スタパ齋藤

物欲増幅の原点、モーション・アイ
~ソニーVAIO PCG-C1~



■ よしてくれよPC Watch

 俺の場合、言わずと知れたメール&WebマガジンのPC Watchに、ていうかココに、原稿を書かせていただいている筆者なので、インプレスさんは俺のメールアドレスにもPC Watchを送ってくださるのであった。そんな俺が思うに、PC Watchは凄まじいニュースメディアであるということ。PC Watchさえ読んでりゃぁパソコン市場のモノ情報に関して遅れを取ることはまったくない。関係者だから言ってるんじゃなくて、PC Watchほど迅速なニュースメディアはちょっとない。だってWatch編集部にメーカーから報告があったその日にニュースとして掲載してんだもんな~。雑誌とかは太刀打ちできないよな~この速さには。他の出版社(特にWeb上にニュースページを持たないトコロ)にしてみれば、「あ~インプレスさんにヤラレちゃったなぁウチの雑誌のニュース記事弱いかもなぁでもWebを使わない読者のためのニュース記事なのだ!! ていうかよしてくれよPC Watch」といった感じであり迷惑なフィーリングであろう。まあ読者にしてみればまるでどこも迷惑ではないが。

 しかし、俺にとっては、たまにPC Watchは迷惑なメディアであったりする。時々、こう思う。「PC Watch送ってくんじゃねえよ」or「こんなもん読まなきゃよかった」と。
 なんでかって言うと、PC Watchを読みさえしなければ、衝動買いの情念を燃やさずにも済んだのだ。欲しいと思うであろう可能性が低い物品に対する物欲が増幅されずにも済んだのだ。そしていくつものハードウェアを衝動買いせずに済んだのだ。

 例えば、雑誌を読んで“欲しい感じのモノ”を発見した時。俺はソレをちょっと欲しいと思うが、多くの雑誌の場合はソレに関する情報量が少ないので、物欲はそれほど高まらない。外見とスペックと特徴が10行くらいにまとめられた記事では、ソレの全貌が見えて来ないからだ。また、雑誌というのは誌面に限りがあり、また、月に1度とか週に1度しか発行されないので、新製品全部にスポットを当てて紹介する余裕がない。新製品に関する情報をアップデートする余裕もなかなかない。つまり雑誌の場合、新製品多数が掲載されていても、俺はそれほど物欲を煽られないのだ。

 しかしPC Watchの場合、雑誌の新製品情報とは少々違う。まず速攻で新製品情報を流す。それについてゲゲッ欲しいゼと思ってリンクを辿ると、比較的多くの場合、さらに深い情報や画像を見ることができる。インターネットという広大な情報網を味方に付けているだけあって、関連情報の集まりやすいこと!! ついでに俺の物欲が増幅しやすいこと!! しかも、早ければ数時間後、遅くても数日のうちにその新製品に関する情報がアップデートされたりもする。ん~アレいいなぁと物欲がレッドゾーン手前でくすぶっている(買わずに済んでいるとも言う)状況に、ニトログリセリンを注入、物欲を大爆発させてくれる。物欲とゆーモンは、時間とともに減衰していくものなのだが、短時間のうちに大きく増幅するものでもある。そして物欲大増幅の大きな原因は、物欲を感じているモノに関する新しくて魅力的な情報なのだ。そーゆー情報を、PC Watchは提供しやがるのである。

 実際、PC Watchで知ってWebで調べて最強に欲しまった新製品を、いくつ買ったのか俺は!! PC Watchを読まなければ減衰していたであろう物欲を、いくつ増幅されちまったのか俺は!! PC Watchは俺の経済状態において迷惑だ!! 情報を流すのをぜひやめていただきたい!! 廃刊していただきたい!!

 冗談はさておき(長い冗談ですみません)、問題のPC Watchが、また俺の新たな物欲を発生させてくれた。



■ ソニーの“ミニ”VAIO

PCG-C1
ソニー VAIO PCG-C1
お値段は実売で23万円程度と、CCDが付いたわりに買いやすい。ただし厚みがあり、筐体全体から受ける印象は「505ほどカッコ良くない」という意見も
 発売後の今となってはもはや誰もが注目している新型計算機、ミニVAIOことPCG-C1(以下C1)については、7月のWINDOWS WORLD Expo/Tokyo 98で公開された瞬間からPC Watchで報じられてきたのであり、さらにその後のPC WatchにてどんどんC1情報が流されたのであり、PC Watchを読めば読むほどC1が欲しくなるのは人情と言えるのであり、しかもPC Watchのリンクを辿れば明日にでもショップで注文したくなるのであり、あーもーどうしてくれんだよこの俺の燃え上がった物欲をよーということだ。

