スタパ齋藤

すげえイカス!! シチズンDataSlim
(と蘇った東芝TECRA 780DVD)



■ すげえイカス!!

Dataslim
シチズン DataSlim 標準価格24,800円。
REXを日本語化したもの。外観デザインは一新され、日本語版ではデータ入力もサポートされた
 俺がその死ぬほど魅力的なデバイスを見たのは、PC Watch編集部関係者と北海かき揚げ丼を食って食って食いまくっている時だった。
「あ、こないだ言ってたPCカードのあれってコレですよ」
残量0となった北海かき揚げ丼のドンブリ越しに、その女性編集者は黒いPCカードを渡してよこした。

 そのPCカードの名はREX。Type2のPCMCIAカードで、カード表面にはマッチ箱大のモノクロ液晶ディスプレイと、数個のボタンがある。それだけのデバイスだった。編集者の説明によると、REXをノートパソコンのPCMCIAカードスロットに挿し、専用PIMでパソコンとREXのデータのシンクロナイズを行なうと、REX上で住所録やメモやスケジュール等のデータを見ることができるそうな。

「適当にボタン押してみてくださいよ、英語しか出ませんけど」
 ふぅ~ん、と思って適当にボタンを押してみると、その小さなモノクロ液晶ディスプレイ上に、アドレス帳データが、カレンダーが、世界時計が、メモパッドが、精細かつ高密度に表示されまくった。

 くわッ!! こここ、これはイカス!! すげえイカス!! たまらん!! 欲しい!! 欲し過ぎる!! 欲しくて欲しくて欲しくて死ぬゼ~ッ!! そうだ今コイツを握りしめてダッシュしてクルマでトンズラすれば、コイツは俺のモノだ!! PC Watchも仕事も関係ねえ!! ダッシュかましてREX奪取だ~ッ!!
 と、約32msほど危ない考えを巡らせていたら、俺の顔からいつの間にか犯罪の色がにじみ出ていたのか、REXを貸してくれた女性編集者は不安そうな面もちになっていた。つまり敵は怯んでいる。そうだ今だ、この北海かき揚げ丼摂取に用いたチョップスティックすなわち箸でこの編集者の目を突けば、REXは俺のモノ!! 血だらけになった目を押さえて助けを求める編集者を後ろに、悠々と逃走できる!! とか考えていたらその編集者が泣きそうになっていたので渋々とREXを返した俺だった。

 とにかくREXは、久々にマニア心を揺さぶるデバイスだった。その欲しさ度は、IBMのChipCardを上回るものだ。でも残念なのはそれが英語しか扱えないという点。'97年に米国で発売されたREXは、その後単体でのデータ入力も可能なREX-Proが発売されたりして、アメリカの人々には大人気らしいのだが、まだ日本語化され……えっ!? 何っ!! なんだとコラ!! なんつったんだッ!! もう一度言ってみろ何て言ったんだオラ!! と詰め寄る俺の迫力から“死”を予感した編集者は、こう供述した。
「あのあのあの、れれれ、REXの、にに、に、日本語版が、でっでっ出たんですぅ」

 キャーッすごいステキ本当っスか本当っスね絶対買う買う欲しい買いたい買わせてくれ~!! というわけで、日本語版REXことDataSlimをゲット。早速使ってみたのでレポートしたい。



■ DataSlim

Dataslim
電池はCR2025リチウム2個を使用
Dataslim
REX(上)とDataSlim。DataSlimでは最近の銀パソに合わせてか、ボディ色にはシルバーが採用された
 DataSlimは、日本語が使える、Type2のPCカード型デバイスだ。85×54×5mmで33gのPCカードに、240×120ドットのモノクロ液晶ディスプレイが埋め込まれている。DataSlim単体でも使えて、PIM機能としてはカレンダー、アドレス帳、ToDoリスト(備忘録)、メモ帳、世界時計などがある。ユーザーメモリは512KB。CR2025リチウム電池2個で(通常使用で約4カ月)作動する。

 DataSlim単体でも各種データを入力できるが、基本的にはノートパソコンのPCカードスロットなどに挿し、付属のソフトウェアを使って、パソコンからデータ転送ないしパソコンとデータシンクロナイズして使う。なお、デスクトップマシンなどPCカードスロットのないマシンで使うためには、別売のシリアル接続ドッキングステーションが必要になる。また、付属のソフトウェアはWindows 95/98版のみである。
 DataSlim、要は、パソコン上のデータをカードサイズのデバイスに入れて持ち歩き、いつでもどこでも閲覧しようというコンセプトの製品だ。

 で、まずは専用PIMとシンクロナイズソフトと併用し、とにかくDataSlimにデータを転送してみた。専用PIMのTrueSyncデスクトップには、カレンダー、世界時計、アドレス帳、メモ帳の機能がある。例えばカレンダーにはスケジュールなどを入力し、アドレス帳には文字通り住所氏名電話番号メールアドレスなどの名刺的データを入力し、メモ帳にはちょっとしたテキストデータや覚え書きなどを入力しておく。で、TrueSyncというソフト(TrueSyncデスクトップ上からも使えるし、常駐させておいてタスクバー上のアイコンをクリックしても使える)を使い、TrueSyncデスクトップ上のデータをDataSlimに転送する。もちろん、設定を変えれば双方のデータをシンクロさせたり、DataSlim側のデータをTrueSyncデスクトップに読み込んだりもできる。また、Outlook 97/98やLotus Organizer97などのデータをTrueSyncデスクトップに読み込んで利用するのも簡単なので、比較的いとも簡単にDataSlimを利用しはじめられる。

 データ転送完了。さっそく閲覧。まず、スケジュール機能だが、これは今時のPDAっぽく、スケジュールを1日表示、1週間表示、月間表示で素早く確認できる。また、予定には時間帯も設定でき、これをグラフィカルに表示させることもできる。例えば、この小さなディスプレイを見て「本日は細かい予定が多量にあってかったりいなぁ」とか「今日は予定がたった1本だけどすげえ長時間にわたる予定でガッカリ」などとつぶやけるわけだ。まあ、ザウルスなどのPDAと比べれば、その機能は貧弱だが、簡単なスケジュール確認用なら十分役立ってくれるだろう。

 次にアドレス機能。アドレス関連データの表示は、TrueSyncデスクトップの設定や本体の表示設定などでいろいろ変えられるのだが、思ったより必要なデータをしっかり表示してくれる。例えば、名前と電話番号と携帯電話番号とメールアドレスの複合表示にしたり、住所だけにしたり、設定次第でけっこう融通が利く感じだ。また、DataSlimの表示は液晶の短辺を左右にした横表示なのだが、ここにけっこうな量のデータが表示できる。全角文字なら18文字×6行前後の表示が可能だ。アドレスデータを見るくらいなら十分役に立つ液晶だとわかった。

 それから、ToDoは、まあ単なるToDoだ。ザウルスのようにカレンダーと連動したりはしない、非常にシンプルなToDoだ。

 そして、けっこうイイ感じなのがメモ帳。前述のように、18×6文字程度の表示ができるので、簡単なメモをちょこちょこ入れておくと便利なのだが、俺にとってはそれよりも、この小さい液晶が細かい文字でビッシリ満たされるメモ帳っつーのはヒジョーにサイバーでよろしいと思うのであった。ただそれだけ。でも参考のために付け加えておくと、DataSlimを電子メモとして考えないほうがいい。メモ帳機能は確かにメモ帳になるのだが、DataSlim本体だけでメモろうとすると入力がけっこう大変だし、既存のメモに文字を加える編集しかできない。つまりワープロみたいには使えないのだ。DOSのリダイレクション機能で文書を書くみたいな感覚である。あるいはCATコマンドか。まあとにかく、見るのが主体のメモ機能だと考えた方がいい。



■ 割り切った性能のDataSlim

Dataslim
電話番号などのデータがちょっと見られればいい、ザウルスやPalm IIIほどの機能はいらない、というユーザーには有り難いサイズ
Dataslim
合成皮革のカバーも付属しており、名刺と定期が入る
 思うにDataSlimは、非常に尖ったテイストのハードウェアだ。サイズや機能がシンプルというだけでなく、機能の切り捨て方が大胆だ。
 例えば、パソコン内のデータを外出時にちょっと閲覧できればいい、という人にとっては軽快だしコンパクトだしで、非常に便利だ。が、外でデータに加工的処理を加えたいと思った瞬間、まるで不便なモノになる。なぜなら、まず、ボタンが6コしかなくて、液晶はタッチしても歪むだけの表示専用液晶。つまり、DataSlimに何かデータを入力しようと思ったら、かなり遠回りな感じになり、面倒なのである。一方で、パソコンとのシンクロナイズは、下手なPDAなんかよりもずっとよくできていたりする。要するにDataSlimは、あくまでも“データを持ち運んで、見るための、カード”なのだ。

 DataSlimをいじくっていて、一瞬気を抜くと「そんなに小さくなくてもいいからペン入力とかができる方がいいなあ」などと思ってしまうことがある。が、そう思ってはダメなのである。この小ささで、非常に簡素な操作しかできない点が重要なのだ。
 ボタンが6個しかないから、操作が非常に簡単なのだ。必要最小限の機能に抑えてあるから、機能の迷路に入り込むことがないのだ。データが見られればいいという割り切りがあるから、このサイズながらも実用的なデータブラウザになっているのである。このカタチだからホントに片手で操作できちゃうのである。

 DataSlimについて、この“割り切り”が偉いと思う。あれもこれもと機能を加え、可能性に余裕をもたせるがため重装備になっていく情報機器は、どんどんわかりやすさや使いやすさから離れていく傾向にあると思う。時には絶妙なインターフェースや作り込みで、モンスター級の高機能装置だけど簡単に扱える、なんてのもあるが、多くの情報機器には、高機能・多機能=難解、という図式を当てはめられる。

 コレだけで全部やれなくてもいいという、いわばユーティリティ的な作りがしてあるからこそ、DataSlimには価値があるのだ。もっとやりたい人はPalmPilotとかを買えばいいんだし、さらにやりたい人にはHP200LXとかWindows CEマシンとかザウルスがあるし、それでも満足しないならサブノートマシンがある。が、サブノートほどもザウルスほどもPalmPilotほども機能が要らないけど、パソコン内のデータをそのままパッと持ち歩いて見たいんだよなぁ、という人のためのデバイスがなかった。で、そんな人にマッチするのが、このDataSlimだと思うのだ。

 いやマジでけっこう需要あると思うんですよDataSlim。DataSlimに住所録だけ入れて、あとはサイフだけ持って出かけたい人ってけっこう多いと思うのだ。ジーパンの尻ポケットに現金忍ばせて、シャツの胸ポケットにDataSlim、それで遊びに出かける。そんな、実にスリムで軽快な使い方ができる。



■ 蘇ったTECRA 780DVD

TECRA 780DVD
東芝のBIOSを開発して送るという強烈なサポートにより蘇ったTECRA 780DVD
 ところで、このところ毎週のようにお伝えしている東芝のTECRA 780DVD。コレは、DataSlimのように胸のポケットに入れて出歩くのがまず無理な重量級ハイエンドノートパソコンなのだが、まあそれはそれでよく、肝心なのは、再びこのマシンが絶好調になったということだ。

 話の流れは、東芝のハイエンドノートTECRA780DVD購入 → 喜んでむせび泣く俺 → Windows 98入れちゃうゾ!! → 入れた!! → 絶不調!! → Windows 95に戻したヨ→比較的好調、というもの。具体的には、Windows 95プリインストールマシンであるTECRA 780DVDに、Windows 98(とWindows 98対応BIOSやドライバ類)を入れたら、レジューム(スタンバイ)機能がうまく作動しなくなったのである。でも、Windows 95に戻したらレジューム(スタンバイ)の調子がわりと良くなったのである。

 しかし俺はマニア!! レジュームの調子が“わりと”良くなったんじゃダメだ!! 納得できねえ!! 元通り“完璧に”良くならなきゃダメだーッ!!

 というわけで、問題点決め撃ち!! Windows 98入れてヘボまって、Windows 95に戻して完璧に調子が戻らないということは、これはぜってぇBIOSのせいだ!! Windows 95に戻す作業は付属のリカバリCDを使ったゆえ、購入時と現在の違いはBIOSのみだからだ!! Windows 98対応BIOSってのがすっげー怪しい!! だったら東芝さんに旧型BIOSもらうゼーッ!! で、電話した。

「あのぉ、古いBIOS欲しいんですけどムリですかダメですか!?」
「んむむ~。古いBIOSはご提供してないんですけど」
「かくかくしかじかでこんなヒドイ目に遭ってるので、絶対にどうしてもTECRA 780DVDを古いBIOSに戻したいんですけどぉ」
「んむむむ~。古いBIOSに戻すのはムツカシイですね~」
「でも、かくかくしかじかでこんな大変な目に遭って試行錯誤しまくりなので、犯人は新しいBIOSだと思うんですよぉ」
「んむむむむ~。そういう話は初めてですが、とにかく古いBIOSにするのはムツカシイわけですけど、でも、原因究明しますからしばらく時間をください」

 要するに、古いBIOSはくれないとさ、東芝さん。くわッ!! もはや手詰まり!! ていうかこーゆー時はインターネット探すに限るんだよね~、とネット検索モードに入って数十分、米国の東芝サイトのディープな場所で、TECRA780DVD用の古い(と思われる)BIOS発見!! ワールドモデルならではの恩恵!! ちなみに調子悪いBIOSはバージョン7.40で、その古いと思われるBIOSはバージョン6.20。7.40 → 6.20、などとゆー、思い切ったBIOSダウンデートをするのは少々怖いが、試しにやってみた!!

 そしたら!! 完璧に調子がモトに戻った!! すげえ!! やった!! ブラボー!! ビンゴーっ!!
 ふぅ~ん、BIOSってアップデートすればイイってモンじゃないんですね。なるほどね~。そうなんですかぁ~。

 ところで俺としてはなん となくWindows 95のパワーマネージメントとBIOSの省電力設定を分離していきたい!! BIOSだけで純粋に省電力管理をやっていきたい!! てなわけでパワーマネージメントの“Windowsでコンピュータの電源管理をする”のチェックを外してみた。そしたら、おおっ、何とまあレジュームが速くなったことか!! 超速攻でレジュームに入り、超速攻でレジュームから復帰する!! まあ、ノートパソコンを持ち歩いて使う人には、パワーマネージメントでやるような細かな省電力設定が必要だと思うが、デスクトップだけでノートを使う俺にとっては、電源の管理はBIOSだけでやった方が速攻だし安心だと思う。

 さあこれで万全、TECRA 780DVDが蘇ったぜ!! と思っていたら、東芝さんからメールが。例の問題の原因がわかりまして現在新BIOSを作ってますから待っててネ、とのこと。何だかやっぱりBIOSになんかあったらしい。ふっ、でも俺のTECRA 780DVDは完璧だゼ!! と1日過ごしたらまた東芝さんからメールが。ななな、何と、新しいBIOSを送付してくれた!! Windows 95で使ってもWindows 98で使っても、もう絶対レジューム(スタンバイ)の調子が悪くならないという最新BIOS(バージョン7.4B)を、開発して、送って、くれたのである!!

 まさか文句言っただけでBIOS開発するとは思わなかった。ひとりのマニアが実用上差し障りのない小さな問題について騒いだからって、ふつー、BIOS書き直すか!? でもヒッジョーに嬉しい!! こんな凄まじいサポートを受けたのは初めてだ!! しかも、Windows 98とWindows 95とBIOSと省電力管理のことに関する詳細な説明のメールまでもらってしまった!! 東芝!! マジメ!!

 きっとフツーのメーカーだったら「Windows 98にしたらレジュームの調子が悪いんですけどぉ」とか言うと、「そうですかぁ、弊社としてはそういうトラブルは確認しておりませぇん、なのでぇ、Windows 95で使ってくださぁい」とかあしらわれてしまうだろう。いやホントに。実際、すげえ細かい問題指摘してあしらわれたことは何度もある。

 ともあれ、その最新BIOSを入れてみた。Windows 98も入れてみた。そしたら、もー完璧!! 最強に強まったTECRA 780DVDがパワーアップして大復活したのである!! くぅ~っ、痛快!! たまらん!! やっぱこれからは東芝でしょ~、マルチメディアにオンデマンドでしょ~、ひか~る~光るとお~しば~、さて来週のサザエさんは!?

 全然関係ないが、俺は昔、東芝の府中工場で半導体のモールディングのバイトをしたことがあった。それから、東芝の青梅工場でICの基盤付けのバイトをしたこともあった。そんなことまでしみじみ思い出されてしまう、TECRA 780DVD大復活の顛末であった。

□シチズン「DataSlim」ホームページ
http://dataslim.angel.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.citizen.co.jp/release/98/980917ds.htm

□東芝TECRA 780DVD製品情報
http://www2.toshiba.co.jp/tdirect/products/index.htm

[Text by スタパ齋藤]


【PC Watchホームページ】


ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp