スタパ齋藤

たまらねえカメラこと“チェキ”



■ 編集後記にて

505RX
富士フイルム チェキ
標準価格10,000円。プリクラ感覚のインスタントカメラがおもちゃのトミーから発売されるなどして、ここのところインスタントカメラ新製品が賑やか。そんな中で富士フイルムが発売した「チェキ」は筐体色にシルバーを採用、レンズを沈胴式にすることで、従来のインスタントカメラのイメージを打破するスマートなデザインになっている
 俺が思うところ、インプレスというところには、なんか、濃い人が、多いような、気がする。打ち合わせに行って話し込んだりすると、必ずたいてい濃い話題が出る。あ、この“濃い”というのはつまり、マニアックということである。例えば……例えば……ん~、なんかいい例が出せないが、俺の記事を担当してくださる編集の方々はだいたいみんな仕事の範疇を超えてマニアックである。仕事に関係する情報を多量に持っているのはまあ“仕事柄”ということで当然と言えば当然だが、具体的にそのモノまで持っていたりする。

 マニアックな人々の間で話題になった新製品情報などあると、それに関する情報を速攻でメールしてくれたり、教えてくれたり、大推薦してくれたりする以上に、ホントに買ってしまうのだ。
「そ、それ買ったんですか!?」
「買うでしょ!! 買うしかないでしょ!! ゲットでしょ!! ウチの編集では5人くらい買いましたよ!!」
 これは俺の偏見かもしれないが、インプレスの人はデジタルガジェットに対する購買的テンションが高いような気がする。特にPC Watch編集部とかDOS/V POWER REPORT編集部の人は、なんか、いつも、「買うぜ買うぜ買うぜ何か買うぜ~ッ!!」とボルテージを高めているような気がする。で、これだというモノを見つけると、発売日さえ決まっていないような発表ホヤホヤのモンだろうが何だろうが予約している、というような感じがする。

 いやたぶん、きっとホントにインプレスの人は濃いのだ。濃い人が持つ独特の臭覚を持っていると思える。キてる製品に対しては非常に敏感に反応する人々だと言えよう。その濃さの片鱗は、例えばPC Watchの編集後記から感じ取れる。いつもではないが、オオッと思えるグレートガジェット情報がポチッと書かれていたりする。Watch本編では言わなかった本音がペロッと書かれていたりするから、要チェックだと言えよう。

 で、毎週チェックしていたら、そこに「コレだ!!」と思える新ガジェットの情報が。ある金曜日の編集後記で、伊達氏が富士フイルムの新型インスタントカメラ“チェキ”について書かれていたのだった。それを見た俺は、ヌオォオォオォ~となって猛然とカメラ屋に向かったのであった。



■ たまらねえカメラこと“チェキ”

新しく開発されたフィルムは10枚700円で、クレジットカードサイズ。発色も鮮やかで、気軽なスナップショットには十分な画質を持つ
 で、もちろんカメラ屋に行ってチェキを予約したのだ。ちなみに予約しに行ったら、カメラ屋の店長さんはまだチェキ標準価格も発売日も、そしてチェキの存在すら知らなかった。ああインターネット万歳伊達さんステキ!! という感じで、このぶんなら俺は発売日にチェキを絶対ゲットできるゼ~と確信した。

 チェキは、9月16日~21日ケルン(独)で開催されたフォトキナ'98に参考出品され、低価格・高画質なフィルムとして大きな注目を集めた世界初のカードサイズフィルムinstax miniを採用した第一号商品で、世界に先駆け日本で発売されたすげえカメラなんだヨ、というようなことが富士フイルムのページには書いてある。

 要するに、チェキはいわゆるインスタントカメラで、コンピュータの話題が中心のPC Watchとは全然関係ない分野の製品だ。が、伊達氏はこれを賞賛し、俺もヌヌヌヌッと思って速攻で予約・購入した。つまり伊達氏も俺もインスタントカメラ好きな人であり気が合うのだ、ってそういうコトではない。チェキには、デジタル野郎の血を沸かせる何かがあるのだ!! そうなんだよこのカメラにはきっと俺たちを熱くさせ……、いや、テンションを高めすぎてこめかみが切れてプシューッと噴血する前に、もうちょっとチェキの商品説明を。

 チェキ(CHECK ITの略だヨ!!)の正式名称はinstax mini 10。このカメラは、撮ったその場でプリントをベベーッと吐き出すインスタントカメラで、特徴的なのがフィルム。ちょうどクレジットカードサイズのコンパクトなフィルムは、従来のインスタントカメラ用フィルムに比べると驚くほど鮮明で色の出がいい。フィルム余白には鉛筆やペンで字が書き込めるようになっている。
 しかもこのフィルム、1枚が60円程度で買える。従来のインスタントカメラ用フィルムが1枚200円前後して、おおよそにおいて大してキレイに映らなかったことを考えると、非常に画期的なフィルムだと言えよう。

 それから、従来のインスタントカメラに比べると、カメラ本体もかなり小さく、軽い。インスタントカメラにしては大袈裟感がなく、一見デジカメみたいな現代的なデザインになっている。で、驚くのが価格。メーカー希望小売価格でちょうど1万円。実売は9,000円前後!! ちなみにフィルムは10枚で1パックとなり、1パックが700円(メーカー希望小売価格)、2パックセット品が1,250円(メーカー希望小売価格)!! 酔った勢い(もしくはカメラ屋に寄った勢い)で買える価格!! こここ、これは安い!!

 なるほど愛称がチェキなわけだ。1枚60円程度で撮れてその場で見られてそこに書き込めて遊べて軽くてコンパクトなカメラが1万円以下で買える。高校生を中心とした層に売れまくりそうな製品である。

 なお、操作も非常に簡単で、基本的には電源を入れてシャッターボタンを押すだけ。ストロボ内蔵なので暗くてもOK。ストロボの強制発光もできるので、逆光でもOK。簡単な露出補正機構もある。縦位置でも横位置でも撮りやすいように、シャッターボタンが2つついている。近景用と遠景用のフォーカスボタンもある。実用性と簡単さを備えた内容になっている激安インスタントカメラなのだ。



■ 若者以外も大喜びですな

 安くて簡単でキレイで、とにかく手っ取り早く楽しめる。お金のことを気にせず楽しめるのがまずイイ。
 使い捨てカメラっちゅーモンもあるが、アレは実はけっこうお金がかかったり面倒だったりする。結局DPEに出せばプリント代がかかるわけだし、すぐ写真を見るというわけにはいかない。
 じゃあ、お金がかからないデジカメ、という意見もあるが、デジカメはデジカメで面倒だ。撮った瞬間見られるのはいいが、広く一般の意識として「紙の上に絵があるスタイルの写真の方が何かと便利」というのがある。結局、物理的なプリントを得るためにはパソコンやプリンタ(もしくは専用プリンタ)が必要だし、それらを使うための知識や手間が要るのだ。

 デジカメはコンピュータというメディアに対して最も正解に近い画像記録装置で、銀塩フィルム式カメラは解像度や色再現性において最も優位な装置だが、世の中の大半を占めるフツーの人々にそんな理屈は要らない。すぐプリントできて手間要らずなら、ある程度のお金は払う。コンピュータとの親和性や大伸ばしに耐える解像度はあまり重要ではない。そしてチェキは、まさにそのフツーの人々のニーズをバッチリ満たしたドハマり製品なのだ。

 そしてチェキは、当たり前のように発売日翌日にはどの店でも完売で在庫ナシとなった。当の富士フイルム社員でさえ入手が難しいほどだったそうだ。これはチェキが発売されるというのを知ったフツーの人が速攻で予約したからであり、同時に若者を含む多くのフツーの人が発売日に速攻でカメラ店へ押し掛けたからであり、つまりチェキがフツーの人の欲望をジャストミートしたからだ。ニーズっちゅーのはテレビにおける1,024回のCMよりずっと激しくサイフのヒモを緩めるということの証である。

 チェキに触れてみれば、それが確実にインスタントカメラの次のスタイルになるであろうということがわかるが、それだけのコトではないような気がする。それだけのコトなら、PC Watchの伊達氏が編集後記に書いたり、それを読んだ俺がムムムムッと焦ったりしなかっただろう。