 でもここしばらく、俺はソニー製コンピュータばっか買っている。なななナンと計4台もだ!! 具体的にはでっかいVAIO(PCG-715)とちっこいVAIO(PCG-505)と光るVAIO(PCV-M300TV7)と取り込むVAIO(PCV-S600TV7)だ。これじゃイカンこのままじゃソニーに洗脳されると思い、つい最近は東芝のTECRA780 DVDを購入(したんスよ今度そのレポートとかするっスよかなりイイっスよこのマシンで俺の原稿書き環境大安定)したのだが、またソニーのマシンが欲しくなってしまった。このままでは購入の危険性さえある。どうしてくれるPC Watchめ~ということで、俺はWatch編集に直接電話で苦情を言った。

「はい~Watchくどうですけどぉ~」
「あのねぇスタパだけどねぇオタクんトコのミニバイオの記事ねぇアレねぇ迷惑なんですよわかってくださいよ」
「いいですよね~ミニバイオ。買ったりするんですかスタパさん」
「あのねぇアレねぇイイけどねぇ買いたいけどねぇそれよりもねぇすげえ欲しいんですよ困ってるんですよヤバいんですよ」
「じゃあ使ってみませんか!? ソニーさんにお借りしてるんですけど」
「あのねぇオタクさんねぇあのねぇちょっとねぇエートねぇ」
「送りましょうか?」
「くわっ!! 送れ送ってくれ送っていただけませんか後生ですからぜひともお送りくださいませお願いします触りたいんですいじくり回したいんですぅ」

 という次第で、話題のC1をお借りできたので、そのファーストインプレションなぞ(←なぞじゃねえよ前置き長過ぎだぞこのタコ>拙者)。



■ 超イケてるC1

 C1に対する俺の第一印象は、“イケてるマシン!!”ということ。外観、性能、ギミック、そして消費者物欲増幅度において、このイマイチおもしろくないコンピュータ業界全体を、(VAIO505に続いて)再度、揺さぶってくれる感じがした。強く感じたのは、VAIO登場時の類い希なるインパクトすなわち“楽しそうなマシン”というイメージが、最もよく表われているコンピュータだということ。

PCG-C1
PCG-C1
Libretto 100と並べて撮影してみた。厚みはほぼ同じで、筐体上面がやや丸みをおびている分、PCG-C1の方がちょっと厚いかなという程度。幅はLibretto 100より30mm、奥行きは8mm大きい
 
PCG-C1
PCG-C1
キーピッチは横17mmあり、さほど違和感なく打てる(ただしノートの常で、一部かなり小さいキーもある)。CCDは27万画素と、いまどきのデジタルカメラと比べてしまうとかなりプアな仕様ではあるが、CCDで遊ぶためのソフトがいろいろと付属しており、このあたりがVAIOの面白いところ
 で、まずその外観と感触。
 サイズは、VAIOノート505の短辺を半分のサイズに縮小した扁平B5で、具体的な寸法は幅240×奥行き140×高さ37(mm)。重さ約1.1kg。液晶パネル裏はおなじみマグネシウム合金。カラーリングも505と非常によく似ている。が、比較対象になるのは505じゃなくて、リブレット100かなぁ、と俺は思った。リブレット100の寸法は幅210×奥行き132×高さ35(mm)で、1.06kg。C1は、サイズ的あるいは持った感じ的には、モバイル指向を強く感じさせる感触で、真っ先にリブレットを思い起こさせる。リブとC1と、どっちがイイか!? みたいなことを一瞬考えてしまった(が、触れば触るほど、C1とリブはまったくの別モンであり、比較するのがムダだとわかった)。

 サイズ面で気になったのは、その意外なデカさ。今時のモバイルマシンにしては、37mmの高さはけっこう分厚い感じがする。ハッキリ言って厚ぼったい。シャープな感じがしない。イメージはザウルスポケットに対するカラーザウルスであり、βに対するVHSであり、スポーツカーに対するRVカーな感じだ。あと、デザインは505のそれを踏襲しているが、ある種「またかよ」というインパクトも否めなかった。それでもまだこのコンピュータハードウェアというカテゴリにおいては、強い個性とカッコ良さを持ったデザインだ。

 次に基本性能。
 MMX Pentium 233MHz、64MB SDRAM、3.2GB Ultra ATA HDDで、56/14.4kbps FAXモデム3時間の駆動時間は、まあ今時発売されるマシンにしては、平均点プラスαという感じ。それほど凄まじくはない。でもホントは凄まじいと思ったりする。このサイズで233MHzで64MBで3.2GBだったらオッケーじゃ~んとか思う。が、最新機種なんだからそのくらい当たり前というのが、現在の麻痺気味コンピュータ野郎の公称的意見と言えよう。で、コレは!! と思ったのが液晶。1,024×480のTFT液晶は、縦に480以上の解像度があると錯覚するほど広く感じられる。パッと見、デスクトップがヤケに広大な感じ。これは、モバイルマシンにおいてかなりイイ感じの解像度だ。

 それから、肝心のキーボード。87キーの日本語キーボードで、横17ミリピッチ。小さすぎず、モバイル用途を考えると、頼もしい余裕すら感じる。ちょっと慣れればタッチタイピングもラクだ。ストロークも十分あり、感触としてはVAIOノート505のそれと非常によく似ている。使いやすい。何でもC1のサイズは、キーボードの横幅が基準となって生まれたのだそうだ。適切なキーボードに合わせて筐体の横幅を決め、それにマッチする液晶を搭載したという順序。なるほど使いやすいキーボードを中心に、その他のデバイスが配置されているという感じがする。俺としては、これに加え、英語キーボードへの交換サービスが始まるといいナといった心境だ。より余裕のあるキーレイアウトで、このC1を使いまくりたいところ。

 ポインティングデバイスは、スクロール機能対応スティック式ポインティングデバイスと呼ばれる、新手の装置。カーソル移動時は、IBMの赤いポッチことトラックポイント2や東芝の緑のポッチことアキュポイントと同様に使える。が、マウスの右・左クリックの代用キーの間にある第三のキーと併用すると、MicrosoftのIntelliMouseのホイールみたいな感覚で使える。具体的には、スペースキー下にある“第三のキー”を押しながらポインティングデバイスを動かすと、ドキュメントを上下左右に自由にスクロールさせることができる。画面が狭いサブノートにはうってつけの機能で、実際Webページ閲覧時や、縦にも横にも開き切れないドデカいドキュメントを見るときには笑っちゃうほど重宝する。すっげえ便利。なお、ポインティングデバイス自体のフィーリングは良好だが、スペースキー下に配置された3つのボタンに少々指がぶつかりがちな俺である。まあ慣れでどうにでもなる問題ですが……。

 端子類は、PCカードスロット1基、コンパクトに開閉するMJ接続部(505と同様)、モノラルマイクジャック、ステレオヘッドホンジャック、USBポート×1、赤外線通信ポート×1、IEEE-1394(iLINK端子)×1、外部ディスプレイ端子という内容。シリアルとかパラレルとか、そーゆー旧世代のコネクタなんざぁねえんだよわかったかよこの化石野郎!! と、iMacみたいに鼻息の荒い新世代先取りマシンなのだが、USB FDドライブやUSBケーブル、VGA変換アダプタなど、最低限旧世代コネクタ野郎を化石化させない程度の付属品があるので、まあコレはコレでいいのかもしれない。そう言やPCカードもあるのだ。それに、別売でUSBプリンターケーブル(PCG-C1専用USB→パラレル変換ケーブル:ドライバ付き)も用意されている。コネクタや周辺機器で行き詰まるような心配はない。

 そして、サイコーにイケてると思わせるのが、ちっぽけなサイズだけどでっかいインパクトがある、超小型の内蔵CCDカメラこと、モーション・アイ。



■ 物欲増幅の原点、モーション・アイ

 モーション・アイは、C1の液晶パネル上部に内蔵された超小型ビデオカメラだ。デバイスとしては、27万画素の1/6型CCDだ。首振りも可能で、レンズは液晶パネル前側から後ろ側まで180度回転する。ピントの微調整もできる。サイバーショットのCCD部分を縮小したような感じのカメラだ。

 コレについて、まず驚くのが、「よくもまあこんなトコロに埋め込んであるなあっていうかコレってホントにCCDカメラ!?」ということ。で、ホントにCCDカメラであり動画も静止画もイケることを知ると、このモーション・アイを搭載していることだけでC1が欲しくなってしまうというシクミになっている。

 モーション・アイを使ってできるのは、(もちろん内蔵ソフトと併用しての)静止画(JPEG、BMP、GIF)取り込みと、動画(非圧縮または圧縮AVI、アニメーションGIF)取り込み、それからパターン認識など。27万画素のCCDカメラなんか……と思われるかもしれないが、それがそうでもない(ってどれがどうなんだよ>わし)。つまり、まあデバイスそのものを見れば比較的ショボいモンなのだが、プリインストールの各種“モーション・アイ系ソフト”を使うと、ヒッジョーに多彩なことができる。

 DVgate stillで静止画キャプチャ(デジカメ撮影ですな)、Smart Captureで動画記録(1ショット最大60秒)、CyberCode Finderを使えば2次元バーコードをカメラにかざすだけで好みのソフトやWebページが現れる。さらに、各種メールソフト、Smart Write(簡易ワープロ)やSmart Label(マルチメディア付箋紙)、Digital Media Park(AVデータ統合処理ソフト)、Sonicflow(斬新でよくわからないがサイバーなソフト)など、モーション・アイから入力された静止画・動画データを活用するためのソフトがたーくさんプリインストールされているのである。つまり、このCCDカメラを十分に“活用”できる。
 活用できると同時に、要は用途なんだ内容なんだ意味なんだ画質そのものはそれほど問題ではない、みたいなコトに気づく。

 コレはわりとセンセーショナルな仕様だ。これまでにも“オモシロ機能ハードウェア”を搭載したマシンはあったが、その多くはそれら“オモシロ機能ハードウェア”が単なる“オモシロソーなモノ”でしかなかった。ハードウェアはあっても、その機能を十分活用できるようなソフトウェアがひとつかふたつしかなかった。そして最終的には“そのマシン独自の使えねえデバイス”と化し、ただひたすら悲しい“余計なモノ“と感じられるようになったのだ。が、C1のモーション・アイには、そーゆー感じがしない。上記のように、コレを活用するためのソフトウェアがふんだんに用意されているし、とにもかくにも“楽しく遊べそう”であり、俺は実際“楽しく遊んじゃってる”のであり、ソニーにこの借り物C1を返したくなくなっているのであった。



■ 欲し過ぎるゼ、PCG-C1

 結論。C1は、すげー魅力的。ソニーのC1紹介ページで、C1のさらなる詳細を知るのが吉。買うと大吉。ていうかハッピー。特に、既にメインマシンを持っていて、今後、楽しく愉快にモバイルしたりお外でコンピュータ遊びしたいとか思っている人が買うと激吉。

 あー、やっぱりイカシたマシンだった~。ね、こーゆーマシンの存在を事細かに伝えるPC Watchって迷惑なサービスでしょ。もうね、俺はね、もうね、もうね……くわッ!!

 俺はもはや最強に弱まっている!! この最強に最高なミニVAIOが、最高に欲しいのだ!! 今にでも買いそうだ!! 欲しい!! 欲し過ぎる!! 喉から手が出た手がケツの穴から進入して奥歯ガタガタ言わすほど欲しい!! 買いたい!! 金なんかないが買いそうなんだよアニキわかってくれよアネキ欲しいんだよブラザーたまんねえんだよシスター!! あーもう俺はダメです。さようなら。 ……。

 ああっ!! びびび、びっくりした!! 俺はもうダメだとか思いつつ、借り物のC1を見つめていたら、突然C1が「バッテリーの充電が終わりました」とか言った~!! あー驚いた。まあ音声メッセージなんざぁ今時のマシンじゃ当たり前なのだが、このことが俺を冷静にさせたような気がする。

 俺が嫌いなWindows 3.1が大きく進化し、俺がわりと好きなWindows 95となり、それがまた洗練されて俺がかなり好きなWindows 95 OSR2.1となり、その完成度がさらに高くなってWindows 98となった。以前は四苦八苦してやっと出たサウンドなんかも、今は何の苦労もなしに出るどころか、知らない間に出ているほど。サウンドに限らずWindows周辺のマシンおよびソフトは、もはや苦労とか努力とかを跡形もなく吸収しちゃうほど、こなれている。冷静な俺思うに、最近のWindows環境って地盤がしっかりしてるなぁ、と。まあこの点には(比較的マニアックな)賛否両論があるかもしれないが、フツーに考えれば現在のWindows環境はオッケーでありナイスとも言えるし、確かに“実用的”な状態だ。で、この実用性の上にC1独自のギミックと機能!! 仮にWindows環境の実用性がゼロとしても、C1独自のギミックと機能は魅力的!! それだけでプラス!! ていうかそれだけで欲しい!! そしてWindows環境は実用的!! よってコレは買いだ!! わかった買いなんだよ買うしかねえんだよアニキ!! 俺は速攻でLaOXに電話すんだよブラザー!!

「あ~もしもしラオックスですかソニーのバイオのC1って機種なんですけどコレとりあえず注文したいんですけどお願(以下略)」
 というわけで、冷静な俺は、髪を振り乱してC1を注文した。

□PCG-C1製品情報
http://www.sony.co.jp/ProductsPark/Consumer/PCOM/PCG-C1/

[Text by スタパ齋藤]


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ウォッチ編集部内PC Watch担当 pc-watch-info@impress.co.jp