スタパ齋藤

狭いのイヤっ!! XGAが好き好き好きっ!!
~ソニー VAIO PCG-505RX~



■ 一度1,024×768を使うと……

505RX
ソニー PCG-505RX
オープンプライスだが、実売は30万円を少し超える程度で、XGA表示のノートとしては安い。低温ポリシリコン液晶を搭載して、液晶部はさらに薄くなった(ちなみに画面右側が白っぽいのは写真のせいですスミマセン)
 パソコンユーザーは皆そう感じると思うのだが、画面の解像度をいつもより上げた環境で1時間でも使うと、もうその解像度からいつもの状態に戻したくなくなる。例えば、いつも800×600ドットの表示モード(いわゆるSVGAモード)で使っていて、ふと1,024×768ドット(いわゆるXGAですな)に上げて使い、デスクトップが広いことの便利さを味わってしまうと、もう800×600ドットモードに戻せなくなる。デスクトップマシンとCRTを使っているなら「もうSVGAに戻せないっ!! 狭いのイヤっ!! XGAじゃなきゃいやんっ!!」と思ってもそれほど問題なく、ただ単にその気に入った解像度を使えばいい。デスクトップユーザーなら、ビデオカードとCRTの性能に合わせた最大の解像度でマシンを使えばいいだけだ。

 だがノートパソコンユーザーはそうもいかない。ノートパソコンのLCD(液晶ディスプレイ)には、解像度の上限がある。「狭いのイヤっ!! XGAが好き好き好きっ!!」と思ったら、XGA表示ができるLCDを搭載したノートパソコンを買うしかないのだ。

 で、俺の場合、以前はSVGAでオッケーだと思っていたのだが、ソニーの最初のVAIOノートのPCG-715(XGA表示なんダ!!)を使ったその日から、ノートパソコンに対して強く「狭いのイヤっ!! XGAが好き好き好きっ!!」と思い続けてきた。でも残念なことに、サブノートと呼ばれる範疇のノートパソコンには、まるで全然XGA表示のマシンなんてなかった。ゆえに、XGAが好きだけどサブノートっつーモンがもっと好きな俺は、多少の我慢を交えてSVGAのサブノートを使ってきた。……まあSVGA程度あれば十分なんですけどね……でもXGAのサブノートだったら机上もお外も同じく広い画面でイーヤッハァなんですけどね……、とまあそんな感じで。

 ところが先日VAIOの505にXGAのモデルが出るとの発表が!! そうなのか!! ついに出るのか!! すげえ!! B5でXGA!! いったいどんなのだろう? きっと素晴らしいに違いない!! そうだ素晴らし過ぎて欲しくて欲しくて死ぬんだ俺は!! いや、そう簡単にXGAがB5に収まるなんて考えられん!! そうだきっと505の薄さとか価格の安さとかのメリットに悪影響を及ぼすに決まってる!! そうだそうに違いない!! そうだよそうだゼ例えば値段が激高とか厚さが従来の505の倍とかそういう残念さに満ちたマシンに違いない!! ていうか実際どうなんだろう? 見たい!! 俺はそのXGA505を見てえんだよアニキ!!



■ これがPCG-505RXなのか~ッ!!

インターフェイスは左側面にある。こうして見ると、RJ-45やAC電源など、本体部はすでにコネクタの幅からいって限界の厚み。薄くするためには、ポリシリコン液晶を採用するなどして、液晶部で薄くするしかないことがわかる
 XGA版505見たい欲に支配された俺の脳味噌は、俺を勝手に操作し、俺に受話器を握らせ、PC Watch編集部に電話をかけさせ、肺や声帯や口を操った。
「はい、PC Watch編集部です~。あっ、スタパさん、どもどもご無沙汰してます~。どうかしましたか?」
「もしもし私はもうダメです。生きることに疲れました。次の原稿も次々の原稿も書けません。あとこないだ借りたお金を返す気力もありません。私はダメな人間です。今後よりいっそうダメ人間化が進みそうです。最強なダメ人間と化せばPC Watch編集部に無限FAXを送りかねません。勝手にLサイズのピザの出前をPC Watch名義で32枚注文するでしょう。しかも朝昼晩ですしコーラ付きです。その次はうな丼にアップグレードだし、さらにその次は特上寿司です。でも、ソニーのXGA版505をいじれれば、私はそれだけでいつもの私に戻るのです。もうXGA版505だけが頼りです。助けてオビ・ワン」
「相変わらずわけわかんないっスね~。わかりましたよ505RX借りてあげますからイタズラはよしてちょんまげ」
 というわけで夢と希望と疑惑のマシン、ソニーのXGA版505ことPCG-505RXを借りられた。

 で、まずグッとキたのは、やはり505のサイズでXGAというのはすんげえイイ!! この画面をSVGAのVAIOユーザーが見たら「ズルい!!」と思うだろう。とりあえず何も問題なくXGAになっており、しかもXGAになったからと言って液晶部が厚くなったりなんかしておらず、逆に従来の505より数ミリ薄くなっている。精細さや発色なども、今までのLCDと比べて遜色ないものだ。