■ 紙関連ハードの魅力

 俺は紙がキライで、紙なんか全然ダメだしヘボだしやっぱこれからは全部デジタルデータでコンピュータでしょ~と思っていて、机上紙メディア撲滅運動実施中のコンピュータ野郎なのだが、やはり人間という動物なので、ここ数千年で培われてきたDNAに逆らうことができない、ってなに回りくどいこと書いてんだよ>拙者。  つまり、紙なんか検索性が低いし効率も悪いとか思っている反面、超小型プリンタとか新型のスキャナとかを見るとトキメイてしまうのだ。例えば、カシオのポケットサイズ携帯プリンタことFreedioとか、NECのUSB接続のA5スキャナことマルチリーダーPetiScanとかを、もうどうしても買ってしまいそうなのである。頭では、あんな紙を吐き出すための装置や紙をスキャンするだけの装置なんか、と思っていても心と体が反応してしまうのだ。強度のコンピュータ野郎の俺でも、ちょっと気を抜くと、DNAレベルで「やっぱ紙は便利なんだよなぁ現実的だよなぁ」と思っちゃったりするわけだ。  要するに、「紙なんかキライ」と言ってるのは、ホントにキライということじゃなくて、“紙のクセしてコンピュータよりスゴいことができてる”という、コンピュータ野郎のコンプレックスであり、紙へのネタミなのである。実は非常に高機能なメディアである紙への嫉妬なのだ。紙に対するある種の羨望か!? これがホントの“ヤッカミ”なんつったりして…………場がサムいものになったようだ。
 ともかく、チェキに対してムムムムッと感じたのは、デジカメと紙の関係を一瞬見たからのような気がする。

 デジカメは、現在もナイスであり、来年はきっともっとナイスかつグレートな感じになり、将来はスーパースプレンディドなメディアになると思われる。どんどん進化していずれフツーのカメラを凌駕しちゃうんだと思われる。が、まだプリントに対するコンプレックスがある。デジカメ愛好家はデジカメの良さをまくし立てたついでにコソッと小声で「しかもプリンタ使えばちゃんと写真として扱えますし」というフレーズを込め、「プリントにするのはけっこう面倒臭ぇんだよね~」という事実を隠蔽しようとする。ていうか俺は積極的に隠蔽していきたい!! デジカメはサイコーなんだよオッケーなんだよフツーのカメラなんかよりイケてるんだよォっ!! プリントもできるし(小声)。というふうに。

 そこへチェキ。もしかすると昇華型プリンタのランニングコストより低い値段で、144dpiとか600dpiとかより高い解像度で、撮った直後たった数十秒で見られるってヤツか!? そしてソレを出したのは富士フイルム!! デジカメ業界でも鼻息荒い富士フイルム!! そしてフォトキナ'98ではinstax miniを使ったプリ……こここ、これは!! という感じで、来るべき未来に発売されるデジカメを期待したいような気がする。

 早い話、メーカー希望小売価格700円の10枚パックカードサイズフィルムがデジカメに入って、撮ったその場で見られるわプリントがベベーッって出てくるわメガピクセルだわ小型だわのデジカメが出りゃあ笑いが止まらねえんだよ俺たちはな!! ということだ。でもそーゆーデジカメはまだない。だがそーゆーデジカメが出そうな雰囲気をムンムン臭わせるのが、チェキだ。

 ともあれ、今のカタチのチェキも非常におもしろい。これまで使ったカメラのなかで、これほど気楽に撮影できて、その撮影結果をこれほど気持ちよくプリントできたものはない。サイズにもコストにも、まるで気構えが要らない。ほんの少し気が向いたら、シャッターを押す。数十秒でプリントができる。さっきの“ほんの少し”の気分の盛り上がりが、フィルム上に像が現れてくるように徐々に高まっていく。その気楽な過程が嬉しく、プリントを見てみんなで盛り上がる時間が楽しいのだ。ぜひ一度チェキで遊んでみて欲しい。

 あーでもinstax miniフィルムを内蔵できるサブノートとか出たら愉快だなぁ~ていうかUSBプリンタとかでもいいなぁ~もちろんIrDAプリンタでもいいしぃ~まあ基本的にはinstax miniフィルム対応(内蔵)デジカメだよな~やっぱ、と、コンピュータ野郎ならよりいっそう愉快な気分に浸れるので、マジで一度チェキでカシャ・ジジーってやっていただきたい。

□富士フイルムの「チェキ」ニュースリリース
http://www.fujifilm.co.jp/news_r/nrj390.html

[Text by スタパ齋藤]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp