こう予測しているのは米国の調査会社MarketMapsおよびCENTRISだ。2,000人への調査結果から、この11月から1月の間に、230万世帯がPCを初めて買うことにしていると予測した。この数を足すと、1月末までにPCは全米世帯の49%に浸透することになるという。ついに米国家庭の2軒に1軒がPCを持つというわけだ。
この冬、それだけ多くの家庭がPCを買う気になったという根本の背景には米国の消費ブームがある。株価の多少の変動などはあるものの、景気は好調、物価は安定、預金の利率は低い。このため、米国消費者の購買欲は非常に高まっているのだ。
なかでもPCの売れ行きが伸びる理由について、MarketMaps/CENTRISは、PCの低価格化、それに子供の教育やインターネットの必要性をあげている。
どれもそのとおりだろう。大学に行くならPCは必須、ティーンでも学校だけでなく家にPCがあったほうがいいという認識は、米国人の間にすっかり浸透している。調査でも、初めて買う予定の人の7.7%は大学生にプレゼントするために買うと答えているそうだ。インターネットが必要という意識も、AOLの会員が膨らみ続けていることに如実に現われている。
つまり米国では、PCを「持たなきゃ」という意識がますます強まっているのだ。それは、デジカメで撮った写真を年賀状に印刷してみるかという程度より、もっと切実なものだ。日本で小学生の親が、行かないと取り残されると感じて塾通いさせてしまうのと似ているかもしれない。
また初めてのPCに選ばれそうなメーカーはIBM(17.2%)、次いでApple(10.1%)。AppleはiMacの成功で、再び、初心者に使いやすくてかっこいいというイメージを与えたようだ。
□Survey Finds Lower PC Prices Attracting Mainstream America To Buy First PC This Holiday Season(MARKETMAPS/CENTRIS)
http://www.businesswire.com/webbox/bw.111998/884624.htm
米国で現在インターネットを使っている家庭に、電話会社とCATV会社とどちらの高速アクセスサービスに金を払いたいかと聞いたところ、電話会社に払いたい家庭のほうがCATV会社の4.5倍という結果が出た。電話会社のxDSLサービス対CATV会社のケーブルモデムサービスへの期待度は、完全にxDSLのほうが上まわった。
しかも、同調査によれば、オンライン家庭の36%が、高速アクセスのために月40ドルを払うつもりがあると答えている。米国ではプロバイダに払う金は20ドルそこそこで、ローカル電話料金は無料だから、倍の金を払う気があるというわけだ。こう答えた人の割合は昨年は27%で、切実なニーズが年々高まっていることを示している。
ではなぜ期待はxDSLのほうに集まっているのか。ケーブルモデムは先行はしているものの、すぐにすべての地域でサービスが開始できるわけではない。というのは、インターネットアクセスサービスを行なうにはケーブルの双方向化が必要で、しかも光ファイバーを幹線に使わないと帯域が狭くなる可能性があるからだ。このインフラの整備には時間がかかる。
しかも、CATV会社は最近、ケーブルモデムにあまり積極的でない。代わって力を入れているのがデジタルセットトップボックス(DSTB)だ。11月1日からの地上波デジタルTV放送開始によって、CATVのデジタル化の計画も、前倒しになって急ピッチで進み始めている。たとえば全米一のCATV網を持つTCIは、DSTBの配布を'99年に始める予定だ。
このDSTBにケーブルモデム機能を内蔵すれば、インターネットアクセスを含む双方向サービスを提供することができる。また、DSTBにIEEE-1394インターフェイスを搭載し、それでPCやその他の機器を接続することもできる。つまり、DSTBを通じて、PCでインタラクティブサービスを利用できるようにすることも可能なわけだ。
初めからPC所有者にしか需要のないケーブルモデムのサービスよりも、CATV加入者全員に新しいサービスを提供し、よりお金を取りうるDSTBのサービスのほうが、CATV業者にとってはビジネスチャンスが大きいのだ。
□Consumer Demand for High-Speed Internet Services Growing, But Availability is Limited(Yankee Group)
http://www.yankeegroup.com/yg.nsf/7660ab3cde06b649852566580069c4ce/b16fa9a7e38d548c852566b4004cbaea?OpenDocument
Yankee Groupは来年末までに米国で売れるDTVの台数を20万台未満、2002年末までの普及率は2.5%という予測をはじき出した。米国ではすでに地上波でのDTV放送が始まったというのに、この予測はずいぶんからい。
リリースによればその理由は、初代DTVの価格が7,000~1万ドル(実際には実売5,000ドル程度の製品もある)で、買いやすい製品がないことに加え、DTVの高画質を望んでいる人が少ないからだという。調査によれば、CATVに加入している家庭の86%が今の画質に満足していると答えた。地上波だけを受信している家庭では満足率は低かったが、先に触れたように、米国では全世帯の約3分の2がCATVに加入している。つまり現在CATVに加入していなくて地上波だけという家庭は、もともとDTVにもとびつきそうもない、おそらくその余裕のない家庭だ。DTVを買う可能性のある層のほうは、これ以上の高画質に興味を持っていないというわけだ。
さらに、放送局側もまだ本気を出していない。じつは放送が始まったと言っても、びっしりやっているわけではないという。米三大放送局のWebサイトを見ても、DTVのプロモーションはほとんどない。高画質を見られるDTVはおろか、デジタル放送を従来のアナログTVに映すことのできるDSTBも普及していないのだから、放送局がDTV放送を積極的に制作しないのも当然だろう。
つまり鶏と卵の関係で、消費者は実際の放送ではないから興味が湧かないし、メーカーも安い機器で市場を開拓する意欲が湧かないというわけだ。DTVには、画質のほかに多チャンネルやデータ放送といった利点がある。いつかはアナログから移行するとは誰もが思っているが、来年、再来年ブレークするとは誰も思っていない。それが今のDTVの実状だろう。
□Digital TV is Here, But Will Consumers Tune In? Yankee Group Study Finds Most Are Satisfied with Today's Pictures(Yankee Group)
http://www.yankeegroup.com/yg.nsf/7660ab3cde06b649852566580069c4ce/b16fa9a7e38d548c852566b4004cb
[Text by 後藤貴子]