カメラになったデジカメ
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オリンパスC-1400XL 標準価格128,000円。昨年画質の良さで話題を呼んだC-1400の後継機。マニュアル機能を充実させるなど、画質にこだわりを持つユーザー向け。価格的には実売で10万円を切るなど、昨年に比べればかなりこなれてきた |
以上、OMシリーズマニアの嘆き終了。
で、最近のオリンパスは、デジカメ作りに非常に強まった気合を入れているようだ。実にマジメにデジカメを作っていらっしゃる。新発売された3機種のデジカメ、C-1400XL、C-900 ZOOM、C-830Lを使ってみて、そう思った。
オリンパスC-900 ZOOM 標準価格89,800円。画質では定評のあるオリンパスが、コンパクト機に光学3倍ズームを装備。この年末商戦の売れ筋ナンバーワンと見られている |
オリンパスC-830L 標準価格64,800円。131万画素CCDを搭載した、メガピクセル普及機 |
が、いくつかの要素が融合されて、現在のようなデジカメが登場してから、“カメラ≧現在のデジカメ>かつてのデジカメ”のような気がしている。特に上の式の“≧”の中の“=”記号が重要で、同時に“=”が含まれない単なる“>”であることも重要だ。だから面倒臭ぇコト言ってねえで結論言えよ結論を、って感じなのでまとめる。つまり、最近のデジカメはマトモに撮影できる装置になった気がするのであり、最近のデジカメはかつてのデジカメとは一線を画する別モンだという気がするのだ。
かつて、と、現在。デジカメのどこがどう変わったのかを考えてみると、まあとりあえずは、CCDの画素数とか機能とか機構とかが高度になった、とかいう当たり前でつまらねえ結論が出る。が、それだけではない。そういうスペック的要素以上に、デジカメをカメラ然とさせた要素が、やっぱり確実にあるのだ、と俺は思った。
それまでのデジカメの多くは、どの機種にも一長一短がすげえ強くあって、使うにはある種の努力や思い込みが必要だった。例えば、「デジカメなら電池代だけでいくらでも画像を撮影できる」とか「撮ったその場で見られる」とか「コンピュータで手軽に画像を楽しめる」など、今思えば“比較的ムリのある理由”が提示されていた。生まれたばかりのデジカメには、ビデオにも負けず、インスタントカメラにも負けず、スキャナにも負けない“魅力”が必要だったというわけだ。でもまあ多くのデジカメファンは、それを“比較的ムリのある理由”だと知りながらも、「そうなんですよソレなんですよ」と全面的に肯定し(思い込み)、デジカメを楽しんだわけだ。もちろん俺もそうで、いろんなトコロで「デジカメはこんなにイカス」的なことを言ってきた。
が、今、「当時のデジカメはそんなにイカシてたか」と聞かれると、そーでもなかったよーな気がしなくもない。もちろん当時的には斬新だったという点でイカシてたが、カメラとして見ると「大したことなかったのかも~」と思いがちだ。
上記のような、デジカメへのやや過剰な“思い込み”を取り除いたら、あの頃(と言ってもつい最近ですが)のデジカメは、何らかの執着がなければ買うに至らない装置だったのかもしれない。
が、前述のC-1400XL、C-900 ZOOM、C-830Lなどを使ってみると、そのような屈折した物欲と購買動機などなくして、純粋にデジカメ購入を判断できるようになったのだと思える。つまり、つい最近までは、デジカメを撮影機材として使うという純粋な目的に加え、何かしら“自分を説得する理由”がないと、デジカメは買いにくいモノだったのだが、これら3機種をいじくっていたら、もはやそーゆー理由は必要なくなったのだなぁ、と思えたのだ。
それは、この3機種がヘボくてショボくてダメなのでは、全然なくて、むしろどれも平均点を大きく上回った製品であり、大したモンなのである。だが“デジカメならではの魅力”を感じなかった。それと同時に、俺はこれら3機種を“カメラ”として見ていた。ブツ撮り(雑誌掲載をふまえたハードウェア撮影)するならストロボ外付けしてC-1400XLかなぁ……旅行持ってってスナップ撮るならC-830Lだよなきっと……でもやっぱフツーに買うならC-900 ZOOMが便利っぽいなぁ、などと、まるで通販カタログ雑誌を漫然と眺めるように、それら3機種を吟味していたのであった。
