いだったようだ。

 Apple Computerのリリースによれば、8月半ばに発売されたiMacは、8、9、10月とも、コンピュータの大規模小売チェーンで売り上げナンバー1だったという。これはZD Market Intelligenceの調査によるもの。

 iMacがコンスタントに売れ続けているとすれば、それは、コアなMacファン以外の人々にも、ユーザーのすそ野が広がったことを意味する。10月にAppleが出した発表でも、iMac購入者は、29.4%が初めてコンピュータを買った人で、12.5%がWintelからの乗り換え組だとしていた。つまり10人に4人はiMacに魅せられて新しくMacユーザーになった人という計算だ。Windowsの使いづらさに不安を感じたり嫌気がさしたりしていた人たちがそれだけいたということでもある。

 これを見ると、暫定CEOスティーブ・ジョブズ氏がかける「ジョブズ・マジック」は、本当に人々をとらえてしまったかのようだ。

 ただし、これはAppleからの大本営発表であり、不透明な部分もある。リリース中のZD Market Intelligenceの調査結果は、売れた台数を明らかにしていない(発売直後6週間分だけは27万8千台と発表)。また、9、10月は売れ行き、市場シェアとも下降気味との報道もあった。


●歳末商戦の結果とMacWorld以降に要注目

 いずれにせよ、本当の勝敗はこの歳末商戦で決着がつく。8~10月期によく売れたかそうでなかったかに関係なく、人々の消費が集中する歳末商戦で売れれば成功で、'99年も売れそうと予測されるし、売れなければ失敗なのだ。

 ZDのアナリストは「10月に1位だったのは歳末商戦に弾みがつく確かなしるしだ」と太鼓判を押した。だが、Apple首脳部は特に、内心ドキドキに違いない。というのも、Appleの最近の低迷は、'95年のクリスマス商戦の大失敗に端を発している。このとき、売れると見込んで大量に出荷したPerformerがWindows 95マシンに吹き飛ばされ、膨大な損失を出してしまったからだ。

 さて、今回の読みは当たるのかどうか。ZDは今回のiMac好調の一番の理由は競争力のある価格だと分析しているが、これに反する見方もある。1,299ドルはiMacの斬新なデザインや機能からすれば格安なのかもしれないが、サブ1,000ドルが主流のWindowsパソコンと比べると高いからだ。もっとも、価格については、Appleが長期ローンプランを出し、大手小売店でも実質999ドルくらいまでの値引きをしている。さらに、年が明ければMacWorldで、iMacと同じように斬新な筐体と新しいインターフェイスを搭載したプロフェッショナル市場向けの「Yosemite(マザーボードのコードネーム)」搭載マシンが発表されるという。

 iMacの勢いが本物かどうか、'99年前半は要注目だ。

□iMac Wraps up Three Straight Months as Best Selling Desktop in PC Superstores(Appleのプレスリリース)
http://www.apple.com/pr/library/1998/dec/01bestsell.html


MicrosoftとSun Microsystemsが政治活動でも競争

●増えるMicrosoft・Sun Microsystemsのロビー活動費

 Sun MicrosystemsがMicrosoftに負けた。といってもJava裁判の判決が出たのではない。米国での政界工作費のことだ。

 '98年前半、Sun Microsystemsはロビー活動費を前年同期比で約3.5倍に増やした。半年で68万ドルを費やしたのだ。それは、ライバルMicrosoftが'97年前期に使った額を超えていた。だがMicrosoftも'98年前期はロビー活動費を2倍近く増やし、128万ドルつぎ込んだ。金額では、SunはまたMicrosoftに負けてしまったのだ。

 これは政治資金の監視市民団体Center for Responsive Politicsの調査による数字。ロビー活動費はロビイストを雇うなどして政界工作をするための費用で、政治家に選挙資金などを直接提供する政治献金とはまた別だ。6月のこのコラムで、政治献金額でMicrosoftがコンピュータ業界内のトップに立ったと伝えたが、'98年前期のロビー活動費では、Microsoftは業界3位、Sunは8位になった。

 裁判で争う両社は、ワシントンの政界の世論を自社に有利に持っていく必要がある。ロビー活動費の増加はそれを反映しているだろう。

●強まるコンピュータ業界とワシントンのつながり

 だが、裁判を抱えるコンピュータ企業だけがロビー活動費を増やしたわけではない。同じ時期、Compaq Computerは18倍に、Oracleは2倍に、増やしている。減った企業も若干あるが、コンピュータ業界全体でプレゼンスが上がってきているのだ。個々の企業がワシントンに政界とのコーディネート担当事務所を開いたりロビイストを雇ったりするだけでなく、業界団体も政治家をコンピュータ業界寄りにするための活動を行なっている。

 コンピュータ企業のロビー活動費は、さまざまな法規制の多い電話会社などと比べるとまだ少ない額だ。だが、'98年を見ても、たとえば外人プログラマなどの就労ビザ枠拡大、2000年問題での情報共有のための製造責任緩和、インターネット課税の延期、暗号輸出規制の緩和、オンライン知的所有権保護の強化など、コンピュータ業界が政治に働きかけねばならないことは多々あった。

 大きくなったコンピュータ業界には、政治とのつながりがますます必要になってきているのだ。

□CONNECTED: Political Superhighway Links Silicon Valley with Capitol Hill (The Center for Responsive Politics)
http://www.crp.org/newsletter/ce56/01connect.htm


無人島に行くならインターネット

 無人島に流れ着いたときあればいいと思うものは何? TV? 電話? America Online会員の3分の2はインターネットと答えた。  AOLの調査で、67%が、どこかの島に長期間一人で取り残されるとしたらTVか電話よりインターネットが欲しいと答えたそうだ(もちろんどれもちゃんと機能するとしての話だ)。

 3人に2人がインターネットが必要と答えたのは多いように見えるが、まあ、それも当然かもしれない。インターネットならTVと電話を足した以上の心強い相棒になる。メールで助けを呼ぶこともできるし、助けを待つ間に必要なサバイバル術の情報を世界中から集めたり、Webで暇つぶしもできるのだから。もっともオンラインショッピングは、しても品物が届かないだろうが。

 むしろ、すでにオンラインを使っている3人に1人がインターネット不要と答えたほうが不思議なのかも。大洋の孤島に情報漬けのインターネットは似合わないと考えたのだろうか?

□NEARLY HALF OF INTERNET USERS SAY INTERNET ONLINE BECOMING A NECESSITY, ACCORDING TO AMERICA ONLINE/ROPER STARCH CYBERSTUDY(AOL)
http://www-db.aol.com/corp/news/press/view?release=516&

[Text by 後藤貴子]


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