スタパ齋藤

焦る前に、この一台 ~Let's note ace/A44~



■ 焦る前に、この一台

ace/A44
ace/A44
松下 Let's note ace/A44
オープンプライス。CD-ROM内蔵で1.58kg、オプションの拡張バッテリ使用時最大9.5時間の駆動が可能、XGA表示のTFT液晶搭載など、魅力あるスペック。ポートリプリケータなども標準で付属する
 世間一般の多くの人は、毎年そうであるように、庭に立った霜柱を踏みつつ“師走”という言葉を耳にし、ボーナスをいただき、おせち料理関係のCMを見、クリスマスソングや第九を聞き、ようやくこの時期というものをリアルに感じるようだ。

 すなわち、いよいよ今年も終わろうとしている。世の中は1900年代最後の年の初日である'99年1月1日に向けて興奮しており、その直前には毎年おなじみの12月31日というイベント(ご家族連れやカップルや走り屋や酔っぱらいたちが真冬の夜なのに外出するというもの)があり、さらにその前には12月24~25日という取って付けたようなイベントもあり、とにかく、世の中は浮き足立っている。

 が、我々パソコン野郎は、まだ今年がもうすぐ終わるのだとは実感できていない!! 我々パソコン野郎には、師走もおせちCMもクリスマスソングも第九も、関係ねえッ!! 単に12月31日から1月1日へと日付が変わったくらいじゃ年越しできねえんだ!! そうだ!! 年末には一発ガツンとパソコン買うしかねえんだ!! 今年最後のパソコンを買わなきゃダメなんだよ!! 我々パソコン野郎は'98年最終購入パソコンが決定した瞬間が年末!! それを買った瞬間が年始!! そうだよな!! その通りだって言ってくれよ我が同志!! ってそんなこと言ってんのは俺だけですか?

 まあ、そこまで気合が入ってないにせよ、日頃忙しくてなかなか時間がとれない方々は、この年末年始こそパソコンだと思っているのではないだろうか。特に現在は、希に見るパソコン豊作的年末なので、買い換えや新規購入をしようと考える人も多かろう。

 が、ただでさえ浮き足立ちがちな年末、十分その魅力と性能が際立つように陳列された新マシンを見てドキッとして焦って思わず購入、なんてことになる前に、ついこないだ発売されたスゲえ新マシンことパナソニックのLet's note ace/A44のことを知っていただきたい。



■ イケてるスペックのA44

この重量とサイズでCD-ROM内蔵。出張などの場合、万一のクラッシュを考えるとどうしてもブートCDが必要で、そうなるとCD-ROMが外付けの機種より全部入りでできるだけコンパクトなほうが結局荷物が軽かったりする
ポートリプリケータも標準で付属
 ついこないだの12月11日に発売されたパナソニックのLet's note ace/A44は、B5ファイルサイズのノート型パソコンで、今年のWindowsパソコン市場で非常に熱かった一連の“銀パソ”(既に死語になりつつありますな)のひとつだ。が、俺にとっては熱くて熱くてしょうがねえ、最もホットでバーニングなマシンだ。

 その魅力とは、B5ファイルサイズにして1,024×768ドット(XGA)液晶ディスプレイ(11.3インチTFT)を搭載しているうえにCD-ROMドライブまで内蔵している点に尽きる。ついこないだまではB5ファイルサイズパソコン=800×600ドット液晶だったのを考えれば、それだけでも欲しくなるというのに、さらにCD-ROMまで“内蔵”している!! ちなみにCPUはMMX Pentium 266MHz、メモリ64MB(最大128MB)、HDDは4.3GBでV90&K56flex両対応のFAXモデム内蔵って感じで、今時のオールインワンWindowsマシンにまるで引けを取らないスペックだ。さらに詳細なスペックはココから見て欲しい。ともあれ、A44は去年の今頃夢見たサブノートが、今ココに現実となっている感じの、ヒッジョーに熱いマシンだ。

 あっなんか、「おいおいこないだソニーの505RXがイイって言ってたじゃねえかよ」という声が聞こえてきた。普段ならこういった声に対しては「そんな昔のことは覚えちゃいねえぜフッ」としか言わない俺だが、XGA表示のB5ファイルサイズノートの激突機種として(ていうか世界に2機種だけだが)505RXとA44が存在するわけでもあるゆえ、ちょいとそのへんについて書いてみたい。