で、悟った。俺にとっての“デジカメならではの魅力”は、もちろんデジタルな手順で画像を記録してくれる点にも多少あるのだが、それ以上にカメラらしからぬサイバーさと異端さと斬新さを持つ風変わりなデジタルハードウェアという点にあるのだ、と。この3機種の持つ性能や機能は、もはやフィルム式カメラと比較すべき領域に入っているゆえ、サイバー品マニアの俺としては魅力を感じられないのである。
これら3機種は、どの機種も非常に高画質な写真を提供してくれる。ヘタに女性の顔など接写すると、毛穴から化粧ミスまで全部再現されてしまう描写力ゆえ、嫌われる恐れがある。色も自然に出て、特に自然光下の撮影では「かつてのデジカメの画像の色ってナンだったのか!?」とメーカー不信に陥る可能性がある。操作性も良く、とりわけホールド感はどの機種も抜群だ。さすがコンパクトカメラを1,000万台以上売っちゃうカメラメーカーだと感心する。電池の持ちはまだまだ改良の余地があるような気がするが、それでも十分実用的だと思える。その他、カメラとして使うに十分カメラらしい、とても成熟しているデジカメだと思えた。ていうか、カメラだ。
オトナ的見地に立って言えば、これからデジカメ買おうと思っていて、その理由が「撮った写真をパソコンでどうこうしたいから」というなら、これら3機種は全然問題なく、それどころか超オススメ品だと言える。
が、マニア野郎の俺は、そんな“成熟デジカメ”にいまひとつおもしろみを感じられなかったのだ。
いや、何も、オリンパスの製品がつまらねえってんじゃなくて、つまり、オッケーなモノとして認められちゃって、普遍化しちゃって、当たり前になっちゃって、フツーだなあ、と。
例えば、MOなんかもそうだ。今じゃ単なる光磁気ディスクで、必要なら買うし不要なら買わないという、フツーのストレージだ。が、MO黎明期というか、登場したばかりで混沌としていた頃はモノとしてもっとおもしろかった。すげ~MO、あんな小さいディスクに128MBなんですよ光なんですよ磁気もなんですよ光ってるんですよサイバーなんですよ~とりあえずカッコ良いので買おう!! みたいな。
CD-ROMドライブなんかもそうだった。ええっ!! 8倍速!? そそそ、そんな!! うっ、速ぇ!! たまらん!! 買うぜ買うぜ買うゼ!! でもCD-ROMのソフト2~3枚しか持ってません。みたいな。
CPUなんかもっとそうだった。ななな、何ぃ!? i486の66MHzだと!? ししし、信じられん!! 33MHzの倍!! その差33MHz!! 夢のようなパフォーマンスだ!! みたいな。
ところが、しばらくすると、MOは230MBだ640MBだでもうフツーに誰もが使えるあったり前のストレージになった。光り輝くMOディスクなんか誰も有り難がらない。それどころか「遅い」とか言われる始末。CD-ROMドライブは16倍速だぁ24倍速だぁでとりあえずどれも速いって感じになり、読み出し速度の高さはもはや魅力の範疇では語られない。CPUなんかPentiumの90MHzが120MHzになったと思ったら166MHzで……で近未来には単位がGHzになるらしい。俺などはPentium 166MHzあたりからクロック周波数の差が100MHzあっても別にアレコレ思わなくなってしまった。
思うに、ことデジタルデバイスに関しては、ソレが成熟すればするほど、おもしろくなくなるのでは、と。過渡期だからおもしろかったのかも、と。その成長や成熟の過程を体感できているうちがおもしろさのピークなのかも、と。
ていうかコレってやっぱマニアの考え方ですか? あっ、もしかしたら、冒頭で俺がオリンパスの往年の名機OMシリーズカメラがどうのってゴネてたのは、OMシリーズが最新のハイテクカメラにまで進化する過程を見たいからなのかもしれない。そしてきっと、ハイテクカメラに進化しきったらしきったで、やはり「つまらない」とか抜かしていたのかもしれない。ん~、マニアって身勝手ですな。
□オリンパスC-900 ZOOM/C-830L製品情報
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/c900z.html
□オリンパスC-1400XL製品情報
http://www.olympus.co.jp/LineUp/Digicamera/c1400xl.html
[Text by スタパ齋藤]