そしてこの数多いホームオフィスを支えているのが、インターネットだ。
米国の調査会社IDC(International Data Corp.)によれば(「IDC Reveals Home Office Internet Use Reaches Record High」)、ホームオフィス(企業の在宅勤務を含む)の数は昨年より7.5%増加し、3,730万世帯に達した。これはもう、向かいの家も隣の家もみんなホームオフィスという状態だが、そのホームオフィスで、インターネットアクセスのあるところが急増している。この1年で500万世帯以上(44.6%)も増え、1,750万世帯になった。インターネットはホームオフィスに欠かせない武器になりつつあるのだ。
情報収集とEコマースで活用というのもわかりやすい話だ。インターネットでは個人でも簡単に情報収集ができ、ホームページを立ち上げるだけで宣伝や顧客サポートになる。Eコマースで世界を相手に商売することもできる。マンパワーや予算の足りない弱点を克服できるのだから、インターネットはまさにホームオフィスのためにあるようなものだ。
つまり、インターネットによって、ホームオフィスはよりイージーにかつ積極的に経営できるようになった。ホームオフィスにインターネットが普及し、インターネットによってホームオフィスが増えているのは当然といえるだろう。
米国では日本より家庭にインターネットとPCが普及していると言われる。しかし、その実態は、米国ではホームオフィスが盛んで、そこでインターネットとPCが使われているから、家庭に浸透しているように見えるということ。インターネットやPCがリビングに入り込んでいないという状況は、じつは日本と変わらない。
ところで、いくらインターネットのおかげで仕事がやりやすいといっても、米国でホームオフィスが日本よりずっと多いのには別の理由もある。
一番の理由は、独立するのがアメリカンドリームの出発点だからだろう。誰もが独立は基本的に『いいこと』だと思っているし、自宅の片隅で始まった会社が大きく化ける例も多いから侮れない。だから○○会社社員という肩書きをなくした個人にもハンディがない。
会社にしがみつかず、自分の才覚で気軽にホームオフィスを始められる状況と、それとともに栄えるインターネットが、米国経済の元気のもとを作っているのかも知れない。
IDCが、第3四半期の米国のPC市場はあいかわらず好調で、14%の成長率を記録しそうだと発表した(「IDC Forecasts "Warming" Worldwide PC Demand in Second Half of 1998」)。
しかしベンダごとの売れ行きを見るとトップ企業による寡占化が進んでいる。上位5社はCompaq Computer、Dell Computer、Hewlett Packard、Gateway、Packard Bell NECだが、この5社で過半数のシェアを占める。しかも5社の前年と比べた成長率は23.6%なのに対し、5社以外はマイナス成長。つまり好況はこれらの企業が支え、6位以下は厳しい状況なのだ。Compaqのエッカード・ファイファー会長は昨年秋のComdexで、PC市場は寡占化が進み、数年で70%がトップ4に占められてしまうだろうと予言したが、まさにそのとおりの展開になっている。
台風の目は、相変わらずDellだ。前年比の伸び71.7%という数字がその絶好調ぶりを示す。GatewayもDellほどではないが32.6%の成長を遂げた。この2社に共通しているのは、モデルをハイスペックで無駄なソフトなどの入っていない中級以上のユーザー向けのものに絞り、販売方法も通販に絞って、価格を安くしている点だ。これが、ホームオフィスやスモールオフィスなどの、2台目以降の購入者に受けた。まさに上で触れた、増えるホームオフィスがDellやGatewayを支えているということになる。ビジネスモデルの成功例といえるだろう。
一方、Compaq、Hewlett Packard、Packard Bell NECはコンシューマー向けで安売り競争を展開しているが、Packard Bell NECは危機的状態だ。5社の中で1社だけ、2ケタのマイナス成長に落ち込んだ。これはPackard Bell NECがコンシューマー向けラインしか持っていないために、利幅の薄い競争についていけなくなっているためだろう。それに対し、Compaqは前年比11.3%、Hewlett Packardは32.7%の成長をしている。両社はビジネスとコンシューマーの両ラインを持っているオールラウンド型。だからコンシューマー向けではアグレッシブな展開をできる強味があるわけだ。
iMac自体は特殊な製品で、欲しい人たちに一巡したらそれ以上の市場への浸透はあまり期待できないとも言われる。だが、Appleの落ち目イメージが一気にぬぐい去られたことで、他の製品も含めて社全体の伸びを呼ぶということなのだろう。でもやはり、これは一時的なカンフル剤で、CD-ROMが一大ブームとなった頃のように、AppleがWintel市場に食い込むのは難しいのではないだろうか。
[Text by 後藤貴子]