 で、いきなり結論だが、俺としては、なんか、A44の方により強い魅力を感じてしまった。
 理由は、まず、価格面。505RXが実売価格で30~31万円。A44が実売価格で31~32万円。その差1万円。デザイン、端子類、ソフトウェア構成などがかなり違う製品なので、一概に値段での比較はできないが、俺は即物的な人なので、思わず比較すると、なんかA44の方がいいと思えた。というのは、A44を買うともれなくポートリプリケーター(I/Oボックス)とFDDが付いてくるのだっていうか同梱されている。CD-ROMが標準装備で、しかもポートリプリケーターとFDDがあるっつーんだから、何も買い足す必要がなく、割安な感じだ。

 それから、A44のCD-ROMドライブがマルチベイ式になっている点。内蔵のCD-ROMのかわりに別売の拡張バッテリを入れれば、メーカー公称約9.5時間の長時間バッテリ駆動を実現しちまうのだ!! まあ割り引いて考えても6時間くらいは動くだろう。ていうか6時間も動くB5ノートなんてA44くらいしかねえんだよアニキ!! コーヒー1杯で6時間も喫茶店に居続けちゃうという、喫茶店側にとっては非常に迷惑なモバイル野郎を実現したパナソニック、あんたら喫茶店経営者のことをナンだと思ってるんだよそれでなくても世の中不況だっつーのに営業妨害も甚だしい!! じゃなくて、家でもお外でも立派に実用的に使える、よーくできたマシンだと思える。

 それと、俺としてはデザイン面も斬新で好きだ。ツルツルしているアルミ光沢(ヘアライン仕上げ)のディスプレイパネルは、今までのパソコンにはちょっとなかったテイストである。言わなくてもいいことを敢えて言えば、俺としては505シリーズのデザインにはそろそろ飽きを感じており、どうせ買うなら目新しい方が楽しいよネという感覚で、デザインで選ぶにしてもA44に魅力を感じた。

 ただ、やっぱり505RXは偉いよなぁと思える点もある。それはサイズと重量と剛性。A44は、サイズが幅270×奥行215×高さ27.9ミリ、重量約1.58キロ(CD-ROMドライブ装着時)。505RXは、サイズが幅259×奥行208×高さ19.8ミリ、重量約1.24キロ。数値上では大した差がないように見えるが、実物を目の前に並べてみるとA44の方が一回りデカくて分厚く、ずしりと重い感じだ。剛性については、例えばA44は液晶パネル部分が比較的簡単に歪められる(歪んでいるんじゃなくて手でギュッとやれば歪むってことですな)し、本体部分もわりと柔らかいような気がする。505よりちょい柔らか、というイメージだ。まあ両者を50センチ離して見比べるとそんなに変わんないよーな大きさに見え、左右の手で持ち比べるとやっぱりそんなに変わんないよーな気がするし、505RXとA44を歪め比べても(おいコラ借り物なのにそんなコトするんじゃありません!!)それほど大きな違いはないよーなイメージなので、まったく人間の感覚というのはいい加減なものだ。



■ けっこうイイぞ、A44の細かな点

 A44について、これはイイなあと思った機能に、スマートポインターがある。A44内蔵のポインティングデバイスは、四角いセンサ部分を指でなぞるとポインター(矢印カーソル)が動くという、いわゆるタッチパッド系のものなのだが、これに独自の機能を盛り込んだのがスマートポインターだ。

 スマートポインターは、単にポインターを動かすだけではなく、クリック動作などもでき、さらにウィンドウのスクロールや最大化などの操作、登録したアプリケーションを起動できるランチャー機能などがある。詳しい機能についてはコチラを参照していただきたい。従来のタッチバッドでは到底できなかった各種操作ができてちょいと驚く。