 ちなみに、505RXに採用されているLCDは、最近話題の低温ポリシリコン液晶。高精細化と薄型化を同時に可能にする液晶だそうな。ただ、なんか、TFTに比べるとギラッとしたコントラストに欠けるような気がしなくもない。また、お借りした505RXのLCDにはほんの少し、画面の明るさにムラがあった。まあこのムラは、普通では気づかないのだが、例えばデスクトップを淡い青にしたりするとわかる。フツーの人ならまるで気にならないレベルだ。

 とにかく、すげ~。この超薄っぺらいノートパソコンにXGAのLCDが載っていて、MMX Pentium 266MHzでメモリ64MB(最大128MB)でHDDが4.3GB。タイムマシンで3年前にワープし、この505RXを当時のノートパソコン野郎に見せたら、きっとソレを信じないだろう。信じないどころか「こいつはきっと魔女だから燃やしてしまえ!!」とかゆーコトになるだろう。過度なカルチャーショックを受けて血迷った人々により、俺は磔の刑だし投石だしリンチだしで死ぬのだ。ヤバい。非常にヤバい!! 505RXは非常に危険なマシンである。



■ PCG-505RXの危険度とは!?

 505RXは前述のように危険きわまりないマシンなのだが、実はさらにもっと危険であることがわかった。

 まず、その価格が危険だ。予約とともに505RXを購入した人によれば、ヨドバシカメラ新宿西口本店価格で309,800円(税別)という実売価格だったという。消費税込みで325,290円である。ちなみに、ヨドバシカメラのゴールドポイントカードを使えば、この325,290円に対して10%(カード払いの場合8%)のポイント還元があるので、実質上32,529円値引き!! さすが価格破壊のヨドバシカメラ!! やっぱ買い物はヨドバ……そうじゃなくて要するに、505RXは発売直後に実質上30万円を割る価格で買えたってことだ!! こここ、これは安いような気がしてならない!! いや安い!! まあ30万円というのは大金だが、30枚の1万円札と505RXをハカリにかければ、505RX側がズドーンと下がるというイメージが一気に俺の脳内に広がった!! くわッ!!

 それから、もちろんVAIO505シリーズならではの魅力的なデザインや存在感、モノとしての良さと楽しさがある。最近特にイケてると思うのが、英語キーボード交換サービスだ。これは505シリーズの日本語キーボードを、2万円で英語キーボードに交換してくれるというソニー純正のサービスだ。

 そんな感じで、この年末において、どうもリアルに検討しがちな機種なのである。ボーナス出た~!! サブノート~!! カッコ良くてパワフルで画面広くて安いの~!! ということになると、やはり505RXは確実に候補に上がるマシンだと感じ、俺などはまさにこういう候補にガポッと飛びつく消費者なのであり、そういう意味においてPCG-505RXはヤバいマシンなのである。



■ これからも加熱しそうですな

 思い返せばちょうど1年くらい前、そろそろ本格的に冷たくなった北風が吹き上げる乾いたホコリの中、配達されてきたPCG-505を思い出す。寒く静かな初冬、しぼみがちな俺の心を超ホットにしてくれた、B5・超薄・スーパースタイリッシュサブノート、505。本格的かつ深刻に大喜びするほど、初代505はセンセーショナルなマシンだった。そしてその後、さらにVAIOシリーズはパソコン業界にショックを与え続け、結局今年はなんだかんだ言ってもVAIOに引っ張られたVAIO一色の年だったのではないだろうか?

 そう言えば、VAIOが登場する直前あたりは、なんかこう、パソコン市場全体(特にノート市場)に元気がなかったような気がする。いや本当は元気があったのかもしれないが、俺としては“おもしろいはずのパソコン市場がつまらなかった”のだ。努力して考えないと欲しいマシンが浮かんでこないような、そんなつまらなさを感じていた。が、VAIOシリーズが登場し、それにつられて他のメーカーが活気づくとともに、俄然パソコン市場がおもしろくなった。ともあれ、VAIOシリーズは大きな波をパソコン市場に起こしたのだ。

 VAIOシリーズの中でやはりいちばん着実に進化しているのは、505シリーズだろう。大したモンである。最初にドガンと売れたのももちろんだが、尻窄みにならず、処理速度やストレージや各種機能の強化など、徐々に徐々により完成されたマシンへの道のりを進んでいる。正直な話、最初の505ブームはもしかしたら色物登場における短期間のお祭り騒ぎになるのでは!? というヒネた見方もしていた。一発屋の登場かな、と。が、そうではなかった。しっかり根付き、ある意味業界全体を活性化させた。

 で、最新モデルが505RXを始めとする“Rシリーズ”。特に505RXは、最初の505を買った人も、最初の505を買わずに見送ってきた人も、こりゃどう考えても手を出したくなるモデルだ。こういうシリーズは強いと思う。カッコ良さや話題性を持ち、しかもそこに着実さが加わっている。もちろんきっと来年になればもっとすげえのが出るんだろうし、そういう想像をさせる505シリーズの“不滅感”が当たり前のものとしてある。

 505が暴れ続けると同時に、売られた喧嘩は買うんだゼと気合を入れる各パソコンメーカー。来年もきっと続くぞ、来年もこういう活気が見られそうだなぁと、505RXを前にしみじみ思う冬の夜の俺であった。

□ソニーのPCG-505RX製品情報
http://www.sony.co.jp/ProductsPark/Consumer/PCOM/Note505RX/index2.html

[Text by スタパ齋藤]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp