後藤弘茂のWeekly海外ニュース
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DECのAlpha開発チームが対Intel陣営に



●AMDの株価がK7効果で上昇

 AMDの株価が上昇している。「Strong Demand for New K7 Chip Lifts Shares of Advanced Micro」(The Wall Street Journal,10/31、有料サイト、http://www.wsj.com/から検索)によると、その理由は、来年後半に出荷予定の次世代プロセッサ「K7」への評価と関心が高まっているからだという。ウォールストリートの動きは、PC業界から見ると不可解なことが多いが、これもそのひとつ。K7のアーキテクチャは確かに興味深いが、まだ現段階では成功するかどうかは何とも言えない。つまり、早すぎると感じられるが、ウォールストリートでは確実になってから投資するのでは遅すぎるというわけ。AMDにとっては朗報だが、期待を持続させて行くというのも、なかなか難しいところだ。


●旧DECからAlphaとStrongARMの開発チームが流出

 そのAMDに、Compaq Computerに買収された旧DECの有力な人材が流入しているという記事が「Compaq, Intel Fight Digital Brain Drain Alpha, StrongArm Technology May Suffer Under New Ownership」(Microprocessor Report,10/26)だ。それによると、Alphaチームは、ここ数年ですっかりキーメンバーが流出してしまったという。たとえば、Alpha 21064と21264のアーキテクトのひとり、Dirk Meyer氏は、今はAMDのK7のチーフアーキテクト。実際、Microprocessor Forumでは、K7の解説をこの人物が行なっている。また、AMDの次々世代プロセッサ「K8」のデザインを担当するJim Keller氏も、Alphaの主要メンバーだったそうだ。もっとも、Alphaチーム流出の恩恵を受けているのはAMDだけでなく、Sun Microsystemsも、UltraSparc-5のアーキテクトのひとりとして、AlphaチームのDan Leibholz氏を得ているという。

 また、DECのもうひとつのプロセッサファミリ「StrongARM」の開発チームは、Intelに買収されたが、こちらもリードデザイナは誰も残らなかったという。旧DECの第2世代StrongARMチーム(オースチンチーム)は、リーダーのRich Witek氏を筆頭にごっそり抜けてしまったため、Intelは自社のi960のチームで第2世代StrongARMの開発を行なっているという。この話は、前にElectronic Engineering Timesも報じた(「Intel To Flex With StrongARM」Electronic Engineering Times,2/24)ことがある。

 じつは、Microprocessor Forum 98の際に、Intelの組み込み向けMPUの発表会が行なわれた。そのQ&Aセッションで、Microprocessor Reportの記者が、StrongARMチームの人材がいなくなってしまって、どうやって開発するのかとIntelに詰め寄っていた。IntelもCompaq Computerも、DECの資産をフルには引き継ぐことができなかったようだ。もっとも、彼らの方がお払い箱にしたのかもしれないが。


●Mobile Coppermineの動作周波数は400/600MHz?

 プロセッサ関連では、Electronic Engineering Times誌でひとつ興味深い記事が見つかった。Intelが'99年後半に投入するノートPC向けプロセッサ「Mobile Coppermine(コード名:カッパーマイン)」の動作周波数を、さりげなく記事の中に紛れ込ませていたのだ。「Notebook makers wrestle with pinouts, heat dissipation」(Electronic Engineering Times,10/27)によると、Intelが'99年のノート向けMPUで、新たに「Ball-Grid-Array (BGA)」と「Micro-Pin-Grid-Array (マイクロPGA)」の2つのパッケージを追加するという。このパッケージで提供される最初のプロセッサは、0.25ミクロンプロセスで製造され、2次キャッシュを内蔵し、366MHz駆動で9.5ワットの消費電力だという。これはどうみても「Dixon(ディクソン)」だ。そして、次に投入する0.18ミクロンプロセス版は、バッテリ駆動の時に400MHzで、ドッキングステーションに接続してAC電源で駆動した時に600MHzになるという。消費電力は6ワットだというが、これはバッテリ駆動時だろう。

 前にも伝えた通り、Intelは「Geyserville(コード名:ガイザーヴィル)」と呼ばれるモバイル向けの消費電力制御技術のプロジェクトを進めている。これはドッキングベイに接続してAC電源で駆動している時には高クロックでプロセッサを駆動、バッテリ駆動時にはクロックを落として駆動する技術で、Mobile Coppermineから採用されると言われている。この記事が伝えているのは、まさにその技術を使ったプロセッサで、これが本当なら、'99年後半にはノートPCが600MHzに達することになる。つまり、ノートPCの動作周波数は、一気にデスクトップと同レベルまで引き上げられるのだ。


●Windows CE 3.0はCedar?

 Microsoftネタでは、Windows Magazineが、Windows CE 3.0について報じている。「CE 3.0 To Target Information Appliances」(Windows Magazine,10/21)がそれで、来年の出荷が予想されるこの新バージョンを、同誌は「Cedar」というコード名だと伝えている。情報家電やより小さな携帯機器にも対応できるように、メモリの必要量を減らすなどの工夫をしているという。Windows Magazineはこれに関して独自の情報源を持っているらしく、以前から何度か報じている。ただし、奇妙なことに、他の媒体では、このCedarというコード名はまず見かけない。さらに、ややこしいことに、MicrosoftはトランザクションミドルウェアにCedarというコード名をつけていたことがある。コード名自体は、あまりこだわって追求しない方がいいのかも知れない。


●エリソン氏の危険ないたずら

 ちょっと人事で面白いネタをひとつ。データベースベンダー大手のSybaseの会長兼CEOのMitchell Kertzman氏が、なんと同じデータベースベンダーで仇敵のOracleの関連企業Network Computer Inc(NCI)のCEOに転身した。これだけでも事件なのだが、ここで面白いのは3週間前のOracleのラリー・エリソン会長兼CEOの発言。

 「Ellison Swipes At Sybase's Kertzman」(Computer Reseller News,10/13、リンクはすでに消失)によると、業界のシンポジウム「Gartner Group Symposium/ITxpo98」に出席したエリソン氏は、サイベースのKertzman氏にアドバイスをと言われ「私がミッチなら辞表を出し、ホットなインターネット新興企業を探すだろう」、「Sybaseの状況は非常に難しいと思う」と発言しているのだ。この記事を読んだ時は、また、エリソン氏の毒舌が始まったと思ったのだが、今、振り返ってみると、これがとんでもないほのめかしだったことがわかる。こういういたずらをするところが、よくも悪くもエリソン氏の個性なのだろう。エリソン氏のファンとは言えなかったKertzman氏を獲得するあたりもすごいが、それを公然とほのめかしてしまうところがもっとすごい。なのに、ほとんどすべての媒体が、これは予期していなかったと報じている。


●「憶えていません」「思い出せません」のゲイツ氏

 雄弁で攻撃的なゲイツ氏は、どこへ行ったのだろう。「憶えていません」「思い出せません」を連発する、こののらりくらりした人物が、はたしてあのゲイツ氏と同一人物なのだろうか。「Tapes show evasive Gates」(San Jose Mercury News,11/3)によると、Microsoft裁判で公開されたゲイツ氏の証言ビデオは、こんな印象だったという。ほとんど、ルインスキー嬢の関係を問いただされたクリントン大統領に近い状態だったらしい。

 San Jose Mercury Newsは、どちらかと言うと、Microsoftに辛い記事が多いので、割り引く必要があるが、それでも、こうした立場に立たされれば、さしものゲイツ氏ものらりくらりになって当然だろう。Microsoftはこのビデオの公開について、政府が裁判をセンセーショナルなイベントにするために使ったと抗議したようだが、それもある意味で真実だろう。司法省は、この裁判をできるだけ人目を引くものにして、世論の支持を集めようとしているように見えるからだ。

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('98年11月4日)

[Reported by 後藤 弘茂]


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