【コラム】


スタパ齋藤

CrossPad? なんスかそりゃ!?



■やっぱり紙は便利

今回のお題は米Crossと米IBMが共同開発したCrossPad。使ってみるとかなり斬新な入力機器なんである

 俺の場合、やれコンピュータは便利だとかデジタル機器はこれからのデフォルト的メディアだとかイロイロ言っていて、しかも現在机上から紙を極力なくす“紙メディア撲滅運動”を実施中で紙をボコボコに殴ってガコガコに蹴ってクシャクシャにしてポイしたりしているものの、やはりまだ紙とは完全に縁を切れていない。

 アッもしもし齋藤さんですか次回の原稿の文字数上がりましたのでお伝えします、とか急な電話が入った時にはこちらも急な気分になって紙にメモを取る。これ一台あればあなたの腹筋は見違えるように締まって健康も気分も良くなる腹筋器具がテレビで紹介された場合にも、やはり速攻で紙に注文専用電話番号をメモる。さあ久しぶりに家の中の弱まった箇所及び使いにくい箇所をグレードアップしようとホームセンターに出向く前には、やっぱり紙に必要なモノを書き連ねて買い物リストを作る。打ち合わせや取材に行けば、猛スピードで口から発せられる情報を記録すべくPDAを取り出しはするものの、約32文字書いたところで口からの情報出力速度とPDAへの情報入力速度の凄まじい差を思い知り、敢えなく紙にメモを取り始める。

 さすがはメディア中最も長い歴史を誇る紙。使いやすい!! でも入力と出力と保存時の安心感において優れているだけで、ていうかソコが優れていればイイのだが、やはりコンピュータ野郎の俺としては、メディア上の情報をもっとイロイロと流用したいのである。



■スキャナ、デジカメ、電子ファイリング機器

 紙の便利さに惹かれつつも、コンピュータパワーというものをアタマから信じ込んでいる俺は、いつもこの紙とコンピュータをどうにか融合させられないかと考えている。考えているうえにイロイロと試行錯誤してもいる。

 その試行錯誤の第一弾は、全情報MO化作戦であった。これは以前にもお話ししたが、メモやプレスリリースやチラシや雑誌などの必要な部分をスキャナでコンピュータに読み込み、データベースソフトや画像ブラウザなどを駆使して検索性を高め、そのデータをMOに保存し、紙を捨てちまうという大作戦である。が、この作戦は非常に疲れるので、これまで数回挑戦したが、たいていはMO1枚分のデータを整理する前に酒かっ食らって寝て翌朝には完全に作戦を中止していた。

 第二弾は、全情報画像化大作戦。これは第一弾の作戦に、さらにデジカメとOCRソフトとHTMLデータ(Webページ)を動員した、高度でリーズナブルでナイスでグレートな作戦だった。とりあえずおおよそ見られればいいだけの情報は、スキャナやデジカメで画像ファイルにして保存。重要と思われる文字情報はスキャンしてOCRソフトでテキストファイル化して保存。Webページは基本的にテキストファイルなので、そのままHTMLファイルで保存。データ検索用に画像ファイル閲覧ソフトとテキストファイルの中身を総検索してくれるソフトも用意した。
 この作戦を発動してから数週間は、かなり本気で紙レス環境の構築を目指して日夜努力したのだが、結局のところ、分類に手間がかかり過ぎるようになって諦めてしまった。

 情報というのは、分類しようと思えばいくらでも分類できるモノで、例えば、仕事、個人、趣味、汎用、くらいに分類していれば、まあ手間はそれほどかからない。が、分類していると欲が出て、それぞれのカテゴリをさらに細かく分類したくなる。そのうち、カテゴリが増えてきて、カテゴリ群を分類するための親カテゴリが必要になったり、最小のカテゴリの中にある情報が1コだけになったりして、最初から分類なんかしなきゃよかったと後悔する俺の性格なのであった。

 第三弾は、コンパクトなモノクロイメージスキャナや、ソニーのDATA EATAなどの、いわゆるA4の紙の上に書かれた文字をスキャンするのが主目的のスキャナを使った紙一掃作戦。これは積極的に計画中だったが、考えれば考えるほど不毛な感じがしたので、実行には移さなかった。というのは、俺の手元にあっただいたいの紙情報というのは、パンフレットとかプレスリリースとかチラシとかの印刷物なのだ。つまりオリジナルがどっかに存在するコピー。地球規模のマクロ的見地に立って考えれば、コピーされたモンを有り難がって手元に残しておくのは、いいアイデアではない。必要な時にオリジナルを持ってる人ないしオリジナルのコピーを持ってる人から情報をコピーさせてもらえばいい。

 さらに、クールになって考えると、パンフもリリースもチラシも、そこまで気合いを入れて保管するほどの情報ではないように感じられてきた。いや、恐らくもう二度と開くことがないのかもしれない。が、一方では“万が一必要になるかも”とか考えてもいる。で、やはりオトナっつーモンはこの“万が一”の方を重要視して、ポイッと捨てちゃったりしないのである。ところが俺はオトナの範疇から外され気味なオトナなので、万が一というのを1万日に1日あるかもしんない程度の頻度の必要度だと思うっていうか要するに27年間くらい生きて1日困る程度のことならどーでもいいやと思うことにして、第四弾の紙撲滅作戦を実行に移すことにした。



■集めるな!! 捨てろ!!

 第四弾の作戦は凄まじいのであった。これは2年くらい前に発動し、現在でも比較的順調に進めている作戦だ。で、その内容は、俺の周囲にある紙を片っ端から捨てちゃうんだゼ~ッ!!

 くわッ!! 雑誌の山!! もう読んだから不要!! 資源ゴミの日に電柱の脇!! うォりャッ!! パンフとチラシ!! 不要不要!! 紙ゴミ!! ちぇすとォーッ!! 本、本、本!! 一部を除いて全捨て!! ヒモでくくってチリ紙交換だッ!! 押忍!!

 というわけで、俺は毎週毎週ずいぶんな量の紙ゴミを出す反エコ野郎になったわけだが、おかげで室内は非常にスッキリ!! メモ用紙と、これから書く原稿の資料と、本日の電波新聞と、請求書と領収書を除けば、ほとんど紙メディアはない。また、ためにためた雑誌やカタログやリリースや本やマニュアルを処分したので、沈みかけていた畳も何とか元に戻っているのであった。

 しかし、この極端とまで言える紙メディア撲滅作戦を推し進めても、まだ紙は残り、また紙が必要な時が多い。最初に書いたメモ用の紙が必要なのだ。
 思うに、紙に書いたメモというのは、かなり重要度の高い情報では、と。まあ、書き残しておかないと後で困っちゃう情報だから、わざわざ書くのだ。個人にとっては本や雑誌やリリースなんかよりもよっぽど大切な情報が記録されていることが多いのだ、メモ用紙には。

 で、なんか紙に代わる、紙のように便利なデバイスはないかなぁと探し続けているわけだが、イマイチ決定打がない。最後に便利だと思ったのは、ザウルスの手書きメモあたり。紙っぽいフィーリングでペンでササッと書ける手書きメモは、かなり便利で、また意識しないで電子的に保存できる点がベリグーだ。だが、やはり書ける面が狭い。あーもっと書ける面がデカければなぁと一瞬思うが、書ける面がデカいと、デカいPDAになってしまうから、まあこれは手書きメモ搭載PDAのジレンマなのである。



■CrossPad? なんスかそりゃ!?

CrossPadのパッケージ。今回はT-ZONEで52,800円で購入。米国では3月に出荷開始されたが、人気のため品薄気味だという。米国市場価格は399ドル。
(T-ZONEでは現在在庫切れ)

 俺が、紙メディアが好きだけど嫌いでPDAの手書きメモ機能が好きだけど使えねえと思っていることを十分心得ている本連載担当編集者の工藤さんが、CrossPadかなりイイんでちょっと使ってみておもしろかったらWatchに書いてちょんまげ~というので、使ってみたらムムムムッという感じだったので、紹介したい。

 CrossPad(米国価格399ドル)は、一見、A4のレポート用紙なんかを乗せて使う、いわゆるクリップボードのような板。サッカー部のマネージャーがスコアや選手の状態をチェックする時や、ショップの店員が在庫チェックをする時なんかに使っているようなアレっぽいモノだ。重さは900gもある(が、後述の機能を考えればまあ納得できる重さかも)。高級ボールペンでおなじみの米CrossとIBMが共同開発した製品なので、CrossPadというらしい。

 で、ユーザーはこの板の上に好みの紙を置き、付属(専用)のCross製ボールペンでなんか書く。紙は何でもいい(のだが、このデバイスの機能上A4またはリーガルサイズの用紙が好ましい)。書く内容も何でもいい。ここまでは、一般のクリップボードと何ら変わりがない。

 さあここからがお立ち会い。ななな何と、CrossPad上の紙に書いた内容が、全部そのままCrossPad内にデジタルデータとして記憶されるのである。さらに、このデータは手持ちのWindowsマシンにビシビシ転送できちまうのであった。要するに、紙メディア上になんか書くと、同時にその手書き情報がデジタル化されるのだ。単純ながらも尖った発想!! 情報の記述と情報のデジタル化が同時にできるとは、ちょっと他にないスマートさ。

 これがあれば、紙に書くというプロセスを経て生成された紙メディア情報すなわちメモ類は、すべてコンピュータ上で扱える。しかもほとんど苦労せずに!! むむ~、考えれば考えるほどニクい製品である。

紙の上に書いたものが、そのままパソコンにベクトルデータとして転送できる。ベクトルなのでパソコンに転送してからInk Managerで拡大表示はもちろんできるし、英文なら文字認識も可能。この例のように、Ink Managerのデータをほかのお絵かきソフトとやりとりする場合はクリップボード経由となる。ここではWebページに貼るために、クリップボード経由でPhotoShopファイルにペーストして、GIFファイルにした


■CrossPadの機能など

 CrossPadは、基本的には、手書きメモを取ると同時にそれをデジタルデータ化するデバイスだ。基本的にそれだけで、他のことはあんまりできないデバイスなのだが、手書きメモのデータ化に関わる機能は十二分良くできている。

 例えばCrossPad下部にあるいくつかの(ペンタッチ用)ボタンと液晶ディスプレイ。液晶ディスプレイには、ユーザーが現在何ページ目の紙に書き込んでいるかとか、他の操作時のメッセージが表示される。ていうか基本的に今何ページ目なのかくらいしか表示されないのだ。それから、ボタンは右からYESボタン(俺が勝手に命名)、NOボタン(わしが勝手に命名)、ページ送りボタン(拙者が勝手に命名)、ページ戻しボタン(まろが勝手に命名)、メニューボタン(それがしが勝手に命名)、キーワード設定ボタン(小生が勝手に命名)の6つ。各ボタンはただそれだけの単機能なボタンである。

ボタンは右からそれぞれ、決定、キャンセル、ページ送り、ページ戻し、メニュー(PCへの転送、ブックマークの挿入、メモリのクリア、メモリの残量表示ほか)、キーワード設定の機能を持つ。メニューボタンは押すたびにメニューが切り替わるので、希望の処理が表示されたところで決定ボタンを押す。

 使い方は簡単で、CrossPadの上に紙を固定(一般のA4レポートパッドが好ましい)し、電源を入れ、付属のペンで書く。これだけで、紙の上には何かしらの情報が書き記され(当たり前だ)、さらにCrossPad内部に紙の上にあるのとまったく同じ情報がベクトルデータで記憶される。で、いっぱい書いちゃって次のページをめくって使う時は、同時にCrossPadのページ送りボタンを押す(ペン先でタッチする)。ユーザーが2ページ目に書いた情報は、(さっきページ送りボタンを押したのでCrossPad内に生成された)電子的2ページ目空間に記憶されるようになる。ちなみに、1ページ前の紙になんか書き足したい時は、CrossPadのページ戻しボタンにタッチしてから書けば、電子的1ページ前空間に情報が書き足される。

 次に、CrossPadにどのくらいのページ数のデータを記憶できるか。CrossPadは1MBのフラッシュメモリを内蔵していて、手書きメモ(ベクトルデータ)はそこに蓄積される。CrossPadでは、1ページの記憶に必要な容量はおよそ20KBとなっている。なので、約50ページ分の手書きメモを記憶できることになる。50ページ書きまくっちゃう前に、CrossPadをコンピュータにつなげてデータを転送すればいいので、かなり強まったメモ野郎の人でも安心して使えるだろう。また、CrossPad本体は単4電池4本を電源として必要とするが、コレがまた長く持って、何と3~4カ月は電池交換不要だそうだ。付属のペンの方には電池1本が入っていて半年から1年もつらしい。ただしこのペン用電池は、AAAAと書いてあるものの、単5電池ではない。日本国内では入手困難な特殊なもの(ただし独自規格ではないらしい)とのことで、実際に購入に踏み切るにはここはかなり気になる点ではある。

台というかパッドの方は、単4電池4本で駆動する。消費電力は少なく、数カ月は持つという 気になるのは、ペンに入っている電池が特殊なものであること。AAAAと書いてあるが、通常の単5電池ではないのはご覧の通り。ここでは単4の金パナと並べて置いているが、単4より長さも直径も小さい。国内では少なくとも現在は、非常に手に入れにくいようだ パッドの右側面には、付属ペン用のリフィルインク5個入りマガジンが収納されている

 コンピュータへのデータ転送は簡単だ。まず、付属CDからIBM Ink Manager一式(Windows 95用)をコンピュータにインストール。続けてCrossPad付属のシリアルケーブルで、CrossPadとコンピュータを接続。で、IBM Ink Managerを起動したら、CrossPadの6つのボタンの左から2番目、メニューボタンを押すと液晶に「Upload Ink?」と表示されるので、YESボタンを押せば、スコスコっとデータがコンピュータへと転送される。1ページ約20KBのデータなので、転送時間もほんの一瞬といった感じだ。もちろん、コンピュータの画面上には、CrossPadの上に乗ってる紙の上に書かれたものと同様のイメージが現れる。

 ペンの中には小さなRF(Radio frequency)トランスミッターが内蔵されており、このトランスミッターが書いている間、自動的にパッドに軌跡データを送っている、と製品情報ページには書いてある。ともかく紙に書いたものと転送後のイメージにズレがほとんどない

 また、CrossPadには簡単な文字認識機能があり、それはページごとにキーワードを設定して検索性を高めるための機能なのだが、残念ながら英語専用。日本語を認識させようとすると斬新な英語文字列になってしまうので、まあ愉快と言えば愉快だがマニアックな愉快さであるとかゆーことはさておき、文字認識のさせ方もけっこうイイ感じ。文字認識は、CrossPadのボタンのいちばん左側のボタンを押せば始まる。どれをキーワードとして設定するかを聞いてくるので、紙の上に書かれた好きな文字列をペンで囲む。それだけ。多量にメモる人にとっては、英語だけとはいえ、けっこう有り難い機能だ。

 ちなみに、CrossPadがどうやってペンで書かれた内容をベクトルデータ化しているかというと、何でもペン先から謎の電波が出ていて、その電波をCrossPadがキャッチしてデータに置き換えているらしい。詳しいことはわからないが、紙の上のイメージとPC画面に現われるイメージにはほとんどズレというのが発見できないので、なんつーかすげー精度が高い座標認識技術のようである。脱帽。



■ノート型コンピュータに搭載すれ~!!

 CrossPadみたいなデバイスをいじっていると、何と言うか、今あるコンピュータへのデータ入力方法の制限が浮き上がるようで、コンピュータ野郎としては妙に不愉快だ。が、コンピュータユーザーとしてみると、どうしてこーゆー装置をサブノートマシンとかにくっつけないのかーッ、とやはり不愉快になる。

 やはり何も考えずに紙になんか書くのは楽ちんだ。と同時にソレがデジタルデータとなるなんて、すこぶる楽ちんだ。
 何かアイデアを練ったり、複雑なプロセスを理解しようとしたり、あるいは何となく書いたり描いたりするには、やはりどう考えても手と紙とペンを使うのがいいのだ、という、コンピュータ野郎としてもコンピュータユーザーとしても素直に頷き難い事実を、この単機能だけどすげえ便利なデバイスから思い知らされる。

 だから、ぜひこのデバイスをノート型コンピュータとかの液晶の裏側とか液晶の表面でもいいんですけどアッだめか紙があって画面見えなくなっちゃうからってことで液晶の裏側っつーことですなっていうか、とにかくくっつけていただきたいと思う。ペンで書き込めて紙に残せると同時にコンピュータ内に入っちゃってデータベース化できちゃう筆記具なんざぁアンタ、これって最強でしょ、みたいな。あっでもくっつけちゃうとCrossPadがもっと重くなっちゃうのか~でも融合してるとさらに便利だよな~でもケーブル1本で融合できるからこのままでもいいのか~それよりもコレとOCRソフトを融合させた日本語版とか出してほしいよな~、などと、このアナログチックなデジタルデバイスについて、考えを巡らせてしまう俺であった。

 ともあれこのCrossPad、米国では去年の秋のCOMDEXで大変話題になったデバイスらしいが、なんかこのクイックさと便利さを考えると、日本でもこれから話題になりそう(というか売れそう)な一品である。

□米CrossのCross Pen Computing Groupホームページ(英文)
http://www.cross-pcg.com/crosspcg.html
□CrossPad製品情報(英文)
http://www.cross-pcg.com/products/crosspad/pad.html
□米IBMサイトの「CrossPad」ニュースリリース(英文)
http://www.software.ibm.com/is/voicetype/us_cross_pr.html

[Text by スタパ齋藤]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp