Windows CE 2.11は従来のWindows CE 2.0に比べ、解像度の向上(VGA化)、USBのサポート、タッチパネル以外のポインティングデバイスのサポートなどの改良が図られたほか、新しいCPUへの対応も行なわれている。しかし、各社の製品を見ると、それぞれに対応が異なり、目指す方向性に違いを見せている。
NEC MobilePro800 |
MobilePro800の背面 |
まず、NECのMobile Pro800は800×600ドット表示が可能な9.4インチ液晶ディスプレイを搭載し、USBポートを背面に装備するなど、B5薄型ノートPCと変わらない外見になっている。ただ、重量も2.6ポンド(約1.2kg)とサブノートPC並みだ。
Hewlett Packard JORNADA 820 |
VADEM Clio |
これに対抗するのが米Hewlett PackardのJORNADA 820だ。こちらは640×480ドット表示の液晶ディスプレイを採用しているが、USBポートを装備しており、ポインティングデバイスはパッド式を採用している。ボディサイズや重量はMobileProとほぼ同等となっている。ちなみに、CPUはWindows CE 2.11で新たにサポートされたStrongARM SA-1100を採用しており、動作はかなり軽快だ。
米VADEMが開発したClioは、その独特なデザインが周辺機器メーカーやソフトウェアベンダーなどにも人気のようで、さまざまなブースで展示されていた。Clioはコの字型のアームに固定された液晶ディスプレイが自由な角度に設定できるフレキシブルなボディデザインが特徴だ。その半面、重量が3.2ポンド(約1.5kg)とやや重くなっている。今のところ、日本での発売予定はないようで、OEM供給を受けているシャープか、CPUを供給しているNECに期待するしかなさそうだ(個人的にこういう合体変形メカは好きなんだけど(笑))。
シャープ mobilonPro(PV-5000) |
シャープ TriPad(PV-6000) |
国内ではWindows CEマシンを未発売のシャープは、Windows CE 2.11を搭載したmobilonPro(PV-5000)とVADEMからOEM供給を受けたTriPad(PV-6000)の2モデルを展示していた。mobilonProの方は同社が国内で販売する携帯用ワープロモバイル書院(WM-C100)に酷似したデザインを採用している。いや、酷似というより、外見的にはまったく同じものといった雰囲気だ。VGA化されている点以外はあまり大きな特徴はなさそうだ。USBポートも備えておらず、手堅いハードウェアデザインと言えそうだ。
Samsung eGO-note |
eGO-noteのポートリプリケータ |
韓国Samsungが出展していたeGO-noteというH/PC Proマシンは、外部に接続するポートリプリケータにUSBポートを含むI/O回りのコネクタを集約したのが特徴だ。キーボードとマウスポート、プリンタポートなども装備しており、サブノートPCとの完全な置き換えを狙っているようだ。モバイルでの利用を考えると、意外にかしこい手法と言えるかもしれない。
Windows CE 2.11を搭載したH/PC Proマシンは、VGA以上の解像度やUSB、タッチスクリーン以外のポインティングデバイスのサポートにより、サブノートPCやミニノートPCと変わらないスペックを実現できるようになっている。しかし、重量的にはほぼ同等である上、ストレージメディアは小さく、動作するアプリケーションも多くない。アドバンテージと言えば、約8時間というバッテリ駆動時間くらいのものだ。これらの点がユーザーにどう受け取られるかによって、今後のH/PC Proマシンの市場での評価が決まることになりそうだ。
まず、最初に紹介したいのが米PocketScienceが提供するPocketMailというサービスだ。PocketMailは専用端末を用意することにより、さまざまな電話回線を通じて、電子メールの送受信やFAXの送信をできるようにするものだ。費用は月額9ドル95セントで、メールの利用は固定料金となっている。FAXは1通あたり25セント、米国外への送信でも1通1ドルしか掛からない。専用端末を購入し、PocketMailにオンラインサインアップすると、「xxxxx@pocketmail.com」というメールアドレスが発行される。ちなみに、PDAの機能を併せ持つ専用端末は、JVC(ビクター)とシャープから100ドル前後で販売される。
JVC HC-E100 |
HC-E100の底面 |
ビクターが発売するPocketMail専用端末『HC-E100』は、電子手帳にも似たコンパクトなデザインを採用している。Hewlett Packardの200LXとほとんど変わらないサイズだ。液晶ディスプレイは240×64ドット表示が可能で、バックライトも備えており、重量はわずか8.75オンス(約250g)しかない。価格は129ドルだ。
シャープ TelMail |
TelMailの底面 |
一方、シャープが発売するPocketMail専用端末『TelMail』も同様のデザインを採用しており、液晶ディスプレイや搭載メモリなどのスペックは同等だ。ただ、ボディサイズは微妙に違い、キートップ(というよりボタン)もTelMailの方がわずかに大きく見える。重量は9.5オンス(約270g)となっている。画面を見てもわかるとおり、PCとのリンクソフトも含まれている。価格は149ドルだ。
また、それぞれの専用端末には、メールアドレスも登録できるアドレス帳、スケジューラ及びカレンダー、メモ、そしてメールソフトが含まれており、PDAとしても利用することができる。
これらのPocketMail専用端末で特徴的なのが底面に装備されているポップアップ式の送受話口だ。底面にあるストッパーを外すと、マイク部分が飛び出す仕組みになっており、一昔前の音響カプラよろしく、この状態で電話機の受話器に押しつけるようにして使うのだ。こうすることにより、家庭にある一般アナログ回線、オフィスのPBXに接続された電話、ホテルの電話、公衆電話、携帯電話など、さまざまな電話回線でPocketMailのサービスを利用できるようにしているわけだ。アナログな方法というか何というか、なかなか斬新な手法と言えるだろう。PocketMailのアクセスポイントは、米国国内の800番、つまりフリーダイヤルになっている。米国外とのローミングサービスも検討しているそうで、そうなれば、世界中どこでもメールが利用できるようになるわけだ。
しかし、考えてみれば、Microsoftのmsn.やIBMのインターネット接続サービス、AOLのように、世界規模で展開するプロバイダは、こうした専用端末を提供すれば、ユーザーの利便性も向上し、さらに利用率も高まるはずなのだが……。
NOKIA 9000Communicator |
PHILIPS ACCENT |
一方、携帯電話にPDAの機能を盛り込んだSmartPhoneとしては、昨年からヨーロッパなどで販売されているNOKIAの9000 Communicatorシリーズ、PHILIPSのACCENTを見ることができた。ともに、閉じて携帯電話、開くとPDAという構成になっているが、やはりボディの大きさが今ひとつといったところ。ただ、PDAとしての使い勝手を考えると、どうしてもこの程度のサイズになってしまうようだ。
SONY メモリースティック搭載電話機 |
SONY セルラーホン |
まずは今回のCOMDEX/Fall '98で最も注目を集めたソニーは、メモリースティックを装備した電話機を展示していた。いわゆるコンセプトモデルのようだが、ソニーらしいデザインに注目が集まっていた。携帯電話もなかなかカッコいい。ただ、現状で利用できる通信速度を考えると、デジタルカメラで撮影した大きな画像を電話回線経由で送りたくないという気もするのだが……。
ALCATEL INTERNET SCREENPHONE |
Samsung WebVideoPhone |
WWWブラウザや電子メールクライアントを搭載したインターネット対応電話機では、仏ALCATELのINTERNET SCREENPHONE、韓国SamsungのWebVideoPhoneなどが目をひいた。ともに、カラー液晶ディスプレイと収納式キーボードを搭載しており、Webページの参照や電子メールの送受信などができる。接続する回線はアナログ回線だが、WebVideoPhoneの方は56kbpsモデムだけでなく、Ethernetのインターフェイスも備えている。
Microsoft CordlessPhoneSystem |
NOKIA 447DTC/c |
最後に、ちょっと変わりダネを紹介しよう。左上はMicrosoftが出品していたCordlessPhoneSystemで、PCとの連携と音声応答が特徴。しかし、デザインといい、サイズといい、今から15年ほど前に日本で家庭用コードレスホンが登場した当時の製品を彷彿させる。米国でも「売れないだろう」と言われているそうだが、日本のように一般家庭の電話機が進歩している国では「もっと売れない」だろう。
一方、右側はNOKIAの447DTC/cというテレビ電話対応ディスプレイだ。左側に受話器、上部にCCDカメラを搭載しているが、モデムなどは内蔵していない。そう言えば、昔、日本でも電話機のついたPCがあったような……。しかし、こちらはマイクロソフトのコードレスホンと違い、かなり現実味のある製品と言えそうだ。
この他にも、会場ではテレビ電話やインターネット対応電話機を数多く見ることができた。OEM供給をする台湾メーカーなどもいろいろなデザインの電話機を展示していたため、来年あたりは日本でもテレビ電話が流行ることになるかもしれない。
[Text by 法林岳之]