 で、このスマートポインターの使い勝手なのだが、これがかなりイイ。デフォルトでは、パッドの右上端をポポンと2回タッチするとエクスプローラーが起動し、右下端を同様にタッチするとアクティブウィンドウが閉じられ、左下端だとアクティブウィンドウの最大化・ウィンドウ化を切り替えられる。また、パッド右端側や下端側をツツーっとドラッグするとアクティブウィンドウのスクロールができる。これが、ヒジョーに使いやすいのである。パナソニックがWebページで大々的に紹介するのがわかる。おおっと思える大したギミックである。

 それから、前述の付属のポートリプリケーターとFDD、およびそれらを本体に接続するケーブルだが、これらも良くできている。ポートリプリケーターやFDDは、1本の同じケーブルで本体と接続できる。まあこれは当然。で、おもしろいのがポートリプリケーターとFDDが合体する点。合体させた状態では、ポートリプリケーターとFDDを1本のケーブルで接続できる。つまり、ポートリプリケーターとFDDを、個別のケーブルで接続する必要がなく、両方を一気に1本のケーブルで接続できるというわけだ。このギミックは確か最初、シャープのメビウスPJノートのポートリプリケーターとFDDに採用されたものだと思ったが、まあとにかく、非常に効率がよい仕組みである。

 それと、A44は、閉じた状態では銀パソ中最も銀色に明るく輝くメタリックなマシンなのだが、これを開けるといきなりブラック&グレーでシックな感じになる点が印象的だ。パネル周辺は黒で、キーボードの一部が黒で一部がグレー。けっこうイイ感じである。

 その他、これは個人的な印象に過ぎないのかもしれないが、パナソニックのノートは、いつも液晶がギラリと明るく鮮明だ。まぶしい感じ。もちろん輝度は調整できるのだが。あ、それだけのことです。



■ そして俺は……

 結論として、A44はこなれたマシンだと思った。こなれた、と言うのも抽象的な表現ですまないが、ハードウェアとしてちゃんとしているなあ、というようなことだ。例えば、本体左側にはI/Oコネクタがあって、本体右側にはPCカードスロットとUSBポートとMJコネクタがあって、本体前面にはマイク端子とヘッドホン端子があって、本体背面には何もコネクタがない。

 そんなのどのマシンでもだいたいそんな感じじゃないか、と思われるかもしれないが、よーく比較してみると、メーカーによって案外バラバラだったりする。A44の場合は、そこにコネクタがあるという感じよりもむしろ、わざとそこにコネクタを配置したというような印象が強い。というのは、実際A44を使ってみると、周辺機器などをつないだ時に非常にスッキリと使えるのだ。USBマウスのケーブルが本体とユーザーの間を横切ったりすることがないし、ヘッドホンケーブルと他の機器のケーブルが絡まることもない。こういう設計を見ると、さすが長年ノートを作ってきたメーカーだなぁと感じてしまう。使ってみれば可もなく不可もなくみたいな質実剛健な印象を受けがちだが、意地悪な問題意識を持ちつつ使ってみると「ほほぅ~!!」と納得できる。このあたりが、パナソニックらしい、というよりもむしろ、松下電器産業株式会社パナソニックコンピュータカンパニーらしいと言えよう。

 さてところで、困った。非常に困った事態だ。どうしたらいいんだろうか俺は。それは、こないだカシオのFIVAを買ったばかり(近日使い勝手などを詳しくレポートするっス)だというのに、またこのような魅力的なマシンが出ちゃったのである。そしてさらには505RXに対しても、実はイイなぁ~と思い続けているのである。いやねiLINKでDVカメラつなげて遊んだりもしたいんですよ実は。それから、他にもカシオのCASSIOPEIA E-55などとゆー除外しがたいWindows CE 2.0搭載でしかも日本語版なパームトップマシンもある。パソコン野郎としては、FIVAで年越しだと思ってたのに、まだいっぱいありやがるんだから、どうにも年を越しづらくなった。どうにかしないと'99年が迎えられない!! 恐怖の大王を体育館の裏に呼んでシメてやることもできない!! どうしよう!! 何を買えばいいんだ~っ!! とか言ってるのは、やはり俺だけですか。

□Let's note ace/A44の製品情報
http://www.pcc.panasonic.co.jp/letsnote/prod/a44/index.html

[Text by スタパ齋藤]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp