このところ、ノートパソコンの価格が下がって、買いやすい製品が増えている。TFT液晶の生産量が増えて価格が下がったおかげだ。しかし、ユーザーにはありがたいこの傾向も今年で終わりかもしれない。'99年から2000年には、ノートパソコンの価格が下げどまるという予測が米国の調査会社から出た。
DisplaySearchの予測(「DisplaySearch Predicts Year 2000 Notebook PC Market Will Be Panel Supply Limited」)によると、TFT液晶は需要が'98年から2000年の間に38%増えるのに対し、供給は22%しか増えない。このため、2000年にはTFT液晶のノートパソコン(12.1インチモニタ)は、需要より246万台少ない1,730万台の供給、またデスクトップの液晶モニタ市場も需要より20万台少ない298万台の供給となり、価格が下がらなくなるだろうという。
いまだぶつき気味のTFT液晶が、なぜ急に品不足に陥るのか。その理由は、まるで『経済入門』の教科書から抜け出たような、需給バランスの変化にある。
DisplaySearchによれば、TFT供給が今後伸びないのは、昨年後半から今年前半にかけて、アジア経済悪化などによりノートパソコンのコンシューマー市場の需要が業界の予想ほど伸びなかったためだ。TFTは生産過剰となり、価格が急落し、メーカーの利益が圧縮された。そこで、メーカーは将来のための設備投資をできなくなったというわけだ。
これは、シリコンが供給過剰と需要過剰のサイクルを繰り返すのと全く同じ。レタス農家が生産過剰に困って生産を減らすと翌年は品薄で価格が上がるのとも全く同じ。ハイテクも経済の原則には勝てないらしい。
□DisplaySearch「DisplaySearch Predicts Year 2000 Notebook PC Market Will Be Panel Supply Limited」
http://www.displaysearch.com/english/e_releases.html#october7,98
ところが米IDC「IDC Study Reveals U.S. Browser Market Share Shifts as Microsoft Makes Gains, AOL Remains Stable, and Netscape Drops」の調査結果は逆で、98年前半、Netscapeが'97年末より9%シェアを落とし、IEは逆に5%増やしたと発表した。プレスリリースでは具体的に何%になったかは書いていないが、複数の報道によれば、Netscapeのシェアは初めて過半数を割り(41.5%)、IEは27.5%になったという。そのため、IEをカスタマイズしただけのAOL会員専用ブラウザのシェアをIEに足すと、首位が逆転するところにまで、Netscapeは追いつめられたという。
一方、企業でNetscapeが強いというのはIDCも認めるところだ。とくに中規模・大規模の企業はNetscapeの牙城であり、Microsoftにとっては最大の難関だと分析している。中規模・大規模の企業は最も早くからネットワーク化していたグループなので、先にブラウザを出し始めたNetscapeのほうがしっかり食い込んでいる。またZonaは今年初めにNavigatorが無料になった影響も大きいと分析している。
しかし、両者は平和に棲み分けているわけではない。IDCは、小規模の企業でNetscapeのシェアが落ち込み、それを拾うかたちでAOLが伸びているとしているし、Zonaも、社員に特定のブラウザを推奨・強制している企業では、IEが優勢だという。つまり、せめぎ合いながらも、やはりIEがヒタヒタとNetscapeに迫っているとみたほうがいいだろう。
もっとも、MicrosoftやNetscapeのインターネットでの勢力をブラウザのシェアに投映させるのは、だんだん無意味になってくるかもしれない。両社とも、これまでのブラウザを通じてインターネットを支配する戦略を、ポータルを通じての戦略へと変えつつあるからだ。だがここでも、Netscapeがリードし、Microsoftが追う構図が繰り返されている。いったい勝つのはどっちだろう。
□Zona Research
http://www.zonaresearch.com/
□IDC
http://www.idc.com/
パソコンで学習するとエラくなれる!――そう言われると、なんとなく信じてしまいそうな雰囲気がパソコンにはある。
だが、ただパソコンで勉強すればいいわけではないという調査結果が、米国の教育団体Educational Testing Service(ETS)から出された。
小学生と中学生の数学のテストの成績を調べたところ、コンピュータを単なるドリルのような低レベルな学習に使った場合は、コンピュータを使わない場合より成績が悪かった。また教室でコンピュータを使う頻度も、多いほうが成績が悪かったという。
ハイレベルな思考を必要とするような使い方をした場合は成績は良かった。
学校にパソコンの台数をそろえ、授業時間を設ければ、21世紀の教育はバッチリという考えが米国にも日本にもある。だが、やはりそれだけではだめということだ。
□Educational Testing Service「Does It Compute?」
http://www.ets.org/research/pic/technolog.html
[Text by 後藤貴子]